インタビュー

【特集】「ケアマネは介護に関わるみんなを繋ぐ」居宅ケアマネ・山根史子さんインタビュー

「みんなを繋ぐのが、ケアマネの役割なんですよ」

朗らかな笑顔でそう語ったのは、居宅ケアマネジャーの山根史子(やまね ふみこ)さん。
東京都板橋区の朔望会 居宅介護支援事業所エーデルワイスにケアマネジャーとして就職して、もうすぐ5年目を迎えられます。

今回「介護のお仕事研究所」編集部は、「ケアマネのお仕事」をテーマに、現役ケアマネジャーの山根さんにインタビューしました。
ケアマネを目指されている方も現役ケアマネの方も参考になるお言葉がたっぷり詰まっていると思います。職場などでもご回覧いただければ幸いです。

もっと利用者さん本位の介護がしたかった

――まずお伺いしたいのですが、山根さんがケアマネジャーになるまでの経緯を教えていただけないでしょうか?
山根史子さん(以下、山根):ヘルパー2級の資格を20年近く前に取ってから、デイサービスの職員、特養の職員として働いていました。特養には11年くらい勤務していたんですね。介護福祉士の免許も持っているのですが、ケアマネジャーの資格は特養で働いている間に取りました。
ケアマネの資格を取った理由は、11年間特養の職員をしてきた中で、施設の介護の行き詰まりを感じており、「居宅に入り込んでお家に行きながら、いろいろサポートできればいいなあ」と思ったからです。そして平成24年から、こちらの居宅介護支援事業所エーデルワイスで働いております。

たとえアクシデントが起きても、その方らしい人生をサポートしたい

――ありがとうございます。「施設の介護の行き詰まりを感じていた」とのことですが、もっと上流の介護サービスの提案から関わりたくなった、ということでしょうか?
山根:そうですね。特養も「本人に寄り添うケア」を目標に掲げているいい場所なんですけれど、利用者さんのこれまでの人生から切り離されてしまった世界なんです。
その方がずっと歩んできた歴史があって、途中で骨折だったり脳梗塞、もしくは難病、認知症などのアクシデントがあって。それでもその方の人生は続いています。
利用者さん十人いれば十人十色で、さまざまな歴史があり思いもあり、その人らしさっていうのがもちろんあります。
人生そのものをサポートしていく時、施設だけのサービスではやはり行き詰まりがあるんですよね。
もっと利用者様本位の介護をしたかったので、ケアマネジャーを目指しました。

「あんたの顔を見ると生き延びた気がするよ」

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地域の電話帳。事業所探しの強い味方です。

――現在は居宅ケアマネジャーとして働かれておりますが、ケアマネの仕事のやりがいはどういうところで感じますか?
山根:施設経験者だからゆえの感想なんですけど、特養にいた時は、私はイチ職員なんですね。
「○○ 対 ワタシ」の関係ではなく、ご家族にしろご利用者様にしろ、「特養の一人の職員」としての対応をされるんです。
一方でケアマネは、契約は「事業所」とすることになりますが、契約書には山根史子という名前が載るんです。
そうすると利用者様は「私の担当は山根」と思ってくださる。ご家族も「山根に相談して」と仰ってくださります。そこにものすごい重大さとやりがいを感じています。

――仕事をしていて嬉しかったこと、感動したことは何ですか?
山根:利用者様からの感謝のお言葉をいただけたときです。
こんな例もあります。利用者様のなかには、まったく表情がなくなってしまったとか、意思の疎通が難しくなった方がいらっしゃるのですが、手を握ってくださったり、眼球から何かしらの反応があるんですよ。それを感じた時ですかね……。
……まあ、本当のところは分からないんですよ?想像ですけれど、そういうメッセージがわかる瞬間があります。
それから失語症で、自分のお名前とかも絶対言えなかった方が、なにかの瞬間にぽん、とお名前を仰っていただいたこと。すごく感動したのを覚えています。
あとは「あんたの顔を見ると生き延びた気がするよ」って、利用者さんに言われた時は涙が出ましたね。

望む対応をするだけが正解ではない

――逆に、ケアマネの仕事をする上で大変だったことはありますか?
山根:大変だなって思ったのは、「一人暮らしをされている認知症の方」の周辺症状が強く出てしまった時です。
その時の私の対応は、その方の望む対応ではなかったはずなんです。だけども望む対応ばかりしていると、周辺症状がどんどん出てきてしまうので……。
望む対応だけして寄り添ってどうの……という教材に書かれている内容だけでは、済ませられないのが現状ですね。現場は教材どおりにはいかないことも多いです。

――ほかにはどんな点で難しいところを感じますか?
山根:一人一人に対しての距離感を大切にしていかないといけないと思っております。これは私のモットーです。馴れ合いにならないように、かといって信頼関係を作れないほど疎遠にならないように……ってところを考えております。
まずはその人を敬うことがまず大切であるし、「(事業所の)お客様だから」ってへつらうことも、「支援するから」って上からになることもないし。同等に関わっていくところですね。

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勉強に欠かせないテキスト。「ケアマネは毎日勉強です」と山根さん。

ケアマネなりたての頃の自分へアドバイスするなら

――最後に、これからケアマネジャーを目指す、あるいはなったばかりの新人ケアマネジャーへ、アドバイスをいただけますでしょうか。
山根:利用者様やご家族には、作り笑顔でなくて、心からの笑顔でじっくりとアセスメントしてください!
初訪問で、利用者様やご家族への質問ばかり考えているとうまくいかないですよ。はじめましてでお互い緊張してるので、まずどんな仕事をしていたのかとか、どこで生まれたか、昔何が好きだったかなどをお聞きして、コミュニケーションをとれる状況を作っていくことです。
はじめのうちはそれで一日の訪問が終わってしまっても仕方ないと思います。

いくらケアマネジャーが熱心に情報提供や提案をしたとしても、利用者さんはアクシデントがあって弱っている、自信をなくしている状態なんです。よいご提案には、どういう悩みがあるか、どういう要望があるかのアセスメントが大切ですよね。
ですので、まずはゆっくりと、どんな話し方が好きなのか見極めながらコミュニケーションをとって、情報を集められる関係を整えていくことが大切です。信頼していただき、悩みやご要望をお聞きできるようになるまで、最初のうちは何回も足を運ぶことです。
本人が自信を持てるような、相談援助が大切だと思います。
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スヌーピーがお好きな山根さん。可愛い文具に癒されます。

――ちなみに、もしケアマネとして働き始めの頃の自分に会えるとしたら、伝えておきたいことはありますか?
山根:私が働き始めで失敗してたのは「距離感の取り方、掴み方」だったので、やはりその点でしょうか。

あとはさきほどもお話したとおりですが、いきなりいっぱい情報を言い過ぎちゃったりとか。相談援助の中の時間配分とかテンポ・タイミングとかも大切だよって、言ってあげたいですね!

――山根さん、ありがとうございました!

編集後記

今回のインタビューは「ケアマネのお仕事」をテーマにお送りしました。

アセスメントの本質やケアマネの仕事のやりがいなど、良いケアプランをつくるための利用者さんやご家族との向き合い方について、非常にタメになるお話をお聞かせいただけました。また、ケアプランの立て方についてお話いただいたなかで、

「皆を繋ぐ蝶番(ちょうつがい)がケアマネなんですよ」ケアマネ一人じゃ何もできないし、それぞれがばらばらに点で関わってたら、どこかで歪みが出てしまいます。また、自分で背負い込みすぎると『ケアマネって大変なんだな』と思ってしまうので、皆で楽しくプラン立ててこうよ!って考え方をするのがいいですね」

と仰っていたのが非常に印象的でした。

「ケアマネはみんなを繋ぐ蝶番」。ケアマネの仕事を表わす素敵な表現です。

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