サイトアイコン 介護のお仕事研究所

認知症の徘徊の基礎知識|原因と対策を知る

年々、認知症を持つ高齢者が行方不明になるケースが増えています。2016年の全国の行方不明者数は1万5432人と4年連続で最高記録を更新中。1日あたり40人以上のお年寄りが姿を消していることになります。中でも深刻なのは、交通機関が発達している都心部。電車やタクシー等で遠くに行ってしまうケースも多く、発見率の低さが深刻です。

この背景にあるのは、「徘徊」と呼ばれる認知機能低下が引き起こす、認知症の周辺症状です。徘徊の原因とは何なのか、介護者はどう向き合うべきなのか、考えます。

【関連記事】認知症の徘徊にどう対処する?家族が行うべき4つの対応

徘徊とは


認知症になると、家の中や外を歩き回るといった行動が見られます。「徘徊」とよばれるこうした行動は、認知症が引き起こす代表的な行動障害です。脳内の、今いる場所や時間を判断する「見当識」機能が侵されることで、今の状況が判断できなくなる結果、「歩き回る」ことになるのです。

本人に道に迷った自覚がなかったり、たとえ道に迷ったことを認識しても、その後どう解決したらよいか分からず歩き続けた結果、行方不明になることが多いようです。認知症が引き起こす徘徊は、交通事故や転倒など、本人の命を脅かすリスクも高く、深刻な問題です。

徘徊が起こる原因とは

「徘徊」という言葉を検索すると、

《名・ス自》あてもなく歩き回ること。うろうろと歩き回ること。(welio辞書)

と出てきます。ただ、注意したいのが、上記は一般的に使われる「徘徊」の意味であり、認知症の場合、何も目的がないのにただ歩き彷徨っているのではなく、本人の中ではきちんとした理由があることが多いのです。例えば、下記のようなことです。

これまでの日課を守りたい

例えば、通勤や散歩といった、長い間その人の生活サイクルに組み込まれていたことがあった場合。そうした日課は、認知機能が衰えても習慣として残っています。定年まで仕事をしていた人であれば、まだ自分は働いていると思い込み、仕事をしに外にでかけることもあります。

帰りたい場所がある

今いる場所は本来の自分の家ではないと感じ、「住み慣れた家に帰りたい」と外に出てしまうケースです。行先がはっきりと分からないまま歩き続けたり、電車やバスに乗った結果、本来の目的を忘れてしまい、途方に暮れることも多いようです。

何かを探している

自分の家や職場、大切な人など、探している対象を求めて歩くケースです。探してもみつからないので、どんどん歩くうちに、かなり遠くまで行ってしまうこともあります。(認知機能が乱れると、「疲れる」という感覚も鈍くなり、休みなく歩き続けても平気な場合があります)

ピック病特有のケースも

ピック病と呼ばれる前頭側頭葉型認知症の場合、同じことを繰り返す行動が見られることがあります。これは、ほかの徘徊とは異なり、今いる場所の把握はできているため、行方不明にはなりにくいという特徴があります。

徘徊を怒って制するのは逆効果!

徘徊の源にあるのは、本人の不安な気持ちです。怒ってしまうと、怒られたというネガティブな感情だけが残ります。「怒られる場所=居心地が悪い=自分の家ではない」という気持ちになり、結果的にさらに外に出ていきたくなる衝動を高めます。

最終的に、本人にとっての目的(家に帰りたい、探しているものがある、等)が無くならない限り、また同じ事を繰り返してしまうのです。

徘徊がはじまった時、介護者はどうすればいい?

では、ご家族の徘徊がはじまった場合、介護者は具体的にどんな接し方をすればよいのでしょうか。対策の例をご紹介します。

本人の不安な要素を探る

「何かお探し物ですか?」「どこへ行かれるのですか?」等の声がけで、本人が何を不安に感じているのか、探ってみてください。精神的なものだけではなく、尿意や便意を感じていたり、幻覚に怯えて逃げている、といった場合もあります。
頭ごなしに止めるのではなく、まずは、本人の言葉に耳を傾けることが大切です。

気持ちを逸らしてみる

本人の話を聞きつつ、まずはお茶でもと飲み物を出したり、家事を手伝ってもらったり、本人の気分を紛らわせるような働きかけをしてみるのも一つの方法です。近所のスーパーやコンビニまで付いてきてもらう等、少し外の空気を吸うだけで落ち着く場合もあります。

できれば、一緒に歩いてみる

今いる場所が落ち着かないことが原因になっている場合、徘徊を制することが本人のストレスにつながってしまいます。ストレスは、認知症を進行させる大きな要因です。可能であれば、本人の気持ちが落ち着くまで、介護者が外歩きに付き添ってあげるのがよいでしょう。
一緒に話をしながら歩いてみて、様子をみて家に誘導します。

徘徊対策用GPSを持ってもらう

家族が気づかず出て行ってしまったことを想定して、本人の現在地が遠隔でも確認できるGPS端末を持ってもらうのも手です。最近では、GPS機能を搭載した靴やアクセサリーも販売されているので、利用を検討してみてください。

近所の人やお店、警察に事前に一言かけておく

あらかじめ周囲に声をかけ、地域の見守りネットワークを作っておくことも有効です。近隣に住む人や、お店、警察に事前に情報を共有しておくことで、万が一行方不明になった時にも発見しやすくなりますし、一人で抱え込まない点で気持ちも楽になります。

もしも行方不明になってしまったら?

どれだけ注意を払っていても、少しの隙間にいなくなってしまうこともあります。そこで、ご家族が認知症で行方不明になってしまったときに取る4つの対応についてお話します

まずは周りの人間(親族・友人など)に相談


「お父さんがいつの間にか出て行っちゃって帰ってこないの。実は、お父さん、最近物忘れがひどくて…」家族からの突然の電話で、親が認知症かもしれないと気付くケースは多々あります。

このような状況で、一人で冷静に判断することは難しいため、信頼できる職場の同僚や上司、または親族や知人に相談しましょう。人に話すことで状況を整理することができますし、一緒に考えてくれる仲間を増やすこともできます。

身体的特徴や当日の服装を民間・公的機関へ連絡


行方不明になった認知症の方を探すのはとても大変なことです。最低限押さえておきたいのは、行方不明になった方の身体的特徴です。ご本人の写真を用意できればなお良いです。当日に着ていた服も思い出せる範囲で紙に書いて他の方々と共有できるようにしましょう。そして、インターネットやタウンページを活用し、以下の民間・公的機関へ連絡してください。

※地域包括支援センターとは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設
(参照元:厚生労働省 地域包括支援センターの概要より)

もし一緒に住んでいるご家族がいらっしゃれば、行きそうなところを洗い出してもらい、協力者と手分けして捜索をしてください。地図を塗りつぶしながら探すと効率的です。

“なるべく人に迷惑をかけたくない”という思いから、「もう少し自分で探してから」と連絡が遅れてしまうこともありますが、ご家族の生命に関わる事態ですので、遠慮せず速やかに連絡をしてください。

身元不明者を確認できる特設サイトを知っておこう

国や自治体の徘徊対策も広がりつつあります。2014年6月、警察庁では全国の警察署に「認知症に係る行方不明者発見活動の推進について」の通達を出し、自治体などと連携し、認知症行方不明者の発見、保護に努めるよう働きかけました。また、住民のほかタクシーなどの交通機関、コンビニなどの民間企業も参加し、日常の声掛けや捜索につなげる「徘徊・見守りSOSネットワーク事業」が全国600以上の自治体で実施されています。

厚生労働省は、身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト(厚労省)を開設しています。
こちらで、各自治体が公表している行方不明者の情報を確認できます。

ただ、「個人情報の保護」が壁となり、いまだ上記サイトに掲載されている行方不明者の情報はまだ少なく、充分機能していないのが現状です。

本人を見つけたらまずは健康チェックする

本人を見つけることができましたら、まず以下のチェックをしてください。

痛いところはないか
目見で外傷(擦り傷・骨折・打撲等)がないか確認
寒かったり暑かったりしないか
体温を測り、熱がないか確認(夏の場合はスポーツドリンク等で水分補給)
苦しいところはないか
血圧・脈圧を図り、循環器系に問題がないか確認

なお、地域包括支援センターには保健師が配置されているので、その場で健康チェックをしてもらえます。

注意していただきたいのは、心配する気持ちが怒りに変わってしまい、「たくさんの人に迷惑をかけて、勘弁してよ!」「恥ずかしいじゃないの!」と怒りをぶつけてしまうことです。

怒った顔や怒鳴り声は認知症の方を混乱させ、状態の悪化を招く要因になります。また、家族への否定的な気持ちが植え付けられ、信頼関係が崩れてしまう可能性もあります。

再発防止策を検討しよう

徘徊は何度も繰り返されるため、すぐに再発防止策を考える必要があります。別居していた子どもが同居したり、同居している家族が玄関で寝るという対策をよく聞きますが、一人で出かけることができるほど身体が元気な認知症の方の介護は、長期になることがほとんどです。

家族だけで抱え込んでしまうと、仕事を辞めなければならなくなったり、慢性的な睡眠不足に陥り、ますます悪い状況に追い込まれてしまいます。そのため、地域の力を借りたり、介護アイテムを利用することをおすすめします。

介護サービスを利用する

「地域包括支援センター」に相談し、利用できるサービスを洗い出してもらいましょう。介護保険の申請を代理でしてもらうこともできますし、認知症診断を受けるにあたってのアドバイスをもらうこともできます。

近隣住民・施設の力を借りる

ご近所に連絡先をお渡しし、「何かあったらすぐ連絡してください」とお願いしておきましょう。また、お近くのスーパー・喫茶店・コンビニなどには写真をあわせてお渡しすると更に良いと思います。

徘徊対策に使える介護グッズ、介護サービス

現在、色んな企業や団体から、身元の確認に役立つグッズや行方不明者の居場所が分かるサービスがでています。その中でいくつかご紹介いたします。

高齢者見守りサービス

セコム株式会社が提供するココセコムはGPSを利用した位置情報提供サービスの代表格。パソコンやスマホで、高齢者の居場所を地図上で確認することができます。また、緊急で現場に駆けつける必要がある場合は、セコムの緊急対処員が家族に代わって駆けつけてくれるのが最大のポイント。セコムには、緊急対処員が待機している拠点が全国約2,800ヵ所にあるので、全国どこでも駆けつけ可能というのは、心強いですね。

画像引用元:セコム株式会社ホームページ

GPS付きシューズ

靴の中に小型のGPSを収納できるリハビリシューズを活用する手もあります。一見、GPSが入っているとは分からない仕様なので、ご本人の抵抗なく取り入れやすいというメリットがあります。普段からこちらの靴を活用するようにすれば、いざという時に役立ちます。

人感センサー

玄関などにセンサーを置き、事前に出かけようとする動きを把握できるグッズも多々あります。ドアが開くと家族の「行くなら私も呼んでね!」と録音された声がする機器や、玄関のチャイムが鳴る、鈴が鳴る等、さまざまな手法で知らせてくれるものもあります。

さいごに

認知症になる人が益々増える中、徘徊問題とどう向き合うかは、社会全体の大きな課題。当然、家族だけで見守るのは、限界があります。ご家族の介護をするにあたり、決して抱え込んだりせず、周りにいる人の手を借りることをおすすめします。介護うつ、介護ストレスなど、介護する側が倒れてしまっては、大切なご家族の介護を出来なくなってしまい元も子もありません。目指すべきは、徘徊をなくすことではなく、徘徊をしても安心できる街づくり。今後、地域で認知症に対する理解を促し、支援の輪を広げていくことが望まれます。

【関連記事】認知症の徘徊にどう対処する?家族が行うべき4つの対応

モバイルバージョンを終了