介護施設

有料老人ホームとは?「介護付」「住宅型」「健康型」の3種類を徹底解説

高齢者のための民間施設である「有料老人ホーム」。
内装を豪華にしたりクリニックを併設したりと、施設ごとにさまざまな特色を持つ介護施設ですが……提供するサービスや対象とする利用者さんによって、3つの種類に分かれることはご存知ですか?

この記事では、入居を考えている方や職員として働きたい介護士に向けて、知っているようで知らない「有料老人ホーム」の特徴や入居基準、費用、メリット・デメリット、特別養護老人ホームとの違いなどを解説します。

有料老人ホームとは

 

有料老人ホームとは、主に民間企業が運営する老人ホームのこと。
老人福祉法では届出の有無にかかわらず、入居させた高齢者に対して、以下のサービスを「少なくともひとつは」提供する施設として定義されています。

  • 入浴、排せつまたは食事の介護
  • 食事の提供
  • 洗濯、掃除などの家事
  • 健康管理

参考:厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」

介護保険施設である特別養護老人ホームとは異なり、自立の方から入居できる施設もあります。
多くは入所期限も設けていないため、「終の棲家」としても選ばれている施設です。

近年では高齢者向け住宅のニーズ拡大に伴い、施設数が増加傾向にあります。
2017年時点での有料老人ホームの数は12,608件です。

参考:厚生労働省「有料老人ホームに関する最近の施策動向」

有料老人ホームには「介護付有料老人ホーム」「住居型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があり、それぞれ提供するサービスや入居条件が異なります。
そのため、利用者さんの状況やニーズに合わせた施設選びが可能です。

どのようなサービスがあるのか、詳しく見ていきましょう。

手厚い介護サービスが特徴!「介護付」有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは、介護などのサービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護が必要になっても、ホームが提供する介護サービス(特定施設入居者生活介護)を利用しながら、施設での生活を続けることができます

「介護付」と表示するには、この「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている必要があります。
特定施設入居者生活介護には介護保険が適用され、利用者さんは1割(一定以上の所得がある場合には2割または3割)の自己負担で利用可能です。

カイゴン
カイゴン
介護サービスは、ホームの職員が提供する場合と、委託先の介護サービス事業所が提供する場合があるゴン。

介護付有料老人ホームの中にも「介護専用型」「(入居時)自立型」「混合型」の3タイプがあります。
「(入居時)自立型」と「混合型」では自立から入居することができ、入居後に介護が必要になっても生活を続けることができます。

サービス内容

介護付有料老人ホームでは、主に

  • 食事や入浴、排泄介助などの介護サービス(特定施設入居者生活介護)
  • 洗濯や掃除などの家事サービス
  • 健康管理などのサービス

が提供されています。
介護サービス(特定施設入居者生活介護)は、有料老人ホームの職員または、委託先の介護サービス事業所が24時間体制で提供しているところが多くあります。
一部施設では、福祉用具のレンタルができず、自己負担で購入するケースがあります。

介護付有料老人ホームでは、要介護者3人につき看護・介護職員は1人。介護と看護の人員基準が手厚いのが特徴です。

入居条件

介護付有料老人ホームで提供される介護保険サービスの特定施設入居者生活介護は、要介護1から適用されるサービスです。
「介護専用型」の場合、原則65歳以上で要介護1以上の認定を受けている人が入居の対象となります。

なお、「(入居時)自立型」は入居時に自立の方が入居できます。
「混合型」は自立の方から要介護・要支援の方まで、幅広い層が入居可能です。
この場合、ほとんどの施設が、対象年齢を60歳または65歳以上としています。

必要なサービスを選べる!「住宅型」有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、食事提供や掃除・洗濯などの生活支援サービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護が必要となった場合、利用者さん自身の選択によって地域の訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを利用しながら施設での生活を続けることができます。

要介護度が高くなって医療ケアが必要になるなど、住宅型有料老人ホームでは対応できなくなった場合は退去しなければならない可能性がありますが、提携している介護付有料老人ホームに住み替えられる場合もあります。

サービス内容

住宅型有料老人ホームでは、食事や洗濯、掃除などの家事サービス、健康管理などのサービスが提供されており、必要なサービスを利用者さんが選びます

介護や看護スタッフなどの人員基準は定められておらず、介護付有料老人ホームと比べて介護や看護のサービスが不足している施設もあります。
そのため介護サービスについては、施設内ではなく地域や併設されてある居宅介護支援事業所を通して、必要な訪問介護や訪問看護、福祉用具のレンタルといった介護保険サービスを利用できます。

基本的に、必要なサービスを自分で選べるのが特徴といえます。

入居条件

多くの住宅型有料老人ホームが、年齢制限を60歳または65歳以上と設定しています。
自立の方から要介護の方まで入居が可能です。

アクティブに過ごしたい方向け!「健康型」有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、食事などのサービスを提供する高齢者向けの施設です。
カラオケの設備やトレーニング施設、レクリエーションやイベントが充実しているホームが多いため、アクティブな老後を過ごすことができます

介護や医療ケアが必要になった場合には退去する必要がありますが、提携している介護付有料老人ホームに住み替えられる場合があります。

サービス内容

健康型有料老人ホームは、食事や洗濯、掃除などの家事サービス、健康管理などのサービスから必要なものを利用者さんが選びます。
自立の方を対象とした施設なので介護サービスは受けられませんが、近隣の医療機関と提携している施設では、定期的なメディカルチェックや必要な治療を受られます。

健康型有料老人ホームのほとんどは、趣味などのアクティビティや各種イベントが充実しているため、アクティブに過ごせるのが特徴です。

入居条件

多くの健康型有料老人ホームでは、入居者の対象年齢を60歳または65歳以上に設定しています。
かつ、自立した生活ができ、介護サービスの必要がない方を対象としています。

カイゴン
カイゴン
入居条件は施設によって異なる場合もあるゴン。詳細は各施設にお問い合わせするゴン!

有料老人ホームでかかる費用

有料老人ホームでかかるお金は、月々に発生する費用と入居時に支払う入居一時金のふたつ。
実際にかかる費用は施設によって異なるため、ここでは、どのような項目の費用があるのかを紹介します。

種類別にみる!有料老人ホームの月々の費用

まずは、月々にかかる費用について、3つの種類別にみていきましょう。

月々の費用の項目
介護付 居住費や食費、管理費などに加えて、介護保険サービス(特定施設入居者生活介護)の料金がかかります。
特定施設入居者生活介護の金額は、厚生労働省にて要介護度ごとに定められています。
住宅型 居住費や食費、管理費など。
別途、外部の事業所等で利用した介護サービスの費用も、月々に利用した分だけかかります。
健康型 居住費や食費、管理費など。
施設によって金額に幅があります。

多くの有料老人ホームで取り入れている「入居一時金」とは

次に、入居一時金についてです。
多くの有料老人ホームでは入居時に、一定期間分の利用料金をまとめて前払いする「入居一時金(前払金)」の支払いが必要です。

支払いの形式は主に3つ。入居を希望する施設がどのような対応をしているのかは、事前にしっかりチェックしておきましょう。

全額前払い方式 終身にわたって受領する家賃やサービス費用の全部を、前払金として一括して支払う
一部前払い・一部月払い方式 終身にわたって受領する家賃やサービス費用の一部だけを前払いして、そのほかは月々支払う
月払い方式 入居一時金(前払金)がなく、家賃やサービス費用を月払いする

参考:厚生労働省「別表 有料老人ホームの表示事項」

カイゴン
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入居一時金(前払金)は、入居してから一定期間で契約が終了した場合、利用期間分の利用料金などを償却した金額が返還されるゴン。
参考:電子政府の総合窓口e-Gov「老人福祉法」

3つの種類別に解説!利用者のメリット・デメリット

有料老人ホームに入居される方のメリットとデメリットを、3つの種類別に紹介します。

「介護付」有料老人ホームのメリットとデメリット

介護付有料老人ホームのメリット・デメリットは以下の通りです。

介護サービスを受けられる!

  • 介護サービスを受けられるので、要介護度が高くなっても安心して暮らせる
  • 医療重視やリハビリ重視、高級志向など施設の方針や特徴がバリエーション豊かなため、自分に合った施設を探せる
  • 基本的に終身利用が可能なため、終の棲家として選ぶことができる

有料老人ホームの中でも、一番介護サービスが手厚いのが介護付有料老人ホームです。介護サービスだけでなく、さまざまなバリエーションの施設があるため、要介護度が高くても、自分に合った施設を選ぶことができます。

特養と比べると費用が高い

  • 特別養護老人ホームなどの介護保険施設と比べると費用が高い
  • 一部の施設では、福祉用具のレンタルなどの介護保険サービスと併用できない

手厚い介護サービスが特徴の介護付有料老人ホームですが、公的な施設である特別養護老人ホームと比べると、費用は高い傾向にあります。また、一部の介護付有料老人ホームでは、福祉用具のレンタルができない場合もあり、必要な場合は購入しなければいけないことも。費用のことは施設によく確認しましょう。

「住宅型」有料老人ホームのメリットとデメリット

住宅型有料老人ホームのメリット・デメリットは以下の通りです。

自分に合った介護保険サービスを利用できる!

  • 介護サービスをそれほど利用しなければ、介護付有料老人ホームと比べて費用が安くすむ
  • 訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなど、自分に合った介護保険サービスを利用できる
  • 利用者さんの平均要介護度が低い傾向にあるため、アクティビティやイベントが豊富な施設も多い
  • 介護付有料老人ホーム同様に医療重視やリハビリ重視、高級志向などバリエーション豊かなため、自分に合った施設を探せる

施設からのサービスではなく、必要なサービスを外部から自分で選んで利用できるのが特徴の住宅型有料老人ホーム。
要介護度がそれほど高くなければ、手厚い介護は必要ないため、必要最低限のサービスを利用することで費用が安く抑えられるでしょう。
アクティビティやイベント、独自の取り組みが豊富な施設が多いので自分に合った施設で楽しめるのではないでしょうか。

介護サービスが前提ではないため、要介護時の対応が難しい

  • 要介護度が高くなって、介護保険のサービス費用が増えると、月々の負担が高くなる可能性がある
  • 要介護度が高くなり、提供できるサポートの範囲を超えると退去する必要がある

介護付きと異なり介護サービスの提供が前提ではなく、外部の介護事業所に必要なときに必要な分をあらかじめ予定した通りにサービス提供してもらうため、緊急時や夜間の対応やが難しくなることもあります。
また、要介護度が高くなり、必要なサービスが増えると、月々の費用の負担も大きくなります。

「健康型」有料老人ホームのメリットとデメリット

健康型有料老人ホームのメリット・デメリットは以下の通りです。

自宅で暮らす不安や孤独を解消できる!

  • 高齢者のひとり暮らしや高齢者夫婦のみの世帯が、自宅で暮らす不安や孤独を解消できる
  • アクティビティやスポーツジムなどの設備が豊富な施設も多く、日々の生活が充実する

老後をひとりやふたりで暮らすことに不安がある方、アクティブな老後を過ごしたい方におすすめの健康型有料老人ホーム。施設数は少ないですが、このような生活ができるという選択肢もあることがうれしいですね。

介護サービスが必要になると、退去する必要がある

  • 介護サービスが必要になり、提供できるサポートの範囲を超えると、退去する必要がある
  • 一般的に費用が高いところが多い

一般的な介護施設とは異なり、介護が必要でない方を対象としているため、介護が必要になると退去しなければいけない場合もあります。

有料老人ホームで働く介護士のメリット・デメリット

入居する方だけでなく、働く側のメリット・デメリットも気になりますよね。下記では、介護職員が知っておきたい、有料老人ホームで働くメリット・デメリットを紹介します。

有料老人ホームで働く介護士のメリット

  • 特別養護老人ホームよりも利用者さんの平均介護度が低く、身体介護の割合が少ないため、身体への負担が少ない
  • 介護付有料老人ホームを中心に医療体制が整っている施設も多いため、医療ケアを学べる
  • ひとつの施設に要介護度が低い人から高い人までいるので、それぞれに合った対応方法を経験できる

特別養護老人ホームと比べると、有料老人ホームでは利用者さんの平均介護度が低いため、身体介護の割合も少なくなります。介護士の身体への負担も少ないでしょう。

また、入居基準に要介護3以上などの縛りがない施設が多いため、さまざまな要介護度の利用者さんのケアを学ぶことができます。医療ケアを学べる施設もあります。

有料老人ホームで働く介護士のデメリット

  • 高級志向などの有料老人ホームでは、接遇マナーが重視される傾向がある
  • 身体介護の割合が少ない施設では、介護技術の定着が遅れる可能性がある

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設と比べると、介護技術だけではなく、接遇マナーを介護職員に求める施設もあります。
また、利用者さんの平均介護度が低い施設では、身体介護を行う割合が少なくなるので、介護技術の定着が遅くなることも。

知識やスキルとして何を身に付けたいか明確にして、それが実現できる職場かどうか見極める必要があるでしょう。

運営主体や費用など大きな違いあり!特別養護老人ホームとの比較

特別養護老人ホーム 有料老人ホーム
運営主体 地方公共団体や社会福祉法人 民間企業
入居基準 原則要介護3以上の65歳以上 自立から要介護5
費用(月々) 約5~15万円 約20万円以上
特徴 手厚い看護サービスを提供 施設によって様々な特徴あり

有料老人ホームと同じく、終の棲家のイメージがある「特別養護老人ホーム」。
両施設にどのような違いがあるのか比較してみましょう。

運営主体

運営主体を見てみると、特別養護老人ホームは地方公共団体や社会福祉法人であるのに対して、有料老人ホームは主に民間企業です。

働く立場から見れば、地方公共団体や社会福祉法人が運営主体の特別養護老人ホームは、公共性が高く安定した職場だといえるでしょう。

一方で、民間企業である有料老人ホームでは、独自の手当てなどを用意して職員が働きやすいように工夫しているところ多くあります。

入居基準

特別養護老人ホームの入居基準は、原則要介護3以上の65歳以上の方です。
一方、有料老人ホームの入居基準には制限が少なく、自立から要介護5の方まで入居できる施設もあります。

介護度の高い利用者さんを受け入れている特別養護老人ホームには手厚い介護の安心感がありますし、入居基準に制限の少ない有料老人ホームはあまり待たずに入居できるのが嬉しいですね。

費用

月々にかかる費用は、特別養護老人ホームが約5~15万円であるのに対し、有料老人ホームでは約20万円以上となっています。

働く職員の立場からみると、特別養護老人ホームに比べて有料老人ホームのほうが一般的に所得が高い利用者さんが多いです。
そのため、きちんとした言葉遣いや態度などの接遇マナーを重視される傾向にあります。

その他の違い

特別養護老人ホームには手厚い介護サービスがついていますが、医療ケアの体制が整っていない施設が多く、医療ケアが必要な利用者さんの場合は入居できない可能性もあります。

また、有料老人ホームでは、ホテルのような豪華な設備があるところや、24時間体制の看護職員配置やクリニックを併設して手厚い医療サービスを特徴としているところなど、施設によってさまざまな特色があります。

「特別養護老人ホーム(特養)」とは?費用や入居基準、有料との違いなどをくわしく解説さまざまな種類がある介護施設の中で、「特別養護老人ホーム(特養)」はその代表と言える施設です。 入居費用が手頃で知名度もあることから、...

編集者より

有料老人ホームは特養と同様に、利用者さんにとって「終の棲家」にもなりうる施設です。
また、自立している方から要介護5の方まで受け入れる間口の広さから、さまざまな介護度の方への対応を心得ておく必要があります。

介護職員として大きくスキルアップできる施設として、挑戦してみてもよいかもしれませんね。

参考文献・サイト

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