2015年より一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が介護福祉士の上位資格として認定を開始した民間資格。それが認定介護福祉士です。
介護職のリーダーの教育や、介護サービスの中核者として他職種連携で高い能力を発揮することを期待して誕生した新しい資格。
その役割や取得方法、研修の詳細情報、介護福祉士との違いなどを詳しく解説します。
目次
認定介護福祉士とは
認定介護福祉士は、一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が2015年12月より定めた、介護福祉士の上位資格に位置付けられる民間資格です。
介護福祉士の中でも、介護と医療の連携強化や地域包括ケアなどに対応するための知識や技術を習得した者を指します。
サービス形態を問わず多様な利用者に対応し、質の高い介護を実践したり介護サービスをマネジメントしたりすることが望まれています。
2019年2月時点での資格取得者は55名となっています。
なんのため?認定介護福祉士の役割
介護福祉士のリーダー的存在として位置づけられている認定介護福祉士。
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構では、その役割を以下のように定義しています。
これまでの経験と修得した幅広い知識等を活用し、利用者、職場、他専門職、地域など、幅広く『かかわる』『支援する』使命を担っています。
認定介護福祉士は介護現場に限らず、事業所内外でさまざまな役割を期待されています。
以下でその役割を詳しく見ていきましょう。
認定介護福祉士の役割
多様化する利用者さんのニーズや高度化する介護に対応できる質の高い介護の実践、介護職員の教育・指導、医療職等との連携など、幅広い役割を担う認定介護福祉士。
その役割についてまとめました。
- 施設・事業所のサービスマネージャー
- ユニットリーダーやサービス提供責任者など介護職の小チームのリーダーに対する教育指導や介護サービスマネジメントを行い、介護サービスの質を向上させる役割
- 介護サービス提供における連携の中核者
- 地域包括ケアを推進するため、介護サービス提供において医師や看護師、リハビリ職といった他職種との連携・協働を図る役割
- 地域における介護力向上のためのアドバイザー
- 地域における、施設・事業所、ボランティア、家族介護者、介護福祉士等の介護力を引き出し、地域の介護力の向上を図る役割
認定介護福祉士のねらい
認定介護福祉士の資格を設けるねらいは、下記の4つが挙げられます。
- 専門職として介護福祉士の資質を高めることで、利用者さんのQOLの向上、医療職等の連携強化や適切な役割分担の促進、地域包括ケアの推進等をはかり、介護サービスに対する高度なニーズに応える
- 他職種に対して論理的にわかりやすく介護の情報を共有したり、他職種からの情報や助言を適切に介護職のチームで共有することで、スムーズに他職種との連携し、その内容をより適切に介護サービスに反映できる
- 介護福祉士の資格取得後も介護業界で継続的に自己研鑽する拠り所となる
- 介護福祉士の資格取得後のキャリアパスの形成となる
介護福祉士を取得後も継続的に介護の質を高めて、リーダーとして活躍したい人は、認定介護福祉士のねらいや役割に適した人であるといえるでしょう。
認定介護福祉士になるには
認定介護福祉士になるには、下記の3つの条件を満たす必要があります。
- 介護福祉士としての実務経験が5年以上
- 認定介護福祉士養成研修(※)で600時間の研修を修了
- 研修終了後に認定申請し、審査に通過
※認定介護福祉士養成研修を受講するためには、介護福祉士ファーストステップ研修等の研修を受講する必要があります。
認定介護福祉士養成研修とは
認定介護福祉士養成研修は「認定介護福祉士養成研修Ⅰ類」と「認定介護福祉士養成研修Ⅱ類」で構成され、どちらも修了する必要があります。
「Ⅰ類」と「Ⅱ類」合わせて600時間のカリキュラムがあるので、研修修了するまでに1年半程度かかります。
受講スケジュールはばらつきがあるため、事前に確認しておきましょう。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類とは
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類では医療やリハビリ、福祉用具・住環境、認知症、心理・社会的支援等の新たな知識を修得し、他職種連携も含めた介護実践力を高めます。
また、ユニットリーダーなど介護職小チームのリーダーに対して、利用者さんの尊厳の保持や自立支援等の考えで実施する介護課程の展開を指導するために、必要な知識を獲得します。
- 介護福祉士としての実務経験が5年以上(ただし、科目によっては実務経験を問わない場合あり)
- 現任研修受講による内省や学習習慣の獲得※
- ユニットリーダーやサービス提供責任者など介護職の小チームのリーダーとしての実務経験を有することが望ましい
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
※「2.現任研修受講による内省や学習習慣の獲得」とは、介護福祉士ファーストステップ研修などで100時間以上の研修を受講し、レポート提出や試験を受けることです。200時間以上の研修で認定介護福祉士認証・認定機構が認めた研修の場合はレポート提出や試験が免除されます。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラム内容
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラムは合計345時間あります。詳細は下記の通りです。
履修科目の領域名 | 科目名 | 時間数 |
---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 15 |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 30 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 30 | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 10 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20 | |
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 30 | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 30 |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 30 |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 30 |
地域生活の継続と家族支援 | 30 | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 30 |
個別介護計画作成と記録の演習 | 30 | |
自職場事例を用いた演習 | 30 | |
合計 | 345 |
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類とは
Ⅰ類で学んだ知識をもって、根拠に基づく自立に向けた介護実践の指導力を獲得します。
指導力や判断力、考える力、根拠をつくりだす力、創意工夫する力等の応用力を養成します。
生活支援の視点から、専門的な理論に基づいたチーム、 サービス、人材マネジメントを実践し、利用者さんを中心とした地域づくり(地域マネジメント)に展開できる力を獲得します。
- 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の修了
- ユニットリーダーやサービス提供責任者など介護職の小チームのリーダーとしての実務経験を有すること
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラム内容
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラムは合計255時間あります。詳細は下記の通りです。
履修科目の領域名 | 科目名 | 時間数 |
---|---|---|
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 30 |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 30 |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 15 |
チームマネジメント | 30 | |
介護業務の標準化と質の管理 | 30 | |
法令理解と組織運営 | 15 | |
介護分野の人材育成と学習支援 | 15 | |
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 60 |
地域における介護実践の展開 | 30 | |
合計 | 255 |
国家資格の「介護福祉士」とは何がちがう?
最後に、認定介護福祉士と介護福祉士にはどのような違いがあるのか、見ていきましょう。
- 認定介護福祉士は民間資格
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認定介護福祉士は民間資格であるのに対し、介護福祉士は国家資格です。
認定介護福祉士に試験はなく、研修を修了し、認定申請が受理されれば、資格を取得できます。
一方で介護福祉士になるには、国家試験に合格する必要があります。
- 待遇面でのメリットはまだまだ少ない
-
認定介護福祉士は、民間資格であることに加え取得者も少ないため、資格手当等の給与面は明確ではありません。
しかし、介護福祉士の上位資格として、豊富な経験と知識を持つという証明になるため、取得者の今後の活躍によって、給料アップ等の待遇が良くなる可能性は多いにあるでしょう。
介護福祉士は、国家資格で取得者も多いため、資格手当や高めの基本給設定など好待遇の施設や事業所も多くあります。
- 介護職のリーダーとして活躍するのが認定介護福祉士
-
認定介護福祉士は、介護福祉士の上位資格として、リーダーとして介護職員の指導や教育を担い、高い能力をもって他職種との連携を行う現場の中核的な役割として活躍することが求められています。
介護福祉士は、専門的知識をもって身体・精神上に障害がある人に介護を提供したり、本人や家族に対して介護に関する指導を行います。介護現場のプロフェッショナルとして、利用者さん一人ひとりに適した介護サービスを提供していくことを役割としています。
まとめ
認定介護福祉士を取得するには、介護福祉士を取得して5年以上の実務経験と600時間の研修を修了する必要があり、多大な時間と労力を必要とします。
高いハードルではありますが、介さらなるステージへとチャレンジしたい方は認定介護士を目指してみてはいかがでしょうか。
参考文献・サイト
- 一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構(2018年8月31日)