特別養護老人ホームなどの介護施設のスタイルとして、最近聞かれるようになった「ユニットケア」をご存知でしょうか。
ユニットケアは「個別ケア」を実現する方法のひとつ。従来の施設では「集団ケア」が主流でした。そこに、ユニットケアも加わり、いまや施設の介護スタイルはどんどん変化しているのです。
この記事ではユニットケアについて、定義や従来型との違い、ユニットケアの目指すもの、メリット・デメリット、生まれた背景をご紹介します。
自分の働き方に合う、施設のスタイルを探してる介護職員や、ご家族の入居施設を探す中で、施設のスタイルに関して迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ユニットケアとは
ユニットケアとは、入居者ひとりひとりの状態に応じた個別ケアを提供する試みです。
入居者を10人程度の小グループ(ユニット)ごとに分けて固定のスタッフを配置し、自宅で暮らしていたころと変わらないような居住環境を整えてケアをします。たとえば、他の入居者とのおしゃべりや趣味の活動などの交流、美容院や家族と食事に行くことなどを大切にします。
従来型とユニットケアのちがい
従来型とは、従来通りの運営方法をする特別養護老人ホームなどの介護施設を指します。つまり、1部屋に4人程度が一緒に暮らす、多床室の施設です。施設では、多くの入居者の介護をする必要があるため、効率的に介護ができる「集団ケア」が主流でした。
集団ケアでは、それまでの生活リズムではなく、施設の時間割りに合わせて生活しなくてはいけなくなります。
一方、ユニットケアの特徴は、入居者個人のプライバシーが守られる「個室」があること。さらに、他の入居者やスタッフと交流するための「居間」(共同生活室)もあります。
各ユニットに配置された顔なじみのスタッフが、入居者の個性や生活リズムを尊重した生活をサポートする「個別ケア」を目的としています。たとえば、夕食の時間が17時の人もいれば19時の人もいます。昼間の過ごし方もみんなでレクリエーションを楽しみたい方もいれば、個室で読書をしたい方もいます。そのような、ひとりひとりのニーズにスタッフが応えます。
ユニットケアが目指すもの
ユニットケアは、「介護が必要な状態になっても、ごく普通の生活を営むこと」つまり、「暮らしの継続」を大切にしています。暮らしとは、1日1日の積み重ね。暮らしの継続をサポートするためには、「1日」にケアの視点を置くことが重要です。その人が1日をどう過ごしたいのか、その人の24時間の過ごし方の詳細を知る必要があります。その人ができる部分と、サポートが必要な部分を、自立支援の観点から見極めてケアを提供していきます。
ユニットケアは、「高齢者の尊厳を保つこと」を目的としながら、画一的な方法ではなく、暮らしとともに変化し、進化していくことを目指します。
ユニットケアのメリット・デメリット
ユニットケアの入居を検討されている場合、メリット・デメリットを知ってから選びたいですよね。入居者向けのメリット・デメリットを次のようにまとめましたので、ご参考にしてください。
メリット
- 個室のため、プライバシーが確保され、自分らしい生活が尊重される
- 自分の部屋と他の入居者やスタッフとの共有空間の両方がある
- できる限り、ひとりひとりの状況にあわせたケアを行ってもらえる
- 専任スタッフが配置されるため、顔なじみとなり、より家庭に近い環境になる
- 個室のため、家族が遠慮することなく訪問できる
- 感染症などが発症しても個別対応しやすい
デメリット
- 設備が充実しているため、居住費や光熱費が割高
- 専任スタッフのため、スタッフと入居者のトラブルが起きるとお互い気まずい思いをしてしまう
- ひとりが苦手な人にとっては、孤独感を感じてしまう
ユニットケアが生まれた背景
ユニットケアが誕生したきっかけは、およそ23年前にさかのぼります。
1994年、ある特別養護老人ホームの施設長が、集団で食事を摂る入居者の光景に疑問を抱きました。その光景を変えたいと思い、少人数の入居者とともに買い物をし、一緒に食事を作り、食べるといった試みをはじめます。すると「一緒に過ごす、ごく普通の家庭の食卓にこそ意味がある」ことに気づきました。
次に、「住み慣れた地域で暮らせるような策を」という発想から、入居者に日中、借り上げた民家で過ごしてもらう「逆デイサービス」をはじめました。
そうした取り組みの結果、職員から「4つのグループでそれぞれの家のような生活を」と提案がありました。そのため、定員50名の施設を4つのグループに分け、グループごとに職員を配置し、入居者が起きてから寝るまで、同じ職員とともに生活する形態を取り入れました。
これが我が国における、ユニットケアの本格的なはじまりと言われています。
自分に合った施設のスタイルを選ぼう
現在の施設のうち、約3割がユニットケアを導入しています。新たに建設される施設では、ユニットケアを採用するところが増えてきているため、ユニットケアの施設数はますます増加していくことが予想されます。
働くとしても、入居されるとしても、施設の介護スタイルに関して向き不向きはあると思います。ぜひ、自分やご家族がよりいきいきと輝ける施設の介護スタイルを選んでください。
参考サイト
一般社団法人日本ユニットケア推進センター「ユニットケアについて」(2017年7月6日,http://www.unit-care.or.jp/about-unitcare/)