ケアプランの説明やモニタリングの際、利用者や家族から「何を言っているのか分からない」と言われたり、こちらの意図が十分に伝わっていないのでは、と思ったことはありませんか。
一生懸命説明しても伝わらないのは、介護の専門用語が難しいからなのかもしれません。
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利用者や家族には「ホーカンさん」が訪問看護師のことだと分からない
介護の勉強を始めた時、QOL、ADL、PTなど言葉の頭文字を連ねた言葉や、仰臥位、端座位、離床、移乗など、それまでの生活では使ったことのない言葉を必死に覚えなくてはなりません。
実際に介護の現場に入ると、それらが“普通の言葉”として使われているので、最初はとまどうものの、いつしか「○○さんのADLは…」と、スラスラ言えるようになります。
けれど、その“普通の言葉”は、介護や医療の現場で使われる専門用語。無意識のうちに使ってしまうと、一般の人には理解してもらえないことが多いのです。
たとえば利用者や家族に「訪看さん」と言ってしまうことはないでしょうか。
介護の世界で働く人には「訪看さん=訪問看護師」ですが、利用者や家族には聞きなれない言葉。「ホーカンさん、って誰? 何だろう?」となってしまうのです。
ここでひとつ実例を紹介しましょう。
要介護3の利用者の家族が、健康状態とお通じの問題を相談したところ、ケアマネジャーから
というアドバイスを受けました。
けれど、「訪看さん」や「バイタルチェック」、「摘便」などの専門用語がネックになって利用者の家族は「ホーカンさん? バイタルチェックって何? テキベンって、適度にいい便がでることなのかな」と思ってしまったのです。
その結果、的確なアドバイスを受けているのに、
「ケアマネさんが何を言ってるのか、よく分からない」
「何が分かっていないのかさえ分からない」
という状況になってしまったといいます。
専門用語を日常の言葉に“翻訳”してコミュニケーションをスムーズに
こちらの意図ををスムーズに理解してもらうためには、つい使ってしまいがちな介護の専門用語を日常の言葉遣いに“翻訳”してみましょう。
先ほどのやり取りも、
↓
「訪問看護師さんなら、血圧や体温、脈拍を測って健康状態をみてくれますし、排便コントロールもしてくれますよ。便秘がひどい時は、摘便といって、指で便を掻き出すこともやってもらえます」
と“翻訳”します。
このように言い換えて言葉を補えば、専門用語を知らなくても、こちらの言いたいことが伝わるでしょう。
「この言葉で通じるか」を頭の片隅で常に意識して話す
先ほどの「訪看さん」のほかにも、介護の現場でよく使われる表現ほど、口にしてしまいがちになります。
例としては
↓
「寝たきりにならないためには、ベッド(布団)から出ることが一番です」
↓
「ベッドに座った状態から車椅子に移る」
↓
「リハビリには、歩行練習をしてくれる理学療法士さんが来てくれます」
と、利用者・家族の方々に通じる言葉に置き換えましょう。
利用者や家族と話す時には、「この言葉で通じるか」を頭の片隅で常に意識して、平易な表現を心がけたいものです。
一生懸命作ったケアプランやアドバイスを正確に理解してもらうためにも、普段何気なく使っている介護の専門用語を一度チェックしてみませんか?