介護の資格

さまざまな利用者に対応!お出かけをサポートする「ガイドヘルパー(移動介護従事者)」のすべて

ガイドヘルパー」という資格をご存知ですか?
障害があることが原因で自分ひとりでの外出ができない利用者さんに対し、そのお出かけに必要な介助を行う専門職のことを指します。
日々の買い物から息抜きの散歩、休みの日の旅行など……毎日の生活において、そして人生の楽しさを考える上で、「家から外へ出かける」のはQOLの向上に欠かせない重要な行為です。

そんな大切なイベントをサポートするガイドヘルパーとはどのような仕事をするのか? 今回の記事で紹介します。

ガイドヘルパー(移動介護従事者)とは

ガイドヘルパーとは、さまざまな障害によってひとりでの外出が困難な利用者さんに対し、必要なサポートや介助を行う介護職のこと。
具体的な支援として挙げられるのは、買い物や通院、通勤・通学といった日常生活の中で生じる外出の付き添いとサポート。その他、散歩や旅行などの余暇活動にも同行することがあります。

ガイドヘルパーは通称で、正式名称を「移動介護従事者」といいます。障害者総合支援法に基づく資格です。
2006年10月からは外出介護サービスが市町村の実施する地域生活支援事業となったため、ガイドヘルパーが行うサービスの要件も各市町村で判断されるようになっています。

対応する利用者さんが変わる! ガイドヘルパーの種類

ガイドヘルパーが対応する利用者さんは「障害によってひとりで外出するのが難しい」という背景を持っていますが、それがどのような障害であるのかによって、サポートの方法も注意する点も変わります。
そのため、ガイドヘルパーの中でもそれぞれ利用者さんの障害に応じて、「視覚」「全身性」「知的」の3種類に分けられているのです。

視覚障害者(児)ガイドヘルパー

視覚障害によって移動が難しい利用者さんを対象とするガイドヘルパーです。
近年はサポートの管轄を同行援護従業者に移しています。

外出時に同行押して移動のサポートを行うほか、移動時や外出先で必要な情報も提供します。
ことばによる状況説明や標識等の代読、外出先での外出なども支援の一環です。
また、外出先で必要となる排泄や食事などの生活動作のサポートも行います。

全身性障害者(児)ガイドヘルパー

四肢の機能障害によって移動が難しい利用者さんを対象とするガイドヘルパーです。
脳血管障害や事故による脊椎・頸椎損傷の後遺症、生まれつきの脳性麻痺、ALSや筋ジストロフィーなどの進行性疾患など、利用者さんの背景はさまざま。
移動のほか、外出先で必要な排泄や食事の介助も行います。

知的障害者(児)ガイドヘルパー

知的障害や精神障害を持つ利用者さんの外出をサポートするガイドヘルパーです。
近年はサポートの管轄を行動援護従業者に移しています。

一口に知的障害と言っても、興味を持つものやコミュニケーションの取り方、記憶力や判断力は個人差があります。自分の担当する利用者さんの特徴に合わせた、適切な支援が必要です。
中には幼少期から外出介護サービスを余暇活動に利用し、ガイドヘルパーとのコミュニケーションを通じて将来的な自立や社会参加を目指す子どももいるようです。

カイゴン
カイゴン
利用者さんの年齢も障害もさまざまだゴン。一人ひとりに適した支援のためには、状況に対する深い理解と、利用者さんとの密なコミュニケーションが大事ゴン。

ガイドヘルパーの仕事内容とは?

ガイドヘルパーの仕事は、障害を持つ利用者さんが外出する際に必要なサポートを行うことです。
対象となる利用者さんがどのような特性の障害を持っているかによって支援の内容は変わりますが、主に以下のようなサービスが挙げられます。

ガイドヘルパーの仕事内容
  • 車いすの介助
  • 切符の発券やルート検索など、交通機関を利用する際の介助
  • 外出に伴う衣類の着脱
  • 外食時のメニューや買い物時の値段表などの代読
  • 排泄、食事などの生活動作の介助

どんなところで活躍できるの?

ガイドヘルパーの主な勤務先に上げられるのは、外出介護サービスを行っている訪問介護事業所や通所・入所の障害者支援施設です。
正規職員として働く場合には、ホームヘルパーや介護士など、他の介護職と兼務する形で就職することになります。
「外出介護サービスも行っている施設・事業所の職員として、利用者さんの移動介助も行う」というのが主な働き方になるようです。

ガイドヘルパーとしての業務のみを行いたい場合には、パートやアルバイトといった非正規雇用での働き方を選択することになります。

明美
明美
ガイドヘルパーの資格を持っていることで、就職するときに「外出介護の知識とスキルがある」と思ってもらえるとよ。アピールポイントが増えるから、スキルアップだけじゃなく、就職にも有利ばいね!

ガイドヘルパーになるには? 研修内容や必要な資格は?

ガイドヘルパーの資格を取得するためには、各都道府県や指定された福祉系の学校、社会福祉協議会等で実施されている研修を受け、これを修了する必要があります。
費用や会場は主催団体によって異なりますので、受講の際にはよく注意しましょう。
※講座内容の一例を示しますが、開講日数などは講座によって異なる場合があります。

カイゴン
カイゴン
ガイドヘルパーの中にも「視覚障害者(児)ガイドヘルパー」「全身性障害者(児)ガイドヘルパー」「知的障害者(児)ガイドヘルパー」と種類があるゴン。障害の種類によって学ぶ内容も変わるから、研修課程もそれぞれ別なんだゴン。

【視覚】同行援護従業者研修

視覚障害を持つ利用者さんの介助を行うためには、同行援護従業者研修の一般課程を修了している必要があります。
この研修はかつての視覚障害者(児)ガイドヘルパー養成研修にはなかった「情報支援と情報提供」「代筆・代読の基礎知識」というカリキュラムを追加したもの。
訪問介護事業所等で視覚障害者(児)ヘルパーとして勤めるためには、研修を修了し、同行援護従業者の資格を取得しなければなりません。

講義(12時間)
視覚障害者(児)福祉サービス 1時間
同行援護の制度と従業者の業務 2時間
障害・疾病の理解Ⅰ 2時間
障害者(児)の心理Ⅰ 1時間
情報支援と情報提供 2時間
代筆・代読の基礎知識 2時間
同行援護の基礎知識 2時間
演習(8時間)
視覚障害者の移動介助にかかわる基本技能 4時間
視覚障害者の移動介助にかかわる応用技能 4時間
カイゴン
カイゴン
ここからさらにキャリアアップを目指すなら、応用課程の研修も受けるといいゴン。
応用課程は一般課程を修了した上でさらに「障害・疾病の理解Ⅰ」「障害者(児)の心理Ⅰ」の講座を受け、「場面別の基礎・応用技能」と「交通機関の利用」に関する演習を受けることで修了できるゴン。
明美
明美
同行援護従業者研修の応用課程を修了すると、視覚障害者への外出支援を行っている事業所でサービス提供責任者になることもできるとよ!

【全身性】移動介護従事者(ガイドヘルパー)研修

全身性の障害を持つ利用者さんには、移動介護従事者(ガイドヘルパー)養成研修や全身性障害者ガイドヘルパー養成研修が必要になります。研修の名前は各自治体や講座の主催団体によって異なるので、研修を受ける前に内容を確認してください。

全身性の障害の場合、移動の際に身体介護を必要とすることが多いため、研修のカリキュラムにもその内容が盛り込まれています。
そのため、すでに介護福祉士や介護職員初任者研修といった資格を取得している場合は、受ける科目が免除されることもあるようです。

講義(12時間)
障害者福祉に関する制度およびサービス 3時間
身体障害者ホームヘルプサービスに関する知識 3時間
サービス利用者の理解 3時間
移動支援の基礎知識 3時間
演習(4時間)
車いすでの移動支援にかかわる技術 4時間
カイゴン
カイゴン
障害者福祉の制度、ホームヘルパーの職業倫理、利用者さんの疾病や心理の理解……研修ではたくさんのことを学べるゴン。
明美
明美
移動支援の知識と技術は、講義でも演習でも触れるからしっかりチェックたい。

【知的・精神】行動援護従業者研修

2018年より、知的障害・精神障害・発達障害を持つ利用者さんの外出支援を行うためには、行動援護従業者養成研修の修了と実務経験1年以上が必要になりました。

これまでは介護職員初任者研修の修了者であれば行えた知的障害者の外出介助ですが、これからはますます専門的な知識や技術を学ばなければなりません。

講座(10時間)
強度行動障害がある者の基本的理解 2.5時間
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 3.5時間
強度行動障害のある者へのチーム支援 3時間
強度行動障害と生活の組み立て 3時間
演習(14時間)
基本的な情報収集と記録等の共有 1時間
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解 2.5時間
行動障害の背景にある特性の理解 2.5時間
障害特性の理解とアセスメント 2.5時間
環境調整による強度行動障害者の支援 3.5時間
記録に基づく支援の評価 1時間
危機対応と虐待防止 1時間
カイゴン
カイゴン
知的障害者(児)ガイドヘルパーの場合は、研修より演習の方が長いゴン。
明美
明美
利用者さんごとの個人差が一番大きいからかもね。

利用者さんの「楽しみ」を応援するガイドヘルパーのやりがい

ガイドヘルパーの仕事内容は外出時の介助。男女や年齢を問わずフットワークの軽い人には向いている職務であると言えます。
利用者さんの余暇活動に同行し、楽しまれている姿を見られるのもやりがいになるでしょう。

また、施設内ではなく出先という、イレギュラーやトラブルも起こりやすい場で利用者さんをサポートすることは、介護職にとっても貴重な経験になるはず。
利用者さんと密なコミュニケーションを取りながら、有意義なお出かけの時間を提供してあげられるといいですね。

編集者より

知的障害者(児)ガイドヘルパーとして働くためには実務経験も必要ですが、基本的にガイドヘルパーの資格は数日のうちに取得することができます。
介護福祉士などの資格がある場合は科目免除もあるため、比較的取得のハードルが低いと言えるでしょう。

また、視覚障害者(児)ガイドヘルパーとして働くために必要な同行援護従業者の資格は、同行援護特定事業所加算の人材要件の対象として厚生労働省に定められています。
資格を持っていることで就職にも有利になるので、スキルアップ・キャリアアップを目指す介護職の方はぜひ資格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

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