読書は私達の人生を豊かにしてくれます。
特に歴史書は密接な人間関係が描かれているものが多く、介護の人間関係に大いに役立ちます。
今回は、私が読んだ本の中で特に参考になった『新史太閤記』(著:司馬遼太郎)を挙げてみたいと思います。
目次
『新史太閤記』とは?
この本は、農民上がりの出世大名・豊臣秀吉を主人公にしたもの。
竹中半兵衛や黒田官兵衛のような有能な部下を従えて、誰もなし得なかった天下統一を成し遂げていくさまを記しています。
秀吉のその人たらし術や、考え方は現代でも参考になり、ある億万長者は「この本を繰り返し読みなさい」と進めているほどです。
この記事で少しでも興味が湧いてきたら、是非読みきってみてください。
そして実生活で当てはめて、皆様がいる介護現場を働きやすいものにして欲しいと思います。
『新史太閤記』の秀吉から学ぶべきこと
それでは、この本が介護業界で働く上でどのように役立つのか。
主人公・秀吉の生き様や行動を元に、参考にすべき点を考えていきます。
全ての人と良好な関係を築こうとする。
秀吉は「戦わずして勝つ」ために、関わるすべての人と良好な関係を築こうとします。
どうして、良好な関係を築くことに重きをおいているのでしょうか。
それは、秀吉が人に好かれる努力によって、
- ・自分の意見が通りやすくなる
- ・協力が得やすくなる
- ・自分の至らないところを指摘してもらえる
といった利点が出てくることを熟知していたためではないでしょうか。
- 自分の意見が通りやすくなる
- 人間は感情があるので、好きな人の意見は好意的に見ます。
反対に嫌いな人の意見には、例え筋が通っていても従いたくないと感じてしまうものです。
人に好かれることで、自分の意見が通りやすくなります。
しかし敵対すると、無駄なエネルギーも費やし、相手から思わぬ所で足を引っ張られる要因となります。
- 協力が得やすくなる
- 良好な人間関係は、ピンチの時に非常に頼りになります。
秀吉は大名出身ではなかったので、自分の部下を稚児の時から召し抱え、教育をしていました。
子供の頃から英才教育をしていた石田三成・大谷吉継・加藤清正などは、秀吉が天下統一を成し遂げるまでに迎えたピンチを、次々と救ってくれました。
良好な人間関係は、仕事をやりやすくしてくれるのです。
- 自分の至らないところを指摘してくれる
- 出世したり役職が上になると、注意してくれる人が少なくなります。
『新史太閤記』の中には柴田勝家との抗争の折、古くからの友人である前田利家が秀吉に優しく諭すシーンがあります。
この良好な人間関係による助言のおかげで、秀吉は勝家との抗争に勝ち、北陸を統治できたのです。
『新史太閤記』を参考に、どのように振る舞うか?
自分がどのように行動するべきかについても、『新史太閤記』は教えてくれます。
愚痴を言わず、明るく振る舞う
『新史太閤記』の中では、秀吉は明るくて陽気な性格をしています。
このため、この書籍は読んでいて気持ちがいいのです。
秀吉が出世していく中で、口に出したら愚痴になりそうなことを思う場面がありますが、秀吉は周りに対して愚痴を出すことはありません。
それは、もし愚痴の多い人間だったら天下を獲れなかった、とわかっているからではないでしょうか。
愚痴は心の中で思っているだけなら影響ありませんが、口に出すことで自分自身の運気を遠ざけると言われています。
愚痴が少なくて明るいという人間性は、それだけで人を惹きつける武器になります。
密接に絡み合う介護現場での人間関係。
時にはカッとなることもあるかもしれませんが、愚痴はノートに書いて浄化してしまい、人にはぶつけないようにしたいものです。
相手を立てる
相手を立てるとは、「相手の自尊心を尊重する」「相手の身になって考える」ことです。
新史太閤記の中で秀吉は「羽柴秀吉」という名前を使っていますが、これは「丹羽長秀」と「柴田勝家」から1文字ずつもらったものです。
2人の名前を1文字ずつ使用することで、上司である信長の部下との人間関係をも良好にし、尊敬の念を表そうとしたのです。
これに丹羽長秀は大いに気を良くして、秀吉の天下統一のために重要な役割を果たしました。
「相手の気分を良くする」ことで敵が減り、仕事だけに集中することができます。
介護の現場ではさまざまなことで職員同士がぶつかりますが、相手を立てることを忘れずに、腹が立つ相手と同じ土俵に乗らないようにしましょう。
同じ土俵に乗るということは、同じレベルになるということ。
「相手が勝ったと思ったら、自分の勝ち」ぐらいの余裕を持てるように、自分の自尊心を高めていきましょう。
相手にとって使いやすい人間になる
これは、感謝の心・初心を忘れないということです。
『新史太閤記』の中で、竹中半兵衛が秀吉に対して「信長に使われているだけではないか」と言うシーンがあります。
しかし秀吉はこれに、「愛することは使われることではございませんか」と返すのです。
秀吉にとって、使われることが無常の喜びなのです。
使われる命と書いて「使命」と呼び、それが愛されていることの証だと考える。
このように物事を深く捉えることができれば、仕事の上での学びは沢山あり人間的にも深くなります。
現状の介護業界は、大変な上に低賃金・人手不足なため、とても仕事が忙しいです。
その忙しさのあまり思考能力が低下し、頭の中が不平不満でいっぱいになるという罠に陥りやすくなります。
しかし秀吉ほどではなくても、何事も感謝の心で受け止め、今の仕事を一生懸命やることが使命だと受け止めることを習慣化する。
そうすれば、介護の大変さも「自分に任された仕事だ」と捉えることができるのではないでしょうか。
運を味方につける
秀吉は同僚だけではなく、部下に対しても同じように接していました。
大将になっても、部下に対する思いやりが、以下のような話で残っています。
ある時秀吉がトイレに行き、門番に「○○よ、お前の母親は元気か?」と門番に声をかけます。
門番は秀吉が自分の名前を知っていることと、母親の体調を知っていることに驚きながらも、「おかげさまで元気です」と返答しました。
すると秀吉は「最近は天気もいいし、お前の母親も快方に向かってくれればいいのぅ」と答え、トイレを後にしました。
その門番は涙を流し、この大将のために命を投げ出す覚悟を決めました。
このような部下に対する気配りと、上記に挙げた秀吉の魅力が、天下統一を成し遂げたと言ってもいいでしょう。
深く物事を考える、ということ
『新史太閤記』に出て来る秀吉の思考、行動が1つ身につけば、協力者がどんどん増えて、仕事もやりやすくなるのでは、と思います。
その中でもう1つ、秀吉の行動を見習って実生活に役立てて欲しいことがあります。
それは、「深く物事を考える」癖をつけることです。
介護という日々忙しい中では、自分のペースで考える時間が多くありません。
しかし、静かに深く自分の内面と対話をしていくこと・自分のペースで物事を考えることは、自分が職場で何に不満をもっているか、自分が何を求めているかを知るきっかけになります。
読書は、そのきっかけとなるものです。
ぜひ良書に触れて、「自分が本当に求めているものに気付く」きっかけにしていただければと考えています。