「そりゃ、ボランティアに行くのが一番いいよ!」
介護職員初任者研修を修了し、今後介護職に就くか就かないか悩んでいた私に、講師の先生たちは口をそろえて言いました。
当時の私は、末期がんを患った義母の自宅介護の助けに……と資格を取っただけ。義母を亡くした後のことなど、考えてもいませんでした。
「せっかくの資格がもったいない」と言われても、「他人様のお世話など無理」と揺れていた私。
しかしタイミング良く、友人から「うちのデイでボランティアを募集してるよ」と誘われたのです。介護離職で時間だけはあった私は、「続けるかどうかは自由だから」と言われるまま、友人が勤めるデイサービスにお邪魔することになったのです。
目次
施設の現実!一度は挫折しかけたボランティア
そこは新しくできたばかりの施設でした。リゾート地をモチーフに作られ、何もかもがオシャレで清潔。
そのため最初の印象は「私の親もこんな施設に通わせてあげたかった!」でした。
しかしその思いは、数日で崩れ落ちることとなります。
とにかく「新設は忙しい!人手が足りない!」
当初私は個別レクリエーションの補佐につく予定だったのですが、いきなり一人で講師を任されることに。
しかも数日で職員の見守りも無くなり、自腹出費も増え、さすがに辞めようと考えるも、そのあまりに当たり前の扱いに「もしかしたら自分の感覚がおかしいの?」と悩むように……。
これまでの私なら、そこで諦めていたことでしょう。ところがこの時、思ったのは「本当にこれで終わりにしていいのか!?」でした。
そこには義母の介護へ後悔もありました。しかし一番の悔いは、ご利用者さんとの会話の楽しさを手放すこと。
「自分を必要としてくれる人がいる歓び」は、何物にも代えがたかったのです。
それで私は、試しにと他の施設も覗いてみることにしました。
ボランティア活動で見つけた、笑顔溢れる職場
次にお邪魔したのは、ボランティアを何年も受け入れている老舗のデイサービスでした。
施設の説明や月間スケジュールの紹介、またロッカーの貸出しなど、前の施設にはないうれしい対応がたくさん。お茶も出していただき、職員の見守りも万全です。
ただ一点だけ個人的に受け入れらないところが。
それは、職員から幾度となくかけられる「大丈夫。どうせみなさん(=ご利用者様)、すぐ忘れますから」という言葉。
そのためか認知症が進んだ人への注意が怒号に聞こえることもあり、当然「恐怖」を刷り込まれたご利用者様はそれを忘れることが出来ず、会う度私にその職員の悪口言い続けるのでした。
一長一短。徐々にですが、施設にはそれぞれ違った顔があることが見えてきました。
結局私はこの後もボランティア先を5ケ所に増やし、必要な資格を取りながら、週4日ペースで施設に通い、勉強の日々を10ケ月近く続けました。
そして現在は、情報通のボランティアの大先輩が「あの施設は、絶対あなたにむいてるわよ!」と勧めてくれたデイサービスに勤務しています。
決め手は「パート職員の笑顔」。
管理者やチーフがビジネススマイルを習得しているのは当然ですが、パート職員は利用者様に背中を向けた途端に表情が無くなる場合が多いのです。それは利用者様にとっても、また働く職員にとっても大変居心地が悪いもの。
しかしここはいつもみんな「えびす顔」。そして思った通り、常に穏やかなこの施設は離職者も少なく、地域で一番の稼働率を誇るデイだったのです。
ボランティアは「両者の視点」を持てる
今も私は職員をしながら、月に数回ボランティアで高齢者サロンや有料老人ホームを回っています。
それはボランティアが、常に「訪問者」であるからです。これは介護側でありながら、ご利用者様やその家族の目線に近いということではないでしょうか。
- 「あの職員、挨拶もしなければ目も合わせない」
- 「またご利用者様を放置している」
- 「怒鳴ってる」
- 「私語の高笑いがうるさい」
……など、多忙を言い訳にする職員には仕方のない光景かもしれません。
でも私は気にしたい。そして反対に
- 「こんなに優しく声掛けしてもらえた」
- 「困ったことをすぐに気づいてもらえた」
- 「感謝された」
- 「必要とされた」
というあたたかな対応も学びたいと思うのです。
これから介護の世界に入る人も長いキャリアがある人も、一度ボランティアの世界に足を踏み入れてみませんか?
きっと「新鮮な光景」があなたを迎えてくれると思いますよ。