介護関連の「資格」は豊富にあり、どれを取得すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護関連の資格を「介護現場で活かせる主要資格」「相談業務で活かせる主要資格」「その他、介護・福祉業界で役立つ資格」の3つに分類し、資格の概要と取得方法を解説します。
介護職を目指している人も、介護職としてすでにベテランの人も、キャリアアップのひとつや新たな学びの機会として役立てください。
目次
介護現場で活かせる主要資格
まずはじめに、介護職として働くときに介護現場で活かせる4つの資格を紹介します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の入門資格として厚生労働省認定する公的資格です。
介護に関する基礎的な知識やスキル、考え方のプロセスを学ぶことできます。
かつての入門資格であるホームヘルパー2級は2012年度に廃止され、2013年から介護職員初任者研修がスタートしました。
介護職員初任者研修を取得するには
介護職員初任者研修を取得するには、講座を開講しているスクールに申し込み、すべてのカリキュラムを修了した後、試験を受けて合格する必要があります。
受講資格はなく、無資格・未経験でも受講できる資格です。
- 試験:あり ※ほとんどのスクールで、何度も受験可能
- 受講資格:なし
- 取得目安期間:1カ月~3カ月
- 費用目安:5~11万円
実務者研修
実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格として位置づけられる公的資格です。
文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定した学校または厚生労働大臣の指定した養成施設において介護福祉士として必要な知識及び技能を修得するための研修とされており、より実践的な幅広い介護の知識と技術を得ることを目的としています。
ホームヘルパー2級の上位資格にあたる「介護職員基礎研修」と「ホームヘルパー1級」が廃止され、2013年に介護職員初任者研修とともに実務者研修がスタートしました。
2016年度の介護福祉士国家試験から、3年以上の実務経験のほかに実務者研修の修了が必須の受験資格となりました。
実務者研修修了者はサービス提供責任者として働くこともできるため、サービス提供責任者を目指す人・介護福祉士を目指す人など、多くの人が資格取得を目指しています。
実務者研修を取得するには
実務者研修を取得するには、無資格者であれば約450時間の講座を修了する必要があります。試験は義務付けられていないため、試験の有無はスクールによって異なります。
実務者研修も介護職員初任者研修同様に、無資格・未経験でも受講できます。
- 試験:なし
- 受講資格:なし
- 取得目安期間:3カ月~1年
- 費用目安:5~20万円 ※所有資格やスクールによって大きく異なる
【国家資格】介護福祉士
介護福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法(1987年5月26日制定)により定められた、介護業界で唯一の国家資格です。
社会福祉士・精神保健福祉士と並んで「福祉の三大国家資格」と称されています。
現在において介護福祉士は、介護現場でより専門的なスキルを保持している者として位置づけられているため、資格手当がもらえたり就職で優遇されたりするなどのメリットを感じられることもあるでしょう。
また、2019年10月よりはじまる8万円相当の賃上げの対象者は、主に勤続10年以上の介護福祉士です。
介護業界は人手不足が深刻なため、介護福祉士を取得することへの利点は今後も増えていくことが予想されます。
介護福祉士を取得するには
介護福祉士になるには、国家試験に合格し「介護福祉士」の免許を取得する必要があります。取得のルートは、「実務経験ルート」「福祉系高校卒業ルート」「養成施設ルート」の3つ。
多くの人が選択する「実務経験ルート」で受験するには、3年以上の実務経験に加え、実務者研修の修了が必要となります。
合格率はおおむね60%前後を推移していますが、直近2回は70%を超えています。
- 試験:あり
- 受験資格:実務経験+実務者研修修了など
- 試験日:年1回・1月
- 受験費用:13,140円
●介護福祉士の給料・賞与・資格手当~資格取得でどう変わる?~
●【2018年・第30回 最新版】介護福祉士試験の難易度と合格率
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、2015年より一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が介護福祉士の上位資格として認定を開始した民間資格です。
介護職のリーダーの教育や介護サービスの中核者として、他職種連携で高い能力を発揮することが期待されています。
誕生して間もないことと取得のハードルが高いことから、2017年12月時点での資格取得者は28名と少数です。
とはいえ介護福祉士の上位資格であるため、今後のキャリアアップを考えるうえで注目度の高い資格でしょう。
認定介護福祉士を取得するには
認定介護福祉士になるには、「①介護福祉士としての実務経験が5年以上」「②認定介護福祉士養成研修で600時間の研修を修了」「③研修終了後に認定申請し、審査に通過」の3つ条件を満たす必要があります。
実務経験に加えて600時間の研修という条件を満たすには、膨大な時間と労力が必要になるため、資格取得のハードルは高いといえます。
- 試験:なし ※研修終了後に審査あり
- 受講資格:介護福祉士としての実務経験+その他
- 取得目安期間:600時間の研修
●「ゴールはない。資格取得後も学び続ける」全国28人のひとり!現役の認定介護福祉士・松川春代さんインタビュー
相談業務で活かせる主要資格
つぎに、介護・福祉業界で相談業務を行う人として活躍できる資格を紹介します。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは2000年4月に介護保険制度がはじまるにあたって創設された各都道府県知事の登録を受ける公的資格です。
正式には「介護支援専門員」といいます。
介護を必要とする人の相談に乗り、最適なケアが受けられるように総合的なコーディネートやマネジメントをする専門職です。
ケアマネジャーを取得するには
ケアマネジャーになるには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、介護支援専門員実務研修(87時間の研修)を修了する必要があります。
介護支援専門員は公的資格のため、試験は各都道府県が管轄・実施しています。
受験資格は下記のふたつのいずれかを満たす必要があります。
- 特定の国家資格(注1)を保有し、国家資格に基づく業務の実務経験が通算5年以上
- 介護施設などで相談援助業務(注2)などに従事し、対人援助業務に通算5年以上
注1:医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士含む)、精神保健福祉士
注2:生活相談員、支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員
- 試験:あり
- 受験資格:特定の国家資格+実務経験
- 試験日:年1回・10月
- 費用目安:5万~8万円程度(受験費用+研修費用) ※都道府県によって異なる
【国家資格】社会福祉士
社会福祉士は、社会福祉業務を行う専門職の国家資格です。介護福祉士、精神保健福祉士と並んで「福祉の三大国家資格」と称されています。
「ソーシャルワーカー」とも呼ばれ、社会福祉業務のスペシャリストとして、専門的な知識・技術を持った人と認められます。
社会福祉士は就業先によって「生活相談員」や「医療ソーシャルワーカー」、「児童福祉司」などの職種として働けるため、さまざまな職場で活躍できます。
社会福祉士を取得するには
社会福祉士になるには、国家試験に合格し「社会福祉士」の免許を取得する必要があります。取得には全部で12のルートがあり、取得の方法が複雑でわかりにくいものとなっています。社会福祉士取得のルートについて知りたい方は下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
- 試験:あり
- 受験資格:大学での指定科目の履修など
- 試験日:年1回・2月
- 受験費用:1万5,440円
【国家資格】精神保健福祉士
精神保健福祉士は、1997年に「精神保健福祉士法」によって定められた国家資格です。
介護福祉士・社会福祉士と並んで「福祉の三大国家資格」と称され、「精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)」とも呼ばれています。
精神保健福祉領域において相談援助を行うスペシャリストです。
精神保健福祉士を取得するには
社会福祉士になるには、国家試験に合格し「精神保健福祉士」の免許を取得する必要があります。取得には全部で11のルートがあり、社会福祉士同様に取得方法が複雑でわかりにくいものとなっています。精神保健福祉士取得のルートについて知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
- 試験:あり
- 受験資格:大学での指定科目の履修など
- 試験日:年1回・2月
- 受験費用:1万7,610円
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事とは、福祉事務所や各種相談所で公務員として特定の業務につくときに求められる任用資格です。高齢者や児童、心身障害者、生活困窮者などに対して、相談や指導、援助の業務に携わるケースワーカーとして働けます。
そのほか、民間の社会福祉施設の生活相談員に求められる資格としても準用されています。
社会福祉主事任用資格を取得するには
社会福祉主事任用資格を取得するには5つのルートがありますが、資格保持者の多くは「大学や短大において厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を3科目以上修めて卒業していること」というルートにあてはまるでしょう。
意図せず対象の科目を3科目以上取得していることもあります。自分が社会福祉主事の対象科目を履修しているかどうか、下記の記事で確認してみてください。
その他、介護・福祉業界で役立つ資格
そのほか、介護・福祉業界で役立つ資格を紹介します。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、2005年よりはじまった一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。認知症ケアに関する優れた技術を実践の場で活かせる専門性の高い資格で、
2017年の第13回試験までの累計合格者数は、50,682人です。
認知症ケア専門士を取得するには
認知症ケア専門士になるには、3年以上の認知症ケアの実務経験を経て、第1次認定試験(筆記試験)、第2次認定試験(論述試験・面接試験)に合格する必要があります。
認知症ケア専門士は更新制の資格です。資格取得後は、必要な単位を取得しなければ資格の維持ができませんが、逆に言えば新しい知識を学び続けられる資格でもあります。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、介護保険を使って福祉用具を利用する高齢者やその家族に対して福祉用具の選定や使い方の相談、用具の調整などを行う専門職として認められる資格です。
介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所には、2名以上の配置が義務づけられています。
福祉用具専門相談員を取得するには
福祉用具専門相談員になるには、下記のふたつの方法があります。
- 都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を修了する
- 福祉用具に関する知識があるとみなされる資格(※)の保有者
※要件を満たす資格は、介護福祉士、社会福祉士、看護師、準看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士。
レクリエーション介護士
レクリエーション介護士は、2014年9月に一般社団法人日本アクティブコミュニティ協会が認定をはじめた民間資格です。
介護や高齢者に対する基礎知識を学び、自分の趣味や特技を活かして、介護レクリエーションを企画・提案・実施します。
2019年2月時点での資格取得者は24,000人を超えています。
レクリエーション介護士を取得するには
レクリエーション介護士には2級と1級があります。
資格取得するには、協会が認定する講座を受講する必要があります。講座は通信講座と通学講座の2種類から選択可能。
2級の受験資格は設けておらず誰でも受験可能で、1級は2級取得者を対象としています。
●「今を大切にし、新しい発想でサービスを提供する」レクリエーション介護士の魅力を公認講師が語る【前編】
●「自分もまわりも、みんな変わる オーダーメイドのレク」レクリエーション介護士の魅力を公認講師が語る【後編】
●自分ペースのレクから「自分も相手も楽しめるレク」へ レクリエーション介護士に聞く、レクで大事なこと
介護予防運動指導員
介護予防運動指導員は、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターが認定を行ってる民間資格です。高齢者が要介護状態にならないように運動やトレーニングなどの介護予防プログラムを通して、身体のケアの指導ができます。
介護予防運動指導員を取得するには
介護予防運動指導員になるには、認定元が指定したスクールで講座を受講し、修了試験に合格する必要があります。不合格の場合は、初回受験年月日から1年以内であれば、再受験が可能。
登録後は3年ごとの更新が必要な更新制の資格です。
講座には、「介護職員初任者研修修了者で2年以上の実務経験がある者」「介護・医療関連の国家資格がある者」など、受講対象者に制限があります。詳しい受講資格は、下記の記事で確認してみてください。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは、1999年に東京商工会議所が認定をはじめた民間資格です。高齢者や障がい者がいきいきと自立した生活を送れるよう、住環境の整備のための調整や提案をするアドバイザーです。
バリアフリーなどの居住空間の改善を提案することはもちろん、介護用品や生活品などについてのアドバイスも行います。
福祉住環境コーディネーターを取得するには
福祉住環境コーディネーターには1級、2級、3級があり、資格取得するには検定試験に合格する必要があります。
2級と3級には受験資格がなく、誰でも受けられます。1級は2級合格者を受験対象者としています。
介護事務の資格
介護事務に関連する資格はいくつかあります。
代表的な資格は、技能認定振興協会(JSMA)が運営する「介護事務管理士®」と、日本医療教育財団が運営する「ケア クラーク®」のふたつ。
ふたつとも受験資格はなく、誰でも受験可能です。
上記の資格以外にも、請求業務の知識やスキル取得を中心とした「介護報酬請求事務技能検定試験」や、介護関連の大学や短大、専門学校などの認定教育機関でカリキュラムを履修後に試験を受けて取得する「介護保険事務士」など、介護事務の資格は多数あります。
無資格でも介護事務として就職できますが、介護事務に関する専門的な知識を身に付けたい方やより有利に就職したい方には、資格取得をおすすめします。
介護事務の資格を取得するには
資格取得するには、その資格に定められた試験(学科や実技など)に合格する必要があります。通信・通学講座や専門学校で提供されるカリキュラムの受講を通じて、資格取得の勉強をする人もいます。
認定音楽療法士
認定音楽療法士とは、一般社団法人日本音楽療法学会が認定する民間資格です。
資格取得することで、音楽療法士として応募できる仕事の幅が広がり、採用されるチャンスも高まることが期待できます。
音楽療法士として就職できれば、身体・精神に障害がある人に音楽によるリハビリテーションを行い、心身機能の維持・改善や障害の回復、生活の質の向上のサポートができます。
無資格でも音楽療法士として就職できますが、音楽療法士に関する専門的な知識を身に付けたい方やより有利に就職したい方には、資格取得をおすすめします。
認定音楽療法士を取得するには
認定音楽療法士を取得するには下記のふたつのルートがあります。
- 学会が認定する学校(認定校)へ入学し、音楽療法について体系的に学ぶ
- 学会が主催する資格試験受験のための制度に参加する
詳しくは下記の記事を参考にしてください。
編集者より
介護・福祉業界で役立つ資格を紹介しました。
気になる資格はありましたか?
ぜひ、今後のキャリアアップや学びの機会として資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。