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専門から「多能」へ、変化する介護職

介護職員は、みなさん「介護ができる」と思います。
しかし、人材不足・地域・多世代・共生といった現代のキーワードやAIの一般化、対象世代の移り変わりといった変化が「生活」自体を変えていく中で、介護職も「介護ができる」だけでなく、その能力を変化・拡張させていくことが重要になっていきます。

人材不足はもはや通常

AIやICT、介護ロボットが身近になると同時に、介護業界の人材不足の深刻さが日々報じられています。しかし、人材不足は介護業界だけではありません。少子高齢多死社会の日本においては、どの業界も人手が足りません。
介護業界に限って言えば、働き手が減って対象者は増えるという現象がしばらく続くでしょう。「人が増えない」ことが通常の社会で、「人が少ないからいいケアができない」と言い続けていてもあまり意味がありません。日本の人口が減る以上、少ない人数でより良い結果を出すことを前提としたケアスタイルの構築が求められます。むしろ世界のどの国よりも早くこの事態に直面する日本は、ひとつのモデルを作り出すシード権を手に入れたようなものです。

人材乱獲が招いた質の低下

介護は、単純に「優しい人」だからできるというものではありません。認知症ケアは特にそうです。
高校から介護福祉士養成校に入学する学生さんの推薦書には「優しさがあり介護に向いている」と書かれていることも多いです。しかし、優しいだけの人に介護が務まらないことは介護職として日々ケアにあたる人、在宅介護をされている人には実感できることでしょう。継続した学びや発想力、対応力といったさまざまな要素が必要な職業です。
養成校に限らず、介護業界の裾野を広げるために採用ハードルを下げたことで、ケアの質が上がりにくくなったことも事実です。事業所によってはOJTや研修を効果的に実施し、下地のない状態で入職した介護職員をしっかり引き上げているケースもありますが、教育に注力できないほど疲弊している事業所も増えています。

人材減少と待遇

人材が減るとき「なんとかして人を増やそう」とするか「少数精鋭に切り替える」かの選択を迫られます。人を増やす前提であれば、現任者の待遇は据え置きになるでしょう。少数精鋭のケアスタイルを構築する流れになれば、必然的に待遇のアップも起こります(AI化やロボット化のコストも当然発生します)。
その時、生き残ることができるのはどんな介護職か、を考える時期に来ています。

介護の多様化

「現代の高齢者」と「団塊世代の高齢者」では生きてきた時代も人生経験の内容もちがいます。介護職は画一的な高齢者像から脱却し、多様化する高齢者に向き合う必要があります。
祖母が入所していた介護老人保健施設では、連日同じ時代劇のDVDがエンドレスで流されていました。その施設の介護職員に理由を聞くと「お年寄りは皆さん時代劇がお好きなので」という答えが返ってきました。
個別化はバイステックの7原則(対人援助技術のひとつ)にもあるように、普遍の原則です。これからは今以上に高齢者も多様化するため、より一層個別化を意識する必要があります。
介護職は「介護そのもの」を拡張させ、多様性を持つことが求められるでしょう。

多能職としての介護職

専門職はプロフェッショナルなためかっこよく見えることも多いですが、「それだけ」になってしまう怖さも併せ持っています。もともと「生活」という広大なフィールドで仕事をしている介護職は、ますます広がっていく高齢者の多様な生活に対応する必要があります。
今、時代の流れを見たとき、

が同時にスピード感を持って(おそらく我々が感じている以上のスピードで)進んでいます。
これらを並べて見たとき、今後起きる未来のひとつに「少数精鋭の介護職がAI化されていく社会の中で従来の画一的なケアだけでなく、多様な手段をもって生活を支える」姿を想像することもできるのではないでしょうか。
超高齢社会ではさまざまなニーズが発生します。近い将来AIによってやるべき仕事が焦点化された時、介護職はこれまでの介護にプラスした他の能力も必要になってきます。つまり、専門分野をより多能化することが、要介護者・認知症患者の生活と社会をよくする可能性があると考えられるのです。

おわりに

他業種から介護業界にやってきた人が私の周りにはたくさんいます。
多くの人は優秀な介護職として日々仕事をしており、前職のスキルや思考・経験値がポジティブに作用しています。そういった人たちはさらに他のスキルも身につけようと「動く」傾向にあります。
もちろん、最初から介護職として働いている人の中にも同様に「動く」人はいます。その人たちは好奇心と興味を持って新しい世界に足を踏み入れ、古いものを知ろうとしているように見えます。そうしていつの間にか獲得した能力を介護に還元できる多能職として存在しています。
時代が変わっても柔軟に自らを変化させることができる介護職が増えれば、安心して老いることができる社会になっていくでしょう。

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