インタビュー

「自分のやりたい介護」が実現できる 現役介護士に聞く!有料老人ホームで働くおもしろさ

東京都文京区にある介護付き有料老人ホーム 杜の癒しハウス文京関口
前々回の記事では、杜の癒しハウス文京関口の取組みを、前回の記事では、施設長・柳沼亮一さんの施設長としての考えを紹介しました。

この記事では、杜の癒しハウス文京関口のフロアー統括主任である日原一成(ひはらかずなり)さんに、普段の仕事内容や有料老人ホームの魅力、介護の仕事を選んだ理由などを伺いました。

有料老人ホームの経験がない人や有料老人ホームで働いてみたい人はもちろん、介護の仕事で悩んでいる人は、ぜひご一読を!

介護職6年目でフロアー統括主任に!その仕事内容とは

___日原さんの経歴を教えてください。

日原一成さん(以下、日原):私は、専門学校で介護福祉士の資格を取得してから、社会福祉法人三幸福祉会に入職し、6年目になります。私の最初の職場は、特別養護老人ホームでした。3年間特別養護老人ホームに勤めた後、現在の職場である、有料老人ホーム 杜の癒しハウス文京関口へ異動になりました。
特別養護老人ホームでは、3年目から副主任として働き、異動してからも副主任として勤め、2018年4月からはフロアー統括主任として働いています。

フロアー統括主任(以下、主任)は、全フロアーの現場の責任者という立場です。

___6年目で主任! すごいですね。主任としての普段のお仕事内容を教えてください。

日原:入浴介助や排泄介助、食事介助といった一般的な介護業務に加え、職員の介護に関する相談にアドバイスをしたり、さまざまな判断を行ったりします。
たとえば「少しむせ込みのある利用者さんの食事形態を変えたいけれど、どうしたらいいですか」という相談を受けたら、「正しい姿勢で食事ができているか」を確認してもらうなどの対応のアドバイスをします。

ほかにも、生活相談員やケアマネジャーと現場の職員との橋渡しのような業務をしています。
ケアマネジャーの提案を現場に伝えて、実際に「それを実行するにはどうしたらいいか」をみんなで考えます。ケアマネジャーや生活相談員といった事務所側の視点と現場の視点に相違があることもあるので、私は両者の視点に立てるように意識しています。
具体的には、ケアマネジャーや第三者からみると、「ちょっと間違っているのでは?」と思うような介助方法でも、変えられない事情がある場合もあります。その事情をうまく説明して、介助の方法を提案・相談できるように話をしたり、逆に現場の気持ちを汲み取りながら、事務所側の意見を伝えたりするのが私の仕事です。

___いわゆる一般企業の中間管理職のようなお仕事ですね。人材育成に関してはどのように携わっているのでしょうか?

日原:新入社員に対しては、フロアーごとの職員間だけではなく、職員全体でフォローしています。さらに「プリセプター制度」といって、マンツーマンで教える制度も導入しています。ひとりの新入社員に対して教育係である先輩社員がひとりつくため、丁寧に業務を教えることができます。気兼ねなく教えてもらえる先輩社員の存在と職員全員に聞きやすい雰囲気を整えることで、新入社員に安心して仕事を覚えてもらう職場環境をつくっています。

プリセプター制度では、月に1度、新入社員の様子を報告しあうプリセプター会議が開催されます。私も会議に参加し、新入社員全員の状況を把握しています。
「彼はそろそろ夜勤をしてもいいのではないか」など、新入社員に関するさまざまなことをプリセプター会議で話し合い、教育の方向性を決定しています。ひとりの決断ではなく、複数人の話し合いによって決断されるので、無理な業務内容になることを防げます。このような仕組みや環境を整備することで、新入社員の適切なステップアップを支援しています。

有料老人ホームの1か月のシフト、1日の流れ

▲ご家族や友人とゆっくり話ができる5階のラウンジ。利用者さんの今までの交流や生活のペースを大事にしている

___1か月のシフトの例を教えてください。

日原:一般の職員は早番、日勤、遅番、夜勤の4シフト制で勤務しています。
職員一人あたりの夜勤の回数は、5回前後です。日勤は非常勤の方が多く入る勤務時間なので、常勤は早番や遅番のシフトが多くなる傾向にあります。しかし、フロアーごとの非常勤の人数が異なるので、フロアーによっても異なります。
主任は、4シフトに加え「宿直」が増えます。
宿直とは、介護業務を行わない夜勤です。救急対応などの緊急時に対応できるように、事務作業などの仕事をしながら待機しています。職員の人数が少ない夜勤時での緊急対応は、職員の負担や不安につながります。宿直は、職員に安心して夜勤業務を行ってもらえるための工夫のひとつです。

___1日の流れを教えてください。

日原:だいたいの流れは下記の【杜の癒しハウス文京関口の1日の流れの例】を確認してください。この1日の流れを、早番、日勤、遅番、夜勤の4シフトの介護職員で対応します。

おおよそ22:00までには、利用者さん全員の就寝介助を終えています。施設としての就寝時間は決まっていませんので、一人ひとりの就寝時間に合わせて介助を行います。
夜勤中は巡視を行い、転倒していなかどうかや利用者さんの顔色などを確認します。必要時には排泄介助や更衣介助などをします。
夜勤時に仮眠は取りませんが、30分など小分けにしながら合計2時間程度の休憩が取れます。

【杜の癒しハウス文京関口の1日の流れの例】
6:00 起床介助
7:00 早番出勤
7:30 朝食
8:30 日勤出勤
9:00 排泄介助
10:00 お茶出し
10:00 遅番出勤
11:00 体操
12:00 昼食
13:00 必要時に排泄介助
15:00まで 自由時間(レクリエーションなど)
15:00 おやつ
16:00 早番退勤
17:00 夜勤出勤
17:30 日勤退勤
17:30まで 自由時間(排泄介助など)
17:30 夕食
19:00 遅番退勤
20:00まで 歯磨き、更衣介助などの就寝準備
22:00まで 就寝介助

【早番】07:00~16:00
【日勤】08:30~17:30
【遅番】10:00~19:00
【夜勤】17:00~翌09:00

介護職員のひとりではなく、「自分」を必要としてもらえることがやりがい

___日原さんは特別養護老人ホームの経験もあるということでしたが、有料老人ホームと特別養護老人ホーム、どのような違いがありますか?

日原:特別養護老人ホームは、アットホームな雰囲気で身体介護の業務が多い職場だと感じました。
一方、有料老人ホームは、利用者さんのことをより「お客様」として接する接客業のような雰囲気があります。そのため、言葉遣いなどの接遇マナーは大事です。
また、有料老人ホームのほうが一般的に要介護度の低い利用者さんが多いので、身体介護のスキル以上に利用者さんとの信頼関係が大切になります。
たとえ、すごく身体介護が上手だったとしても、利用者さんからの信頼を得られていなくて介助を拒否されてしまったら、介護ができません。有料老人ホームでは、介護スキルと同じくらい信頼を得ることも大事です。

___特別養護老人ホームと有料老人ホーム、どちらが自分に合っていると思いますか?

日原:正直に言うと、有料老人ホームに異動になったころは、特養と比べて身体介護の少ない現場に戸惑うこともありました。私が介護福祉士を取得した理由のひとつには、身体介護をやりたいという思いもあったので、仕事に物足りなさを感じていたのだと思います。
しかし、今は、有料老人ホームのほうが自分に合っていると感じます。

有料老人ホームの利用者さんからは「お兄さん」や「あなた」ではなく、「日原さん」と名前で呼んでもらえます。私が休みのときは「昨日は休みだったの?」と言ってもらえ、利用者さんから必要としてもらえていることを実感できます。
たくさんいる介護職員のひとりとして必要なのではなく、「日原一成」を必要としてもらえることに、やりがいを感じますね

▲歓談している日原さんと利用者さん。利用者さんの笑顔から、日原さんへの信頼が伺える

大学を中退して介護業界へ 自分のやりたい介護が実現できる職場をみつけた

___なぜ、介護のお仕事に就こうと思ったのですか?

日原:人と関われる仕事に就きたいと思ったのがきっかけです。
実は、私は機械関係の大学に通っていた、バリバリの理系男子でした。
機械関係を学ぶ日々のなかで、一度立ち止まって、自分のやりたいことを見つめ直しました。そのとき、「もっとダイレクトに人の役に立てる仕事がしたい」と思ったのです。
「人の役に立てる仕事」をリストアップしてみたとき、直感で一番自分に合っているのは、「介護」だと思いました。
その後は「介護の仕事がしたい」という気持ちがどんどん大きくなり、意を決して大学を辞めました。そのままの強い気持ちをもって介護の専門学校に入学し、今の法人に入職しています。

___それはすごい決断でしたね! 実際に杜の癒しハウス文京関口で働いてみて、どうでしたか?

日原:基本的に常に楽しいですね。
人間関係も悪くありません。私より年上の部下もいますが、仲良く働けていると思います。
私はお酒が好きなので、よく職員を居酒屋に誘っているのが、良好な人間関係を築く秘訣かもしれません。いわゆる「飲みにケーション」です。
居酒屋では、愚痴を言ってもらったり、口ゲンカをしたりします(笑)。

___それは「喧嘩するほど仲が良い」という感じでしょうか?

そうですね。仕事のことで「これはこうしたほうがいいんじゃないですか」と意見がぶつかって、お互いに熱くなることも多々あります。しかし、お互いそれが楽しくて「また行きましょう」となるんです。
夫婦でも、まったくしゃべらない夫婦より、たくさんしゃべって意見を出し合う夫婦のほうが健全ですよね。そのような関係だと感じています。

業務においては、「自分の介護を実現しやすい」職場なので、楽しいです。
多くの介護施設や事業所では、転倒や誤嚥などのさまざまなリスクを考えて、提供できるサービスが限られている環境のところも多いと思います。
しかし、うちの施設では、「自分のやりたい介護」を積極的に提案できます
たとえばある職員が、ミキサー食を提供している利用者さんの食事形態を「普通のご飯」にしたいと提案しました。
実際に、普段の食事形態がミキサー食の利用者さんから「普通のご飯が食べたい」と言われたとき、さまざまなリスクを考えて「実現するのは難しい」と判断を下す場面が多いと思います。
けれど、うちの施設では「毎回ではなく1回だけなら可能ではないか?」と考えました。ケアマネジャーに相談し、あらゆるリスクに対応できるように安全面を強化して、「1回だけの普通のご飯」が実現できました。利用者さんは、本当に喜んでくれました。
「できません」と断るのではなく、利用者さんの願いを叶えるという「自分のやりたい介護」を実現できるのが、杜の癒しハウス文京関口だと思います。

▲施設内を説明する日原さん。どんな質問にも丁寧に答えることができるのは、施設に対する強い思いの現れ

___さいごに、同じ介護職員のみなさんへメッセージをお願いします。

日原:メッセージ……難しいですね(汗)。
そうですね……。介護職員の離職がずっと問題になっていますよね。もし、同じ年代の介護職員の方で仕事を辞めたいと悩んでいる人がいたら、見当違いかもしれませんが、「本当に自分のやりたいことをやった?」と声をかけると思います。
介護は、本当にやりがいのある仕事だと思います。だから、どんな人でも介護の仕事の中から「やりがい」と思えるものを見つけられると思います。
もう一度「自分のやりたい介護」をイメージして、それに近づけるように努力をしてもいいのではないかなと感じます。

介護業界はたくさんののびしろがある、「進化し続けている業界」です。
たとえば、うちの施設では介護ロボットを導入していますが、以前はそんなことを考えもしませんでした。実際に介護ロボットを取り入れてみて、業務が楽になった部分もあります。
介護ロボットがいいとか、このケアの方法が正しいとかは、絶対的な正解がありません。介護には答えがないので、自分なりの答えを探して試行錯誤してつくっていくことができ、進化することができる、それがすごく楽しいです。
もし辛いことがあって離職を考えているなら、まだ知らない介護の新しい世界をみつけることを意識してほしいです。

▲「介護職員へのメッセージ」という質問に悩む日原さん。どんな質問にも誠実に答えようとする実直な姿勢が伺える

編集後記

清潔感のある外見、丁寧な言葉遣い、おだやかな雰囲気のなかに熱い思いを秘め、しっかりと自分の意思を言葉にできる力をもっている青年……日原さんにはそんな印象を抱きました。
介護を目指す若者が年々減少している日本において、介護に対する熱い思いをもつ日原さんのような存在は少ないのかもしれません。
しかし、日原さんのようにきちんと努力が認められ、若くても役職を任せてもらえるなど、働きやすい環境が整っていけば、介護業界で活躍してくれる若い世代がもっと増えていくのではないでしょうか。
若い力は、介護業界に希望をもたらし、超高齢化社会である日本の希望となっていくでしょう。

※この取材記事の内容は、2018年9月に行った取材に基づき作成しています。

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