サイトアイコン 介護のお仕事研究所

現役ケアマネに聞いた!介護のアセスメント完全攻略法

晴れてケアマネジャーの資格を取り、さあ、業務開始!
利用者さんにピッタリのケアプランを作りましょう……と、動き出すケアマネジャーの前に立ちはだかるのが「アセスメント」。
現役のケアマネジャーから「ものすごく大切で、しかも、ものすごく大変!」という声もあがるだけに、しっかり取り組みたいですよね。
今回は、「アセスメント」のポイントや注意点を紹介します。

「アセスメント」とは、ケアプランの原案に欠かせないもの!

「評価・評定・査定」などの意味を持つ英単語=assessment。
「環境アセスメント」「人材アセスメント」「製品アセスメント」など、多分野で使われている言葉ですが、いずれも「事前に予測・評価する、課題分析」を意味します。

介護の分野では、利用者の心身の状態や生活状況、利用者と家族の希望などの情報を収集して、「どのようなサービスが必要なのか」を明らかにすることをいいます。

たとえば同じ介護度でも、利用者のADLや生活環境、希望などは一人ひとり異なるもの。
介護度別に画一的なサービスを提供したのでは、一人ひとりの「できること」ができなくなってしまったり、利用者の希望から大きく外れてやる気を奪ってしまうことにもなりかねません。
そこで、一人ひとりに合ったケアプランを作るために、アセスメントが必要になるのです。

ケアプランの原案作成に大きな影響を与えるだけに、「介護はアセスメントから始まり、アセスメントで終わるといってもいいくらい重要」と言い切るケアマネジャーもいるほどです。

アセスメントでは、何をどんなふうに聞く?

アセスメントでは、利用者や家族との面接を通して、利用者の心身の状態や生活状況、介護サービスを受けるに至った背景と原因などを聞き取ります。
大きな柱となるのは「どうなりたいか」「どうやっていきたいか」という「本人や家族の希望」。
それらの情報を総合的に評価して、問題解決への道筋を探して行きます。

ケアマネジャーの質問の仕方や態度によっては、利用者や家族が言いたいことを言えなくなってしまうこともあります。
正しい情報を得るためには、常に利用者や家族と「一緒に考えていく」という姿勢で、質問には「いつ、どこで、何を、どれくらいしているのか」など、具体性を持たせましょう。

聞き取りの具体例として、以下の項目が挙げられます。

生活状況

・独居、または家族と同居
・1日の過ごし方(起床~就寝まで)
・居住環境(戸建て・集合住宅・階段や段差など)

身体状況

・麻痺の有無、関節の拘縮、褥そう、痛みなど
・視力・聴力(補聴器、メガネなどの使用)
・意思の疎通(言語障害の有無)

ADL

・歩行(屋内・屋外、車椅子・歩行器の使用など)
・排泄・食事・入浴(自立・見守り・介助・全介助)

IADL

・買い物・料理・掃除・洗濯・電話をかける(できる・できない)

・金銭管理・薬の管理・乗り物に乗る(できる・できない・やらせない)

これらの情報を基にアセスメントシートを作成します。アセスメントシートの書き方についてはこちらの記事を参考にしてください。

現役ケアマネジャーに聞く、アセスメントのポイントと注意点

新人ケアマネジャーにとって、利用者や家族との面談は緊張を伴うもの。
現役のケアマネジャーの声を基に、アセスメントのポイントと注意点を紹介します。

アセスメントをする時の心構え

アセスメントは、その人の人生の大切な“生き方”に関わることなので責任重大!
利用者の人生の幹に関わることの恐ろしさを自覚しましょう。

情報は多方面から集める

アセスメントの前に、利用者の家族や医師・地域包括センターなど、多方面から情報を収集しておきましょう。
事前に情報を集めることで、的外れな質問を避けることができます。
また、さまざまな角度からの情報を集めることによって、より正確な利用者の心身の状態を見ることが出来ます。

ここで、あるケアマネジャーが体験した失敗談を紹介します。

認知症の利用者から、「かつてフラダンスをしたことがある」と言われたケアマネジャーのAさん。
利用者が楽しめるようフラダンスに似た体操を探しましたが、見つかりません。
そこである体操を「こんな感じでいかがでしょう」と家族に提案したところ、利用者はフラダンスをしたことがない、ということが分かったのです。
家族から「(利用者は)嘘ばかり言うから気をつけて」とまで言われたAさんは、利用者の言葉だけではなく、家族など多方面から情報を収集する大切さを知りました。
そして「アセスメントは利用者のその時の気分で揺れるので、“真実”に近付くのは技術がいることだ」と痛感したといいます。

専門職と連携を取る

利用者のADLやIADLには、今はできなくても本人の気持ちや時間をかければできるようになることがあります。
こうした身体状況を見極める時は、リハビリテーションの専門家と連携して、「できること」「しようと思えばできること」を探しましょう。
専門職と連携することによって、利用者はもちろんケアマネジャー自身の安心感にもつながるのです。

アドボカシーの機能を使う!

利用者が重度の認知症や障害などで、自分で判断することが難しかったり、意思を明らかにすることができない場合、その権利や主張が認められずに不利益を被ることがあります。
そうならないために、「代理人」が利用者の代わりに権利や意見を「代弁」し、その立場を守ります。

この「代弁擁護」をアドボカシーといいますが、ケアマネジャーは時に「代理人」となって、利用者の権利を守らなければなりません。
アセスメントで利用者がどのような期待や不安を持っているかを十分に理解し、円滑にサービスが開始されるようにします。
アドボカシーの機能を使う時は、常に「本当にこれでいいのか、利用者は本当にこれを望んでいるのか、自分(ケアマネジャー)の希望と重ねていないか」と、自分自身に問いかけてみましょう。

インフォームドコンセントを行う

専門的な助言をする時は、利用者の希望や意思を尊重しながら、「説明と了解を得ること(インフォームドコンセント)」を実践します。
いいことを伝える時も悪いことを伝える時も、利用者の自尊心を傷つけないように、かつ介護計画の芯がぶれないように注意を払いましょう。

問題をひとりで抱え込まない

アセスメントで問題点がみえたら、地域包括支援センターなどの相談先を作りましょう。
自分ひとりで抱え込まないように、ケアマネジャー自身がセルフケアすることも大切です。

最後に

利用者は「問題を解決してくれたから、ケアマネさんは神様」と、ケアマネジャーをあがめてしまう時があります。けれど、それに甘んじてしまうのはNG。
また、たとえ関わりがなくなったとしても、利用者はケアマネジャーの言葉やしてもらったことを胸に刻んで生きていきます。
ケアマネジャーとして、最後まで職業倫理を持ち続けることが重要です。

モバイルバージョンを終了