友達とワイワイ遊んでいるとき?ソファーで横になりながらテレビを見ているとき?
ひとりひとりリラックスする時間は違いますが、お風呂に入るときは、みんなが共通してホッと一息つく時間だと思います。
と同時に、転倒などの事故や心・脳疾患の発作が起こりやすい時間であることも事実です。
安全で、快適な入浴時間を過ごしてもらうためには、どういうところに気を付けたらいいのか?どのような工夫をしたらいいのか?
ヘルパーはそれらを考え、入浴サポートをしなければいけません。
今回は1件のモデルケースをなぞりながら、「入浴介助」における留意点や工夫をお伝えします。
目次
入浴前にすること
拘縮がきつく、身体はほとんど動きません。寝たきりで、発語もありません。
家族と同居しており、在宅での入浴。入浴体制は二人介護です。
着替えやタオル類、浴室の準備
着替えやタオルが足りているかどうか、浴室が入浴できる状態になっているかを意識し、準備をします。
ベッドから浴室までの導線確保
浴室までの床に物が置いていないか、ベッドから浴室までスムーズに移動できるかを確認し、準備をします。
心拍や体温のバイタルチェック
最後に、身体に傷がないかどうか、状態に異変がないかどうかの状態観察をします。
バイタルチェックや状態観察において、正常な心拍数や体温の数値、心身の状態、最近の様子など、その人の「普通の状態」を知らないといけません。
「普通」を知らないと「異常」を見極めることはできません。
準備を終え、入浴ができる状況と判断した後、1人が上半身を支え、もう1人が下半身を持って、ベッドから浴室へ移乗します。
入浴中にすること
介護用チェアーに座る
浴室へ移乗したら、利用者に介護用チェアーへ座っていただきます。
臀部が介護用チェアーの後ろまで下がり、きちんと座っていることを確認した後、下半身を持っている人は手を放し、身体を洗い始めます。
今回のモデルケースの利用者は座位が取れないので、上半身を持っている人は引き続き身体を支えます。
身体にかけ湯
まず身体にかけ湯をします。介護者がお湯の温度を確かめた後に、本人にお湯を少しかけ、適温かどうか確認します。
心臓より遠い部位から、つまり手足の先からお湯をかけていきます。いきなり胸元にお湯を掛けると心臓に負担をかけたり、交感神経を活発化させてしまいリラックスしにくくなったりします。
身体・頭を洗う
かけ湯をした後、身体・頭を洗います。髪にお湯をかけるときは、お湯が入らないように耳をふさいであげましょう。
爪を立てたり、頭皮をこすったりするのではなく、指の腹でマッサージをするように洗います。
タオルで拭く
最後に、タオルで顔を拭きます。目は目元部分から拭き、顔全体は内側から外側に向かって拭き、顔を1回拭く毎にタオルの面を変えます。
洗体・洗髪・洗顔を終えたら、浴槽に浸かります。1人が上半身を、もう1人が下半身を持ち、浴槽へ移乗します。
浴槽に入る
浴槽に入ったら1人がその人の身体を支え、もう1人は手を放し、使用したタオルやシャンプーを片付けます。
浴槽から出るとき、浴槽から介護用チェアーへ移乗し、1人が身体を支え、もう1人がタオルで身体を拭きます。
入浴後にすること
自室へ移乗し、服を着ていただいて、保湿クリームなどの薬を塗布します。
その後ベッドへ移乗して衣類のシワを伸ばしたり、姿勢を直したり、「彼が快適に過ごしやすい環境」にしていきます。
環境が整い、落ち着いてから水分補給をします。
サポートで心掛けること
また入浴に関してだけでなく、僕がサポートにおいて特に心掛けていることが3つあります。
2つ目は環境づくり。利用者が快適と思える環境を創っていくこと。
3つ目は指差し確認。もう慣れているから大丈夫と過信せず、きちんと出来ているかどうか指を指しながら確認をすること。
これらを意識することで、ひとりひとりがその人らしい生活を過ごす土台をつくれます。
利用者それぞれに合ったサポートをすることで「その人らしさ」が徐々に現れるのです。
まとめ
今回お伝えしたことは、このモデルケースに沿ったもので、他の人にすべて適用できるものではありません。
ただし経験を積み重ねていくことで、AのケースはBのケースに似ている、CのケースはDのケースを応用出来るかも、と共通項や類似項を発見出来るのです。
介護の仕事はやればやるほど正解を見失うし、深い沼に落とされた感覚に陥ります。
でも、やればやるほど見えてくる「奥深さ」を追い求めていくなかで、「やりがい」を感じることが出来ます。
僕自身、まだまだ道半ば。これからも介護の仕事を続け、ひとりでも多くの障害者の生活をその人らしくしていくサポートをしていきます。