介護の知識

スタッフや利用者・家族にも分かりやすい!ケアプラン作成方式「包括的自立支援プログラム」

ケアマネジャーとして、ケアプランはしっかり作りたいもの。
よりよいプラン作りのためには、利用者が抱えている問題を正確に分析する必要があります。
包括的自立支援プログラム」は、その成り立ちから、主に施設で活用されているケアプラン作成方式です。

「包括的自立支援プログラム」とは?

包括的自立支援ブログラムとは

「包括的自立支援プログラム」は、1995年に全国老人保健施設協会・全国老人福祉施設協議会・介護力強化病院連絡協議会の3つの団体が開発したケアプラン作成方式です。
開発した3団体が施設サービスの実施機関であることから、主に施設で活用されていますが、在宅でも応用可能です。

「包括的自立支援プログラム」では、「実際に提供されているケアの見直し」という切り口で解決すべき課題を発見して、ケアプランを作成していきます。
そのため食事から医療、社会生活など、利用者の日常生活を細かく分解したケアチェック表が用意されています。
ケアチェック表に記入することで課題を見つけやすくなり、スタッフや利用者・家族にも分かりやすいケアプランを作ることができるのです。

ケアプラン作成方式には、「包括的自立支援プログラム」のほかに以下のものがあります。

1.日本介護福祉士会方式

ホームヘルプの活動実践をベースに開発された様式。
要介護者の生活状況を把握するために「衣・食・住・体の健康・心の健康・家族関係・社会関係」の7領域から課題分析を行います。

2.日本訪問看護振興財団方式

在宅・施設間で共通して使用可能。
ケアマネジャーによって差を生じさせないために、収集した情報をチェックしたり、数字を記入することで自動的に問題やニーズが選び出されるようになっています。

3.居宅サービス計画ガイドライン

介護職やソーシャルワーカーなど、職種によるアプローチの仕方の違いを踏まえながら、高齢者の全体像を把握し、個々のケアの組み立てをチェック。
利用者の「強さ」をケアプランに活かすことにより、エンパワメント(利用者が自らの問題を自らの力で解決すること)支援の考え方を盛り込んでいます。

4.ケアマネジメント実践記録様式

課題分析の内容がもっとも広範囲かつ細部に及びます。
「本人・家族等の意見・要望」と「アセスメント担当者が判断した問題」を記述するスペースがあり、包括的なニーズの把握に効果的。

5.インターライ方式

利用者のニーズを把握するために、最低限必要とされるアセスメント項目を、職種を越えた共通言語で整理。
多職種にわたるスタッフが、共通理解のもとケアを進められます。

6.OCMAシート方式

主に認知症の高齢者とその家族が置かれている状況などの、情報を収集するために行う。
まとめのシートで原因・可能性・リスクを考えることで課題が明確になり、ケアプランの作成につながる。

包括的自立支援プログラムの特徴

包括的自立支援プログラム 特徴

「包括的自立支援プログラム」の最大の特徴は、要介護認定に用いる認定調査票と連動していること。
ケアチェック表を使いながら要介護認定に沿って問題や課題を抽出していくので、自動的にケアプラン表が完成するように設計されています。

ケアチェック表は以下の7領域にまとめられ、それぞれに本人や家族の要望を反映することができます。

1.食事・水分摂取
摂取動作、摂取量、嚥下、咀嚼、嗜好など
2.排泄
移乗・移動、排泄動作、尿意・便意、失禁など
3.入浴・清拭
移乗・移動、洗身・洗髪動作、入浴回数など
4.整容・更衣
洗面動作、入れ歯、爪切り、更衣動作など
5.基本動作介助・リハビリテーション
体位変換、起居動作、手指・上肢機能など
6.医療・健康
疾病、処方薬、バイタルサイン、麻痺・拘縮など
7.心理・社会面
会話能力、精神症状・問題行動、記憶・認知・理解など

現職ケアマネジャーが教える、包括的自立支援プログラムを利用することのメリット

包括的自立支援プログラム

今回お話を伺ったのは、グループホームで10年のキャリアを持つK・Kさんとデイサービス勤務のY・Sさん。
現職ケアマネジャーとして「包括的自立支援プログラム」を使うメリットを教えてくれました。

1.課題解決への即応性がある

提供されているケアの見直しからプランを作成していくので、課題が見つかった時点で代替のケアを考えることができます。
その時の状態や状況に合ったケアを提供することで、利用者が生きる喜びを見つけ、それに向かって自らから動いていけるようになる手助けができます。

2.在宅と施設でのケアのギャップが分かる

たとえば手指を上手に動かせない利用者の場合、家族は代わりに何でもやってしまいがち。
けれど施設では、「おしぼりを丸める」、「おはしやフォークを拭く」など、利用者ができる身近なもので役割を持たせ、目標としてもらいます。
こうしたギャップを見つけることにより、よりよいケアへとつなげていきます。

3.ADLに合わせたケアの提供場所や福祉用具の検討がしやすい

利用者のADLが一目瞭然なので、たとえば利用者の足腰が弱ってきた場合、入浴は訪問入浴やデイサービスの利用をする、杖の代わりにシルバーカーや車椅子の導入を考えるなど、代替ケアの提案もスムーズにいきます。

まとめ

ケアマネジャーには、利用者の「できること」「したいこと」を引き出す力が求められます。

「包括的自立支援プログラム」を上手に活用して、利用者がもっともっと元気に前向きな気持ちになれるような、よりよいケアプランを作りましょう。
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