介護の悩み

「イラッ」をコントロールするスキル・アンガーマネジメントとは?

前回は、介護職こそレスパイトを!という内容をお届け致しました。
介護者のイライラは介護される側にも伝わり、ケアがうまくいかなくなります。だからストレスを上手に解消して、常にニュートラルな心でいましょう。というお話でした。

今回は、もう少し掘り下げて、「じゃあイラっとしたときにはどうすれば良いのか?」を考えたいと思います。

怒りをコントロールする、アンガーマネジメントというスキル

アンガーマネジメント“という言葉を聴いたことがないでしょうか?
これは「怒り」の感情をうまくコントロールすることで、エネルギーやモチベーションに換えるスキルです。
“怒らない”ようにするのではなく、「怒り」という感情を管理する考え方であり、自分に涌き出た「怒り」の感情をコントロールできるようになることを目的としています。

「怒り」にあるのは、決してマイナスの側面だけではありません。
上手にコントロールすれば、とてつもない原動力になります。火事場の馬鹿力的な莫大なエネルギー源です。
涌き出た「怒り」をどのような形に表現するか、ということが一番の問題なのです。

怒りの感情、どうやって管理する?

「怒り」はそもそも動物が自分の身の危険を察した時に沸き起こる、”生死に直結する感情”です。
身体的なこと、有形な事柄に限らず、自尊心や名誉などの無形な事柄まで対象に含まれます。

想像してみてください。目の前のコップの中身は、さまざまなストレスで今にも溢れそうになっています。
コップの一定量を越えれば、たまったストレスが溢れ出します。溢れて出た感情を「怒り」と言います。
では、溢れ出ないようにするにはどうしますか?
コップの器を大きくしますか?それとも、流れ込んでくるストレスを減らしますか?
「怒り」の感情のピークは長くて6秒と言われているそうです。
「怒り」が沸き上がったら、直ぐに反射することを止めて、6秒間をやり過ごすことで冷静な対応につなげることができます。
カッとして反射的に反応すると、ろくなことにならないのは誰もが経験していることと思います。
6秒間をやり過ごすには、6・5・4……とカウントダウンするもよし、「大丈夫、大丈夫」と唱えるもよし。自分なりの方法を見つけましょう。

同時に、この「怒り」を点数化します。
イライラしていないニュートラルな状態を0として、今まで経験した人生最大の怒りを10とします。今、感じている「怒り」はいったい何点かを考えるのです。
「怒り」を点数化することで、感情を可視化し、たいしたことのない感情に振り回されないようにします。
点数が低ければ「ここは価値観の違いだな」などと、冷静に対応することが可能になりますよね。

自分が怒るべき瞬間を見極めよう

アンガーマネジメントでは、“怒らないこと”が最良ではなく、”怒らなくてはならないこと” を区別することがポイントになります。
先に述べたように、「怒り」は身の危険を感じた時の感情です。
自分が不利益を被るとき、個人の尊厳が侵されようとするとき、危険に繋がるときなどは怒ってよいのです。
では、”怒る”にはどうすればよいのでしょうか?
上手に怒るには、自分がどう感じたのか、どうして欲しかったのか、次からはどうして欲しいのか、相手が理解できるように具体的に伝えることです。
相手には相手の価値観があります。
自分の考え方や価値観と共通することもあれば、違う部分もあります。自分には”違う”ことが、相手にとっては”正しい”ことも。
相手の立場に立って伝えることで、理解してもらいやすくなります。
また、「怒り」を生かすことで、“現状を変える””より良いものを作る”などの建設的な方向、プラスな方向に大きく動かすエネルギーとなります。
「怒り」の感情に振り回されないように、我慢することもなく、どうでもよいことには反応せず、重要だと思うことには「怒り」を上手に表現して行きましょう!
アンガーマネジメントを介護に応用することで、職場のスタッフにイライラすることもなく、ご利用者にイライラすることもなくなって……常にニュートラルな心の状態をキープし、笑顔あふれる毎日を送れたら素敵ですよね。

参考:日本アンガーマネジメント協会

ABOUT ME
本多直子
東京北区赤羽、千べろの街に生まれ育ったおかげで並の男性より酒に強い。芸術学部卒のケアワーカーを売りに介護の現場で働く。   現在は介護福祉士の養成校に通うおばちゃん学生であり、ココロのふれあいさろん おむすびの代表。地元(北区志茂)で、社会から孤立していると感じるひと(乳飲み子を抱えた孤育て真っ最中のママや、不登校気味の子、ニート、独居高齢者や認知症の方、障害のある方など)の居場所づくりをしている。