インタビュー

「恵まれた環境のおかげ」マスコミ業界から施設長へ!現役施設長に聞いた、キャリアアップの理由と特養に向く人

東京都港区白金台にある「港区立特別養護老人ホーム白金の森」。
前回の記事では、白金の森の施設や取組みについて紹介しました。

充実の研修制度や意欲的な取組みが魅力的~特別養護老人ホーム白金の森~東京の都心部を形成するオシャレな街、東京都港区。その港区白金台にあるのが社会福祉法人奉優会が運営する「港区立特別養護老人ホーム白金の森」...

この記事では白金の森の施設長である鈴木あきらこさんに特別養護老人ホーム(以下、特養)の特徴や魅力、施設長としてのやりがいなどをお伺いしました!

「介護ってスルメみたい」介護課長が語る、介護への思い東京都港区白金台にある特別養護老人ホーム「白金の森」。 これまでの記事では、白金の森の施設について、そして施設長である鈴木さんに特養の...

マスコミから介護へ!異業種からでも順調なキャリアを積めたのは、恵まれた環境のおかげ

___鈴木施設長の経歴を教えてください。

鈴木あきらこさん(以下、鈴木):実は、介護業界に入る前は畑違いの仕事をしていました。
テレビ関係のマスコミの仕事をしていたのですが、出産を期にテレビ関係の仕事は退職。その後、父の大病をきっかけに、ホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)・ホームヘルパー1級(現・実務者研修)の資格を取得し、介護業界へと足を踏み入れました。

最初は、訪問介護のヘルパーとしてスタート。しかし、思いのほか身体介護が少なく、生活援助ばかりだったので、身体介護スキルや専門知識をもっと深めたいという思いから在宅介護サービスから従来型特養に転職しました。その特養は、可能な限り「個別ケア」を実施しており、斬新な取り組みを行っていました。
たとえば、起床や食事の時間。タイムスケジュールに沿った対応ではなく、ご利用者が起きたいときに起き、食べたいときに食べられる環境でした。また、リスクマネジメントにおいては本人の歩きたいという意志を尊重し、ヘルメットやプロテクターを装着して歩いてもらうなど、当時は姿が異様にも映りましたが、高齢者福祉サービスの本質を直に学ばせてもらえた貴重な経験でした。
その後、現在の職場である奉優会に転職しました。

奉優会では介護スタッフとして特別養護老人ホーム等々力の家に入職し、2年半後に同施設で生活相談員に。その後、生活相談員として白金の森の立ち上げスタッフに加わり、約半年後に主任相談員、その1ヵ月後に課長に就任、6年後の2017年より施設長として勤務しています。

___異業種出身でも順調なキャリアを積んでいらっしゃるのですね!

鈴木:客観的にみると、順調なキャリアのように思えるかもしれませんが、全てが私の実力ではなくたまたまタイミングや運などに恵まれた環境にあったおかげだと思っています。

恵まれたもののひとつは、上司です。当時の上司からは高齢者福祉サービスに関する色々なノウハウやアドバイスをいただき、多くを学び吸収することができました。後に施設長になる下地はその方から学びえた部分が大きいと思います。
さらに、法人にも恵まれました。奉優会のキャリアパスは非常にしっかりしており、私のような異業種出身者でも役職に就くチャンスがあります。奉優会は役割等級制度を取り入れており、昇格に必要な行動やスキルが明確に示されているので、どうなりたいか自らで考えたキャリアに向かって努力しやすいです。

このような恵まれた環境だったからこそ、今の私があると思います。

日々のケアから看取りまで!身体介護を中心に介護の専門性が高められる特養

___特養の魅力とはなんでしょうか?

鈴木:特養の魅力は大きく三つ。

一つめは、24時間、365日その方の生活に関われること
特養は毎日の生活から、その方を知る機会がたくさんあります。共に過ごす時間、その積み重ねが、ご利用者と職員との深い信頼関係に繋がっていきます。

二つめは、介護全般の専門性を高められること
特養の入所基準には、原則要介護3以上の方という決まりがあり、他の施設形態と比べても、その基準となる要介護度は高いです。現に白金の森も平均要介護度は4.3と高くご利用者の重度化が進んでいます。介護スキルはもちろんのこと高品質のケアを目的としたさまざまな委員会や研修を定期的に実施しており、職員は介護に関連した深い知識を学ぶことができます。

三つめは、看取りケアです。
ご利用者の長い人生の最期に寄り添ったケアができるというのはとても大きな経験です。知識だけでなく命の尊さやブリーフケアなど色々なことを考えさせられる機会になるでしょう。
ご家族に「(看取ってもらえたのが)白金の森でよかった」と言ってもらえたときには、職員にとって最上の喜びになります。

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「観察力」「判断力」「分析力」がある人は、特養に向いている

___特養に向いている人とは、どんな人だと思いますか?

鈴木:まず、大前提として「高齢者が好きな人」。
そのうえで、「観察力」「分析力」「判断力」がある人です。
私たちは人間ですので、さまざまな性格や趣味嗜好の人がいます。ご利用者も「高齢者だから」といってみんな同じではなく、十人十色。さまざまな人柄や特性、病気の症状などがあり、予測できないことが日々起こります。
そのなかで、「この病気だから」「高齢だから」といった固定概念にしばられずに、ご利用者個人をきちんと「観察」して日々の変化に気づき、冷静に「分析」できる。そして、その変化にどう対応すべきかを「判断」できる人が、特養で自己の介在価値を見出せるのではないでしょうか。

特養はご利用者にとって、日々の生活であり日常です。日常の変化って、小さすぎて気づきづらいことも多いですよね。どんな些細なことでもそこに気づける人がプロフェッショナルだと私は思います。

___小さなことも気づけることが大切なんですね。

鈴木:そうですね。後、「謙虚さ」も大切だと思います。
素直にその人の意見を聞く姿勢や素直にごめんなさいと言うことは、簡単なようでできない人も多いです。その謙虚さにプラスして、否定的ではなく建設的な考えをもつことも大事ですね。
そのような態度・考えは、良い人間関係を築くポイントのひとつでもあるように思います。

このような人は、特養に限らず、どの介護施設でも活躍のフィールドを広げられるのではないでしょうか。

話しかけやすい雰囲気や良い職場環境をつくるのも、施設長の役割

___施設長として、職員の方とはどのように向き合っていますか?

鈴木:一つめは「極力みんなと関わる」ことです。
私は外出する機会も多いのですが、施設にいるときはできるだけフロアに行くようにしています。
フロアに行くと、施設長という役職もあってか、なかには緊張する職員もいるようです。そんなオーラを出しているつもりはないんですけれど……(笑)
リーダーなどの役職者は、会議などで私と接する機会も多く、コミュニケーションがきちんととれていると感じています。しかし、他の一般職員に関してはコミュニケーションの機会が少なく、「話しかけづらい」といった声も聞くので気をつけるように心掛けています。
フロアに行ったり、職員の飲み会やイベントに誘われたときはできるだけ参加したりして、上司部下に関係なく接することを努めています。
話しかけやすい雰囲気や良い職場環境をつくるのも、施設長の役割だと思っていますので、そういう環境はとても大切にしています。

二つめは、「仕事は基本的に部下に任せる」ことです。
私も当時の上司からそのようにしてもらったように、人は権限と責任が与えられれば創意工夫を働かせその信頼に応え、成果を出そうと努力します。
もちろん任せっきりではなく、見守りつつときに報告を求めて、問題がある場合は助言・指示を出します。
「環境が人をつくる」という言葉がありますが、そのような環境が人を成長させるのではないかと感じます。

白金の森は本当に気持ちの優しい能力の高い職員が数多く在籍しています。
職員には日頃からとても感謝しており、これからも「部下あっての自分」という気持ちを常に持ちながら日々向き合っていきたいと思います。

職員の成果が地域の人に認められ、評価されたとき、やりがいを感じる

___施設長としてのやりがいとは、どのようなものでしょうか?

鈴木:「部下のがんばりが社内外に認められ評価されたとき」です。
「みんなで(港)笑顔deごはん」の取組み(前回の記事参照)は、まさしくそうです。私たちが日々取り組んでいる成果を地域の方々に評価いただいた結果、評判という報酬がついてくる。そのときが、施設長のやりがいを感じる瞬間でもあり、醍醐味です。

___地域や外部の人に評価してもらえるとうれしいですよね。

鈴木:うれしいですね。
とくに、私たち福祉施設・事業所は、本当に地域の方々に支えられています。もちろん職員の努力もありますが、地域の方の支えがあるから、ご利用者が安心・安全・穏やかな暮らしが送られています。
これからも施設長として、職員といっしょに私たちの持っている知識・ノウハウを活用して地域貢献に努めていきます。

編集後記

白金の森の施設長、鈴木あきらこさんにお話を伺いました。
バリバリのキャリアウーマンのような雰囲気のある鈴木施設長ですが、話してみるととてもユーモアのあるコミュニケーション力の高い女性という印象を受けました。
どんな質問にも熱心に考えて話してくださり、介護や施設、職員に対して熱い思いをもっていることが伝わりました。
上司との関係でお悩みの方は、鈴木施設長のような考えの上司がいる職場を探してみてもいいかもしれません。

次回は、白金の森で介護課長を務める西川さんに伺った、特養で働く介護職員としての思いを紹介します。ぜひお楽しみに!

※この取材記事の内容は、2018年12月に行った取材に基づき作成しています。

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