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看護・介護スタッフの連携で適切なケアを提供!所長に聞いた「看多機だから」できること

東京都品川区にある看護小規模多機能型居宅介護「杜松倶楽部(としょうくらぶ)」。
前回の記事では、杜松倶楽部のサービスや特色に関して紹介しました。

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この記事では、杜松倶楽部の所長である看護師の田村順子(たむら じゅんこ)さんに看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)の特徴や魅力、やりがいなどをお伺いしました!

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利用者の日常を知る看護師が強み!在宅生活を一体的に支える看多機

___介護業界のほかの事業所と比べて、看多機はどのような特徴がありますか?

田村順子さん(以下、田村):看多機は、「通所」「宿泊」「訪問介護」「訪問看護」の4つのサービスを提供しています。そのため、利用者さんの在宅生活を一体的なサービスによって支えられる地域密着の事業所だと思います。

看多機は介護と看護のサービスを一元化して受けられるというサービスを得意とする一方で、デイサービスや訪問介護といった単体のサービスは、部分的なニーズの場合に適していると思います。

たとえば、人と交流したいというニーズのみであれば、「デイサービス」を利用したほうがいいと思います。掃除や調理などできない部分を日常的に支える必要があるなら「訪問介護」を利用したほうがいいでしょう。
このような利用者さんやご家族のニーズが部分的な場合は、単体のサービスを利用したほうが費用的にも抑えられます。

___看多機の場合は、どうでしょうか?

田村:看多機の場合は、4つのサービスを駆使して網羅的なサポートができるため、在宅生活で多くのケアが必要な人にとっては、ピッタリの事業所だと思います。

たとえば、入院生活を終えたばかりの方が自宅に戻られるとき。
退院後は体力も衰えており、全面的なサポートが必要ですよね。退院後も医療的な処置が必要なところは「訪問看護」で対応し、在宅で生活するための支援は「通所」や「訪問介護」、「宿泊」を組み合わせながらで対応していきます。
退院後は、多くのサービスを利用していたとしても、次第に利用者さんの体力が回復したら、サービスを徐々に減らしていきます。必要時は増やし、その時その時の状態に応じてプランを見直していきます。

看多機は定額制なので、1回利用しても10回利用しても同じ料金です。そのため、たくさんサービスを利用したほうが良いのではと考えがちですが、そうではありません。
どんなサービスも無制限に利用できるわけではなく、必要な人に必要な分だけサービスを提供します。日常生活のなかで必要な部分を補っていくという、補完的な役割を果たします。

つまり、看多機の仕事は、利用者さん一人ひとりの「できない部分」をサポートすること
過剰にサポートしすぎて、逆に利用者さんやご家族の力を奪うことは、絶対にあってはならないのです。

そういう意味でも、利用者さんの一番の支えとなるご家族のサポートも大事にしています
サービスがはじまるとき、どうやって介護をしていくべきか悩むご家族は本当に多いです。そのご家族に寄り添っていけるのも看多機の特徴のひとつといえます。
さらに、細かいことですが看多機を利用した場合、連絡先がひとつになるというメリットがあります。ご家族は、介護に関する悩みや相談は「看多機に連絡すればいい」と思えるため、安心につながるのではないでしょうか。

___看多機と似た事業所である小多機(小規模多機能型居宅介護)とは、どのような違いがありますか?

田村:看多機は小多機と違って、「訪問看護」のサービスがあります
しかし、小多機も単体の「訪問看護」と別に契約することによって、看多機とほとんど同じサービスとなります。

では、なにが違うのか。
それは、看護師が「利用者さんの日常を知っているかいないか」にあると思います。

先ほど話した通り、看多機は、介護だけではなく看護まで一元化して受けられる体制を整えているため、疾病や病態悪化の早期発見・予防につながります。利用者さんに医療ケアをするためだけにあるのではなく、その方の生活の全体像を把握したうえで必要な支援を行っていきます。
つまり、訪問看護だけでは見られない姿も知れるのが看多機です。

単体のサービスを利用した場合でも他事業所同士で情報共有すると思います。けれど、やはり同じ事業所のほうが密に情報共有できるし、利用者さんの様子を直接見られるのは良い環境だと思いますね。
さらに、看多機の登録定員数は29名。人数が少ない分、スタッフが細かなところまで把握できるため、利用者さんやご家族と信頼関係を築きやすいと感じます。

利用者さんの普段を知っていることは、さまざまな病気の早期発見につながったり、ほかのスタッフと連携がとりやすかったりします。
それは、看多機の特徴のひとつといえるのではないでしょうか。

「利用日でなくても対応する」施設の在宅版である看多機

___さまざまな特徴があるのですね。看多機の魅力とは、なんでしょうか?

田村:そうですね。魅力は、「施設の在宅版」のような価値観、だと思います。
施設の在宅版とは、利用者さんのお家をとりまく地域一帯を大きな施設と思って、在宅支援をすることです。ほかの看多機に確認したことがないので、看多機の共通概念かはわかりませんが、少なくとも杜松倶楽部では、施設の在宅版という価値観を大事にしています。

たとえば、施設の廊下で利用者さんが転んでいたらスタッフは助けに行きますよね。
看多機のスタッフも、利用者さんが自宅近くで転んでいたら、助けます。

実際に、地域の人が「〇〇さんが外でけがをしている」と連絡をくれたときがありました。また、あるときは「〇〇さんが家にいない」と連絡が入ったこともあります。たとえ、その方の通いや訪問のサービス利用日でなかったとしても、私たちは対応していきます

なぜなら、看多機は「施設の在宅版」だからです。
通所の日もあれば、宿泊の日もあり、自宅で過ごす日もあります。
「利用日じゃないから知りません」といった対応はとらないため、そのことを知っている利用者さんやご家族には、安心して利用してもらえているのかなと思います。
安心しすぎて、利用しない日に「来ちゃった」と通いに来る方もいるほどです(笑)。
きちんと送り届けたあとに、またすぐ来たり(笑)。それだけ私たちスタッフを信頼して、杜松倶楽部のことを生活の一部だと思ってくれているのだと感じました。

一人ひとりの生活に責任をもって対応することは、業務が幅広くなって大変ではあります。けれど、そうやって利用者さんの安心できる場所を提供できていることは、うれしく思いますね。

利用者の状態が改善し卒業。その支えとなったスタッフの姿を見るのがやりがい

___看多機の所長としてのやりがいとは、なんでしょうか?

田村:そうですね。やはり利用者さんの状態が改善していくことでしょうか。

病院を退院後、すぐに利用を開始した方がいました。
その方は入院中6ヵ月もの間、口から食べ物を取ることができず、鼻から挿入した管を使っ て栄養を取っていました。気力も体力も落ち、とても衰弱していました。

退院後は訪問診療の先生との連携を強化し、「通い」や「訪問介護」、「訪問看護」で、体調管理や経管栄養の管理、生活支援、口腔ケアを徹底してきました。その甲斐があってか徐々に経口からの摂取量も増えてきていました。
しかし、栄養状態の改善にはつながらず胃ろうの造設の運びとなったのですが、造設前に、一旦鼻からの管を抜くことになりました。
「はたして口から食べられるのだろうか」と職員はとても不安でした。利用者ご本人は、あまり切羽詰まった様子ではなかったように思いますが・・・(笑)。

そんな利用者さんに「がんばって食べましょう」などと声かけをし、励ましや意識付けのコミュニケーションをとりながら、ケアをしていきました。
すると、利用者さんは徐々に口から食べられるようになり、体重が10kgもアップ。体力・気力もアップし、その後、外出できるまでに回復してきました。
杜松倶楽部で企画した水族館ツアーには奥様と参加し、そこでの昼食は大好きなラーメンを食べたようですよ。ビールと一緒に!
状態が大きく改善したその利用者さんは、利用開始からちょうど1年後に、杜松倶楽部を卒業しました。

▲改善した利用者さんと奥さんが水族館へ行った様子

このように同じ目標をもった看護師・介護スタッフが一体となってサービスを提供できるのが、看多機です。看護と介護の力が組み合わさった看多機だからこそ、医療度が高く状態が不安定な利用者さんを受け入れることができるのです。

また、そのような結果を得られたのは、利用者さん自身やそのご家族の力ももちろんありますが、看護師・介護スタッフの一人ひとりの力も大きいと思います。

しかし、それが自分たちの力だと気付いていないスタッフも多いです。
自分では分からないかもしれませんが、スタッフはみんなレベルアップしています。
みんなのおかげで、利用者さんの状態が改善していると感じられたとき、所長としてのやりがいを感じますね

一番利用者のことを知っているのは介護職。だからこそ、情報共有が大切

___看多機で働く介護職は、どのような点を気を付ければいいと思いますか?

田村:気を付けてもらいたい点は、「情報共有」です。
看多機では看護師の存在に目がいきがちですが、実際に現場で最も動いているのは介護職です。
介護職は夜勤もしますし、送迎も行うのでご家族とも日々関わります。つまり、一番利用者さんのことを知っているのが介護職なのです。
その介護職が得た情報を、自分たちの中にとどめず、周囲に伝えていくことは大切だと思います。

そして、職種によって視点が違うので、気づきも変わります。
たとえば、「一緒に歩く」という行為でも、看護師は歩行中の状態の変化や歩行そのものに対して着目していくと思います。
一方、介護職が行った場合、気分転換だったり、話をしたりなど精神的なケアも行います。そのため、利用者さんの発言や精神状態に着目する人が多いでしょう。

同じ「一緒に歩く」という行為でも、職種によって視点や情報が異なります
だから、情報を「共有」していくことが大切です。
どちらかの視点だけで捉えるのではなく、いろいろな角度から見て、利用者さんを全体的に捉えていくことによって、適切なケアが行えると思います。これが看護師・介護スタッフの両方が在籍する看多機の強みとなります。

___さいごに、全国の介護職の方にメッセージをお願いします。

田村:「なんのために」仕事をしているのかという目的をしっかり持って、利用者さんにとって良いと思ったことはぜひ行動していってほしいです。
良いと思ったことは、とりあえずやってみてください。やってみないと、その行動に対して「良かった」「悪かった」の判断ができません。
やってみて、違ったと思ったのなら、気づけたという成果が得られるのでよしとします。また、別の方法を考えるという次の手にもつながります。
だから、信念を持って、思いを行動に移してみてください

介護を仕事として選んだからには、なにかしらの思いがあると思います。
ただ何となくだと、介護の仕事はしんどいのではないかと思うのです。だから、自分の思いや夢をしっかりと持って、そこに向かって動いていってほしい。
そうすることによって、おのずと笑顔が生まれていくのではないでしょうか。

それが、きっと、やりがいにつながっていくと思います。

編集後記

杜松倶楽部の所長 田村順子さんにお話を伺いました。
看多機について丁寧に実直に説明しくださる様子から、真面目な性格が伺えました。冷静さを保ちつつも、利用者さんやスタッフに対して熱く強い思いも見られ、頼れる所長という印象でした。
スタッフの思いを尊重し、行動に移せる環境をつくる田村さん。熱い思いを持って介護の仕事をしたい方にはピッタリの職場だと思いました。

次回は、杜松倶楽部の介護リーダーを務める福田さんに伺った看多機で働く介護職員としての思いを紹介します。ぜひお楽しみに!

※この取材記事の内容は、2018年11月に行った取材に基づき作成しています。

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