ご利用者様が自宅で生活を続けていくことを困難にする転倒事故は、在宅サービスを利用するうえで避けては通れません。
1人の人間のケアをする以上、すべての行動は予測できません。そして、スタッフも24時間、ご利用者様に付き添っていられるわけでもありません。
しかしご利用者様が転倒事故によって骨折し、歩けなくなってしまい、自宅での生活が継続できなくなってしまう可能性もあります。
今回は、そんな転倒事故が起きてしまった時の経験談をお話しようと思います。
皆様に少しでもお役に立てればうれしいです。
転倒事故によってショックを受けるのは誰か?
脳梗塞の後遺症で、左半身が麻痺し、立ち上がりに介助が必要な利用者さんがいらっしゃいました。
トイレに行かれることが多く、認知症の症状もあるため、ご自身1人で立ち上がろうとされる様子もあり、ベッド上で動きがあるとナースコールが鳴るセンサーを設置して、安全対策をとっていました。
夕食を終えて、その利用者さんが居室のベッドで休んでいるとき、当日の担当スタッフがその利用者さんのナースコールを確認しました。
しかしそのスタッフは他の利用者さんの対応中で、すぐに駆け付けることができませんでした。
居室についたときには、転倒された後の状態。頭部からの出血もあり、緊急搬送となりました。
頭部を打っていたので、様子観察で1週間ほど入院にはなりましたが、自宅に帰れないほどのけがにはならず、帰宅することができました。
しかしご家族は介護にとても熱心で、「どうして、転倒してしまったのか。何か防ぐ方法はなかったのか」とショックを受けたご様子でした。
大事なご家族がけがをしてしまったという事実を前にして、ショックを受けられるのは当然のこと。介護に熱心になればなるほど、ショックが大きくなるのも仕方ありません。
介護のチームには、スタッフだけではなく「家族」もいます
そこで私は、転倒事故が起きてしまったことに関して、家族の思いをしっかり受け止め、
- ・どのような状況で転倒事故が起こったのか
- ・今後の対策をどのように行っていくのか
などを、文書も含めて細かく説明させていただきました。
その内容にご家族も納得していただけて、今でもショートステイをご利用いただいています。
私自身、この経験で感じたことは、転倒事故は100%防ぐことができないからこそ、普段の利用者さんの様子を家族に伝えていくことがとても大事だということです。
普段のショートステイの様子を伝えることで、ショートステイでの利用者さんに関する困りごとや気を付けることを、自宅での利用者さんの状態の情報共有ができ、事故を防ぐ対策のきっかけになります。
万が一、事故が起きてしまった時にも、利用者さんの普段の様子が伝わっているため、事故の経緯がご家族に伝えやすくなります。
もちろん、自宅でできることであっても、施設ではできないこともあります。
このできること、できないことを伝えておくことがショートステイをご利用いただくうえで、重要だと思います。
利用者さんにかかわる環境の相互理解が、在宅サービスを受ける上で、ご家族と事業者同士の信頼関係につながるのではないかと思います。