介護の資格

重い障がいを持つ利用者さんの味方!「重度訪問介護従事者」ってどんな資格?

「訪問介護の対象となるのはどんな人ですか?」
こんな質問を投げかけられたとき、多くの人は高齢者の方を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、訪問介護を必要としているのは、高齢者だけではありません。心身に重度の障がいを抱え、介護が必要になった「重度障がい者」、もまた、訪問介護の対象となります。

そんな重い障がいを抱える方々 の介護に関連した資格が、「重度訪問介護従業者」。
今回の記事ではまだまだ認知されていない「重度訪問介護従業者」について、詳しく紹介していきます。

重度訪問介護従事者とは?

重度訪問介護者は、日常的に支援を必要としている障がい支援区分4以上の重度障がい者を対象に、訪問介護サービスを提供する人のことを指します。
都道府県知事の指定する重度訪問介護従業者養成研修を修了すると資格を取得できます。

そもそも「重度訪問介護」とは?

障がい者総合支援法による事業のうちのひとつ。
肢体不自由や知的障がい・精神障がいを持っていて、かつ日常生活全般に介護を必要としている方の自宅へホームヘルパーが訪問し、生活に必要な支援を行う。

重度訪問介護の利用者数は年々増加しており、2016年の時点で1万人を超えています。

「必要なタイミングですぐさまサポート」重度訪問介護従事者の仕事内容

重度訪問介護従業者の主な仕事は、利用者さんの居宅を訪問して、生活上必要な多くの活動についてサポートすること。
食事や入浴・排泄といった基本的な行動への介助をはじめ、調理・洗濯・掃除などの家事に代表される日常生活の支援、外出時における移動中の介護など、その内容は多岐にわたります。
利用者さんにとって必要な身の回りの援助を行う、と考えておくのがよいでしょう。

具体的な仕事内容
  • 食事の準備、片付け
  • 洗面や歯磨き
  • 着替えなどの介助
  • トイレへの移動介助、排泄介助(おむつ交換)
  • 就寝時の体位変換
  • 移動の付き添い
  • 必要な買い物の代行

など

利用者さんがご自身でできることについては見守ることも大切なポイント。
援助が必要になったときのために、利用者さんの近くで常に待機しておくことも仕事の内容に含まれます。

また、2018年4月に改正行された障がい者総合支援法によって、医療機関へ入院した利用者さんにも引き続き訪問介護サービスが提供できるようになりました。
利用者さんの状態や特徴、介護方法についてを医療従事者に適切に伝えたり、病室の生活環境を整えたりすることも、重度訪問介護従業者の大切な仕事となります。

サービスの対象になるのは?

厚生労働省の資料によれば、重度訪問介護を利用できるのは「重度の肢体不自由、または精神障がい・知的障がいにより行動上著しい困難があり、常時介護を要する状態」の方に限られています。
参照:厚生労働省「重度訪問介護に係る報酬・基準について≪論点等≫」(2017/10/6)

具体的に言うと、次の条件のうちどちらかに該当していれば、利用対象として認められるということになります。

  1. 二肢以上に麻痺などがあり、障がい者支援区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のすべてにおいて「支援が不要」以外で認定されている
  2. 障がい支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目など(12項目)の合計点数が10点以上である

脳性麻痺や脊髄損傷で寝たきりになってしまっている方や、重度心身障がい・強度行動障がいなど精神面に大きな障がいを抱えている方、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病患者など、多くの人がこの条件に該当するとして重度訪問介護を利用しています。

カイゴン
カイゴン
重度訪問介護を利用する方は、その名の通り重い障がいを持っている方ばかり。介護のときには細やかな注意や配慮が必要ゴン!

「2つのカリキュラム」からなる研修を受けて重度訪問介護従業者になろう

重度訪問介護従事者として資格を取得するためには、重度訪問介護従業者養成研修を受講する必要があります。
講座は都道府県の指定する事業所やNPO法人、社会福祉法人などで開かれます。どこで受講できるのかは各都道府県のホームページで確認することができるので、ぜひ事前にチェックしておきましょう。

重度訪問介護従業者養成研修には「基礎課程」と「追加課程」という2種類のカリキュラムが用意されています。
それぞれどのようなことを学べるのか、詳しく見ていきましょう。

基礎課程

基礎課程には受講のための要件はないので、誰でも受講できます。3時間の講義と7時間の実習、計10時間で構成されているカリキュラムです。
これを修了することで、障がい程度区分4と5の利用者さんに対応できるようになります。

講義(3時間)
重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義 2時間
基礎的な介護技術に関する講義 1時間
実習(7時間)
基礎的な介護とコミュニケーションの技術に関する実習 5時間
外出時の介護技術に関する実習 2時間

追加課程

追加課程は基礎課程の修了者を対象としているカリキュラムです。7時間の講義と3時間の実習、計10時間で構成されています。
これを修了することで、障がい程度区分6の利用者さんに対応できるようになります。

講義(7時間)
医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者の障がい及び支援に関する講義 4時間
コミュニケーションの技術に関する講義 2時間
緊急時の対応及び危険防止に関する講義 1時間
実習(3時間)
重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習 3時間

これから、重度訪問介護従事者がもっと活躍する時代に

一般的にはまだ高いとは言えない重度訪問介護従業者の認知度。
しかし、介護保険法に基づいて研修を行う訪問介護員の資格に比べ、より障がい者対応・応用技術に重きを置いている重度訪問介護従業者は、これから先どんどん需要が高まっていくものと考えられています。

厚生労働省は2005年、介護に携わる人の資格を介護福祉士に一本化する方針を打ち出しました。
しかし、障がい者へ提供する介護サービスは、障がいの程度が重くなるほど細かな配慮が必要になるもの。それをすべて介護福祉士だけで担うのは難しく、結果、需要と供給がまったく釣り合っていない状態に。障がい者への介護に精通したエキスパートが常に不足しているのが現状です。
そのため、重度訪問介護従業者はこれからの活躍が期待される資格だと言えます。

実際、重度訪問介護の事業所では、2.5人以上必要とされている常勤のヘルパーの条件に「居宅介護で働くことができる介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格保有者」もしくは「重度訪問介護従業者の資格を持っている人」を挙げています。
人材要件の加算対象になるため、事業所は重度訪問介護従事者養成研修の修了者を必要としていると言っても過言ではないのです。

重度訪問介護従事者の資格を取得するメリット

重度訪問介護従業者の資格を取得するメリットとして挙げられるのは、医療的ケアを行えるということ。

重度訪問介護従業者は、養成研修を修了した後、看護師等の指導の下で実地研修を受けることでたん吸引や経管栄養などの医療的ケアを実施できるようになります。
「特定の利用者さんにのみ行える」という制限はつきますが、医療的ケアを行えることはそれだけでも十分な強みですよね。

利用者さんの需要としても、事業所の需要としても求められている重度訪問介護従業者。
資格を取得しておくことで、よりよい転職先を選べるようになるかもしれません。

編集者より

これからどんどん介護のニーズが高まっていく中で、すべての介護サービスを介護福祉士のみで担うことはほぼ不可能と言っていいでしょう。
そのとき、専門分野に長けている重度訪問介護従業者はきっと重宝されるはず。将来の可能性を広げるつもりで、研修を受けてみてはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

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