後期高齢者が年々増加の一途を辿る現代日本。要介護者の増加に伴い、介護保険サービスの需要もどんどん高まってきています。
そんな介護サービスの利用を適切かつ円滑に提供する要となるのが、ケアプランを作成する「ケアマネジャー」。利用者とその家族の人生に大きく関わる、介護支援のエキスパートです。
今回はケアマネジャーの仕事内容や資格取得の方法、働く魅力などについてご紹介します!
目次
ケアマネジャーとは
ケアマネジャーとは、介護保険制度に基づいてケアマネジメントを行い、要介護者が適切な介護サービスを受けられるようサポートする介護の専門職を指します。
正式名称は「介護支援専門員」ですが、ケアマネジャーもしくはケアマネといった呼び方が一般的です。
国家資格ではありませんが各都道府県が認定する公的資格であり、信頼性が高く、キャリアアップを目指す介護職の方にも人気の職種となっています。
サービス利用者やその家族がどのような課題を抱えているのか? そのためにどのようなサービスが必要なのか? を把握してケアプランを作成し、利用者が適切な支援を受けられるように自治体や各サービス事業者との連絡調整を行います。
ケアマネの主な仕事は「ケアプラン」を作成し利用者と事業者の橋渡しすること
ケアマネジャーの主な仕事は、利用者や家族からの相談に応じたケアプランを作成すること。
支援の必要な高齢者やその家族から当人の心身の状況を聞き取りし、それに応じた最適な介護サービスが受けられるよう、総合的なマネジメントを行います。
介護が必要な人とサービス事業者を適切をつなぐ橋渡しの役割を担っている職種です。
ケアプランは被介護者が介護サービスを利用する際に必要な、「介護サービスの利用計画書」のことを指します。
本人が自立した生活をする上での希望や要望、できるようになりたいことや改善したいことなどの目標を設定し、それを達成するために必要な介護サービスの内容などを記載します。
具体的な仕事内容は以下のようなものが挙げられます。
- 「要介護認定」に関する業務
-
・申請の代行
・認定調査の受託(市町村から委託を受け、認定を受ける利用者の元へ訪問調査に行く)
- 「介護支援サービス」に関する業務
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・課題分析(アセスメント)
・介護サービス計画(ケアプラン)の作成
・サービスの仲介や実施管理、サービス担当者会議の主催
・サービス提供状況の継続的な把握および評価
- 「給付管理」に関する業務
-
・支給額限度額の確認と利用者負担額の計算
・サービス利用票、サービス提供票の作成
・給付管理票の作成と提出
ケアプラン作成の流れ
担当する利用者が決まったら、いよいよその人だけのケアプランを作成します。
ケアプランがどのようにできていくのか見てみましょう。
1. インテーク
利用者からの依頼を受けたら、まずケアマネジャーは被介護者とそのご家族とインテーク(面談)を行います。本人が入院中の場合は病院内で行うこともあります。
インテークは、利用者との信頼関係を築く上で欠かせない大切なステップです。
2. アセスメント
居宅介護支援のケアプランを組み立てる前に、アセスメント(=被介護者の生活環境や状態の把握を目的として情報収集)を行います。
主治医や行政から利用者にかかわる医療や要介護認定の情報を入手して、その人にとっての課題が何かを把握します。
3. ケアプラン作成
アセスメントを基に、本人の意向を明らかにしたうえで課題分析や目標設定、そのための具体的な支援を考え、サービス計画の原案を作成します。
ケアマネジャーはそれを利用者に確認してもらって、なぜこのようなプランを立てたのかきちんと説明するようにします。
4. サービス調整・サービス担当者会議
実際の支援を手掛けるサービス事業者を選定し、連絡・調整を行います。
事業者が決定したらサービス担当者会議を開催し、利用者の移行や課題をチームで共有します。
5. 確定プランの交付
完成したケアプランについて、利用者から最終的な同意を得ます。
サービス事業者との契約や重要事項については文書を使って説明し、利用者からの疑問には都度対処することが必要です。
その後は作成されたケアプランに沿って、随時介護サービスの利用が開始されます。
6. モニタリング
サービス開始後は定期的にモニタリング訪問を行います。特に要介護1以上の場合は最低でも月に1回以上様子を見に行くようにします。
状態変化や必要に応じて、臨機応変にケアプランを更新していきます。
どんなところで活躍できるの?
ケアマネジャーの活躍の場はさまざまですが、勤める場所によって「居宅ケアマネジャー」になるか「施設ケアマネジャー」になるかが変わります。
仕事の主な内容や流れはどちらも同じですが、勤務スタイルが大きく異なる場合もありますので、自分がどのような働き方をしたいのかしっかり考えてから選びましょう。
居宅ケアマネジャーの場合
社会福祉法人、医療法人、在宅介護支援センターといった「居宅介護支援事業所」に勤める場合、居宅ケアマネジャーと呼ばれるようになります。
要介護認定を受けた利用者とその家族のうち、在宅で生活する人を対象としてケアプランを作成します。ケアマネジメント業務のみに集中して働けるのが特徴です。
施設ケアマネジャーの場合
特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設といった「介護保険施設」に勤める場合、施設ケアマネジャーと呼ばれるようになります。
要介護認定を受けて施設を利用している入居者を対象にケアプランを作成します。こちらは勤め先の人員数によって、人手不足を補うために介護スタッフとして介護業務を行う場合もるので、ケアマネジャーとしての業務だけでなく介護業務も行いたい! という人に向いているでしょう。
ケアマネジャーになるには?
ケアマネジャーになるためには、受験資格を満たした上で「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験・合格し、その後「実務研修」を修了して介護支援専門員証の交付を受ける必要があります。
資格、および実務要件となる保健医療系および福祉系の国家資格には、主に以下のものが挙げられます。
- 医師や看護師や薬剤師といった医療職
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ職
- 管理栄養士、精神保健福祉士といった福祉職
- 介護福祉士
介護職であれば、「介護の三福祉士」のひとつ介護福祉士が該当し、有資格者として5年以上の実務経験が必要になります。
次に試験と研修について詳しく見てみましょう。
2018年の合格率は10.1%!高難易度の試験あり
「介護支援専門員実務研修受講試験」は介護保険制度や要介護認定、居宅介護サービス計画に必要な専門知識があるかどうかを確認するための試験です。
都道府県によって実施されていて、受験費用も都道府県によって異なります。おおよそ7,000円~9,000円程度のところが多いようです。
「保健医療系および福祉系の国家資格に基づく5年以上の実務経験」あるいは
「生活相談員や支援相談員として5年以上の相談援助業務」があること
以前は介護の業務経験があれば、介護職員初任者研修やホームヘルパー2級、実務者研修などの資格を持っている人でもケアマネジャーになることができました。
しかし2018年以降の試験から受験資格が改められ、介護職は「介護福祉士」としての資格がなければ対象外となっています。これからケアマネジャーを目指す方は注意しておきましょう。
試験は毎年1回、10月に行われます。
5択の選択式マークシートによる筆記試験で、60問を120分以内に解きます。
出題分野(全60問) | |
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介護支援分野 | 介護保険制度の基礎知識 要介護認定等の基礎知識 居宅・施設サービス計画の基礎知識等 全25問 |
保健医療福祉サービス分野 | 保健医療サービスの知識等(基礎)15問 保健医療サービスの知識等(総合)5問 福祉サービスの知識等15問 |
合格ラインは各分野で正答率70%以上。
つまり、介護支援分野では15点、保健医療福祉サービス分野では23点を正解する必要があります。
厚生労働省が発表している「第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」によれば、2018年度に行われた試験の合格率は10.1%。過去数年を遡っても20%を切っており、かなり難易度の高い試験であることがわかります。
研修は合計44時間以上、座学だけでなくグループワークなども実施
「介護支援専門員実務研修」は介護支援専門員として必要な知識、技能を有する介護支援専門員の養成を図ることを目的とした研修です。試験に合格した人が受講することになります。
実務研修ではケアプランの作成やモニタリングの実施など、ケアマネジメントの専門知識や技術を学習します。
座学だけでなくグループワークや個人発表、ケアプラン作成演習などもあるので、より実務に近い形でケアマネジャーの仕事を学ぶことができます。
研修期間は国によって「6日間で合計44時間以上」と決められていますが、実際の研修期間は都道府県によって異なります。自分の参加する研修はどのような日程が組まれているのか、ホームページなどでしっかり確認しておきましょう。
ケアマネの資格は「5年に1回」更新が必要
試験の合格と実務研修の修了によって交付される介護支援専門員証ですが、これは5年ごとに更新する必要があります。そのために受けなければいけないのが「介護支援専門員更新研修」です。
定期的な研修の機会を確保して、ケアマネジャーの知識や能力を高い水準で維持することを目的としています。
更新の手続きを忘れたままケアマネ業務を続けた場合、登録が取り消しになってしまう恐れもあります。通知が来た際には速やかに更新の手続きを行うようにしましょう。
他の介護職より高い?!気になるケアマネの待遇
厚生労働省の平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果によれば、ケアマネジャーの平均月給は常勤で350,320円、非常勤で229,050円となっています。
※平均給与額は、基本給(月額)+手当+一時金(4~9月支給金額の1/6)で算出されています。
ケアマネジャーは働く場所によって「施設ケアマネジャー」と「居宅ケアマネジャー」に分けられますが、施設に勤めるケアマネジャーの方が給与が高いとされています。
なぜなら、施設ケアマネジャーの場合は介護スタッフを兼任している勤務スタイルの人が多いから。残業手当や夜勤手当がつくことで、夜勤のない居宅ケアマネジャーより多く給与をもらうことができます。
とはいえ、居宅であっても施設であっても、経営する運営母体によって給与額は大きく左右されることをお忘れなく。求人を見る際には、抜かりなくチェックしておきましょうね!
昇進や転職でも有利に!ケアマネジャーになるメリットは多い
ケアマネジャーの資格を取得するメリットは、それまでの経験や知識を活かしてキャリアアップできる点にあります。
ケアマネジャーの資格を持っているということは、難易度の高い試験と研修を突破したということ。専門知識と技術を身につけた証明にもなるため、昇進や転職の際に高く評価されることが多いようです。
また、実際の業務を考えても魅力的な点が多くあります。
居宅介護支援事業所であれば介護業務を行うこともなく、デスクワークが中心になるため、体力面に不安のある人でも安心して働くことができます。利用者への訪問もおおよそ昼間に行うので、夜勤などを担当することもありません。
「介護の現場に直接携わりたい!」という介護職の方にとっては戸惑う勤務スタイルではありますが、ケアプランを通じて利用者やその家族の人生を支えるケアマネジャーの仕事も奥が深いもの。
それに施設ケアマネジャーであれば介護の現場のすぐ近くで仕事ができるので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
編集者より
ひとくちにケアマネジャーといっても、居宅介護支援事業所で働くか介護施設で働くかで、その勤務スタイルも待遇も大きく異なります。
たとえば、ケアマネジメントに集中して、自分の裁量で訪問やサービス担当者会議の段取りを決めたいなら居宅ケアマネジャー。介護現場に寄り添い、施設内の他業種の専門職と意見交換しながらケアプランを作成したいなら施設ケアマネジャーになるのがおすすめといえます。
理想とする働き方によって、学ぶべきスキルや資格、さらに選ぶべき職場は変わるもの。ぜひ、納得のいくキャリアアップを目指してみてくださいね!
参考文献・サイト