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ニーズはすぐに変わっていく!介護施設が震災時に欲しい支援物資とは?【被災地からのリアルレポート】

熊本県熊本市にて介護系の資格取得講座などの事業をしております、合同会社縁 ~ENISHI~ 代表社員の川口明と申します。

前回に引き続き、平成28年熊本地震の被災地熊本から、私自身が体験したこと、見聞きしたこと、感じたことなどをご報告させていただきます。

混乱の中、独自に動き出した介護事業所

今回の平成28年熊本地震で、前震・本震と立て続けに最大震度7の揺れに襲われた熊本では、かなりの広範囲にわたって水道・ガス・電気といったライフラインが一斉にストップしました。

私自身は、本震の翌日4月17日より、介護・医療・保育関係に物資の配送をスタートしたわけですが、数多くの施設が独自の判断により様々な取り組みをスタートさせました。

支援物資の集積と配送に取り組んだ、訪問看護ステーションの話

民間の支援物資の集積配送に取り組んでいたのは、ボランティア団体や市民活動団体、イベントの企画団体や店舗など……さまざまな団体でした。
また、介護系では経営者対象の研修会主催者が動いたり、介護福祉士会と連携したりと、組織だった動きも見られました。

その中の一つ事例として紹介するのが、ある訪問看護ステーションです。(以降Aステーションとする)

Aステーションでの支援活動の拠点は併設のカフェでしたが、主催は単一の事業所で、運営は数人のボランティアが交代で行っていました。こぢんまりとした規模での活動です。
しかし、そんなこぢんまりとした集積地点には、連日すごい量の支援物資が届いておりました。
毎日のように届く支援物資を送り出し、送り出してはまた届くといった状況で、運営と配送に追われる日々。
それはうまくSNSツールを活用しながらの活動しながら、リアルタイムでの情報発信をしていた結果でした。
主催者の方が、この震災でFacebookの友達申請が200件は軽く超えたとおっしゃっておられたほど。

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配送の中で見えてきたニーズの変化

メディアでも多く取り上げられておりますが、被災地における支援物資のニーズは日々変化していきました。
そこで時間軸を追って、介護施設でもっともニーズが高かった物が、どのように変化していったのかを簡単にまとめてみました。

地震直後~3・4日

飲料水・避難者向けの毛布等
おにぎり等の調理をせずにすぐに食べられるもの
インスタント食品
20ℓの水用ポリタンク(生活用水確保のため)

4日目~1週間

紙コップ・紙皿・割りばし
サランラップ
トイレットペーパー・オムツ類
飲料水

1週間~

生鮮野菜
調理済みの料理
職員向けの支援物資
除菌クロス・清拭用クロス
各種消耗品

見落とされがちな「職員向け」の物資

ここでまず注目していただきたいのが、『水』についてです。
震災直後は圧倒的に500mlのペットボトルのニーズが高かったのですが、日がたつごとに2ℓのペットボトルに移りました。
1週間が過ぎるころには、500mlのペットボトルのニーズはあまりありませんでした。
つまり純粋な飲料用から、調理用にニーズが変化したことを意味しています。

次に『食料品』についてです。
震災後直後はおにぎりやサンドイッチといったすぐに食べられるものが重宝されましたが、徐々にカップラーメンなどのインスタント食品やパウチ式のレトルト食品に移り、1週間を過ぎるくらいからは生鮮食品のニーズが飛躍的に高まりました。
理由を想像することは容易であると思いますが、人間、身体が野菜を欲するのだと実感しました。

そして最後に『職員向けの支援物資』です。
公的なものや業者関係からのルートで入居者向けの物資は、数日後にはある程度行き届くようになりました。
しかし、配送時に物資の受け渡しをする際、明らかに施設職員の疲労が日に日に高まっていることは肌で感じておりました。
そして実際にヒアリングを行うと次のような問題が浮かび上がりました。

・地域での支援物資の配給時間と勤務時間がかぶってしまい受け取りができない。
・施設に出ずっぱりで地域での情報が入手できない。
・買い物に行く時間がない。行ってもすでに売り切れている。
・施設の利用者の方にと届いた支援物資をもらうのは気が引ける。

ということで、ありとあらゆるものが職員の手に届かないという状況になっていたのです。

そこで、Aステーションでは、施設向けの支援物資を4月20日から、入居者向けではなく職員向けに支援物資配送の内容を切り替えました。

支援活動、いつまで?それが一番難しい

活動を続ける中で一つの問題が発生しました。それはいつをもって、活動の区切りとするのかということです。
おそらくこれはどの集積点でも、同様に起こっていたことだと思います。

判断が難しかった材料としては以下の点が挙げられます。

・余震が頻回に続いていたこと。
・ライフライン(水道・ガス)がどのタイミングで復旧するか見通しが立たなかったこと。
・余震の影響で車中泊や避難所への避難者がなかなか減らなかったこと。
・官民の連携が全く取れていなかったこと。
・ニュース等の情報と現場での情報に大きな誤差があり、混乱があったこと。
・SNSでの情報収集が日に日に難しくなっていったこと。
・避難所間での格差が大きく、支援を必要としている方の情報がなかなか表立ってこなかったこと。

最終的にAステーションは4月23日をもって、いったん物資の受け入れをストップするという判断を行いました。
決断理由としては、大きな避難所や情報を上げることができているところには、ある程度の支援ルートが確立されたからということが大きかったように思えます。

とは言え、物資受け入れ情報発信をストップした後もまだまだ物資は届くことがあったので、その後もしばらくは配送に追われることになりましたが、ストップのタイミングについては、本当にこれでよかったのかずいぶん悩まれたようです。

「お互いさま」だからこそ、助け合うこころを

今回の熊本地震では、多くの人が自身も被災者でありながら、支援活動に従事していました。
Aステーションには県外からも多くのボランティアが駆けつけてくれはしましたが、主力はやはり当事者たる地元の被災者でした。
中には中学生や高校生が、物資の仕分け積み込み、炊き出しの準備を手伝ってくれたりもしました。

多くの「お互いさま」という善意の行動の中で見えてきた教訓を、今後どこかで起きてしまうかもしれない災害に対する、何か一つのヒントにしていただければ幸いです。

ABOUT ME
川口明
介護福祉士・レクリエーション介護士2級認定講師・合同会社縁 代表社員。父親が根っからのアウトドア人間。母親は看護師で手芸マニアという環境で育つ。レクリエーションの資格取得を目的に介護福祉専門学校へ進学。高齢者福祉の仕事の傍ら、子どもたちの自然体験活動の企画運営に携わる。仲間とNPO法人を設立し、理事として年間30~40本の自然体験・環境教育活動を実施。その後、介護職員初任者研修課の講師を務め教壇に立つ。平成28年2月に合同会社縁を設立。これまでの活動を通じ培った技術・知識・経験 そして考え方を活用し、介護事業所との共催による資格取得講座(レクリエーション介護士2級・介護職員初任研修)等の事業に取り組んでいる。『楽しい』を原動力に、『想像』と『創造』を結びつける活動を実践中。