超高齢化社会が進む日本において、介護が必要な高齢者の数は年々増加しています。
それに伴い在宅介護を希望する方も増えていますが、共働き家庭が一般的となった昨今、常に介護できる状態ではない家庭の方が多いのではないでしょうか。
そんな中で役に立つのが「デイサービス」。
介護保険内で利用できる、日帰りで高齢者を施設に預けられる介護サービスです。
この記事ではそんなデイサービスの詳しい概要や具体的なサービス内容、利用にどのようなメリットがあるのか、また介護職員として働く際の魅力など…さまざまな疑問について、細かくお答えします。
目次
施設に通って介護を受けるのが「デイサービス」
デイサービス(通所介護/介護予防通所介護)は、主に在宅介護を受けている高齢者を対象に、専門の通所介護施設にて短時間の介護を提供するサービスのことを指します。
利用者さんの自宅から施設までの送迎を行い、食事・入浴といった日常生活に必要な介護や、体操・レクリエーション、機能回復訓練を提供するのが主な内容。
認知症の症状が見られる方には日常生活上の介護に加え、認知症の専門的ケアを提供する「認知症対応型通所介護」もあります。
ほとんどのデイサービスでは「通所介護」も「介護予防通所介護」も提供しているから、介護認定を受けた人なら誰でも利用できると考えて大丈夫ゴン!
保険適用外の「+宿泊」を行う事業所も増加中
基本的にデイサービスは日帰りのサービスですが、近年では介護保険適用外での宿泊サービスをセットにしたお泊まりデイサービスを提供する事業所も増えています。
これは日中に介護保険内でのデイサービスを行い、その後、保険適用外にはなりますが夜間その施設に泊まれるというもの。
介護保険を利用しながら宿泊できる高齢者施設が不足していることを背景に、各事業所で実施されるようになりました。
デイサービスで提供される3つの主なサービス
デイサービスでは主に「送迎」「介護」「機能訓練」に大別される介護サービスを利用者さんへ提供しています。
具体的にどのようなことを行っているのか、一般的な例として見てみましょう。
送迎
デイサービスは専門の通所介護施設で行われるため、利用者さんには自宅から施設まで通ってもらう必要がありますが、その送迎は施設側で行うことになっています。
送迎車や送迎バスを利用して移動するため、利用者さんがご自身で施設に向かったり、利用者さんのご家族が送り迎えをする必要はありません。
これは入所型の施設にはない大きな特徴ですね。
介護
食事や入浴といった、日常生活を送る上で欠かせない活動について介助を行います。
提供する食事は、日帰りで通うサービスの形態上、主に昼食とその後のおやつとなります。
施設に配置されている栄養士が献立を作成し、それを一人ひとりの嚥下機能の状態にあわせた形にして提供します。
入浴は希望者にのみ、朝のうちに行うことが多いようです。
これはデイサービスにおいて、もっとも事故や異変の起こる可能性が高いサービスが入浴サービスであるため。
午前のうちに対応することで、身体のケガや異変に気付いたときにも余裕をもって対応や記録をすることができます。
利用者さんの体調にあわせて、適切なケアを行いましょう。
機能訓練
介護度の重症化を招く大きな要因である「高齢による衰弱」、また寝たきりの原因になりかねない「骨折・転倒」を予防するため、体操などをはじめとする機能訓練が行われています。
また、日々の運動不足やコミュニケーション不足を解消する目的もかねて、介護職員がレクリエーションを提供します。
多岐にわたる!デイサービスで働く介護職員の仕事内容
デイサービスでどのようなサービスが提供されるのかがわかったところで、今度はそこで働くスタッフが具体的にどのような仕事をしているのか見てみましょう。
デイサービスに在籍しているのは主に現場で介護を担当する「介護職員」と相談業務を請け負う「生活相談員」。
そのほか機能訓練を担当するリハビリ職や食事の献立を作成する栄養士などがいますが、今回は「介護職員」についてピックアップします。
まずはデイサービスでの1日の過ごし方を確認しましょう。
08:00 | 送迎 |
09:00 | 利用者来所 |
10:00 | バイタルチェック、朝の会、希望者の入浴介助 |
11:00 | 個別にレクリエーション(折り紙、工作など) |
12:00 | 昼食 |
13:00 | 口腔ケア、お茶休憩 |
14:00 | 集団でのレクリエーション(体操やゲームなど) |
15:00 | おやつ、書類作業(利用者さんの記録など) |
16:00 | 送迎 |
17:00 | 清掃、洗濯 |
18:00 | ミーティング、明日の準備ののち退勤 |
このスケジュールに沿って、介護職員がどのような仕事を担当するのか見て行きます。
お迎え
利用者さんを自宅まで迎えに行き、送迎車へ安全に誘導して移乗してもらいます。必要であれば車いすを利用し、移動・移乗介助をします。
送迎は時間との勝負。事前に伝えてある時刻を守り、事故を起こさないように注意しつつ利用者さんをデイサービスへ送ることが求められます。
通る道や順番などの送迎ルート、送迎時間を決めることも職員の仕事です。
来所、バイタルチェック
来所後、利用者さんのバイタルチェックを行います。
デイサービスの利用者には、ひとりで歩ける方も、歩行に介助が必要な方もいます。さまざまな状態の方が一堂に会することとなりますので、来所時の混雑の中でもスタッフがよく観察しておくことが大切です。
お迎えのときには異変がなくとも、送迎車の中で体調を崩されることもあります。
発熱している場合には入浴ができない可能性もあるため、朝のバイタルチェックは欠かせません。
トイレ誘導、排泄介助
利用者さんの中には、忙しそうにしているスタッフに遠慮して「トイレに行きたい」と言い出せない方もいます。
そのまま我慢し続けて失禁してしまうというケースもあるため、介護職員の方から1日に何度もトイレへの声掛けをしましょう。利用者さんが迷っているときも促します。
排泄介助が必要な方には介助をします。利用者さんによっては全介助が必要になることもあるため、しっかり個々人の状態を把握しておくことが大切です。
朝の会
朝の会では、当日の日付やこの日の過去の出来事などを紹介します。
認知症予防にもつながるため、できるだけ利用者さんに質問をして答えてもらうようにしましょう。
入浴準備、更衣介助、入浴介助
ADL(日常生活動作)が低い利用者さんには、更衣介助後、リフトを使って入浴介助をします。
入浴サービスは人気が高く、多くの方が利用される傾向にあります。中には入浴を目的としてデイサービスに通っている、という利用者さんも。
長時間、室温も危険度も高い浴室の中で介助を行う必要があるため、体力と注意力が特にいるサービスであると言えます。
昼食配膳、食前の口腔体操、食後の口腔ケア
スタッフで手分けして、昼食配膳と食事前の口腔体操を行います。
口腔体操は嚥下機能を活性化させ、食べ物をのどに詰まらせないようにする効果があるため、食前に行う施設も多いようです。
配膳時には刻み食やミキサー食など、その人に合った形状でお出しするようにしましょう。
食事が終わったら口腔ケアの時間。
利用者さんが持参している歯ブラシやコップを使って、歯磨きをしてもらいます。
レクリエーション
レクリエーションの活動時間は、午前と午後にそれぞれ1時間程度取るところが多いようです。
どのような活動を行うかは施設によって異なりますが、中には体調にあわせて、レクリエーションに参加せず横になるという方もいるようです。
比較的、自由度の高い時間と言えるでしょう。
おやつ
お茶とおやつを配膳します。
利用者さん同士で活発にお話しされることもある時間なので、ゆったり過ごしてもらえるよう心がけましょう。
記録
連絡帳に記録をします。
連絡帳は職員とご家族をつなぐ大切なツールです。食事量や排泄の回数、特記事項を詳細に書いて、ご家族にデイサービスでの様子を伝えましょう。
お送り
送りの送迎で気を付けることは、「忘れもの」です。
薬のように常時使用する大切なものの場合、クレームにつながる可能性もありますので、十分注意しましょう。
掃除、洗濯、ミーティング
施設内の掃除や、使用したタオルの洗濯などを行います。
ミーティングでは、利用者さんの特記事項やクレームの共有をスタッフ間で行います。新たなクレームを生まないためにも、情報共有を密にすることは大切です。
以上が、現場の介護スタッフとしての仕事内容。
生活相談員として働く場合はまた異なりますので、詳しい内容はぜひ以下の記事をご参考にしてくださいね。
デイサービスを利用するメリットは「関わるみんながいきいき生活できる」こと
デイサービスを利用するメリットには、「利用者さんの心身の健康維持ができる」「入浴によって清潔を保てる」「ご家族の負担が減る」といったことが挙げられます。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
心身の健康維持によるQOLの向上
デイサービスに通うことによって、利用者さんはリハビリテーションでの生活機能訓練や体操、口腔ケアなど健康の維持や向上に役立つサービスを受けられます。
また、友人や話し相手ができるため、リフレッシュに効果的な楽しい時間を過ごすことができます。そのような時間が、利用者さんの孤独を解消して閉じこもりを防止したり、ストレスを軽減して精神面の健康維持に繋がったりするのです。
デイサービスで過ごす時間が楽しみや生きがいとなることで、外出の機会も増え、心身ともに健康的に過ごすことで、QOL(生活の質)の向上に貢献します。
定期的に入浴できるため、清潔を保てる
デイサービスを「入浴」目的で利用する方は多くいます。
それほど、ひとりで入浴することに不安や危険を感じている高齢者やご家族は多いのです。
入浴に対してネガティブな印象を抱いてしまうと、入浴の頻度が減ってしまいがちです。高齢者の身体はどんどん不衛生な状態になっていきますし、それが原因で病気になってしまうこともあります。
デイサービスでは、安全な浴室で経験豊富な介護スタッフが入浴させてくれるため、利用者さんも安心して定期的に入浴ができます。
ご家族の負担が減る
高齢者が日中デイサービスを利用することによって、ご家族はその間「介護」から離れることができます。
デイサービス利用中は安心して自由に過ごすことができ、介護負担の軽減につながります。
デイサービスで働くメリットは「夜勤がない」こと
利用者さんにとって、さまざまな利用のメリットがあるデイサービス。
一方、働く側の目線から見ても、デイサービスにはさまざまなメリットがあります。魅力的な職場であるポイントはどこなのか、順番に見て行きましょう。
勤務時間が規則的で夜勤がなく働きやすい
デイサービスは基本的に日中行われるサービスであるため、夜勤がありません。また、土日祝が休みの施設がほとんど。
そのため、早番・日勤・遅番・夜勤にシフトが分かれている24時間365日体制の入所型施設より、勤務が規則的で働きやすいと言えます。
ただし、夜勤がないということは、その分の手当が給与につかないということでもあります。
夜勤手当がないデイサービスは、入所型の施設と比べて給与が安い傾向にある……ということは念頭に置いておきましょう。
自立支援・介護予防のスキルを高められる
デイサービスは比較的利用者さんの介護度が低い傾向にあります。
そのため、自立支援や介護予防に関するスキルを高められるでしょう。
一方、身体介護の機会は少ないため、身体介護のスキルアップにはあまり適していないと言えます。
何を身につけたいのか、どのように働きたいのか、よく考えた上で職場を選べるといいですね。
ご家族への支援もできる
デイサービスの目的には、高齢者の生活のお世話をすることだけでなく、そのご家族の介護負担を減らすことも含まれています。
デイサービスを利用してもらえるだけで、日々在宅での介護を担っているご家族の支えになることができるのです。
また、介護に関してご家族から相談を受けることもあります。いち専門職として頼られることは、介護の仕事を続ける大きなモチベーションとなることでしょう。
デイサービスとデイケアのちがい
デイサービスと同じ通所型介護サービスの中には「デイケア」と呼ばれるものもあります。
名前の響きが似ていることから「同じものを指す」と思っている方も多いようですが、これは間違い。
デイサービスとデイケアは一体何が違うのか、ここで改めて整理しておきましょう。
デイケアは「通所リハビリテーション」
デイサービスは通所介護と言い換えられるもので、食事や入浴といった「生活上必要な身の回りのお世話」を提供する介護サービスとなります。
それに対し、デイケアは「通所リハビリテーション」と言い換えられるもの。その名の通り、「身体機能の回復」に重点を置いたリハビリテーションを目的とするサービスです。
デイサービスでも機能訓練は行われます。その目的はリハビリテーションと同じで、「高齢者の身体機能を維持・向上させる」ことです。
しかし、機能訓練とリハビリテーションが明確に違うのは、リハビリテーションと銘打つ場合には理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、看護師といった特定の資格を持ったスタッフが指導に当たる必要があるという点。
そのため、デイケアで行われるリハビリテーションは、医療・リハビリの専門職が訓練を受け持つことになります。
こういった点も大きな違いゴン。
編集者より
デイサービスでは、さまざまなレクリエーションに参加したり、そこで友人を作って楽しく交流したりできます。
そのため、デイサービスが利用者さんにとって生きがいのひとつになることも珍しくありません。
ご本人は生きがいを持てる、介護者であるご家族の負担も軽減できる。デイサービスは関わる人をみんな笑顔にできる、人気の高い介護保険サービスです。
「ありがとう」の気持ちをもらえるだけで頑張れる、誰かの支えになっていることを実感したい……など、モチベーションが上がる職場を求めているなら、デイサービスへの転職を検討してみてもいいかもしれませんね。
参考文献・サイト
- あぶなきの介護「デイサービスってなに?費用からメリット・デメリットまで解説!」(2018/11/22)
- 住まーとナビ「デイサービスとデイケアの違いとは?利用目的に応じて決めよう!」(2017/08/21)
- かいごDB「デイサービス(通所介護)とは」(2019/08/14)
- ツクイ「デイサービス」(2019/08/14)
- 台東区「通所介護(デイサービス)」(2019/01/30)