2019年1月に行われた第31回介護福祉士試験の合格率は、73.7%でした。
なんと、過去最高の合格率を記録し、3年連続で70%を超えています。
受験者数は、前回の92,654人より若干増え、94,610人となり、合格者数は69,736人となりました。
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目次
過去5年間のデータから読み解く!第31回介護福祉士試験について
過去5年間の試験データと2019年1月27日に行われた第31回の介護福祉士試験についての考察を紹介します。
過去5年間の介護福祉士試験 合格率
第28回までは60%前後を推移していましたが、第29回で72.1%に急上昇し、当時の過去最高の合格率を記録しました。
2019年1月に行われた第31回では、第29回を上回る73.7%となり、過去最高を記録しています。
第29回から続く合格率70%超えの背景については、下記の「第31回介護福祉士試験について」で紹介します。
ちなみに、第1回介護福祉士試験の合格率は23.2%。第4回に50%台に達し、第23回までは40%~50%台を推移しています。
第24回から第28回までは60%前後で推移し、第29回から第31回までは70%超えとなっています。
このことから、介護福祉士試験の合格率は上昇傾向にあることがわかります。
過去5年間の介護福祉士試験 受験者数と合格者数
受験者数は、第29回で例年の半数ほどに減り、第30回で約1万6千人増え、9万人を超えました。
第31回は前回より2千人ほど上がり、94,610人となりました。2年連続の上昇となりましたが、ピーク時の6割程度の水準にとどまっています。
こちらも、下記の「第31回介護福祉士試験について」でくわしく解説します。
過去5年間の介護福祉士 合格基準点
実施時期 | 筆記試験 合格基準点/総得点 |
---|---|
第27回 2014年度/平成26年度 (2015年1月25日) |
68点/120点 |
第28回 2015年度/平成27年度 (2016年1月24日) |
71点/120点 |
第29回 2016年度/平成28年度 (2017年1月29日) |
75点/125点 |
第30回 2017年度/平成29年度 (2018年1月28日) |
77点/125点 |
第31回 2018年度/平成30年度 (2019年1月27日) |
72点/125点 |
第29回から設問数が5問増え、総得点も125点にアップしています。
合格基準点は、総得点の60%程度(75点)を基準に、その年の平均点によって補正されます。
第31回の合格基準点は72点でしたので、3点補正されています。
第31回 介護福祉士試験について
前述のとおり、第31回の受験者数は第30回より約2千人増え、94,610人でした。
第29回(2016年度)試験より、介護福祉士の受験ルートのひとつ「実務経験ルート」の受験要件に、「実務者研修の修了」が追加されました。
この影響を受けたことによって、第29回で受験者数が例年の約半数に減ったと考えられます。
第30回で受験者数が約1万6千人増加した要因は、この「実務者研修の修了」の義務化が現場に浸透して、規定されている流れ通り、スムーズに受験できたからと考えられます。
第31回では前回から約2千人増加し、前回同様の9万人台に達していることから、「実務者研修の修了」の義務化の規定は、現場に着実に浸透していると推測されます。
さらに、厚生労働省によると、2017年度から介護福祉士の養成施設の卒業生が国家試験の受験を義務付けられたこと(経過措置により、すぐ受験する必要はなく段階的に義務付けられていく)も受験者数増加の要因のひとつであるとの説明がありました。
それでも受験者数が例年の6割程度にとどまっている理由は、「実務者研修を修了する」というハードルが高いからでしょう。
最長で450時間かかる研修時間と数万から数十万円かかる受講費用を捻出できずに、受講を断念する人が多いため、受験者数が伸びないと考えられます。
第29回試験の合格率が、当時の過去最高を記録するほど上昇した理由には、下記の要因があげられます。
官庁通信社「Joint」の記事によると、厚労省の担当者は「実務者研修が導入されたことで、学習の機会が確保され動機づけに変化が生じたのではないか」と話しています。
つまり、実務者研修を導入したことで学習時間が増え、学習する中でモチベーションがアップしていったということでしょう。
第31回の合格率が73.7%と過去最高を記録し、3年連続70%超えの背景も、実務者研修受講によるモチベーションアップが要因のひとつとして考えられます。
参考:官庁通信社「6万5574人の新たな介護福祉士が誕生! 昨年度から1万人増 合格率は70.8%」介護のニュースサイト Joint,2018年3月28日(最終閲覧日:2018年5月16日)https://articles001.joint-kaigo.com/article-6/pg0089.html
参考:官庁通信社「介護福祉士の国試、合格率が急上昇 過去最高72.1% 前回比14.2ポイント増」介護のニュースサイト Joint,2017年3月28日(最終閲覧日:2017年5月22日)http://www.joint-kaigo.com/article-3/pg696.html
第31回筆記試験の合格基準
下記の2つの条件をクリアすると、合格できます。
- 得点72点以上(総得点は125点)
- 「11科目群」すべてで最低1問は正解すること
第31回の出題問題を深掘り!
第29回から出題科目(医療的ケア 設問5問)が追加されたことにより、総出題数は125問に増えました。
合格のためには、全13科目のうちの11科目群で最低1点は獲得する必要があります。
解答方式はマークシートに記入する五肢択一方式で、配点は1問1点です。
第31回の試験科目と出題数
11科目群 | 出題科目(範囲) | 出題数 |
---|---|---|
1 | 人間の尊厳と自立 | 2問 |
2 | 人間関係とコミュニケーション | 2問 |
3 | 社会の理解 | 12問 |
1 | 介護の基本 | 10問 |
2 | コミュニケーション技術 | 8問 |
4 | 生活支援技術 | 26問 |
5 | 介護過程 | 8問 |
6 | 発達と老化の理解 | 8問 |
7 | 認知症の理解 | 10問 |
8 | 障害の理解 | 10問 |
9 | こころとからだのしくみ | 12問 |
10 | 医療的ケア | 5問 |
11 | 総合問題 | 12問 |
合計 | 13科目 | 125問 |
どんな問題がでるの?第31回の試験問題を紹介
実際の介護福祉士国家試験では、どのような問題が出題されているのか気になる人も多いですよね。
試験の合格基準点は6割程度であるため、必ず解けるような簡単な問題が多いというわけではありません。
簡単と感じるものもあれば、難しいと感じるものもあるでしょう。
そこで、おおまかな問題の傾向把握として、直近の第31回の試験からいくつかの問題を紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
<介護の基本>
問題 17
2012年度(平成24年度)「高齢者の健康に関する意識調査結果」(内閣府)の介護を受けたい場所に関する次の選択肢のうち,最も多かったものを 1 つ選びなさい。
1 「子どもの家で介護してほしい」
2 「介護老人福祉施設に入所したい」
3 「自宅で介護してほしい」
4 「病院などの医療機関に入院したい」
5 「民間の有料老人ホームなどを利用したい」
答えは3
利用者のみなさんはよく、「家に帰りたい」と言っていませんか?
やはり家が一番人気です。
現場の介護職にとっては、わかりやすい問題ですね。
<コミュニケーション技術>
問題 28
介護福祉職が行う傾聴に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 利用者が抱いている感情を推察する。
2 利用者が話す内容を介護福祉職の価値観で判断する。
3 対話の話題を介護福祉職の関心で展開する。
4 利用者が体験した客観的事実の把握を目的とする。
5 利用者が沈黙しないように対話する。
答えは1
こちらも、現場の介護職にとってはわかりやすい問題です。
<医療的ケア>
問題 110
喀痰吸引の実施が必要と判断された利用者に対して,喀痰吸引を行うことに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 日中は, 1 時間おきに吸引を行う。
2 食後の吸引は避ける。
3 入浴時は,その前後に吸引を行う。
4 就寝後は吸引を控える。
5 仰臥位を 2 時間保ってから行う。
答えは3
多くの介護職のみなさんが難しく感じる問題として、「法律」「障害」「医療」関係があげられるのではないでしょうか。
「医療的ケア」は、第29回(2016年度)試験より追加された、新しい設問です。
医療的ケアのなかでも「喀痰吸引」と「経管栄養」は頻出問題であるうえに実務者研修でしっかりと学ぶ科目であるため、必ず解けるようにしておきたいですね。
介護福祉士試験、合格のためのポイント
介護福祉士試験において「過去問をやっておけば大丈夫!」と言う人がいます。
過去問題は、出題傾向をつかむためには役立ちますが、試験当日の新しい問題への対策には向いていません。
合格への近道としては、過去問で出題傾向を把握した上で、参考書の練習問題を解くことをおすすめします。
自分の苦手な科目や出題数の多い科目から進めると、より合格点へ近づくでしょう。
試験勉強は自分との戦いです。
「合格後の自分を想像する」などの自分なりのモチベーション維持方法があれば、ぜひ活用してみてください。
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介護福祉士を取得して、さらに活躍しよう!
ケアマネジャーの合格率は20%以下、社会福祉士の合格率は30%前後ですので、介護業界の資格の中で、介護福祉士の合格率は比較的高いといえます。
受験資格においては、ケアマネジャーは「国家資格等に基づく業務経験5年」か「相談援助業務経験5年」が必要であり、社会福祉士は福祉系の大学や短大、養成機関に通う必要があります。
このことから、介護福祉士は業界の中での受験資格の要件は少なく、また合格率も高いため、比較的挑戦しやすい資格といえます。受験をするかどうか悩んでいる方は、この機会に資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。