介護コラム

介護職の組織運営は「会津のお殿様」に学べ!

私の地元は白虎隊や会津若松城で有名な観光地・会津です。
かつてここには、古いお城を会津若松城(鶴ケ城)として築き直し、100万石に迫る大領主となった蒲生氏郷という殿様がおりました。
その氏郷がまだ2万石の日野城主であったころ、収入が少なかったため手柄を立てた家来に十分な報酬を与えることができなかったようです。

そこで氏郷は、ご馳走と風呂を振る舞って家来の労をねぎらいました。

「湯加減はどうだ?」と優しく尋ねる声が風呂の外から聞こえて、入浴していた家来はとても驚きました。
なんとその風呂は、一国の殿様である氏郷が自ら薪を炊いて沸かしていたのです。
家来は感激し、「心」で報いた殿様に忠義を尽くしたそう。そしてうわさが他の家来たちにも広がり、その風呂に入るためにみんなが仕事を頑張ったという逸話があります。
戦国の世の殿様が、家来たちのために炊いた風呂はどれだけありがたいものだったか。お金には代えられない価値があったことでしょう。
そして氏郷に家来を大切にする「心」があったからこそ、彼は後に会津の地で大領主になれたのだと思います。

職場環境の改善は「信頼関係」がカギになる

介護業界は今、問題が山積みになっています。
介護報酬の削減や利用者さんの獲得、十分に出せない給与、人員不足や人間関係などで疲弊しているスタッフ……。
問題のない事業所など、ないのが現状だと思います。
どこも表面的には上述のような問題を何かしら抱えておりますが、実は内面的な問題は事業所によって異なる場合があります。
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例えば、スタッフがすぐ辞めてしまう事業所がいくつかあったとします。
ある場所では、上司が全く現場を見ることなくすべて部下に任せきりにしてしまい、スタッフの業務は増えるばかり。評価を全くされず、モチベーションが下がっていることが問題。
また別の場所では、上司がやる気満々。部下のちょっとしたミスさえも許さず注意や指摘し、マニュアルに当てはめようとしてしまい、スタッフが萎縮してしまうことが問題。
このように、スタッフがすぐ辞めてしまうという同じ問題が表面にあったとしても、事業所によって内面的な問題が全く違う場合もあります。
もちろん、いろいろな原因があって当然なのですが。

施設管理者や現場リーダーは、職場の問題を一つでも解決すべく日々頑張っています。
しかし表面的な問題に対して表面的にしか向き合わない者には、内面的な問題からの根本的解決は難しいと私は思います。
職員がすぐ辞めてしまうからと、職員の採用ばかりに注力し、上述のような内面的な問題から避けていたら全く問題解決にはならないのです。
そして、こうした内面的な問題は、人間関係によるものが非常に多いと感じております。
この人間関係の問題を解決するには人間の内面、特に信頼関係の問題に向き合う必要があると思います。

管理職は部下の「心の」給料もアップすべし

もしあなたの上司が、今回ご紹介した会津の殿様のような人だったらいかがでしょう。
きっと「上司のためにも頑張ろう!」という気持ちになると思います。
私が思う上司として一番大切なこと。それはいつでも部下へ感謝の気持ちを伝え、お互いの心が通い合う信頼関係を作ることです。
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以前、こちらの記事でも書かせていただきましたが、上司は部下の日々の仕事ぶりを認め、感謝をしなければなりません。
例えその部下とは考えの違いから度々衝突するような関係であったとしても、その部下が働いてくれていることでその日の業務が無事こなせているのは事実です。
働いてくれていることに感謝の気持ちを素直に伝えるべきです。

きっと上司の感謝の一言が、部下の心の給料アップになると思います。そしてその積み重ねが信頼関係を築いていきます。

私たちはご利用者と心が通じ合ったサービスを追求しています。
しかしスタッフ同士や上司との心の通じ合いは、はたしてどれだけ出来ているでしょうか。
組織マニュアルやシステム作り、スタッフ採用や給料アップなど、管理者のやるべき仕事はどれも重要です。
でももう一つ、部下の心の給料アップも忘れないで欲しいなと思います。
これがあるかないかで、組織運営に大きな差が生じるのではないでしょうか。

ABOUT ME
武藤竜也
作業療法士。他業種から作業療法士へ転向し、臨床経験5年目で老健副施設長に就任する。介護業界の常識に真っ向から異論を唱え、当時の施設スタッフ全員で力を合わせて機械浴の完全廃止を達成。自ら設計したひのき風呂浴室を使った個浴ケアを通して、寝たきりのご利用者にも人として当たり前のお風呂を提供する。現在はフリーランスとなり、医療介護施設ケアアドバイザーとしての活動と、医療福祉業界専門パソコンサポーター むとうドットコムの経営をし、医療介護施設のケアの質向上やリハビリ・介護の仕事の楽しさを伝えている。