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現職の体験から知る「居宅ケアマネの仕事内容」

「居宅」か「施設」で、大きく2種類に分かれるケアマネジャーの仕事。
今回は、「居宅ケアマネ」の仕事内容と現職の体験談を紹介します。

居宅ケアマネとは?


「居宅ケアマネジャー(通称・居宅ケアマネ)」は、自宅で介護サービスを受けている人をサポートするケアマネジャーです。
そのほとんどが「居宅介護支援事業所」に所属しています。

「居宅介護支援事業所」の主な業務として

などが挙げられ、これらをケアマネジャーが主体となって行います。
通常1人の利用者に対し1人の居宅ケアマネがつき、継続してフォローします。

居宅ケアマネの仕事内容


利用者の自宅を訪問したり、役所や地域包括支援センターに顔を出したりと、フットワークの軽さが勝負の「居宅ケアマネ」。
その主な業務を紹介します。

1.介護認定申請書の作成代行

介護サービスを利用するためには、介護の必要度を示す要介護認定を受けなければなりません。
申請者(利用者)や家族から要請を受け、ケアマネジャーが申請書の作成と提出を代行します。

2.要介護者との面談

要介護認定の決定後、ケアマネジャーは利用者の自宅を訪問します。
そこで、利用者の心身の状態や生活環境、利用者や家族の要望などの情報を集めます。

3.サービス担当者会議の運営とケアプランの作成

利用者のニーズが明らかになったら、利用者のケアを担うケアチームのメンバー(サービス提供者)によるサービス担当者会議を開きます。
会議には利用者や家族も参加します。ケアマネジャーが司会進行を務めながら、メンバーによる専門的な意見を聞き、利用者や家族の同意を得て、ケアプランを作成します。

4.モニタリング・評価~再アセスメント

サービス開始から約1ヵ月後、ケアマネジャーは利用者宅に訪問して、サービスがケアプランどおりに提供されているか、目標は達成できているかをモニタリングします。
その結果を踏まえ、利用者はサービスに満足しているか、ケアプランが適切だったのかを評価し、問題や利用者のニーズに変化があった場合などは、再アセスメントをしてケアプランを見直します。

5.給付管理業務

ケアマネジャーは作成したケアプランを基に、利用者のために介護保険サービスの利用予定表を1カ月単位で作ります。
サービス提供後には、サービスを提供した各事業所から集まる利用状況報告で実施内容を確認・集計し、利用料を決定する給付管理を行います。

給付管理業務は、利用者のお金のマネジメントにもつながる大切な業務です。
たとえばサービスを増やす場合、利用者が使える単位内でサービスをどう組み合わせるのかは、ケアマネジャーの手腕次第。
利用者にサービス利用料の支払い能力があるかどうかという点でも、慎重な判断が必要になるのです。

こうした形で働く居宅ケアマネに対して、施設で働くのが「施設ケアマネ」。
その仕事内容については、『介護職からキャリアアップ!現職に聞く「施設ケアマネの仕事内容」』をご覧ください。

居宅ケアマネの一日


ここで、ある居宅ケアマネの1日を時系列で見てみましょう。

9:00
出勤。申し送りと夜間から早朝までの問い合わせなどを確認。
10:00
モニタリングに出かけるために必要な書類を確認。
10:30
1件目のお宅を訪問。独居のため、利用者の居住空間や健康状態などを細かくチェック。来月のサービス計画表の確認と配布。
11:30
2件目のお宅訪問。家族と同居のため、健康状態などを本人から聞き取りながら、家族に確認をする。来月のサービス計画表の確認と配布。
12:30
事業所に戻り、昼休憩。午後のサービス担当者会議にそなえて、必要書類のチェック。
14:00
サービス担当者会議。利用者と家族、デイサービスの担当者、訪問介護ステーションの管理者、福祉用具のレンタル業者を交えて意見交換。
16:00
サービス担当者会議で変更された内容を追加して、サービス計画表を作成。
16:30
不在時に来た連絡をチェック。「サービスを増やしたい」という利用者家族に折り返し電話をして、要望を聞き取り。
17:00
電話対応をこなしながら、新規利用者のケアプランを作成。明日のための書類などを準備。
18:00
緊急事態がないため、定時で退社。

現職の体験から知る、居宅ケアマネとして働く上での注意点

1.対応は素早く、フットワークは軽く

居宅ケアマネに来る連絡や報告は、利用者の命にかかわるものも多くあります。
問題を先送りにするのではなく、即座に対応することが大切です。

ここでケアマネジャーのAさんが体験したケースを紹介します。

訪問介護のヘルパーから、「利用者から喉の痛みの訴えがある」と報告を受けたAさん。
利用者の症状はさほど重症ではないように思われましたが、念のために利用者の家を訪ねると、居室で倒れている利用者を発見したのです。
すぐに呼んだ救急車とその後の入院によって、利用者は無事に回復。
Aさんの素早い対応とフットワークで、利用者の命が守られたのです。

2.多方面にアンテナを張り、人脈を作る

利用者に合ったサービスの提供のためには、介護を始めとする法律の知識はもちろん、老人福祉や障害保障、生活保護など、幅広い知識が必要になります。
また、利用者の住んでいる自治体独自の取り組みも要チェック。
おむつの現品支給や医療控除が受けられたり、障害者申請によって外出の際のガソリン代補助が受けられる自治体もあるのです。

ケアマネジャーひとりで問題を抱え込まずに、地域包括支援センターや介護保険事業者、医療機関、民生委員、ボランティア団体などに協力してもらいましょう。
個人の裁量で動くことが多い居宅ケアマネは、多方面にきめ細かくアンテナを張り、ここぞという時に力になってくれたり、「こういう情報があるよ」と教えてもらえるような人脈を作ることも大切なのです。

3.利用者や家族には介護の専門用語は使わない

介護や看護の専門用語は、利用者や家族にはなじみのないもの。
不用意に使ってしまうと、こちらの言いたいことが伝わりません。
普段よく口にしてしまう言葉ほど注意が必要です。
具体例として、こちらを参照してください。→『ホーカンって誰? 利用者・家族には伝わらない介護の専門用語』

4.配慮を欠いた“見立て”を言うのはNG

介護の世界で長く働いていると、利用者の身体状況などが、いつ・どのようにして低下していくのかが分かるようになります。
ケアマネジャーとしては先を読み、利用者や家族に必要なサービスの提供を考えますが、そこで注意したいのが、配慮を欠いた“見立て”を言ってしまうこと。

たとえば、こんなケースがあります。
要介護認定を受けてから5年目に入った利用者を担当している居宅ケアマネのBさん。
家族から相談を受けるたびに、「そろそろ介護ベッドを」「住宅改修で手すりを増やしましょう」など、利用者の身体状況に合わせて、先手を打つアドバイスをしてきました。
けれど、その際に「介護ベッドのリモコンは、利用者さんが自分で操作できる今のうちに覚えてもらいましょう」と言ってしまったのです。
それを聞いた利用者と家族は「認知の症状もないのに、なんでそんなことを言うのだろう。これから認知症になって、自分で操作できなくなる時が来るのだろうか」と不安になってしまいました。
そうした“小さなこと”が続いた矢先の自宅訪問で、Bさんは「看取りは家でするのかな」とつぶやいてしまいます。
何気なく発した言葉に、家族は「自分で飲んだり食べたりできるし、車椅子で外出もできるのに、もう看取りまで考えなければいけないのか」と不安に駆られ、今までのこともあり、Bさんから担当を外れてもらおうか、と考えるに至ったといいます。

利用者や家族がこれから直面するであろう事態に、よかれと思ってする“見立て”でも、不用意に伝えるのはNG。
「こういう言い方をすると、相手を不安にさせてしまうかもしれない」と常に心にとめておきましょう。

5.利用者の性格を考えたサービスを提供する

サービスの提供には利用者の身体状況や生活環境が大前提になりますが、利用者の性格によって左右されることもあります。

このようなケースがあります。
利用者や家族からデイサービスを利用したい、と言われたケアマネジャーのCさん。
利用者の自宅近くのデイサービスを何カ所か紹介し、1日体験をしてもらいましたが、どの施設にも「行きたい」という言葉が聞かれません。
理由を尋ねても、何がどんな風に嫌なのかを利用者が明快に答えてくれることはありませんでした。
そうした言動にCさんは、「利用者は人見知りで、積極的に人の輪に入っていくことができない性格だ」ということに気がつきます。
そこで、翌月から新たにオープンするデイサービスを紹介することにしたのです。

既存のデイサービスには長く通っている人も多く、グループができていることもあります。
積極的に声をかけられる方ならいいかもしれませんが、人見知りだとなかなか溶け込めないことも。
新規オープンならグループもないし、みんなが同じスタートなので、利用者さんにはピッタリだと思ったんです」とCさん。
読みはピタリと当たり、利用者は新規のデイサービスに喜んで通うようになったといいます。

最後に

いかがでしたか?
利用者の自宅に足を運び、よりよく快適に過ごせるようなサービスの提供を考える「居宅ケアマネ」。
利用者や家族とダイレクトにかかわり、自己裁量で動くことが多い分、やりがいも大きく感じられます。

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