介護士として働き始めて3年以上。気付けば中堅と呼ばれる立場になり、後輩や部下と呼べる相手もできた……そんな介護士さんの中には、このような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
「介護福祉士の資格を取得して以降、お給料が変わらない……」
「資格を取る以外で、キャリアアップってできないものなの?」
資格取得という明確なゴールがあった新人の頃に比べると、中堅介護士さんのキャリアアップの方法はまさしく「人ぞれぞれ」。
介護業界で長く働いていくために資格を取得したものの、「その後どうやってキャリアを展開させていけばいいのかわからない!」という方は少なくありません。
そこで、介護業界でのキャリアアップ方法【上級編】として、中堅介護士さんにおすすめの職種にフォーカスしたキャリアアップの方法を紹介します。
新人介護士さん向けのキャリアアップ記事はこちら
目次
一目でわかる!介護業界におけるキャリアアップ丸わかりマップ
こちらの図は、無資格で介護の仕事を始めた方がどのようにキャリアアップしていくか、そのおおまかな道のりを表したものです。
今回の記事では上の部分、介護福祉士の資格を取得した後について注目します。
介護福祉士になると、主に「ケアマネジャー」「看護やリハビリ系の専門職」「施設の管理者」といった職種へのキャリアアップが可能になります。
直接的な身体介助とは違った側面から利用者さんを支援するもよし、利用者さんの心身の機能回復に携わっていくもよし、介護施設そのものを取り仕切って過ごしやすい環境を作り出すもよし。
公的資格を持っていることによって、目指せる方向性が大きく広がるのです。
3パターンあるキャリアアップの方法について、順番に見て行きましょう。
相談員業務で「ケアマネジャー」を目指す!
介護業界には利用者さんに直接介護を行うスタッフだけでなく、生活相談員やサービス提供責任者といった、「相談員」としての業務を担当する人がいます。
利用者さんが介護施設を利用する際に入所や退所の手続きを行ったり、介護計画書やアセスメントの書類を作成したり、利用者さんやご家族からの相談に応じたりするのが主な内容。
相談員もサービス提供責任者も、ケアマネジャーや関係各所から連絡を受ける窓口のような役割を担います。
この項では、相談員業務の実務経験を経てケアマネジャーにキャリアアップするケースをモデルに、その過程でどのような仕事に挑戦できるのかをひとつずつ紹介していきます。
介護施設で生活相談員になる
生活相談員は、介護施設の利用者さんの受け入れに必要な窓口業務(入所や退所の説明、契約手続き、関連機関との連絡調整など)を担う職種です。ソーシャルワーカーとも呼ばれています。
介護老人保健施設(老健)では「支援相談員」という名称に変わりますが、業務内容は同じです。
生活相談員になる要件として、国は「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のいずれかの保有を挙げています。
しかし、上記の資格を持っていない人でも、自治体が独自に定めた要件を満たせば、その地域でのみ生活相談員として働けることがあります。
以下は自治体が条件付きで認めている要件の一例です。
- ケアマネジャーの資格を有する
- 介護福祉士の資格を有する
- 特養等で、ケアプラン作成に関わる実務経験が1年以上ある
- 老人福祉施設の施設長を経験したことがある
- 一定期間の介護食経験を有する
地域によって要件が異なることもあるため、詳細情報については希望する地域の自治体に問い合わせる必要があります。
訪問介護事業所でサービス提供責任者になる
サービス提供責任者(通称:サ責)は、訪問介護事業所などでケアマネジャーやホームヘルパーと連携をとり、適切な介護サービスが提供されるようにコーディネートする職種です。
ヘルパーの手配・調整やヘルパーの指導・教育を行うほか、計画書やアセスメントの書類を作成したり、利用者さんやご家族からの相談に応じたりします。
- 介護福祉士の資格を有する
- 実務者研修を修了している
- 介護職員初任者研修を修了し、3年の実務経験を有する
ケアマネジャー(介護支援専門員)になる
生活相談員やサービス提供責任者といった現場の相談員業務を経て、さらに相談員業務を極めたい方が目指すのがケアマネジャー。
介護保険制度に基づいてケアマネジメントを行い、要介護者が適切な介護サービスを受けられるようサポートする介護の専門職です。
ケアマネジャーの主な仕事は、利用者や家族からの相談に応じたケアプランを作成すること。
支援の必要な高齢者やその家族から当人の心身の状況を聞き取りし、それに応じた最適な介護サービスが受けられるよう、総合的なマネジメントを行います。
ケアマネジャーになるためには、ケアマネジャー試験に合格した上で実務研修を修了する必要があります。
受験資格は以下の通りです。いずれかを満たす必要があります。
- 国家資格(※1)を保有し、その資格にもとづく業務経験が5年以上ある
- 相談員業務(※2)に従事した期間が5年以上ある
(※注1)医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士
(※注2)生活相談員、支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員
相談員業務でのキャリアアップ、気になる給与額は?
厚生労働省が発表している「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」によれば、介護福祉士と相談員業務を行う職種との平均給与額の差は以下のようになっています。
介護福祉士の平均月給が313,920円であるのに対し、生活相談員は321,080円、ケアマネジャーは350,320円と、いずれもより好待遇となっていることがわかります。
サービス提供責任者のみ平成29年度のデータを参照しているため、数字が小さくなっていますが、同年の生活相談員の平均給与は244,062円でした。
このことから、平成30年度におけるサービス提供責任者の給与も、おそらく生活相談員と遜色ない額であることが予想できます。
看護やリハビリなどの「他職種へ転身」する!
介護業界には介護を行うスタッフ以外にも、看護やリハビリ業務を行うスタッフがいます。この項では、介護経験を活かして看護師や作業療法士・理学療法士・言語聴覚士などに転身するケースをモデルに、それぞれの仕事を紹介します。
看護師になる
専門的な知識・技術に基づいて患者さんのケアや診療の介助をする役割を持つ看護師。
介護士の立場では、病院や介護老人保健施設で関わる機会の多い職種です。
介護士のときには限定的にしかできなかった医療行為が広く行えるようになるほか、一般的に収入もアップすることが予想されるため、介護士から看護師へ転身する人も増えています。
2021年から介護福祉士は看護師資格の取得が容易に
介護士から看護師になるには、専門学校もしくは看護大学に入学し、所定の科目を終了後、看護師国家試験に合格する必要があります。
現在は「介護福祉士の資格がある場合」に「従来より約1年短いカリキュラムで資格を取得できる」という新制度が検討されており、早ければ2021年度から導入されるとされています。
今後はよりいっそう、介護士から看護師を目指しやすくなるでしょう。
参考:シルバー産業新聞「医療福祉資格の共通課程検討へ 21年度の実施目指す」
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になる
利用者さんの機能回復訓練を担当するリハビリ職も、介護の現場では馴染み深い専門職ですよね。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士とひとくくりにされることが多い職種ですが、担当するリハビリテーションの領域はそれぞれ異なります。
転身を考える際には、この違いもしっかりおさらいしておきましょう。
資格ごとの担当領域 | |
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理学療法士(PT) | 立つ・歩くといった基本動作の回復のためのリハビリを行う |
作業療法士(OT) | 着替える・入浴するといった日常生活に必要な動作のリハビリを行う |
言語聴覚士(ST) | ことばによるコミュニケーションや嚥下機能のリハビリを行う |
リハビリ職は基本「夜勤なし」
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に転職する大きなメリットとしては、基本的に夜勤がないことが挙げられるのではないでしょうか。
正規職員の介護士や看護師の場合、夜勤を担当しなければならない場面が多々あります。しかし心身の不調や家庭の事情から夜勤ができなくなり、泣く泣く介護職から離れることになる方も少なくありません。
しかし、日勤帯の勤務がメインであるリハビリ職であれば、夜勤をせずに介護業界で働き続けることができます。
収入も介護士よりアップするケースが多い上、これまでは行うことのできなかったリハビリ分野にも挑戦できるため、とても魅力的な転身先であると言えるでしょう。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になるには、大学や専門学校などの養成校で養成課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
医療系専門職の平均月給はいくらになるの?
介護士よりも給与アップが見込めるとされている、看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった医療系専門職。
実際にどのくらいの差ができるのか見てみましょう。
厚生労働省が発表している「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」によれば、介護職員と医療系専門職の平均月給は以下のようになっています。
介護現場の経験を活かして看護やリハビリといった他職種で活躍したい方は、このキャリアアップ方法を目指してみてはいかがでしょうか。
現場でのリーダー経験を経て「管理者」を目指す!
他職種への転身以外にも、介護現場からキャリアアップする方法があります。
それは、施設の管理者となり、施設の運営サイドに昇進する方法です。
管理者は事業所全体の責任者、施設のトップとなる役職です。勤めている事業所の形態によってはホーム長や施設長と呼ばれることもあります。
主な仕事は、自身の勤める施設のスタッフや業務の実施状況などを把握・管理し、運営に必要な指示を出すこと。
つまり「介護業務のマネジメント」「人材のマネジメント」「収支のマネジメント」を行い、施設全体を管理することであると言えます。
待遇も施設によりけりですが、介護労働安定センターが発表している「平成29年度 介護労働実態調査結果の結果」によれば、管理者の平均月給は356,679円。
同年の介護福祉士の月給が304,630円であることを考えれば、給与額がかなり向上していることがわかります。
まとめ
今回の記事では、介護業界で活躍する職種に特化したキャリアアップ方法を紹介しました。
介護福祉士の資格を取った後も、介護業界で長く活躍していくための選択肢はさまざまです。ぜひご自身の納得のできる道を選んでみてくださいね!
また、以下の記事では、現場で管理者を目指すまでのステップアップについてより詳しく解説しています。
ぜひこちらも参考になさってくださいね!