介護コラム

介護をするとき、あなたは相手の生活に土足で上がり込んでいる

今回は、利用者さんや患者さんの取り巻く環境について考えてみたいと思います。

患者さんが日々を過ごす病室の環境、快適に出来ていますか?

まず、病室の状況について考えてみます。広さやベッドの幅、明るさ、音、温度や湿度など、取り決めがあるのでしょうか?

一人あたりの床面積については、医療法施行規則に6,4㎡という規定があります。広いでしょうか。狭いでしょうか。
明るさも100ルクスと決まっていたり、温度や湿度についても取り決めはあります。
しかし病室の広さ以外は法定されているわけではないので、守られているとは限りません。
明るさは、病院はやはり薄暗いように感じます。照明をオレンジ色や落ち着く色にする工夫も、患者さんが一日の大半を過ごす病室や病院の待合室には必要ではないでしょうか。

音も50dB以下という基準があります。患者さん側は、音をとても気にします。
看護師や介護者の足音はとても響きますし、蛇口の水滴の音などの普段の生活では気にとめない生活音も、患者さんや利用者さんにとっては、安眠・安楽な状態を妨害するものになってしまっているということです。
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みなさんもしらずしらずにそんな行為をしていませんか。意識して、心掛けすることはとても重要です。

安全性はADLとQOLの後で

それは、患者さんの病室=生活環境の場として考えているからです。
患者さんは、一日の大半を病室で過ごします。はたして環境の基準を法定するだけで、いい空間になるでしょうか。なぜ、いい環境にするのでしょうか?

それは、やはり患者さんの安全を最優先に考えているからだと考えます。
患者さんの安全性を錦の御旗にして、拘束ベルトを使うなどの判断をしている病院や介護施設はありませんか。
みなさんならどうするのが正しいと考えますか。ぜひ、考えて頂きたいと思います。

ベットを必ず出入りする所から見える位置に移動させたり、離床センサーをつけたりする工夫をしてから、安全性を検討する段階に入るのだと考えます。
患者のADLやQOLを低下させないことも、安全性と同じぐらい考えてほしいです。
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患者さんの立場に立つ、細やかなケアを

また、介護をするということは、相手の生活環境に土足で踏み入るということ。それには注意が必要です。
知らぬ間に土足で入り込む可能性はとても大きいです。それには、適度な距離感も必要だと思います。
仲良くなる=信頼感を得られるということではないです。相手への敬意や尊重する姿勢は忘れてはなりません。

注意しすぎるぐらいが医療者も介護者にもないといけない。注意しすぎるぐらいが、丁度よいと考えます。

先日近所でこんなことがありました。近所のおばあちゃんが、私の家の前を日に何度も横切るのです。
「どうしましたか?」と聞くと、「うちにデイサービスの職員が来て、トイレに鍵をかけてしまった」とのこと。
在宅に足を踏み入れる介護の職員の方は、細心の注意をはらいながら仕事をして頂きたいなと思います。
こういうことがあると、患者さんは自分の家を追い出されているようで、とてもみじめな気持ちなってしまいます。
自分の家を自由に使えない難民状態の方を増やさないためにも、生活の場に入る時は特に注意して欲しいです。

病室だから、患者さんの家だからという変な固定観念に縛られずに、この環境で患者さんだったらどう思うか?という視点で対応してもらえたら、もっといい介護につながるのではないかと感じます。

ABOUT ME
檜物琢眞
ハイ・モ ジャパン代表。介護現場にも入る“医療・介護FP”。 7年間の祖母の介護を契機に、介護の魅力の虜になる。「介護は、お金以外のたくさんの“報酬”が得られるもの」という素晴らしさ・介護のイメージを変える活動も行う。法律事務所、市役所等勤務を経て、ハイ・モ ジャパンを設立。自身もヘルパーや宅建の知識(資格)等を幅広く持つ。福祉の精神である「ゆりかごから墓場まで、その先の相続等レスパイトケアも見据えたワンストップサービス」を目指す。「ケアプランを見直す時に、ライフプランも見直そう。」が、キャッチフレーズ。 複数の介護施設で職員教育講師を担当する。