介護の知識

介護職のための完全拘縮ケアマニュアル①「拘縮とは~拘縮のタイプから予防のポイントまで」

介護現場では、全身の関節がガチガチに固まった利用者を見かけることもありますよね。
そのような、関節が動かしにくくなる状態のことを「拘縮(こうしゅく)」と呼びます。

関節が固まると、オムツ交換や更衣介助などの日常的なケアの難易度が一気に高まります。無理やり介助をすると、骨折や内出血など利用者をケガさせてしまうことも。

「難しい……」
「なにか良い方法はないのかな…?」と、拘縮の方のケアについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

そこで、「介護に役立つ! 写真でわかる拘縮ケア」の監修を務め、全国の研修会や講習会で講師も行っている理学療法士・田中義行先生に「正しい拘縮ケア」について解説していただきます!
全6回にわたって連載予定の拘縮ケア。
初回である今回は、拘縮ケアの基礎知識として、拘縮の特徴や種類、原因、NGケア、正しいポジショニングのポイントなどを紹介します。

拘縮ケアで悩む介護職、家族の方はぜひ参考にしてみてください!

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【解説者プロフィール】
田中義行先生

株式会社大起エンゼルヘルプ
理学療法士 田中義行先生

上川病院勤務、江戸川医療専門学校(現東京リハビリテーション専門学校)講師、介護老人保健施設 港南あおぞら勤務を経て、現職に至る。
認知症患者の身体拘束廃止活動を原点とし、現在は、障害者の身体構造・生理にかなった介護法や拘縮を防ぐ介護技術を全国の研修会・講演会で伝え、現場での指導に力を入れている。
著書・監修書に『潜在力を引き出す介助 あなたの介護を劇的に変える新しい技術』(中法法規出版)、『これから介護を始める人が知っておきたい介助術』(日本実業出版社)、『オールカラー 介護に役立つ! 写真でわかる拘縮ケア』(ナツメ社)、『オールカラー 写真でわかる移乗・移動ケア』(ナツメ社)、『写真で学ぶ 拘縮予防・改善のための介護』(中央法規出版)などがある。

拘縮の定義

拘縮(こうしゅく)とは、寝たきりによって筋肉が縮んだり、病気によって身体の動きが制限されたりすることによって、関節を動かしにくくなる状態のこと。
正式名称は「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」といいます。

病理学的にいうと、関節包や靭帯、筋肉、皮下組織などの軟部組織に変化が起こることによって、関節の可動域が制限された状態のことです。

原因別に分けた5つのタイプ

拘縮は、原因によって下記の5つのタイプに分けられます。

  1. 筋性拘縮
  2. 神経性拘縮
  3. 皮膚性拘縮
  4. 結合組織性拘縮
  5. 関節性拘縮

介護現場では「①筋性拘縮(きんせいこうしゅく)」の利用者が最も多く、つぎに「②神経性拘縮(しんけいせいこうしゅく)」が多いです。
難しい名称なので簡単に説明すると、「筋性拘縮」は寝たきりで、ひじやひざなど全身の関節が固まっている人のこと。
「神経性拘縮」は、マヒ側の関節が固まっている片マヒの人を想定してもらえればOKです。

それでは、介護現場で多くみられる「筋性拘縮」と「神経性拘縮」を重点的に、拘縮の5つのタイプについて解説します。

田中先生
田中先生
実際に見たことはあっても、拘縮に種類があるのを知らなかった人もいるのではないでしょうか。
「種類なんて知らなくても大丈夫」と思うかもしれませんが、実は、拘縮のタイプを見極めることは非常に重要です!
なぜなら、拘縮ケアはタイプによって対応方法が変わるからです。
とっても大切な知識なので、しっかりと確認しておきましょう!

①筋性拘縮とは

筋性拘縮(きんせいこうしゅく)とは、寝たきりなど筋肉の緊張が高まることによって筋肉が萎縮し、関節が引っぱられて、動かしにくくなることで起こります。

筋性拘縮の原因は「寝たきり」

筋性拘縮の原因は、「寝たきり」にあります。
特定の病気が原因となるのではなく、認知症や衰弱、骨折などのどのような病気であっても「寝たきり」につながってしまえば、筋性拘縮になる可能性があります

では、どうして寝たきりによって拘縮が起こるのか。それは、「抗重力筋」の影響を受けているからです。

寝たきりの人にとっては、抗重力筋の働きが悪影響になる

抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のこと。

立っているときは身体の前(おなか)側と後ろ(背中)側が抗重力筋として働いているため、まっすぐな姿勢を保つことができます。
つまり、私たちは抗重力筋の作用のおかげで重力のある地球で生活できるわけです。しかし、この抗重力筋の働き、寝たきりの人にとっては悪影響となってしまいます。

仰向けの姿勢が長いと、背中側の筋肉が抗重力筋として過剰に働き続けます。ずっと働き続けた背中側の筋肉は硬く縮んでしまい、関節が引っぱられたり、身体が反ったりします。

この仕組みによって、ひじやひざなどの関節が曲がったり、背中が反り返ったりしたまま固まってしまう「筋性拘縮」となります。

抗重力筋とは……

抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のこと。
特定の筋肉の名称ではなく、機能の名称なので、姿勢・体位によって場所が変わる。
仰向けのときは、首のうしろや背中、ふくらはぎなどの下側の筋肉(一部の筋肉でななく頭から足先まで)が抗重力筋となる。
うつ伏せになると、背中とは逆のお腹側の筋肉が抗重力筋として働く。

抗重力筋は、伸び縮みをしながらバランスをとって姿勢を保っているため、仰向けのままだと収縮したままになりやすい。
ほとんどの人が仰向けで寝ても拘縮にならないのは、適度に寝返りをうっているから。

筋性拘縮にさせないためには

筋性拘縮を予防する方法は、もちろん「寝たきり」にさせないこと。
しかし、なんらかの理由によって寝たきりなっても、正しい姿勢・ポジショニングをすることによって拘縮を予防・改善することができます。

正しい姿勢・ポジショニングとは、抗重力筋の影響を考慮したもの。つまり、緊張した背中側の筋肉をやわらげるような姿勢・ポジショニングのことです。

正しい姿勢のポイントはのちほど解説しますが、詳しくは次回以降の記事で紹介しますので、参考にしてみてください。

筋性拘縮のまとめ

【特徴】首や背中が反り、ひじやひざは曲がったまま固まるなど、全身が拘縮していく
【原因】あらゆる病気・ケガ関係なく、寝たきりになること
【対応】抗重力筋を考慮した姿勢づくり

②神経性拘縮とは

神経性拘縮(しんけいせいこうしゅく)とは、脳卒中など脳神経系の病気・損傷によって筋肉が異常に緊張・麻痺することで起こります。
全身がつっぱる「除脳硬直(じょのうこうちょく)」も含まれます。

神経性拘縮の原因は、脳神経系の病気・損傷

介護現場では、マヒ側のひじが曲がり、手をグッと握ったまま固まっている片マヒの利用者を見かけることもあると思います。
このような片マヒの人は「神経性拘縮」です。

神経性拘縮の原因は、脳卒中など脳神経系の病気・損傷です。
脳卒中などの後遺症としてマヒが生じるということは、脳の運動機能を司る神経にダメージを負っているということ。この脳のダメージによる影響で、マヒ側が拘縮することもあります。

なぜマヒから拘縮になるのかというと、「連合反応(れんごうはんのう)」という現象が影響しています。

自立支援が拘縮の原因に?!

脳の運動機能を司る神経にダメージのある人が健側の筋肉を使いすぎてしまうと、マヒ側の筋肉が無意識のうちにつっぱります。これが、連合反応です。
このつっぱりが強くなると、拘縮を引き起こし、うでが伸ばせなくなったり足がつっぱったまま戻せなくなったりします。

しかし、片マヒになったとしても、必ず拘縮を引き起こすわけではありません。
健側を酷使しなければ、連合反応が起きないため、拘縮を予防することができます。

つまり、片マヒの人の拘縮理由は、健側でがんばりすぎたこと

現場では利用者のためと思って、可能な限り健側でできることを増やす自立支援を行うことが多いと思います。しかし、この支援をやりすぎて健側を酷使させると、自立支援どころか逆効果になることも……

神経性拘縮にさせないためには

では、片マヒの人を拘縮させないためにはどうすればいいのか。
ポイントは、マヒ側の反応をよく見ることです。

立ち上がりなどで健側に力を入れたときに、普段だらんとしているマヒ側のうでがギューッとこわばるなどの反応があったら、それはがんばりすぎている証拠。
腰を上げるのを手伝うなどして、健側の負担を軽減すれば、神経性拘縮の予防につながります。

田中先生
田中先生
パーキンソン病も脳神経系の病気ですが、脳卒中などから起こる神経性拘縮とは対応が変わります。
パーキンソン病の人の硬さは、正しくは固縮(こしゅく)とよばれる障害で、脳卒中から起こる拘縮とは原因が違うからです。
神経性拘縮のまとめ

【特徴】脳卒中などの後遺症による片マヒから拘縮へと発展しやすい
除脳硬直は、手足が反るように伸び、全身がつっぱる
【原因】脳卒中などの脳神経系の病気・損傷
【対応】健側の負担を軽減させる

③皮膚性拘縮とは

皮膚性拘縮(ひふせいこうしゅく)とは、やけどや手術などによって皮膚の真皮が傷つきひきつれ、関節が引っ張られることによって起こります。

皮膚性拘縮のまとめ

【原因】大やけどや大手術の後遺症
【対応】形成外科などで治療

④結合組織性拘縮とは

結合組織性拘縮(けつごうそしきせいこうしゅく)とは、皮膚下の軟部組織や靭帯、腱などが収縮・癒着することによって起こります。
代表的なものとしては、手の酷使が原因となって起こる「ばね指」や、腱膜の収縮で手指が曲がる「デュピュイトラン拘縮」が挙げられます。

結合組織性拘縮のまとめ

【原因】皮膚下の軟部組織や靭帯、腱などの組織が収縮・癒着
【対応】整形外科などで治療

⑤関節性拘縮とは

関節性拘縮(かんせつせいこうしゅく)とは、関節包や靭帯などの関節を構成する組織が炎症・損傷して起こります。

関節性拘縮のまとめ

【原因】関節を構成する組織の炎症・損傷
【対応】整形外科などで治療

田中先生
田中先生
介護現場で対応できるのも「筋性拘縮」と「神経性拘縮」の2タイプに限られます。
ほかの3タイプの場合は、早急に医療機関につなげて治療してもらいましょう。

拘縮タイプを判断するには、既往歴のチェックが重要!

拘縮はタイプによって対応方法は異なるため、利用者がどのタイプか見極めることは非常に重要です。

判別するために一番重要な情報は、利用者の「既往歴」
まずは、利用者の既往歴から「脳卒中など脳神経系の病気・損傷」の有無を確認しましょう。

下記では、拘縮タイプの判断に役立つ考え方のフロー図を紹介しますので、参考にしてみてください。

既往歴に脳神経系の病気が「ある」場合

既往歴に脳神経系の病気が「ある」場合は、ほとんど「神経性拘縮」の可能性が高いです。

左右どちらか半身にマヒがあり、マヒ側に拘縮がある場合は「神経性拘縮(片マヒ)」。
手足が反るように伸びて全身がつっぱるような全身拘縮の場合は、「神経性拘縮(除脳硬直)」です。

ひじやひざが曲がってきて、ねじれなど身体に非対称な特徴がある全身拘縮の場合は、「神経性拘縮に加えて筋性拘縮」も起きている可能性が高いでしょう。

田中先生
田中先生
筋性拘縮のみの人も、拘縮が進むにつれて身体にねじれが生じる場合も。
その違いは、ねじれのタイミングです。
「神経性拘縮+筋性拘縮」の場合は、はやい段階から身体が非対称となることが多く、「筋性拘縮」のみの場合は、あとからねじれが生じることが多いでしょう。

既往歴に脳神経系の病気が「ない」場合

既往歴に脳神経系の病気が「ない」場合で、全身拘縮している状態であれば「筋性拘縮」の可能性が高いです。

拘縮が一部であれば、ほか3タイプの拘縮である可能性が高いので、一度病院で診察を受けたほうがいいでしょう。

しかし、既往歴に情報がなくても、過去に脳卒中などを起こしている場合もあります。

下記の特徴がある人は、「脳卒中を起こしているが診断はされていない」というケースかもしれないので、要注意。

  • 身体に傾きがある
  • ろれつが回らない
  • いつも同じほうの口端からよだれが出る
  • 左右どちらか半身の動き・感覚が悪い
  • 家で倒れた経験があるが、病院には行っていない など

このような特徴がある場合は、可能であれば、脳卒中の疑いがある旨を関係者に伝えて、医師の診察を受けられるように環境を整えましょう
筋性拘縮の対応方法でうまくいかず脳卒中の疑いがある場合は、「神経性拘縮」の対応も試みてみましょう

田中先生
田中先生
病気の診断ができるのは「医師」のみ
脳卒中の特徴が出ていたとしても、「脳卒中である」と断定することはできませんので、「脳卒中の疑い」として対応しましょう。

不適切なケアが拘縮の間接的な原因に

筋性拘縮の直接的な原因は、寝たきり。
神経性拘縮の直接的な原因は、脳神経系の病気・損傷です。

そして、拘縮を助長させる間接的な原因もあります。
それが、介護者による「不適切なケア」です。

NG①強引な離床

たとえば、「筋性拘縮の人は寝かせきりにさせないために、強引にでも離床させ、車いすに移乗させましょう」と習っている人も多いのではないでしょうか?

実は、この行為は間違い。
拘縮ケアでは「寝かせきりにさせない」ではなく、「筋肉の緊張をやわらげること」が大切です。
ガチガチの身体のまま強引に離床させても筋肉の緊張はゆるみません。それどころか、さらに筋肉を緊張させるので、拘縮を進めてしまいます。
いきなり離床ではなく、まずは寝ている姿勢が楽になるように、適切なポジショニングをしましょう。楽な姿勢であれば、筋肉はゆるみます。

NG②痛みなど不快な思いをさせる

痛みなど不快な思いをさせることも、交感神経の働きが強くなって拘縮が進むため、NG行為
介助時は、利用者の表情筋肉の抵抗感を意識して、不快な思いをさせないように注意しましょう。
触れ方や関節の動かし方については、次回の記事で紹介予定なので、参考にしてみてください。

拘縮ケア「正しいポジショニング」の4つのポイント

ここからは、実際に介護現場で活用できる拘縮ケアを解説します。
何より重要なのは「正しいポジショニング」です。まずは、正しいポジショニングの重要性について解説しましょう。

一般的に拘縮ケアの基本とされているのは、「関節可動域の訓練」。そのため、硬い関節を無理に伸ばしたり動かしたりしている人もいます。
ですが、関節を無理に動かしても身体はゆるみません。むしろ、筋肉の緊張が強まるので、拘縮が進みます

では、本当に効果のある拘縮ケアとはなにか。それは「抗重力筋の対策」です。
抗重力筋の対策として有効なのが、こまめな寝返り(体位変換)。そして、筋肉の緊張がゆるむような「正しい姿勢・ポジショニング」です。

次のイラストを見てください。

ポジショニングをする前は、身体の圧が数か所に集中しています。圧が集中すると、さらに筋肉の収縮が進むため、拘縮が進みます。
一方、正しいポジショニングをすると、身体の圧が分散し、筋肉の緊張が弱まります

つまり、「正しい姿勢・ポジショニング」は、拘縮ケアにおいて必要不可欠な知識なのです。

ここでは、正しいポジショニングの「ポイント」を4つ紹介します。
詳細はこれから紹介していく予定ですので、次回以降の記事も参考にしてみてください。

田中先生
田中先生
抗重力筋を考慮した姿勢・ポジショニングは、すべてのケアに通じる考え方です。
とくに、ポジショニングに関しては筋性拘縮のケアで役立つ知識となります。

ポイント①:首

1つめのポイントはです。
まくらは首のうしろまでしっかり入っていますか?
まくらの入りが浅く首のうしろに支えがないと、筋肉が緊張して拘縮が進みます
まくらを深く入れてすき間をなくし、首の筋肉の緊張をやわらげましょう

ポイント②:肩

2つめのポイントはです。
肩のうしろにすき間があると、不安定になり拘縮が進みます
肩のうしろにすき間がないか、手を入れて確認しましょう。
すき間がある場合は、タオルやクッションをすき間に入れて筋肉の緊張をとります
肩が楽になると肩甲骨が開くので、上半身の反りや硬さがやわらぎます。

ポイント③:腰

3つめのポイントはです。
腰~背中の下にすき間があると、骨盤が前傾し呼吸がしづらくなります。
呼吸がしづらいと全身が緊張して拘縮が進むため、肩同様に、腰の下に手を入れてすき間がないか確認しましょう。

すき間がある場合は、ひざと股関節を立てましょう。
ひざ・股関節をしっかり立てると、腰がすき間なくマットレスに付きます。不安定にならないように、クッションなどを使って安定した姿勢にしましょう。

ポイント④:ねじれ・傾き

4つめのポイントはねじれ・傾きです。
首やひざがねじれていたり、肩を結ぶ線と腰を結ぶ線が平行でなかったりすると、身体に違和感や痛みが生じ、拘縮が進んでしまいます

見た目でねじれ・傾きが確認できる場合は、明らかにNG。肩や骨盤の位置を手で動かし、すぐに直しましょう

正しいケアは「介護が必要になった理由」を知ることからはじまる

正しいケアをするうえで大切なことがあります。それは、「利用者が介護を必要とするようになった理由」を把握すること。

どんな利用者であっても、介護が必要になった理由は以下の3つのどれかに当てはまります。

  • 高齢による身体の機能低下
  • ケガや病気で後遺症が残ったため
  • 慢性的もしくは進行性の病気による身体の機能低下

これらの理由に加え、生活していくうえで何らかの「人の支援」が必要であると認められたとき、要介護認定を受けられます。

田中先生
田中先生
まずは、利用者のアセスメントから既往歴などを確認し、介護を必要とするようになった理由を確認しましょう。

介護の専門性のひとつに、「利用者の生活をできるだけ良い状態で継続させること」があると思います。
たとえば、立ち上がり介助のとき。「その場で立つことができる支援」だけを目指すのではなく、「可能な限りずっと立ち上がり続けられるための支援」を目指すべきなのではないでしょうか。
そのためには、障害の特性をしっかりと知る必要があります。

片マヒの人が健側を酷使すると、健側のひざを傷めたり、マヒ側が拘縮したりする可能性があるように、障害にはそれぞれ特性があります。
その特性を把握しないままケアを行うと、誤ったケアになりかねません。

いま一度「なにが原因で介護を受けているのか」という視点で、利用者のアセスメントを確認してみてください。
そして、原因と思われる病気や後遺症について、情報を収集してみてはいかがでしょうか。

利用者のためにも、介護現場の常識にとらわれずに、本当に適切なケアを目指していきたいですね。

参考文献・サイト

  • 田中義行監修(2016)「オールカラー 介護に役立つ! 写真でわかる拘縮ケア」株式会社ナツメ社
介護職のための完全拘縮ケアマニュアル②「関節の動かし方~わき、指、ひざがラクに開くとっておきの方法」『介護職のための完全拘縮ケアマニュアル』第1回では、「正しい姿勢・ポジショニング」の重要性を解説しました。 その「正しい姿勢・ポジショ...
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