インタビュー

充実の研修制度や意欲的な取組みが魅力的~特別養護老人ホーム白金の森~

東京の都心部を形成するオシャレな街、東京都港区。その港区白金台にあるのが社会福祉法人奉優会が運営する「港区立特別養護老人ホーム白金の森」です。

白金の森では、「24時間の看護体制」を整えていたり、ご利用者と子どもが、施設で一緒に食事をする「みんなと(港)笑顔deご飯」の取組みをしていたりと、ほかの特別養護老人ホーム(以下、特養)と異なる特徴があります。

そのほか、法人全体で推進している「人材育成」や「ダイバーシティ(多様な人材採用)」にも積極的に取り組んでいます。

そんな多くの特徴ある「白金の森」について、施設長の鈴木あきらこさんにお話を伺いました!

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従来型の特別養護老人ホーム「白金の森」とは

はじめに、港区立特別養護老人ホーム白金の森の概要について紹介します。

白金の森は、港区から委託された社会福祉法人奉優会が運営しています。開設は1988年ですが、奉優会が指定管理者となったのは2011年。
建物の1階には、同法人が運営するデイサービスと地域包括支援センターが併設されており、2階と3階が特養、ショートステイの入居スペースになっています。

▲施設の案内図。3階に比べ、2階の方が医療支援の必要な利用者が多い

白金の森は従来型施設のため、基本の部屋タイプは4床1部屋の「多床室」です。

▲部屋はカーテンによって仕切られており、木製の家具やふすまがあるため、あたたかな印象を受ける

利用定員はショートステイ含めて98名、平均介護度は4.2。介護職員はパート職員も含めて約35名です。
職員は、介護職以外にも、看護師や調理師、事務職員、清掃員などたくさんの人が働いてます。

白金の森の各階には、ご利用者のみなさんが集まるリビングスペースがあります。

▲カラオケやおしゃべりなど、ほかの利用者とコミュニケーションがとれるリビングスペース

各階には、大型の加湿器があります。乾燥や風邪などを予防し、ご利用者のみなさんが快適に過ごせるように環境管理を徹底して行っています。

▲大型の加湿器。感染症が流行る時期には、来客者に消毒とマスクをしてもらうなど、予防を徹底している

忙しいスタッフの助けとなるアイテムが、通信・通話用機器の「インカム」。インカムを導入している介護施設は増えてきており、白金の森も導入しています。スタッフを探すときやご利用者の状況を共有するときなどに役立ちます。

▲インカムを付けている介護スタッフ。広い施設内でもすぐに連絡がとれる

施設内には、離れたところにいるご利用者の様子を見守るために「安心カメラ」を設置しています。カメラは、食堂とエレベーター前、廊下2ヵ所の計4ヵ所。

緊急時があった際は何が起きたのかカメラで詳細が確認できるため、再発予防につなげています。
また、事故が起こりそうなところがないか、いつもと様子が異なるご利用者がいないかなど、事前に把握することにも役立てています。

▲実際のカメラ映像。死角になりやすいところに取り付け、事前と事後の対策につなげている
▲1階と3階にある水槽。利用者だけでなくスタッフや来客者など多くの人の心を癒やしている

スタッフにも利用者にも地域にもメリットあり!白金の森の4つの特徴とは

ここからは、鈴木施設長に白金の森の取組みについて伺いしました!

___白金の森は、どのような特徴がありますか?

白金の森には、主に下記の4つの特徴があります。

  1. スタッフ育成・研修内容の充実
  2. 24時間の看護体制
  3. ダイバーシティな人材の活躍
  4. 地域公益活動の取組み

「正のスパイラル」を生む充実の新人教育

___1つめから順に、お話を聞かせてください。

1つめの特徴は、スタッフ育成・研修内容が充実していること
私たちが行っている介護事業は、一種のサービス業です。サービス業の会社では、顧客満足度に注目しがちですが、実は「スタッフの満足度」を上げることも大事だと考えています。

そこで一番重要なのがスタッフの育成・研修です。
白金の森では先輩職員が時間をかけて丁寧に後輩職員を教育していきます。後輩職員は時間をかけて知識を身につけることで徐々に自信がつき、自信がやりがいにつながります。

やりがいを持った職員が集まると職場の風土とチームワークが良くなります。チームワークの良い職場は、円滑なコミュニケーションが図れ、情報共有が進みます。たくさんの情報を得ることは、視野の拡大につながり、一人ひとりのフォローする意識が高まります。
結果的にサービスの質が向上し、顧客満足度も上がる「正のスパイラル」が生まれるのです。

___人材育成は大事ですね!実際にどんな教育をしているのですか?

具体的な取組みのひとつとしては、充実した「新卒研修」があげられます。
新卒職員が白金の森に入職したら、まず3ヵ月の研修を行います。
最初の2ヵ月は座学と実習を中心に、排泄・入浴・食事介助などの基礎知識を学びます。座学で使用する教材は、100ページを超える奉優会オリジナルの冊子「高齢者福祉施設における介護サービスマニュアル」。

▲100ページを超える「高齢者福祉施設における介護サービスマニュアル」

介護のすべてを網羅したこの1冊は、新入職員全員に配布されます。イチから学べ、忘れたときもわかりやすく復習できる優れものです。

▲介護について、一つひとつ丁寧にわかりやすく記載されている

3ヵ月めからは、先輩職員とマンツーマンで介護スキルを学びます。先輩職員は、介護職員のための公的な評価制度「キャリア段位制度」のチェックシートを用いながら、新卒職員の習熟度を確認します。キャリア段位制度のチェックシートをもとに、OJT担当の先輩が合格と判断したとき、晴れて一人立ちとなります。

実際に研修を受けた新卒職員からは、「施設に配属される前に、業務に対する興味や心構えにつながった」などの声があがっています。先輩職員からは「自分の業務の振り返りや新たな気づきを得られた」との声があがり、研修は新卒職員だけでなく先輩職員にとっても実りのあるものになっています。

一見、大変な労力を費やすようですが、丁寧な教育は人材の定着にもつながります。
高いスキルを得て、自信を持って長く働いてもらえれば、施設長としてうれしい限りです。

夜勤でも介護職が安心して働ける!24時間の看護体制

2つめの特徴は、24時間の看護体制を整えていること
特養では、看護師の夜間の配置義務はありません。そのため、夜は看護師不在の特養が多いと思いますが、白金の森では夜間も看護師が勤務しています。

看護師が24時間体制で勤務することのメリットは、医療面において看護師のもとで適切な判断ができることです。看護師不在で起こるご利用者の異常事態の発見や対応が遅れることを減らすことができます
また、夜間でも看護師から直接関係各所へ情報提供できるため、誤った情報が流れることも防げます
なにより夜勤時の介護職員、そしてご利用者にとって安心できる環境が提供できます

高齢者や障がい者、外国人など多様な人材を採用!ダイバーシティの取組み

3つめの特徴は、多様な人材を積極的に活用するダイバーシティの取組みを行っていること
ダイバーシティの取組みは法人として推進していることでもあります。
白金の森では、年齢の高い方でも積極的に採用しています。白金の森の最年長スタッフは地域に住んでいる85歳です。ハンドサポートといって見守りやお茶だしなどの業務を担っています。
そのほか、障がい者雇用や留学生・EPA(※)の受け入れなども行っています。
ダイバーシティとしてただ形式的に採用しているのではなく、それぞれ採用の目的があります

▲職員紹介の掲示板。さまざまな職種と雇用形態の職員、全ての名前と写真が掲示されている

高齢者雇用では定年後も働くことで自信や喜びを感じてもらい、生きがいにつなげてもらえたら多くのアクティブシニアがいきいきと生活できるのではないかと考えています。
障がい者雇用ではスタッフに役割を与えるため、責任をもって仕事をすることができます。仕事を通じて、人の役に立つ喜びを感じてもらえる機会を提供できたらと思います。
白金の森に在籍しているEPAや留学生などの外国人は、現在計11名。
私達は外国人労働者がいずれ母国に帰ったときに白金の森で学んだ介護スキルを母国で役立ててほしいと思って、しっかりと教育しています。

ただ「人が足りないから」という理由ではなく、一人ひとりの未来を見据えたうえで多様な人材を採用し、どんな人も活躍できる場所を今後も提供していきたいと考えています。

※EPA…日尼経済連携協定(日尼EPA)は、インドネシア・フィリピン・ベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者を受け入れる制度。

白金の森の資源を活用して地域に貢献!利用者と子どもがいっしょに食事する地域公益活動「みんなと(港)笑顔deご飯」

___「みんなと(港)笑顔deご飯」という取組みはどのようなものでしょうか?

4つめの特徴である「みんなと(港)笑顔deご飯」は、ご利用者と子ども達が白金の森でいっしょにご飯を食べる取組みです。2018年2月にスタートし、週1回を目安に定期的に開催しています。

われわれ社会福祉法人は公益と非営利の事業団体です。地域福祉の担い手として、社会福祉事業にとどまらず、地域の課題解決のために新たな福祉サービスをつくりだすことが求められています。
そこで、白金の森の資源(人や建物など)を活用して「地域にどんな貢献ができるだろう」と考えたときに、「みんなと(港)笑顔deご飯」が誕生しました。

「みんなと(港)笑顔deご飯」が生まれた背景には、共働きや一人親などの多様化する家族形態や、どんどんと希薄化する地域の人との関わりなど、現代社会が抱える問題があります。その問題解決の一助になるよう取り組んでいます。

「みんなと(港)笑顔deご飯」でご利用者といっしょに食事をする子どもは、近隣の学童クラブを利用している子ども達です。
食事を無償で提供する代わりに、子ども達にはおしぼりを配ってもらったり、ご利用者にエプロンをかけてもらったりして、お手伝いをしてもらっています。

___素敵な取組みですね!実際にどんな成果が出ていますか?

ご利用者の食事量が増えました!

普段ご飯を残す方が、「みんなと(港)笑顔deご飯」のときはほぼ完食されます。子どもと食事をとることを、ご利用者はとても楽しみにしているようです。
食事中はご利用者の笑顔が絶えません。
食欲が増しただけでなく、情緒の安定や生活の意欲にもつながっていると感じますね。

また、子ども達にとっても人生経験豊富なご利用者からさまざまな知識など社会性を学ぶ機会にもなります。何より高齢者福祉を知るきっかけとなります。「みんなと(港)笑顔deご飯」をきっかけに、子ども達が介護や福祉に興味をもってくれたらうれしいですね。

この取組みは、外部の方からも高く評価されています。
今後も継続していきたい取組みのひとつです。

編集後記

社会福祉法人奉優会が運営する港区立特別養護老人ホーム白金の森の施設長・鈴木あきらこさんにお話を伺いました。
木製の家具の温かみや日当たりのよさなど、とても居心地の良い空間が提供されている白金の森。モノだけでなく、充実した研修制度やスタッフの人間関係のよさも環境やサービスの質に良い影響を与えているのではないかと感じました。

白金の森が気になる方は、ぜひ見学しに行ってみてはいかがでしょうか。
白金の森のホームページはこちら

特養は、介護施設のなかでも古くからある施設形態のため、働いた経験のある介護職の方も多いでしょう。しかし、なかには「身体介護が多い」「スタッフが多くて、人間関係が悪そう」などを理由に、特養を選ばなかった人もいるのではないでしょうか。特養といっても、施設によって特色や規模、人間関係などもさまざま。
自分にあった職場を見つけるために、「どんな特徴があるのか」という施設への理解を深めてみるのもいいかもしれません。

次回の記事では、鈴木さんに施設長としてのお考えや特養の魅力などをじっくり伺いました。ぜひ、お楽しみに!

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※この取材記事の内容は、2018年12月に行った取材に基づき作成しています。

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