介護の資格

社会福祉業務のスペシャリスト「社会福祉士」とは?受験資格や試験の詳細など徹底解説

介護福祉士・精神保健福祉士と並んで、「福祉の三大国家資格」と称される社会福祉士
介護施設では「生活相談員」、医療機関では「医療ソーシャルワーカー」、児童相談所では「児童福祉司」など……施設ごとに職種名を変えながら、さまざまな場所で活躍できる資格です。
相談援助業務を通して、利用者さんが最適なサービスが受けられるように医師やケアマネなどの関係各所と連絡・調整を行う役割を担います。

この記事では、「社会福祉士」の資格を取得するための受験条件や試験の詳細、合格率のほか、資格取得後に活躍できる職場などの情報について詳しく紹介します。

地域包括センター取材_掘兼さん
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社会福祉士とは

社会福祉士は、社会福祉業務を行う専門職の国家資格。ソーシャルワーカーとも呼ばれます。
精神的・身体的・経済的な面でハンディキャップを抱えている人に対して、福祉に関する相談や助言、援助を行い、医師や関係機関との連絡・調整をする人のことを指します。
社会福祉士の資格を取得すると、社会福祉業務のスペシャリストとして、専門的な知識・技術を持った人と認められます。

社会福祉士の働く場所も対象も多岐にわたる

社会福祉士が支援の対象とするのは、日常生活を営むのに支障があって困っている人たち。
つまり社会福祉士は高齢者や障がい者に限らず、子どもや生活困窮者なども含めたさまざまな人の相談に応じることとなります。
そのため、社会福祉士の働く場所や職種も多岐にわたります。

呼ばれ方が変わる社会福祉士
  • 病院などの医療現場……医療ソーシャルワーカー
  • 介護施設……生活相談員
  • 児童相談所……児童福祉司
  • 教育現場……スクールソーシャルワーカー

社会福祉士は「名称独占」の資格

国家資格には医師や弁護士のように、資格がないとその業務ができない「業務独占」と、資格を持っている人だけが名乗れる「名称独占」の2種類があります。

社会福祉士は「名称独占」の仕事です。名乗るのには国家資格が必要ですが、それがなければ上記の仕事ができないということではありません。

ただし、少子高齢化が進む昨今で、社会福祉士への注目も高まってきました。
公益社団法人社会福祉士会によれば、「有資格者が今後増加すれば、将来的に実質的な業務独占状態になることが考えられる」そうです。

どうすれば取得できる?社会福祉士になるには

 
社会福祉士として資格を取得し、その名称で活動するためには、国家試験に合格して所定の登録を行うことが必要です。
受験までの流れは学歴や相談援助業務経験がどのくらいあるかによって変わりますが、全部で12通りものルートがあります。
ここではよりわかりやすくするため、多くの人に当てはまる5つのルートに絞って解説します。

ルート①:福祉系の大学・短大等で「指定科目」を履修している場合

ルート①は、福祉系の大学・短大等で「指定科目」を履修して卒業するパターン。
この場合、4年制大学であれば卒業後に国家試験への受験資格が得られます。短大の場合は通学していた年数に応じて、相談援助の実務経験を積む必要があります。

必要な実務経験の年数
  • 4年制大学:実務の必要なし
  • 3年制短大:要1年の相談援助実務
  • 2年制短大:要2年の相談援助実務

いずれにしても、福祉系大学・短大卒業生の場合は養成施設に通う必要がありません

指定科目の詳細はこちら

ルート②:福祉系の大学・短大等で基礎科目を履修している場合

ルート②は、福祉系の大学・短大等で「基礎科目」を履修して卒業するパターン。
この場合、4年制大学であれば、さらに短期養成施設等に6か月以上通って卒業することで受験資格を得られます。
短大の場合は卒業後に相談援助実務を経験したうえで、さらに短期養成施設等に通って卒業する必要があります。

必要な実務経験の年数
  • 4年制大学:実務の必要なし+6か月以上の短期養成施設等を卒業
  • 3年制短大:要1年の相談援助実務+6か月以上の短期養成施設等を卒業
  • 2年制短大:要2年の相談援助実務+6か月以上の短期養成施設等を卒業

基礎科目の詳細はこちら
短期養成施設の詳細はこちら

ルート③:社会福祉主事養成機関を卒業している場合

ルート③は、社会福祉主事養成機関を卒業しているパターン。
社会福祉主事養成機関では、「社会福祉主事任用資格」を取得するために、大学の通信教育等で社会福祉主事養成課程を学びます。

この場合は2年間の相談援助実務を経験し、短期養成施設等に6か月以上通って卒業することで社会福祉士国家試験の受験資格を得られます。
条件としてはルート②における「2年生短大で基礎科目を履修した」ケースと同じですね。

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短期養成施設の詳細はこちら

ルート④:一般の大学・短大等を卒業している場合

ルート④は、福祉系ではない一般の大学・短大等を卒業しているパターン。
この場合、4年制大学であれば、一般養成施設等に1年以上通って卒業することで受験資格を得られます。
短大であれば他のルートと同じく、相談援助業務の実務経験を得た上で、一般養成施設等を卒業する必要があります。

必要な実務経験
  • 4年制大学:実務の必要なし+1年以上の一般養成施設等を卒業
  • 3年制短大:要1年の相談援助実務+1年以上の一般養成施設等を卒業
  • 2年制短大:要2年の相談援助実務+1年以上の一般養成施設等を卒業

一般養成施設の詳細はこちら

ルート⑤:相談援助実務を4年間経験している場合

ルート⑤は、すでに働いていて相談援助実務を4年間経験しているパターン。
この場合、4年の実務経験の後に一般養成施設等に1年以上通って卒業することで受験資格を得られます。

相談援助実務経験とは、「児童」「高齢者」「障害者」「その他」の4つの分野で定められた施設・職種の経験を対象としています。
定められた施設・職種以外の経験は対象外となりますので、注意しましょう。

相談援助実務の詳細はこちら

カイゴン
カイゴン
そのほか、児童福祉司・身体障害者福祉司・査察指導員・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事の実務を4年間経験した人については、短期養成施設等に6か月以上通って卒業すれば受験資格を得られるゴン。
詳細はこちら
明美
明美
どのルートで受験資格を得たかによって、国家試験の受験申込に必要な提出書類が変わるよ。注意してね。

まるわかり!試験内容を詳細解説

 

社会福祉士国家試験は全19科目からなる筆記試験
全体で6割以上の正答率であること・かつ所定の18科目すべてで得点していることが合格の条件となります。

毎年、1年に一度の頻度で試験が行われます。試験日となるのは2月の日曜日です。
受験申込書の受付期間は9月上旬から10月上旬までの1ヵ月間となるので、忘れないよう注意しましょう。

カイゴン
カイゴン
ホームページまたは郵便はがきで受験の手引を請求し、期間中に郵送で申し込むゴン!
明美
明美
合格発表は3月中旬。合格者の受験番号や合格基準、正答がホームページに掲載され、同日に結果通知が郵送されるよ。

試験科目は全19科目と広範囲に及ぶ

試験は筆記のみで、下記の全19科目から出題されます。

科目数 科目名
1 人体の構造と機能及び疾病
2 心理学理論と心理的支援
3 社会理論と社会システム
4 現代社会と福祉
5 地域福祉の理論と方法
6 福祉行財政と福祉計画
7 社会保障
8 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
9 低所得者に対する支援と生活保護制度
10 保健医療サービス
11 権利擁護と成年後見制度
12 社会調査の基礎
13 相談援助の基盤と専門職
14 相談援助の理論と方法
15 福祉サービスの組織と経営
16 高齢者に対する支援と介護保険制度
17 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
18 就労支援サービス
19 更生保護制度

全科目から幅広く、150問が出題されます。全問5つの選択肢から選ぶマークシート式です。
試験日の午前に1~11の全11科目、午後には12~19の8科目が行われるのが通例です。

精神保健福祉士取得者は共通科目が免除に

精神保健福祉士の国家試験に合格し、登録を行なった方、または登録申請中の方は、精神保健福祉士との共通科目が免除されます。
対象の方は、受験申込時に別途書類を提出する必要がありますのでご注意ください。

免除される科目は上記した科目の中で、午前に行われる11科目です。

合格基準は6割の正答率と18科目で要得点

合格には2つの条件があります。

ひとつは合格基準点以上の得点を取得していること
合格基準点は、総得点の6割程度を基準として、問題の難易度で補正して決められます。2018年2月に行われた第30回社会福祉士国家試験の合格基準点は、99点(試験科目の一部免除者は43点)以上でした。

※試験は、1問1点の150点満点で行われます。精神保健福祉士の国家試験に合格し、登録を行なった方、または登録申請中の方は、67問の67点満点となります。

もうひとつは、合格基準点を満たした人のうち、以下の18科目(試験科目の一部免除者は⑫~⑱の7科目)全てに得点があることです。

  1. 人体の構造と機能及び疾病
  2. 心理学理論と心理的支援
  3. 社会理論と社会システム
  4. 現代社会と福祉
  5. 地域福祉の理論と方法
  6. 福祉行財政と福祉計画
  7. 社会保障
  8. 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
  9. 低所得者に対する支援と生活保護制度
  10. 保健医療サービス
  11. 権利擁護と成年後見制度
  12. 社会調査の基礎
  13. 相談援助の基盤と専門職
  14. 相談援助の理論と方法
  15. 福祉サービスの組織と経営
  16. 高齢者に対する支援と介護保険制度
  17. 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
  18. 就労支援サービス、更生保護制度

参考:厚生労働省「別紙 第30回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について」

受験手数料

 
受験手数料は、1万5440円です。
同日に行われる精神保健福祉士国家試験を同時に受験する場合には、2万8140円(内訳:社会福祉士受験料1万3980円、精神保健福祉士1万4160円)となります。

また、一部試験免除の方(精神保健福祉士国家試験に合格し、登録を行なった方、または登録申請中の方)は、1万3020円です。一部免除で受験するには、受験申込時に別途書類を提出する必要があります。

第29回(平成28年度)までの受験手数料は7540円でしたが、第30回(平成29年度)より、上記の金額に変更されています。
参考:ケアマネタイムス「介護福祉士国試の受験料、今年度から2,160円引き上げへ 社会福祉士は倍増」

試験地は全国24都道府県

試験地は、以下の24都道府県から選択します。

北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県

精神保健福祉士と同時に申し込む場合は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県の7都道府県から選ぶ必要があります。

最新情報!第30回(平成29年度)社会福祉士試験の結果は?

社会福祉士の試験合格率は例年30%以下で、福祉の資格のなかでも高難易度の試験。近年の試験動向も気になるところ。
そこで、2018年2月4日(日)に行われた、第30回社会福祉士国家試験の結果をみてみましょう。

第30回社会福祉士国家試験の結果
受験者数 4万3937名
合格者数 1万3288名
合格率 30.2%

これ以外にも、合格者の57.3%にあたる7618名が福祉系大学などの卒業者で、42.7%にあたる5670名が養成施設の卒業者という発表もありました。また、合格者の約半数(6326名)が30歳以下という結果でした。

参考:厚生労働省「第30回社会福祉士国家試験合格発表」

過去5回の合格率

過去5回の合格率は、以下の通りです。

社会福祉士国家試験 過去5回の合格率
第30回 30.2%
第29回 25.8%
第28回 26.2%
第27回 27.0%
第26回 27.5%

過去の合格率と比べると、第30回の合格率は比較的高い合格率であったことが分かります。

参考:厚生労働省「社会受験者・合格者の推移」

試験に合格したら忘れずに登録を!

 

社会福祉士国家試験に合格しただけでは社会福祉士を名乗れません。
社会福祉士資格を活かして働くためには、所定の登録を行う必要があります。

登録には、合格証書に同封されていた登録申請書などの必要書類を、公益財団法人社会福祉振興・試験センターに簡易書留で送って申請する必要があります。
登録手数料(4050円)を振り込んだ証書と、登録免許税(1万5000円)分の収入印紙も同封します。

書類を受理した試験センターは、審査を行ったうえで登録簿に登録し、登録証を交付します。

登録証が届くまでの期間は、登録が集中する3月から5月は長くて1ヵ月半程度、それ以外の期間は1ヵ月程度です。

参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター

どんなところで働ける?社会福祉士の活躍の場

社会福祉士は、身体的や精神的、経済的などの面でハンディキャップを抱える人やその家族からの相談を受けて、サポートする仕事です。
支援をする対象は高齢者、障害者、子どもや子育て中の方、生活困窮者など多岐にわたり、その活躍の場や職種もさまざまです。

具体的な活躍の場や職種には、以下のようなものがあります。

高齢者や障害者関連
職場 特別養護老人ホームなどの介護保険施設、通所介護施設、地域包括支援センター、障害者支援施設など
職種 ソーシャルワーカー、生活相談員、作業指導員など
子どもや子育て関連
職場 児童相談所、児童養護施設、障害児入所施設、母子生活支援施設、母子福祉センターなど
職種 児童福祉司、児童指導員、母子相談員、児童自立支援専門員など
生活困窮者関連
職場 都道府県の福祉事務所、行政機関など
職種 相談支援員、ケースワーカー、査察指導員など

社会福祉士の多くは相談員やケアマネとして活躍

公益財団法人社会福祉振興・試験センターによる、「平成 27 年度社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」を見てみると、社会福祉士の主な就労先は以下の通りです。

社会福祉士の主な就労先
高齢者福祉関係 43.7%
障害福祉関係 17.3%
医療関係 14.7%
地域福祉関係 7.4%
児童・母子福祉関係 4.8%
行政相談所 3.4%

職種では、約3分の1にあたる34.0%が、就労先で「相談員または指導員」として働いています。「介護支援専門員(ケアマネジャー)」として働いている人は13.8%、「施設長または管理者」が13.3%という結果でした。

社会福祉士の主な就労先

2014年に都道府県社会福祉会の会員を対象にした公益財団法人日本社会福祉士会の調査によると、社会福祉士の主体別の就労先は、以下の通りです。

社会福祉士の主体別の就労先
社会福祉施設 40.3%
医療機関 10.4%
地域包括支援センター 7.9%
社会福祉協議会 7.4%
行政機関 7.2%
その他 27.0%

参考文献・サイト

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