介護コラム

【コラム】介護施設にユニフォームは必要? ユニフォームの意義を考えてみよう

みなさんの働く施設に、ユニフォームはありますか?

介護施設のユニフォーム、ひと昔前は当たり前のようにどの介護職員も着ていました。が、最近はユニフォームを用意しない介護施設も増えてきています。

私は、ユニフォームに関して「必ず必要なものではなく、仕事着は外に出て恥ずかしくない程度の私服でいいんじゃない?」という意見をもっています。

といっても、介護職員のみなさんもユニフォームについて「あった方が良い!」「無いほうが良い!」など、さまざまな意見があると思います。
そこで、今回は介護施設のユニフォームについて、ちょっと私なりに考えてみました。

ユニフォームは統一性の象徴

スポーツを例にあげるまでもなく、ユニフォームはチームとしての統一性を持たせる役割があります。
さらに、どの団体に所属しているのかを容易に区別するためのもの
ユニフォームを着れば、誰がどの団体に所属しているのかが一目でわかるため、とても便利です。

また、介護現場や医療現場などの多職種が働く場所において、介護職や看護師、リハビリ職といった職種等を区別するにはこのうえなくわかりやすいもの、それがユニフォームです。

介護施設でユニフォームを導入するメリット・しないメリット

介護施設にユニフォームがあるとどんないいことがあるでしょうか?
知り合いの介護職や介護福祉士養成校の学生に聞いてみました。

介護施設でユニフォームを導入するメリット
  • 職員から見て、誰が職員で誰が面会者なのかがすぐにわかる
  • 利用者さんから見ても「この人は職員だ」と一目でわかる
  • 「ユニフォームを着るとスイッチが入る」という職員もいる
  • 衣服への汚れを気にしなくていい
  • チーム感が出る
  • 仕事用の服代がかからない

などなど、いくつかのメリットがありました。

では、逆はどうでしょう?

介護施設にユニフォームを導入しないメリット
  • 職員が私服になることで、利用者ー介護者間の境目が消える
  • 施設外での活動が自然な日常に見える
  • 私服なので、職員自身の個性が出る
  • 外に出ることへの抵抗感が薄れる
  • 日本人の根底にしつこく流れている「施す者」「施される者」の意識が薄まる
  • 暑さ寒さへの対応が容易にできる

など。ユニフォームがないことで発生するメリットも存在します。

あって当たり前は、前時代的発想!?

以前、介護福祉士養成校を設立する際に、関係者から「実習着はどうしますか?」と当然のように質問されたことがあります。私はとくに必要性を感じなかったので「実習着はなくて良いです」と返答したのですが、いつのまにかダサいポロシャツとペラペラのチノパンが採用されていました。

学生用の実習着に限らず、ほとんどの介護職用ユニフォームはダサいものが多いと思いませんか?
介護施設ならとりあえず専用のカタログからそれらしいものを選んで、みんな同じユニフォームを着る……この時点である種の思考停止に陥っているとも言えます。

施設のパンフレットには「地域に開いた」「自宅のような安心感で」と書かれていることも多いのですが、自宅に同じ格好の人がたくさんいるのもどうかと思います。おそろいのユニフォームに身を包んだ介護職に囲まれた時点で、利用者さんは「自分は介護される側の人間になったんだな」と思い知らされることにもつながるでしょう。

インターネットで「介護職」の画像検索をすると、なぜかみんなピンクやグリーンのエプロンをつけている、もしくは上下おそろいのジャージを着ている画像が山ほど出てきます。
このことからも、社会において「介護職=エプロン」「介護職=ポロシャツ」「介護職=ジャージ」というイメージがが出来上がっているように感じます。

介護職以外の人に聞いた、介護職の服装イメージ

「介護職ってどんな服装で仕事してると思う?」と介護や医療にあまり馴染みのない仕事をしている20人に聞いてみました。(単一回答のみ)

第1位 エプロン8人
第2位 ジャージ7人
第3位 ポロシャツ3人
以 下 私服(1名)
    Tシャツにハーフパンツ、首元にタオル(1名)

アンケート結果から、インターネットで「介護職」と検索した結果の画像とほぼ同じイメージを世間も持っていることがわかります。
エプロンやジャージはたしかに機能的ですが、機能だけを求めるのであればスポーツのユニフォームだってあんなにデザイン性は高くなっていないはずです。

私服の場合でも、おしゃれを意識しすぎなくてOK

私が関わっている介護系事業は、全部で5つ。
小多機(小規模多機能型居宅介護)や看多機(看護小規模多機能型居宅介護)、訪問介護、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、そしてケアマネの事業所である居宅介護支援事業所です。
そのほか、障害者就労継続支援B型や保育園もあります。

これらの事業所にユニフォームはなく、原則的に仕事着は私服です。

私服の基準を問われることもありますが、「『郊外のショッピングモールや家電量販店に買い物に行ける程度』でいいんじゃない?」と伝えています。

「介護をおしゃれに」という考えもあるかもしれませんが、無理におしゃれをしなくても上記のちょっとした買い物ができる程度でいいと考えています。
なぜなら、ダサいユニフォームが嫌で私服を導入したわけではなく、利用者さんと一緒に外に出ることをベースとして想定しているからです。

私服勤務にした場合のお金事情

「ユニフォームがなく私服で勤務する場合、お金の支給はあるの?」

よく受ける質問のひとつです。
一般企業で考えれば、スーツを必須としている企業がいまだに多いですよね(これも個人的にはどうかと思います)。しかし、スーツ代が出ている企業はそんなに多いわけでもないようです。

そう考えると、仕事中に着る服にお金が出るということはあまりないのが一般的かもしれません。
しかし、介護職の場合は、清潔不潔の区分けを服の上でもある程度しなければならないため、仕事着を私服にする代わりに「1年間の仕事着代(もしくは洗濯等のフォロー)」をそれなりに支給する必要はあると思います

専門職と服~対象者が求めているものを考える~

職員のなかには「専門職だからユニフォームを着たい」という意見をもつ人もいるようです。

ここで考えるべきことは「本当にその服装が必要か?」ということ。
「プライドのためのユニフォーム」であれば特に必要ではないでしょう。

服は目的によって変えられます。自分が何者かを示すだけなら、全身コーディネートの服を着なくても可能だと思います。

ユニフォームが悪いことばかりではないとはいえ、ユニフォーム自体を定義し直す時期に介護業界は来ているのではないでしょうか。スティーブ・ジョブズがスーツを着こなしてプレゼンをしていたらiPhoneがもっと売れた、なんてこともないでしょう。

介護が生活に密着して地域に広がっていくなかで、「対象者が求めているものは何か」という根本に立って、もう一度服装から考えてみるのもいいのかもしれません。

ABOUT ME
軍司大輔
前介護福祉士養成校学科長。介護教員。現在は介護事業所の教育、研修担当等。他に地域高齢者の働く場作り「向山珈琲屋台」、フリーアクセスファーム「ヒトキタシャベル」、講師育成オンラインサロン「OPOLABO」、デザインワークなど。