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「看護小規模多機能型居宅介護」とは? 小規模多機能にプラスαのサービス

年々高齢化が進んでいる我が国では、在宅介護を希望する高齢者も増加傾向にあります。
しかし、中には医療的処置を必要とする方もおり、ひとりで在宅生活を送るのが難しいというお悩みも聞くようになりました。

「胃ろうや喀痰吸引が必要なのに、日中は家族がいないから頼めない……」
「短時間でいいから、1日に複数回訪問してケアをしてもらえたら、在宅生活ができるのに……」
そんなニーズに応えて生まれたのが、看護小規模多機能型居宅介護、通称「看多機(カンタキ)」です。

今回の記事ではこの「看護小規模多機能型居宅介護」について、どのようなサービスなのか? 小規模多機能型居宅介護とどう違うのか? などを詳しくご紹介します。

看護小規模多機能型居宅介護とは

看護小規模多機能型居宅介護は、「通い」「泊まり」「訪問」3種類のサービスと「訪問看護」サービスを組み合わせて提供する複合型サービスです。
主治医と看護小規模多機能型居宅介護事業所の密接な連携のもと、医療行為も含めたさまざまなサービスを24時間・365日利用することができます。

看護小規模多機能型居宅介護は2012年の介護保険法改正により、地域密着型サービスのひとつとして位置づけられました。
当初の名称は「複合型サービス」でしたが、具体的なサービス内容がわかりにくいという指摘から、2015年の介護報酬改定に伴って「看護小規模多機能型居宅介護」に変更されています。
介護業界では略称として「看多機(カンタキ)」と呼ばれることが多いです。

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カイゴン
地域密着型サービスの「小規模多機能型居宅介護」と「訪問看護」を組み合わせたサービスだと考えるのがわかりやすいゴン。

対象となるのは、事業者と同一の市町村に住んでいる高齢者のうち、要介護1~5の認定を受けた方
認知症患者の方も利用することができます。

サービス誕生の背景

看護小規模多機能型居宅介護が作られたのは、医療ニーズの高い利用者の状況に応じてサービスを組み合わせ、住み慣れた地域での療養と生活支援を行うためです。
具体的には以下のようなニーズに応えることを目的としています。

  • 退院直後の在宅生活へのスムーズな移行
  • がん末期等の看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続
  • ご家族に対するレスパイトケア、相談対応による負担軽減

看護小規模多機能型居宅介護では事業所に所属するケアマネジャーが「通い」「泊まり」「訪問(看護・介護)」を一元的に管理しています。
そのため、医療を必要としている利用者さんやご家族の状況に合わせて、介護と看護の両面から柔軟にサービスを組み合わせることができます。

カイゴン
「通い」「泊まり」の施設内での介護サービスでも、医師の指示書をもとに看護師による看護ケアが受けられるゴン!

看多機で提供されるサービスの内容は?

利用者さんやご家族の療養生活を支援し、心身機能の回復維持・向上を目指しながら自立した生活の支援をすることを目的とした看護小規模多機能型居宅介護。
ここでは施設への「通所」、短期間の「泊まり」、利用者宅への「訪問介護・看護」を組み合わせることで、利用者さんが要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らしていけるようにしています。

「通所」「泊まり」「訪問介護」

看護小規模多機能型居宅介護のうち、「小規模多機能型居宅介護」にあたる3つのサービス内容は主に以下の通りです。

  • 食事、排泄、入浴の介助
  • 調理、洗濯、掃除等の家事支援
  • 生活等に関する相談対応
  • 利用者さんの健康管理
  • 機能訓練

小規模多機能型居宅介護と同様に、看護小規模多機能型居宅介護ではひとつの事業所に登録可能な利用人数は29名までと決められています。
「通所」「泊まり」「訪問介護」もすべて同じスタッフが提供するため、大勢の人と関わるのが苦手な方でも利用しやすい仕組みとなっています。

「小規模多機能型居宅介護」とは? 泊まり・通い・訪問がひとつに年々高齢化が進んでいる我が国では、在宅介護を希望する高齢者も増加傾向にあります。 そのため「利用したいショートステイが満員で、使いたい...

「訪問介護」

看護小規模多機能型居宅介護では、さらに「訪問看護」のサービスも受けることができます。
どのようなサービスが提供されるのか、具体的には以下の通りとなります。

  • 健康状態のアセスメント
  • 心理的な支援
  • 医療的ケア
  • 入退院時の支援
  • リハビリテーション看護

など

「看多機」と「小多機」、どう違う?

看護小規模多機能型居宅介護は小規模多機能の基本方針に加え、訪問看護の基本方針を踏まえた運営をしなければならないという基本方針があります。
つまり「通い」「泊まり」「訪問介護」については、小規模多機能型居宅介護とサービス内容はほとんど変わりません。
大きな違いは、やはり3本柱であったサービスに「訪問看護」という4つ目の柱が加えられていることでしょう。

これによって最も大きく変わるのが、働く人、つまり人員基準です。

小規模多機能型居宅介護では、看護師または准看護師は常勤を要件としておらず、毎日配置しなくてもよいとされています。
しかし看護小規模多機能型居宅介護の場合、以下のように手厚い看護職員の配置が義務付けられています。

看護職員 常勤換算で2.5名以上(1名以上は常勤の看護師または保健師)の配置が必要です。
訪問看護ステーションと一体的に運営している場合は兼務可。
日中 通いサービス:利用者3名に対し従業者1名以上(常勤換算)
訪問サービス:従業者2名以上(常勤換算)
※通いサービスおよび訪問サービス提供のうち、それぞれ1名以上は保健師、看護師または准看護師とする
夜間 泊まりサービス・訪問サービス:従業者2名以上(うち1名は宿直勤務可)
※夜勤・宿直の看護配置基準は設けず、必要に応じた対応体制で可

自己負担はいくら? 看多機の月額料金

看規模多機能型居宅介護は介護保険サービスのひとつです。
そのため、利用者さんの自己負担額は基本的に1割ほど(一定以上の所得がある場合、2割または3割)で、食費や宿泊費・おむつ代などの日常生活費は別に負担する必要があります。

自己負担額(1単位=10円、1ヵ月、1割負担の場合)
要介護1 12,341円
要介護2 17,268円
要介護3 24,274円
要介護4 27,531円
要介護5 31,141円
カイゴン
認知症対応型通所介護事業所と同一建物に居住する利用者さんは、これより少し少額になるゴン。

看護小規模多機能型居宅介護のメリット

看護小規模多機能型居宅介護を利用することで、利用者にどのようなメリットがあるのか見てみましょう。

サービス別に手続きする手間が省ける

在宅での生活を続ける上で「通所」「泊まり」「訪問介護・看護サービス」は欠かせないものですが、それぞれ独立した別の事業所と契約するとなると、結構な手間がかかります
サービスの利用状況が変われば、都度ケアプランも作成し直さなければなりません。

しかし看護小規模多機能型居宅介護であれば、これら4つのサービスを一度に組み合わせて利用することができます
変化があれば、すぐにケアマネジャーがサービスを臨機応変に組み合わせて提供してくれます。急な「泊まり」や夜間の訪問看護・介護に対応できるのは助かりますよね。

利用料金も月毎の定額制ですので、利用頻度や回数による増減もありません。
介護料金が膨らみ過ぎないのも安心です。

同じスタッフが運営してくれる

看護小規模多機能型居宅介護では、「通所」「泊まり」「訪問介護・看護」のどのサービスも、運営している事業所は同じです。
そのため、基本的には顔なじみのスタッフからサービスが受けられるので、利用者さんも安心して利用できます。
また、介護職員と看護職員は同じ事務所の職員。他業種との連携も取りやすく、職員も安心して働くことができます。

少人数制のためケアがきめ細やか

看護小規模多機能型居宅介護では利用人数に上限が設けられており、施設内で一緒に過ごす他の利用者さんも少なめです。
そのため、家庭的な雰囲気の中で、一人ひとりにあったきめ細やかなケアを受けることができます。

先述の通り4つのサービスを担当するスタッフが同じ事務所の職員であるため、職員同士の連携できめ細かい対応がしやすい環境である、と言えるでしょう。
何か変化が起きたときにも、すぐに気づいてもらいやすいです。

医療ニーズの高い方でも安心

看護小規模多機能型居宅介護の最大のメリットは、高度な医療が必要な利用者さんでも受け入れ可能なこと。
看護小規模多機能型居宅介護の誕生により、日常的に医療や看護への依存度があがってしまった利用者さんも、自宅での生活を継続できる可能性が広がりました。

看護小規模多機能型居宅介護では看護職員が毎日配置されているので、何かあったときの初動の対応にも安心感があります。
看護師でなければ対応できない処置があることを考えると、大きな強みであると言えます。

編集者より

看護小規模多機能型居宅介護は今後、地域包括ケアシステムの中心を担うサービスとなっていくことが期待されています。
国の医療政策の転換によっても在宅療養患者が増加している昨今、高齢者がいかにして自宅で暮らせるように支援していくか、が大きな課題となっているのです。

看護小規模多機能型居宅介護は、医療ニーズが高くなっても在宅での生活を希望する方にとって、これからますます代えがたいサービスとなっていくでしょう。

参考文献・サイト

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