ヘルパー、それは高齢者の自宅に訪問して、「生活援助」「身体介護」を行うお仕事。そんなヘルパーさんたちは、たくさんのお宅を経験しています。
こんにちは。元サービス提供責任者で、介護福祉士のハム太郎です。
ハム太郎(Taro Hamu)
介護福祉士。博多出身。ハムスターをこよなく愛しています。高校まで博多で過ごし、大学進学を機に上京。大学時代には障害者施設でボランティア活動に取り組む。その経験を通して介護業界へ就職。これまでデイサービス、訪問介護に勤め、介護職、サービス提供責任者として経験を積む。現在は、介護で働く方の悩みに共感し、良い環境を提供したいと思い、介護職専門のキャリアアドバイザーとして転職支援や執筆活動に取り組む。
本記事では、ヘルパーさんが日々どのようなお仕事をしているか知っていただきたく、ホームヘルパーとして働いてきた私がこれまでにお邪魔してきた、少し特徴的なお家をご紹介したいと思います。
それでは参りましょう!
目次
1宅目 認知症で立派なお宅がゴミ屋敷に
150cmも満たないとても小柄な認知症のおばあちゃん。立派なお家に1人で住んでいました。2階建の一軒家で、2階には舞台も付いています。え?舞台?2階だけで20畳以上の広さはありました。そんなおばあちゃんのお宅には、お掃除で週2回ヘルパーさんが入っています。
「ピンポーン!」
「おはようございまーす!」
玄関を開けると、待っているのは小柄なおばあちゃんと…
たくさんの袋の山!食べ物たち!
そして、腐敗臭と埃。
いわゆるゴミ屋敷と呼ばれるお家は少なくありません。このおばあちゃんのお家も、それはまさにゴミ屋敷でした。
認知症を患っているものの、足腰は元気!おばあちゃんはいろんなところにお出かけしていきます!
おばあちゃんの趣味はそう、「お買い物」です。
おばあちゃんは、毎日毎日毎日たくさんの食べ物を買ってきます。
買ってきたことを忘れてしまうので、食べ物たちはどんどん増えていくばかり。おうちには腐敗した食べ物を住処に、たくさんの生物たちも住んでいました…
捨てても捨ててもキリがなく、おばあちゃんはまだ食べられると言って賞味期限切れの食材をあまり捨てたがりません。
地道に説得しつつ捨てているとあっという間に時間が経ち、サービス終了。
以前、私が階段から転げ落ちて、太ももにかなり大きな青アザを作ったことがあります。痛み以上に生物たちも歩いているであろう床に体が触れたことの方がショックでした!
そんなおうちの主であるおばあちゃんですが、とても親切で可愛いおばあちゃんです。いつもお礼に食べ物をくれます(絶対に食べません)。
今日もおばあちゃんは楽しくお買い物をしていることでしょう。
2宅目 ニートの息子に告ぐ
認知症のおばあちゃんとニートの息子の2人暮らしのおうちがありました。万年布団から自力では起き上がれないおばあちゃん。部屋もぐちゃぐちゃ。ヘルパーさんの介助でトイレに行ったり身体を拭いたり、ご飯を食べたり。
「よかった、良くなってきてる」と思った矢先、なんとニートの息子がおばあちゃんのエンシュア(栄養ドリンク的なもの)を飲んでいたのです!
通りで減りが早いわけか…。
息子さん、いくらお金がないからといって、要介護のお母さんの栄養ドリンクを飲まないでください…!
でも、そんなニート息子も心機一転、職を探し始めました!
介護保険に関わるさまざまな方から説得され、心を決めてくれたようです。
アルバイトですが少しずつ働くようになり、私たちもひと安心。
また、息子さんは未婚のようで、将来が心配なので私たちはいろいろとアドバイスをしました。もう誰のサービスか分かりません。
利用者のことを助けることはもちろん、利用者家族のこともサポートするのが私たち介護士の務めなのです。
3宅目 カメラで監視されているのは私!?
かなり重度の認知症のおばあちゃん。私が訪問するとにこやかに言います。
おばあちゃん「もう学校は終わったの?」
ハム太郎「はい、終わりました!(4年前に)」
また、ある日は刑事モノのテレビドラマに反応し不穏になり、「あなたはあの犯人の仲間なの?」と聞かれたりもしました。私はやってない。
認知症の方との介護は、演技力と根気のいるサービスです。
このおばあちゃんは座位立位が保てません。しかし娘さんの意向で排泄はトイレでしてほしいとのことで、ベッドからシャワーチェアーに移乗し、トイレへ誘導。シャワーチェアーを便座のところへ入れるとそのまま用が足せます。(シャワーチェアーには穴があいてます)
しかし、ここで問題発生!このおばあちゃん、なんと体重が60キロオーバーなんです!!
座れない&立てない60キロオーバーのおばあちゃんの介助は本当に汗だくものです。
よし終わった!と帰るころにはいつも、「また来てくれる?」と可愛く聞いてくれます。
「はい、また来ます」と言って、今日も頑張ってよかったなぁとしみじみ。
しかし、こんなに頑張ってサービスをしていても報われないことだってあります。それは、「もう来ないでいいよ」と言うNG宣言です。
このお宅には、娘さんにより、おばあちゃんが転倒した時にすぐわかるようにと1台のカメラが設置されていました。
このカメラ、必然的にヘルパーさんも見られます。娘さんも気にならない訳ではないでしょう。娘さんにチェックされ、不適合と判断されたヘルパーさんはNGに。
そこの介護利用者さん!カメラの使用には十分ご注意を!
ヘルパーさんから疎まれて、良いヘルパーさんが来てくれなくなる可能性もありますからね!
4宅目 ヘルパーは家政婦じゃないわよ!
さいごに、認知症ではないのですが、元女社長のおうちをご紹介!
都会の某高層マンションの50階くらいに住んでいるのが元社長の夫と元女社長のご夫婦です。夫婦で別経営されていたようです。
とっても立派な高層マンションで、窓からの眺めは絶景そのもの!
このおうちもお掃除で訪問しました。
お掃除が終わると、元女社長は壁の少し出っ張っているところを指でツツー…
「ここに埃があるわね」
「それから、掃除機のゴミは毎回捨てて下さい」
ムキー!!
さすが元女社長!
セリフが小姑のようです。
なにやらこの元女社長は、ヘルパーさんに頼む前は、家政婦さんを雇ってお掃除してもらっていたようです。
世の中にはヘルパーと家政婦を混同している利用者さんが多くいますよね。私たちは家政婦じゃないっての!ヘルパーだっての!
介護保険でのお掃除は、あくまで「日常生活」のお掃除が対象です。ヘルパーさんは家政婦ではなく、ご自身が日常生活で出来なくなったことを支援してくれる方です。
その点を重々承知して頂きたいです…!(心からの叫び)
さいごに 社会が成り立っているのはヘルパーさんがいるからだぜ
ヘルパーのお給料は、決して高くありません。しかし、そんなお給料でも様々なお家に笑顔で対応してくれているヘルパーさんがこの国にはたくさんいます。
そんな彼女達(&私)がいてくれるから、この現代社会は成り立っているに違いありません!
ヘルパーさん、ありがとう!!
そんな彼女たちは、今日もどこかのお家で衝撃シーンを目撃している!かも?
おしまい。