就職・転職活動をしていると、気になった施設の運営母体にも目が行くものです。
それは「社会福祉法人」であったり「株式会社」であったり、ひとくちに介護施設と言っても、その運営主体は施設によって異なります。
そもそも「社会福祉法人」って何?株式会社との違いは?どっちの職場を選んだらいいの?などなど……気になるところであると思います。
そこで今回は、介護施設の運営母体である「社会福祉法人」について解説いたします!
目次
社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立される民間企業です。
社会福祉事業としては更生施設、支援施設、児童福祉施設(保育園)、高齢者福祉事業などさまざまです。
法人税上では公益法人等であるため、一部を除き非課税である優遇措置があります。
株式会社とは何が違うの?
大きな違いは営利団体か、非営利団体かという部分です。
社会福祉法人は地域福祉の充実・発展という「公共性」、利潤を目的としない「非営利性」、事業の持続という「安定性」を特徴としています。
株式会社とは異なり営利目的での社会福祉事業を展開できませんが、税制や補助の面で優遇されています。
また、社会福祉法人の場合は事業内容が社会福祉に限定されています。
以下、主な違いを一覧でまとめています。
社会福祉法人 | 株式会社 | |
---|---|---|
事業目的 | 社会福祉事業 (公益事業、収益事業なども可) |
自由 |
所轄庁 | 都道府県や政令指定都市、中核市 | なし |
設立に必要な人数 | 理事6名以上、監事2名以上、理事の2倍超の評議員 | 1人以上 |
決算の公開 | 財務諸表を含む現況報告書を所轄庁に提出する | 広告義務あり |
資金 | 寄付金、補助金 | 株式・債券発行 |
残余財産の処分 | 提起の定めにより、帰属すべき者に帰属 それによって処分されない財産は国庫帰属 |
債務弁済後、株主に分配 |
社会福祉法人 | 株式会社 | |
---|---|---|
法人税 | 原則非課税 (収益事象で生じた所得は課税※所得の22%) |
課税 (※所得の30%) |
道府県民税 | 原則非課税 | 課税 |
市町村民税 | 原則非課税 | 課税 |
固定資産税 | 社会福祉事業用の固定資産は非課税 | 課税 |
事業税 | 原則非課税 | 課税 |
補助金 (施設整備費) |
あり | なし |
補助金(運営費) | あり | あり |
自治体による補助金加算 | あり | 対象外が多い |
解説時の低利融資 | 医療福祉機構より低利融資あり | なし |
社会福祉法人と株式会社運営の施設はどっちの待遇が良いの?
社会福祉法人と株式会社、それぞれの福利厚生について考えてみましょう。
社会福祉法人
社会福祉法人の企業体系は利益追求型ではないため、業績による福利厚生の変動はありません。
監督官庁からのチェックもあり、以前は社会福祉法人で働くスタッフは公務員としての対応を求められていたほど。
そのためはじめや手当の水準は、株式会社が運営する施設より低い金額であるパターンが多いと言えるでしょう。
しかし昇給や賞与によって、少しずつ上がっていく見込みがあります。
株式会社
利益を追求する株式会社では、給与の変動がないとは言い切れません。
とはいえ、社会福祉法人の施設とあまり大差がないのが現状です。
賞与に関しては支給するところが増えて、業績が良ければ支給される時もあるでしょうし、逆に順調でなければ伸び悩むこともあります。
企業が運営するところは、社会福祉法人が運営する施設や事業所よりも利用金額が高くなるケースが多い分、ご利用者はお客様という認識になるようです。
中には超高級有料老人ホームで、スカーフを巻いて介護にあたるような施設も。
その場合はサービスの質や言葉遣いなど、社会福祉法人とは違った学びがあるかもしれません。
結論
待遇に関してはどちらの場合も、長く働いてみないと昇給や賞与は期待できません。
社会福祉法人でも株式会社でも、上に立つ人によって雰囲気ややり方は変わります。
社会福祉法人でも安定していないところはあるし、株式会社でも昇給率が低いところはあります。
企業の体質次第で、待遇は大きく違ってくるのです。
強いて言えば、ケアマネとして働く場合には法人格によって少し違いを感じるかもしれません。
営利主義の株式会社だと、ご利用者の立場に立ったケアプランが作ることできないと悩む人も……。
とはいえ、それもやはり施設によって変わっていきます。入職前の見極めが大切になりますね。
企業を選ぶコツ
どのような企業なら自分にあうのか、見極めるコツをご紹介いたします。
1.企業理念に共感できるか?
社会福祉法人は法人独自の理念をもって活動しています。株式会社にしても、「お金のためです!」と正直に掲げている会社はありません。
どこも企業理念や経営方針に向かって、事業を展開している会社がほとんどです。
就職・転職活動をする時は条件や待遇に注目しがちですが、理念や方針はその企業の核の部分。読むとその企業の考え方がわかります。
そして考え方は条件や待遇にも反映されているものですので、気になった企業の理念は一度読んでおくとよいでしょう。
2.教育体制は整っているか?
福祉業界は進歩・進化の早い業界です。医療・介護の技術や考え方は、日々目まぐるしく変化しています。
その中でしっかりと研修体制を確立し、職員のスキルアップを図っている企業は、法人格に関わらず将来性があると言えるでしょう。
職員の育成は時間もコストもかかるため、収益が少ない企業では真っ先に削られてしまう部分です。
教育体制の有無は、企業が健全な経営をしているかどうかの指標にもなるのではないでしょうか?
3.ライフプランが変わっても、働き続けられるか?
しかし女性の場合は結婚・妊娠など、ライフプランの大きな転機があります。
そしてその時、仕事を辞めなければならないことが企業によってはあり得るのです。
それでキャリアがリセットされてしまうのは、実にもったいないですよね。
入職前にライフプランを考えておくに越したことはありませんが、仕事をする中で生活に変化があるのは当然ですね。
産休・育休の有無はもちろんのこと、積み上げたキャリアが生かせるよう、将来の選択肢を残しておける企業を選ぶことが重要です。