以前の記事でも書きましたが、ヘルパーの役割は「あたりまえの生活を支えること」です。
あたりまえの生活の「生活」とは、生命維持×社会活動のこと。
「生」はご飯を食べる、排泄する、就寝するなどの「生命維持」。
「活」は遊びに行く、仕事をする、飲みに行くなどの「社会活動」を指します。
遊びの時間は、利用者さんの自由な意思をかたちにする瞬間。「その人らしさ」が最も現れる時間です。
買い物に行く、家でぼーっとする、食べ歩きをする、好きなアーティストのコンサートに行く、溜まった録画したテレビ番組を観る、友達と飲みに行く、スポーツをする、旅行する……
1人ひとり「らしさ」が違うように、遊びの方法も1人ひとり違います。
『遊びをしている時間をその人と一緒に、全力で楽しむ』
ヘルパーの仕事をするうえで、大切にしている考えの1つです。
仕事と割り切ったそのサポートは、本当に求められているものですか?
ヘルパーが利用者さんの遊びの時間を「仕事」として割り切り、支援する側の役割を徹底的に守ったとします。
そのことで相手につまらなさそうに感じさせたり、一緒に遊ぶことを断ったりしたら?
利用者さんの楽しさは半減してしまいますよね。
例えば、軽度の知的障害者と一緒にカラオケに行ったとします。
その時ヘルパーが遊びの時間を完全に仕事と割り切り、その人が歌いたい曲を歌うようサポートすることに徹底したとします。
その人から「歌ってよ」とお誘いがあってもヘルパー自身は「仕事だから」と断ったり、その人が歌っている間に次に歌いたいであろう曲を選んだり。
相手がカラオケを楽しむことをサポートしていますが、利用者さんが望んでいる「一緒にカラオケを楽しむ」遊びをしているとはいえません。
もちろんこのようなサポートを望んでいる人もいますので一概に言えません。
しかし「歌ってよ」とお誘いがあれば歌ったり、その人が歌っているところに合いの手を入れて盛り上げたり、全力で一緒に楽しむようにサポートをする心掛けが重要だと思います。
その人らしさを引き出す、楽しみ方の3つのポイント
遊びを一緒に楽しみ、その人らしさを存分に発揮させられるように、大切にしていることが3つあります。
利用者さんのいまの感情を共有し、感情の表現に同調する
喜びや悲しみなどの感情を理解しあえると、人と人の距離感は近くなり、人間関係も良好になります。
反対に、喜んでいるのに悲しむ・悲しんでいるのに喜ぶなど相手と感情を対比させると、その場の雰囲気が楽しくなくなるし、人間関係も悪化します。
それだけではありません。
感情の表現は十人十色で、例えば「楽しい」感情の表現方法も、「わー」と声を出して表現する人もいれば、笑顔で表現する人もいるし、心の中だけで表現する人もいます。
ヘルパーが相手の表現方法と同じような行動を取ることで、その人の楽しさは増していくのではないでしょうか。
利用者さんの好きなものや趣味に関して事前に調べる
好きなものや趣味を知ることで、共通の話題が増え、会話が弾みます。
また、ここに行きたい・これがしたいという意思をなかなか持てない人、もしくは意思を伝えるのが苦手な人には、好きなもの・趣味をベースに提案することができます。
それは遊びの幅を拡げることに繋がるのです。
自分自身の引き出しを増やし、人間力を高める
他者の生活をサポートすることに、たったひとつの正解はありません。
臨機応変さが求められ、サポートする側の人間力が試されます。
人間力とはその人の総合的な魅力のこと。人間力の高い人は「らしさ」の深みがあり、物事への対応力が高く、誰とでも親しくなるコミュニケーションスキルを持っていると僕は思います。
人間力を高めるのは「好奇心×探求心」。
物事に興味を持つ「好奇心」を右手に、物事を深く知ろうとする「探求心」を左手に持ち、たくさんの経験を積み重ねていき、引き出しを増やしていくことで人間力が高まります。
僕はこれら3つを意識することで、その人の遊びをより楽しいものとし、より「らしさ」が表現できる環境にしています。
「落ち着ける遊びの場を維持し、提供する」「好きの視野を広げ、選択肢を増やす」
その両方の視点を意識し、その人らしさが存分に現れる「遊び」を一緒に楽しむのも、ヘルパーの大切なお仕事です。