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「地域包括支援センター」とは? 高齢者を支える地域の相談窓口をくわしく解説

高齢者が増加の一途をたどる昨今、介護そのものを遠ざける「介護予防」の重要性も叫ばれるようになってきました。
自分の家族や身近な高齢者が将来的に介護を必要としないで済むなら、それに越したことはないですよね。
しかし、どうすれば適切に介護予防ができるのかわからない……という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで頼りになるのが、地域住民の相談・支援窓口として設置されている「地域包括支援センター」。
介護・福祉分野の専門職を中心に、幅広く高齢者に関する相談対応・支援を行う施設です。

この記事では「地域包括支援センター」のサービス内容や利用方法、居宅介護支援事業所との違いなどを解説します!

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしを地域でサポートするために各地域に設置されている相談・支援窓口のこと。
基本的に市町村が主体となって運営していますが、自治体から委託された社会福祉法人や社会福祉協議会、民間企業などが母体となっているケースもあります。

カイゴン
2014(平成26年)4月末時点で、全国に4,557箇所設置されているゴン。

地域の保健医療の向上や福祉の増進など、住民の健康と生活を守ることを目的として、高齢者に関する相談対応・支援を行っています。
そのため、地域包括支援センターが対象とする利用者は、要介護認定の有無に関係なく高齢者に関わるすべての地域住民となります。
高齢者本人だけでなく、そのご家族からの相談も受け付けています。

地域包括支援センターが担う役割

地域包括支援センターは、地域包括ケアシステムを実現させるための中心的な機関として設立されました。

地域包括ケアシステムとは

地域の高齢者に対して、

  • 介護保険制度による公的サービス
  • 医療機関
  • 地域のボランティア団体

などの多様な機関が互いに連携して、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムのこと。
高齢者が、住み慣れた地域で安心して、その人らしい尊厳ある生活を続けられるように支援することを目的としています。

 

それぞれの地域にあった地域包括ケアシステムには、地域住民のニーズの把握や医療・介護・福祉などの関連事業の調整などを行う必要があります。
その実現のため、地域包括センターには地域包括ケアの「一体的なサービスを提供するための中心的な役割」が期待されているのです。

地域包括支援センターで提供されるサービス内容

地域包括支援センターが提供するサービスとして、中心的に行われているのが「包括的支援事業」。
地域の医療・介護・予防・生活支援を包括的に確保するためのもので、主に4つの業務を実施することで事業が成立しています。

地域包括支援センターが市町村から一括で委託されている4つの事業について、どのようなサービスとして行われているのか見ていきましょう。

介護予防ケアマネジメント業務

介護予防ケアマネジメント業務は、要支援者や基本チェックリストの内容から事業の対象者と判断される人が、要介護状態とならないように支援する業務です。

対象者の心身の状況や環境に応じて、介護予防サービスや総合事業などが包括的に実施されるように支援を行います。
具体的には、要介護者のケアマネジメントと同様に、下記の業務内容を行います。

①課題分析(アセスメント)
対象者の日常生活の状況や生活機能の低下の原因や・背景等の課題を明らかにする。
②目標の設定
課題分析(アセスメント)の結果を見て、対象者にとって最適と思われる目標を設定する。
③モニタリングの実施
介護予防サービスなどの支援が実施される間、必要に応じてその実施状況を把握するとともに事業の関係者の調整を行う。
④評価
介護予防サービスなどの支援の実施担当者からの報告を参考にしつつ、対象者の心身の状況等を再度把握し、適宜介護予防ケアプランの見直しを行う。

総合相談支援業務

総合相談支援業務は、高齢者本人やそのご家族、地域住民などの介護に関わるさまざまな人から相談を受け、状況を把握して適切なサービスにつなげる業務です。

地域包括センターの社会福祉士や主任ケアマネがチーム体制で連携し、それぞれの専門知識やネットワークを活かして対応します。
必要に応じて介護保険サービスや医療機関、行政、ボランティアなどの地域のさまざまな社会資源を紹介し、多面的な援助を行うのが大きな特徴です。

権利擁護業務

権利擁護業務は、高齢者の心身や財産を守るための支援を行う業務です。

認知症などによって判断能力が低下している高齢者に対して、「成年後見制度」や「地域福祉権利擁護事業」の利用に関するアドバイスをしたり、悪徳商法や振り込め詐欺などの被害を防止するために民生委員ほか関係者へ情報提供を行ったりします。

また、虐待事例を把握した場合には法に基づいた適切な対応をとり、困難事例(支援を拒否する高齢者など)への対応も行います。

包括的・継続的マネジメント

包括的・継続的マネジメントは、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、介護サービス事業者や医療機関、行政機関との連携をすすめる業務です。

具体的にはケアマネジメントの公正・中立性を確保するために、地域のケアマネジャーへの日常的な指導や支援困難事例などへの指導・アドバイスを行ます。
さらに、多職種の連携や協働による長期継続ケアの支援をします。

カイゴン
そのほかにも「地域の65歳以上の高齢者で要支援・要介護になる可能性のある人を把握する」ための事業やボランティア、「地域活動を行う人材の育成・支援」なども行われているゴン。

地域包括支援センターで活躍する3職種の専門家

地域包括支援センターでは、社会福祉士、保健師(または経験のある看護師)、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)といった専門職が主体となって地域住民の相談・支援の対応を行っています。
介護サービスだけでなく、地域の医療や福祉サービス、ボランティア、行政機関、民生委員などの社会資源とも連携して支援を展開しています。

3職種の専門家がそれぞれどのような仕事をしているのか見てみましょう。

社会福祉士

社会福祉士は、福祉の現場で高齢者や障がい者、生活困窮者の相談を受けたりサポートをしたりする職種です。
地域包括支援センターにおいては、総合的な相談の窓口として住民の対応を行います。
相談の受付は窓口に限らず、電話や手紙でも受け付けています。自治体によっては訪問を行うところもあるようです。

主に行う業務
  • 介護保険サービスや保険外サービスに繋げる支援
  • 生活や消費者被害に関する支援
  • 高齢者の虐待防止、早期発見
  • セルフネグレクトなどの困難事例の支援
  • 成年後見制度の利用援助
  • 行政などと連携をした権利擁護業務などの支援
  • など

 

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保健師(経験のある看護師)

保健師は、住民の健康増進やQOL(生活の質)の向上をサポートする職種です。
地域包括支援センターにおいては、保健指導や健康管理を行います。

主に行う業務
  • 健康づくり教室の主催
  • 介護予防を中心とした保健指導
  • 認知症関連の支援
  • 医療機関などの関係機関の紹介や調整
  • など

 

とくに、医療的な知識・サポートが必要な場面での活躍が期待される専門家です。

主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)

主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)は、ケアマネジャー(介護支援専門員)の中でも所定の研修を受けた人にのみ与えられる上級資格。
介護支援のエキスパートにして、ほかのケアマネジャーに対するスーパーバイザーとして機能する役職です。
地域包括支援センターにおいては、住民に対する介護支援、地域のケアマネジャーへの助言などを行います。

主な役割
  • 住民に対する介護全般の支援
  • 地域のケアマネジャーへの助言やサポート
  • サービス事業者間との連携
  • など

 

地域住民もほかのケアマネジャーもそれぞれ支援するのが主任ケアマネジャーです。

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地域包括支援センターを活用するには?

地域包括支援センターは窓口に直接訪問する以外にも、電話や手紙による相談も受け付けています
また、居宅介護支援事業所や民生委員を通して連絡することも可能です。
相談したいことがあれば、気軽にアクションを起こしてみるのがよいでしょう。

カイゴン
地域包括支援センターは高齢者とそのご家族に限らず、誰でも利用できるゴン。要介護認定を受けていなくても大丈夫ゴン!
明美
相談対応やケアプラン作成も、無料でしてもらえるよ。
※電話や手紙で相談する場合は通信料・郵送費用がかかります

利用できる時間は地域包括支援センターによって異なりますが、おおむね平日の午前9時から午後6時まで。
曜日によって利用時間が異なっていたり、土曜日や特定の日曜日にも利用できたりするところもあるので、お近くの地域包括支援センターについて事前に調べておくと安心です。
ご自身が住んでいる地域を担当している地域包括支援センターを知りたいときは、自治体の高齢者窓口に問い合わせたり、インターネットで検索したりして探しましょう。

どんなことを相談できる? 地域包括支援センターの相談事例

地域包括支援センターではどのような相談を受け付けているのでしょうか。
具体的な相談事例を紹介します。

相談事例1:介護保険の申請

これまで元気に暮らしていたAさんが、ある日転倒し、骨折してしまいました。
病院から退院したものの、自分で家事を行うことが困難に。Aさんは地域包括支援センターへ電話して、「何かいい方法はないか」と相談しました。

地域包括支援センターの対応

相談員がヘルパーによる家事の支援や、リハビリを兼ねたデイサービスなどの利用を提案。
これによりAさんは、介護保険サービスを利用するべく、介護保険申請をすることになりました。

相談事例2:認知症対応の支援活動

認知症で物忘れ症状が進行したBさんは、たびたび道に迷うようになり、帰宅できなくなることが増えていました。
Bさんが行方不明になってしまったある日、家族が地域包括支援センターへ連絡。家族や市内の関係各所と協力して捜索活動にあたった結果、その日のうちにBさんを無事に発見しました。

地域包括支援センターの対応

その後、徘徊の心配がある人に向けたGPS機能の探索器の貸与や手続きを行いました。
また、対応に苦慮する家族が同じ悩みを持つ人々と交流できるよう、交流会も開催しました。

相談事例3:独居高齢者の見守り支援

とある会社から「うちで働いている80歳の男性Cさんが、このところ衰弱している様子がある。ひとり暮らしで心配なので、支援をお願いしたい」という相談が。
調べたところ、Cさんはかかりつけ医がいる病院が6年前に閉院して以降、医療機関への受診をまったくしていないことが明らかになりました。

地域包括支援センターの対応

相談員がCさんの自宅へ訪問し、受診を促しました。
Cさんは病気が見つかることへの恐怖から受診を拒否しますが、連日の訪問によって説得が成功します。
内科・整形外科を受診してもらい、「糖尿病」「低栄養」「下肢筋力低下」の診断を受けました。

その後Cさんは受診を継続しますが、下肢筋力低下が著しくなったことで通院が困難に。
そこで地域包括支援センターは訪問診療を手配し、主治医・他機関と協力しながら見守り支援を開始しました。

参考:日野市地域包括支援センターかわきた

「居宅介護支援事業所」との違いは?

地域包括支援センターの他にも、介護の相談窓口として設置されているものがあります。
それが「居宅介護支援事業所」と呼ばれる、利用者さんの環境にあわせた適切な居宅サービス計画(ケアプラン)を提案・作成する施設です。

地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違いは、主に「対象者」と「働いているスタッフの職種」にあります。

利用対象者の違い

地域包括支援センターでは、高齢者本人や家族に関わらず、友人や地域住民など多くの人々から相談を受けてサポートします。
高齢者本人が要支援・要介護認定を受けているかどうかは問われません。

一方で居宅介護支援事業所では、要介護認定を受けた高齢者の介護保険や在宅介護に関する相談を受けてサポートします。

カイゴン
「最近、近所の老夫婦の庭がゴミだらけになってきた」「友達のおばあちゃんに悪徳業者から連絡があった」など、要介護認定を受けていない高齢者に関する相談をするなら、地域包括支援センターの方が適切だゴン。

働いているスタッフの職種の違い

地域包括支援センターでは、主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師の3職種が主体となって、高齢者に関するサポートを行います。

一方居宅介護支援事業所では、ケアマネジャーや主任ケアマネジャーが介護に関するサービスの調整などを行います。

「要介護認定の申請代行」と「ケアプランの作成」はどちらの施設でも行われていますが、地域包括支援センターは要支援認定者のケアプランを、居宅介護支援事業所では主に要介護認定者を作成しているという違いがあります。

主に要介護者の支援を任せたい方は居宅介護支援事業所を、高齢者支援を幅広く任せたい方は地域包括支援センターを選んでみてはいかがでしょうか。

地域包括支援センターで働くメリット・デメリット

ここからは、地域包括支援センターで働く職員にとって、どのようなメリットやデメリットがあるのか見ていきましょう。

メリット

  • 土日祝休みのところが多い
  • 介護保険や介護サービスに関する知識を得られる

地域福祉の相談窓口である地域包括センターでは、高齢者や家族、地域住民などの相談を受け付けています。
介護予防ケアプランの作成や認知症の方に関する相談、介護予防体操の実施といった業務のほか、医療機関や各介護サービスとの調整や連携も行うため、介護保険に限らず、介護予防など介護に関する知識を幅広く深めることができます

そういった業務内容から、地域包括支援センターでは施設・病院に勤務する主任ケアマネジャーや社会福祉士、看護師よりもデスクワークが多くなると考えられるため、体力面での負担も軽減されることが期待できます。

デメリット

  • 直接的かつ長期的な支援ができない

直接的かつ長期的な支援ができないため、地域包括支援センターは相談に対して助言したり、必要なサービスや事業所をつなげるなどの調整・橋渡しをしたりする役割を担っています。
しかし、介護や医療などの直接的な支援は行いません

また、利用者さんが要介護認定された場合は居宅介護支援事業所へ引き継ぐため、利用者さんが要介護状態になった場合は支援から離れることになります。
利用者さんに対して直接的かつ長期的な支援をしてきた方にとっては、モチベーションの維持が難しいこともあるかもしれません。

編集者より

2012年の介護保険制度改正で地域包括ケアシステムの推進が盛り込まれたことからわかるように、今、全国で「地域包括ケアシステムの構築」への取り組みがさかんに行われています。
これから後期高齢者が増加していく中で、地域包括ケアの中心である地域包括支援センターの需要はさらに高まっていくことでしょう。

主任ケアマネジャーの資格を持っている方、またはキャリアアップとして主任ケアマネジャーの資格取得を目指している方は、ぜひ就職の選択肢として数えてみてはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

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