介護の現場では、認知症の QOL(生活の質)を向上させる効果が期待できる介護レクリエーションが注目されています。さらに、食事や更衣、排泄や移動などの ADL(日常生活動作)をスムーズにするために、さまざまな種類のレクリエーションを多くの施設や医療機関で積極的に取り入れる傾向が高まっているそうです。そこで今回は、認知症の方向けの介護レクリエーションの種類と特徴をご紹介しましょう。
目次
介護レクリエーションの目的と効果
介護レクリエーションは、運動不足になりがちな認知症の方の身体機能の改善や、精神的な安定を維持する目的があります。さらに、介護レクリエーションを通して脳の活性化を促し、認知症の進行を抑え症状を緩和させる効果が期待できるのです。
身体機能が向上する
軽度な運動は、年齢とともに衰える筋力や体力などの身体機能を向上させる効果があります。とくに、認知症の方のように要介護度が高いほど、日常的に運動不足になりがちです。遊びの要素が高いレクリエーションを通して、知らず知らずのうちに認知症の方に対して運動不足を解消する場を提供することになります。
脳の活性化を促す
手先を動かしたり、頭を使ったりする簡単なレクリエーションは、脳細胞の活性化を促します。さらに、頭を使うレクリエーションは、日常の生活では使われることのない脳の部分に刺激を与えるとも考えられており、認知症の進行を緩和させる効果が大いに期待されています。さらに、歩行や移動が困難な認知症の方にとっては、身体的な負担を感じることなく楽しむことが可能です。
コミュニケーションをスムーズにする
認知症の方は、コミュニケーションがスムーズに行えないケースがあります。なかには、個室に引きこもって他人とのかかわりを極端に嫌がる方も…。介護レクリエーションは、そんな認知症の方に、人との触れ合いや同じ時間を過ごす楽しさを感じさせる効果があります。介護レクリエーションによる他の高齢者とのコミュニケーションにより、認知症の方の孤立を防ぐこともできます。
生活の質を向上できる
介護レクリエーションには、運動機能や脳の活性化を促すとともに、生活の質を高める効果があります。日常の生活の中に楽しい時間を持つことが、生きがいや張り合いにつながるのです。また、レクリエーションを通した会話によるコミュニケーションは、ストレスを発散する効果があります。
介護レクリエーションの種類
介護レクリエーションは、実施する方法によって以下の 3 つの種類に分けられます。
・集団レクリエーション
・個別レクリエーション
・基礎生活レクリエーション
それぞれに実施するレクリエーションはさまざまです。ここでは、種類別のレクリエーシ
ョンの特徴についてご紹介しましょう。
集団レクリエーション
介護レクリエーションのなかで、「集団レクリエーション」は代表的な方法です。グループなどの集団で、同じレクリエーションを同時に行います。例えば、参加者全員で体操をしたり、誕生会や季節ごとのイベントがあります。また、歌や演芸などを同じ場所で鑑賞するのも集団レクリエーションのひとつです。同じ場所に集うことで、仲間意識が生まれたり、会話を通したコミュニケーションが図れます。
【レクリエーション例】
・お手玉タワー:タワーのように積み上げたお手玉にボールを投げてタワーを崩すゲーム
・うちわテニス:うちわをラケットに見立てて風船を打ちあい点数を競う
・バランスボール:ラケットやうちわにボールをのせて落とさないようにするゲーム
個別レクリエーション
個別レクリエーションは、認知症などの要介護度に合わせたレクリエーションを個別または少人数単位で実施する方法です。他人とのかかわりが苦手な要介護者や、会話や歩行、移動が困難な方など、それぞれの状況や症状に合わせたレクリエーションメニューを実施します。好みや個性を十分に把握したうえでの、趣味や簡単なゲームなどがあげられます。
【レクリエーション例】
・ひとり指折りゲーム:指を折りながら 1~50 までを数えるゲーム
・新聞紙リハビリ:新聞紙 1 ページを制限時間内にどれだけの枚数に分割できたかを競う
・キャッチ the タオル:投げたタオルを棒状に丸めた新聞棒で受け取るゲーム
基礎生活レクリエーション
基礎生活レクリエーションは、普段の生活のなかに、楽しみや遊びの時間を取り入れる方法です。レクリエーションのための時間を作るのではなく、食事や入浴の時間を利用して映像や音楽を流します。また、共有の空間である場所に、絵や花を飾ることも基礎生活レクリエーションの一種です。
【レクリエーション例】
・食堂で懐かしい映画や映像を鑑賞する
・浴室に音楽を流す
・共有スペースに絵画や花を飾る
認知症の方に楽しんでもらうためのレクのコツ
認知症の方の場合は、介護レクリエーションが苦痛となり、症状を悪化させる結果を招きかねません。認知症の方に介護レクリエーションを行う際には、次の 4 つのポイントが重要です。
- 要介護度が同レベルの少人数制で行う
- 認知症は、症状に大きな個人差があります。したがって、認知症の症状が同レベルの少人数制で行う個別レクリエーションが最適といえます。
- 15 分までの短時間で区切る
- 楽しいレクリエーションであっても、長時間になると苦痛を感じやすくなります。集中力が維持される 15 分程度で区切ることで、認知症の方に精神的な負担を与えるリスクを軽減できます。
- シンプルなメニューがおすすめ
- 複雑な動作や理解が難しいレクリエーションは、認知症の方にとって、身体的や精神的に大きな負担となります。シンプルかつ簡単に行えるメニューを選ぶとよいでしょう。
- 毎回同じ顔ぶれのメンバーで行う
- 毎回同じメンバーでレクリエーションを行うことで、認知症の方の安心感や仲間意識を養えます。顔馴染みになると、会話もはずみ脳の活性化を促す可能性が高まります。
認知症の方向けに行う介護レクリエーションの注意点
認知症の方向けに、介護レクリエーションを行う際には、個人の感情を尊重したうえで進行していくことが重要です。無理強いをしないのはもちろんのこと、ひとりひとりの症状や状態を充分に把握しておきましょう。また、認知症の方は、思わぬ行動をとりがちです。危険になりそうな物を近くに置かない、移動の際は必ず付き添うなどの配慮が必須といえます。微妙な感情の変化にも注意する必要もあります。
ニーズが高まる「レクリエーション介護士」とは
なお、「介護レクリエーションの基礎を身につけたい」という現場のニーズの高まりをうけて、介護レクリエーションに関する民間資格も登場しています。
たとえば、日本アクティブコミュニティ協会によって 2014 年から認定されているレクリエーション介護士は、介護に関する基礎知識を有し、介護レクリエーションの企画から提案、実施までを行う専門資格です。介護分野においては、レクリエーションを通して高齢者に生きがいを与える役割を果たす資格として注目されています。
レクリエーション介護士の資格には、年齢や経験不問で受験できる 2 級と、2 級取得者のみが受験できる 1 級が実施されています。レクリエーション介護士 2 級は、約 3 ヶ月の通信講座を受講した後、添削課題と筆記試験に合格することで取得が可能です。また、認定講座を実施している専門学校やスクールに通学して最短で取得する方法もあります。レクリエーション介護士は、自分の趣味や特技を介護に活かしたい方におすすめの専門資格です。介護レクリエーションについて深く学びたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
介護レクリエーションは、認知症の症状を緩和させ、進行を抑える効果が期待されています。大切なポイントは、認知症の方が心から楽しめるレクリエーションであることです。日常生活のなかに、遊びや楽しみを見つけることで、ストレスを軽減させて穏やかな感情を維持することができます。認知症の方の心とカラダに寄り添いながら、最適な介護レク
リエーションを行ってみてください。
介 護 レ ク ワ ー ク 「 今 、 レ ク の 仕 事 が 熱 い ! 」
( 2017 年 6 月 25 日 、https://www.kaigo-rec-work.com/TCareerChanges/rec_hot)
イリーゼ「高齢者向けのレクリエーション決定版!楽しくて脳と体が生き生き」(2017 年 6
月 25 日、http://www.irs.jp/article/?p=75)
公 益 財 団 法 人 日 本 レ ク リ エ ー シ ョ ン 協 会
( 2017 年 6 月 25 日 、http://www.recreation.or.jp/playing/item/#1)
日本アクティブコミュニティ協会
(2017 年 6 月 25 日、https://www.japan-ac.jp/)