「グループホーム」。
さまざまな種類がある介護施設の施設形態のひとつで、正式名称を「認知症対応型共同生活介護」と言います。
認知症の方が介護スタッフのサポートを受けながら、少人数で共同生活をする介護事業所です。
後期高齢者の増加に比例する形で、認知症患者の数も増えてきている昨今。
経験豊富な介護スタッフから専門的な認知症ケアを受けられるグループホームの需要は年々高まってきています。
この記事では、グループホームのサービス内容や費用、入居基準、メリット・デメリット、有料老人ホームとの違いなどを詳しく解説します!
目次
グループホームとは
グループホームとは、認知症の高齢者が介護スタッフによる専門的なケアを受けながら、少人数で共同生活をする介護福祉事業所のことを指します。
住み慣れた地域で生活することを目的とした「地域密着型サービス」のひとつで、
利用者の能力を活かしながら身体介護を行い、可能な限り家庭に近い環境で生活する支援をしています。
グループホームでは、介護スタッフのサポートのもと5~9名のユニット(小グループ)単位で共同生活を送ります。
ひとつのグループホームで、ユニットはふたつまで。
他の介護施設などと比べると比較的規模が小さいため、多くのグループホームは住宅地から近い場所にあり、近隣住民と交流をしながら暮らせるという特徴があります。
利用する場合の入居条件
グループホームに入居する条件は以下の3つです。
- 医師による認知症の診断を受けていること
- 要支援2以上の認定を受けていること
- 入居を希望するグループホームと同じ市区町村に住民票があること
グループホームは地域密着型サービスに分類されるため、施設の所在地と同じ市区町村で暮らしている高齢者のみを入居の対象としています。
どんなサービスを提供しているの?
グループホームの主なサービス内容は介護保険法第8条第20項に定義されている通り、「入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活の世話及び機能訓練」を行うこと。
身体介護や機能訓練(リハビリ)以外には、買い物や調理など介護スタッフといっしょに行う家事やレクリエーションなど、家庭的な環境で日常生活を支援するサービスを提供しています。
また、グループホームによっては、地域住民への相談支援や認知症サポーター養成講座などの認知症の啓もう活動、認知症カフェなども提供しています。
医療体制は事業所によって異なる
グループホームでは医療や看護スタッフの配置が義務付けられていないため、医療体制は事業所によって異なります。
2018年3月に発表された厚生労働省の資料「認知症対応型グループホームにおける医療の提供等に関する調査究事業(結果概要)(案)」によると、看護師がいる事業所は36.7%、准看護師は18.4%、認定特定行為業務従事者は10.3%、医療的ケアを実施できる介護福祉士は7.7%と全体的に少なめでした。
事業所によって差はありますが、医療系人材を配置していないだけでなく、医療体制が整っていないという事業所も少なくありません。
医療ニーズに対応できなかったことや長期入院を理由に退去となるケースは、退去者数全体の3割を占めます。
看取り対応を行うグループホームが増えている
グループホームでは、利用者の平均要介護度が重度化していることや、看取りを希望する利用者家族が増えていることを背景に、看取り介護のニーズも高まっています。
2014年11月に発表された厚生労働省の資料『認知症対応型共同生活介護の報酬・基準についてに(案)』よると、看取り対応を行っているグループホームは、全体の5割を超えています。
2009(平成21)年からはじまった看取り介護加算が後押しとなり、看取り対応を行う事業所は増えています。
加算を取得する事業所では、看護師を雇ったり、主治医や訪問看護師などと連携を取ったりして、その人らしさを尊重した看取りができる体制を整えています。
いくら必要?グループホームにかかる費用
グループホームでかかる費用には、前払い金などの「初期費用」と、入居後にかかる「月額費用」の2種類があります。
初期費用
入居時にかかる初期費用は、事業所によって異なります。
初期費用がまったくかからないところから、敷金や保証金などの前払い金が必要なところまでさまざま。
前払い金の償却の有無についても事業所によって違いますので、よく確認しておくようにしましょう。
月額費用
入居後にかかる月額費用には、「介護サービス費」と「日常生活費」があります。
介護サービス費はユニット(共同生活住居)数や要介護度によって異なります。
以下は2ユニットあるグループホームの場合、利用者さんが自己負担する1日あたりの費用の一覧です。
※金額は1割負担の方の場合です。一定以上の所得がある方は2割もしくは3割負担となります。
1日あたりの費用 | |
---|---|
要支援2 | 743円 |
要介護1 | 747円 |
要介護2 | 782円 |
要介護3 | 806円 |
要介護4 | 822円 |
要介護5 | 838円 |
要介護度1の方が入居した場合、月額費用は22,000~23,000円となります。
介護報酬の加算を取得している事業所であれば、上記の金額に取得している加算分の費用がプラスされます。
日常生活費には、賃料、食費、光熱費、理美容代、オムツ代などがあります。
費用の名称や金額は事業所によって異なりますが、いずれにしても介護サービス費とは別の費用である、ということを認識しておきましょう。
グループホームの施設基準
グループホームの施設基準は以下の通りです。
定員 | 1事業所あたり2ユニットまで 1ユニットあたり5人以上9人以下 全体の利用者数は4人以上18人以下 |
---|---|
居室 | 部屋タイプは個室または準個室(原則個室) 居室面積は7.43平方メートル(およそ和室4.5畳)以上 |
共有設備 | 居間、食堂、台所、浴室などの生活に必要な設備を設けること |
立地 | 住宅地など家族・地域住民と交流の機会がある地域 |
グループホームの人員配置
グループホームの人員配置は以下の通りです。
介護従業者 | 日中:利用者3人に1人(常勤換算) 夜間:夜勤1人 |
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計画作成担当者 | ユニットごとに1人 (最低1人は介護支援専門員) |
管理者 | 3年以上認知症の介護従事経験のある者が常勤専従 |
医師・看護師 | 配置義務なし |
介護スタッフは、日中なら利用者3人に1人以上(常勤換算)、夜勤は1人以上を配置し、24時間常駐する義務があります。
また各ユニットには介護サービス計画の作成担当者として、1人以上の介護支援専門員(ケアマネジャー)の配置が必要です。
グループホームと有料老人ホームの違い
グループホームのほかにも、認知症の高齢者が利用できる介護施設として「有料老人ホーム」が挙げられます。
では、グループホームと有料老人ホームにはどのような違いがあるのでしょうか。
両者の特徴をあげてみると、以下のようになります。
有料老人ホーム | グループホーム | |
---|---|---|
全体的な特徴 | 高齢者全般を対象とする施設。医療体制や特色、規模などは施設によって異なる | 軽度~中度の認知症高齢者を対象する施設。定員数は最大18人で、小規模でアットホームな雰囲気 |
運営母体 | 主に民間企業 | 社会福祉法人が最も多く、民間企業や医療法人、NPO法人など、さまざまな法人が運営している |
入居条件 | 基本的に「自立から要介護5まで」の人を対象としており、条件は施設によって異なる | 認知症の診断があり、要支援2以上で、事業所のある地域に住民票がある人 |
費用 | 初期費用:0~数千万円 月額費用:20~40万円 |
初期費用:0~100万円 月額費用:10~30万円 |
待機期間 | 入居条件がやさしく、施設数と定員数が多いため、待機期間が必要なところは少ない | その地域の住民票が必要など入居条件が厳しく、事業所数と定員数も少ないため、待機期間が必要なところも多い |
対象者の違い
有料老人ホームはほとんどの高齢者を対象としており、特色やコンセプトなどは施設によって異なります。
バリエーション豊かな施設があるため、自分にあった施設を選ぶことができます。
一方、グループホームは軽度~中度の症状のある認知症高齢者を対象としています。
規模が小さく、アットホームな雰囲気でスタッフの支援のもと共同生活をします。
運営母体の違い
有料老人ホームの運営母体はほとんどが民間企業です。
一方、グループホームは民間企業のほかに、社会福祉法人や医療法人、NPO法人など、さまざまな法人が運営しています。
入居条件の違い
有料老人ホームは、自立から要介護5までの高齢者全般を対象としている施設です。
入居条件は施設によって異なり、「自立から要介護5まで」のところもあれば「要支援1から要介護5まで」のところもあります。
グループホームは、認知症高齢者の精神的安定や自立支援を目的とした支援をする事業所です。
入居条件は、原則認知症の診断があり、要支援2以上で、事業所のある地域に住民票がある方と定められています。
費用の違い
費用の大きな違いは初期費用にあります。
有料老人ホームの初期費用は、高いところで数千万円かかります。
一方、グループホームの初期費用は高くても100万円程度。月額費用をみても有料老人ホームよりグループホームのほうが安価なところが多いです。
入居のハードル
有料老人ホームは施設数と定員数が多く、また入居条件が少ないために比較的入居しやすい施設です。待機期間が必要なところは少ないと言えます。
一方、グループホームには「その地域の住民票が必要」などの入居条件があるうえに、施設数と定員数も少ないです。
入居できる人に限りのある事業所のため、待機期間が必要なところも多いでしょう。
グループホームに入居するメリット・デメリット
グループホームに入居する利用者にとって、どのようなメリットやデメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット
入居者のメリットとして、以下のようなことがあげられます。
- 専門的な認知症ケアが受けられる
- 小規模でアットホームな環境で生活できる
- 住み慣れた地域を離れずにすむ
- 支援を受けながら共同生活ができる
グループホームは認知症の方しか入居できないため、経験豊富なスタッフによる専門的な認知症ケアを受けることができます。
環境の変化に大きなストレスを受けやすい認知症患者の方にとって、適切な声掛けやサポートのあるアットホームな環境で生活できることは、大きな魅力になりうるのではないでしょうか。
また、スタッフの支援を受けながら買い物や調理などの家事を行うグループホームでは、一人ひとりに役割があるために活き活きとした生活を送れるでしょう。
デメリット
入居者のデメリットとして、以下のようなことがあげられます。
- 定員や事業所数が少ないため、入居までの待期期間が必要
- 医療体制が整っていないところが多い
- 機械浴など、重度者に対応する設備が充実していない
グループホームは特別養護老人ホーム特養や有料老人ホームと比べると事業所数も少なく、最大定員も18名と限りがあります。
空き居室が少ないため、入居までに待期期間が必要となるケースも多いです。
また、グループホームでは自立支援を目的としたサポートを行っているため、基本的に寝たきりなどの重度者の受け入れはしていません。
そのため、重度者に対応した設備が整っていないほか、対応できない医療ニーズも多い傾向にあります。
介護職がグループホームで働くメリット・デメリット
次に、グループホームで働く介護職にとって、どのようなメリットやデメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット
- 認知症ケアの知識が身につく
- マニュアル化されていない日々の業務が多く、対応力が身につく
- 身体介護の負担が少ない
グループホームの特徴は、なんといっても専門的な認知症ケアを提供していることです。
調理や掃除などの家事を手伝ったり、認知症ケアに適したレクリエーションを行ったりするため、必然的に認知症ケアの知識が身につきます。
また、小規模でアットホームなケアを目的とするグループホームでは、マニュアル化されていないケアも多いです。利用者にあわせた介護を流動的に行うため、対応力が身につきます。
デメリット
- ある程度の認知症ケアの知識や忍耐力が必要
- 料理や掃除などの家事スキルが必要
認知症ケアを行うためには、特有の症状などの専門的知識が必要になります。利用者さんとの意思疎通が難しく、ケアが思い通りにいかないことも多いため、忍耐力が必要になるでしょう。
また、グループホームでは介護職員が利用者さんと一緒に調理や掃除などの家事を行います。利用者さんをサポートする立場として、ある程度の家事スキルも求められます。
グループホームで働く介護職員の給料は?
厚生労働省「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、グループホームの常勤スタッフの平均月額賃金は269,920円(※)。
基本的に夜勤をしない通所介護(デイサービス)の常勤月額平均264,790円(※)とあまり差がなく、夜勤のある介護施設のなかでは、比較的低い賃金といえます。
※厚生労働省の月額算出方法:基本給(月額)+手当+一時金(4~9月支給金額の1/6)
出典:【2018年最新版】介護職員の給料、一番月給が高い施設形態はどこだ?
編集者より
高齢者人口の増加に伴って、認知症患者も年々増え続けています。
専門的なケアを実施できるグループホームの需要は、これからさらに高まっていくことでしょう。
認知症ケアの現場でチャレンジしてみたいという方は、ぜひ就職・転職の候補に入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献・サイト
- 厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」(2019/11/22)
- 厚生労働省「認知症対応型共同生活介護の概要」(2019/11/22)