介護保険制度の要となる職種・ケアマネジャー。
より質の高いケアプランを求められるケアマネには、実はなる前にもなった後にも、たくさんの研修が待ち構えているのです!
今回は平成28年度から改正もされた、「ケアマネの研修」についてまとめて説明いたします!
目次
ケアマネになるまでの研修
介護支援専門員証の交付を受けるためには、まず介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、その後「介護支援専門員実務研修」を受講しなければなりません。
「介護支援専門員実務研修」はケアマネに必要な専門的知識・技術を修得することを目的として行われる研修で、居宅サービス計画・施設サービス計画・介護予防サービス計画に関するものがメインの内容となります。
利用者の自立支援を図るためにアセスメントの重要性を認識し、サービス計画の作成やサービスの利用、モニタリング等のケアマネジメントの過程に沿った技法を修得出来ます。
介護支援専門員実務研修のカリキュラム
以前は44時間以上のカリキュラムでしたが、平成28年度から研修内容が見直され、研修時間が87時間以上と大幅に増えました。
これは平成28年度まであった、介護支援専門員証の交付を受けてから任意で受講する「実務従事者基礎研修」が統合され、ケアマネの実務研修の充実化が図られたためです。
1.講義
- ・介護保険制度の理念・現状およびケアマネジメント(3時間)
- ・ケアマネジメントにかかわる法令などの理解(2時間)
- ・地域包括ケアシステムおよび社会資源(3時間)
- ・ケアマネジメントに必要な医療との連携および多職種協働の意義(3時間)
- ・人格の尊重・権利擁護ならびに介護支援専門員の倫理(2時間)
- ・ケアマネジメントのプロセス(2時間)
- ・実習オリエンテーション(1時間)
2.講義・演習
- ・自立支援のためのケアマネジメントの基本(6時間)
- ・相談援助の専門職としての基本姿勢および相談援助技術の基礎(4時間)
- ・利用者、多くの種類の専門職への説明および合意(2時間)
- ・介護支援専門員に求められるマネジメント(2時間)
- ・ケアマネジメントに必要な基礎知識および技術(19時間)
- 受付および相談並びに契約(1時間)
- アセスメントおよびニーズの把握の方法(6時間)
- 居宅サービス計画等の作成(4時間)
- サービス担当者会議の意義および進め方(4時間)
- モニタリングおよび評価(4時間)
- ・実習振り返り(3時間)
- ・ケアマネジメントの展開(28時間)
- 基礎理解(3時間)
- 脳血管疾患に関する事例(3時間)
- 認知症に関する事例(5時間)
- 筋骨格系疾患と廃用症候群に関する事例(5時間)
- 内臓の機能不全(糖尿病、高血圧、心疾患、腎臓病、肝臓病など)に関する事例(5時間)
- 看取りに関する事例(5時間)
- ・アセスメント、居宅サービス計画等作成の総合演習(5時間)
- ・研修全体を振り返っての意見交換、講評およびネットワーク作り(2時間)
3.実習
ケアマネになってからの研修
介護支援専門員証の有効期間は5年間です。
ケアマネとして働き続けるためには、有効期間内に「更新研修」を受けて、その都度新しい介護支援専門員証の交付を受けることが必要になります。
更新研修は専門課程1と2に分かれており、一定の実務経験を得たケアマネがさらに専門性や技能を高めることを目的として開催されています。
専門研修課程1
実務経験6カ月以上3年未満のケアマネを対象に、56時間の研修が行われます。
カリキュラムは以下の通りです。
1.講義
介護保険制度および地域包括ケアシステムの現状(3時間)
介護保険制度の改正状況や、地域包括ケアシステムの構築に向けた現状の取り組み・課題に関する講義を受けます。
ケアマネに求められている役割や利用者家族支援の制度、社会資源の連携についても学ぶことが出来ます。
対人個別援助技術および地域援助技術(3時間)
対人個別援助技術(ソーシャルケースワーク)の考え方や必要な知識・技術のほか、地域援助技術(コミュニティーソーシャルワーク)の概念や展開技法を学びます。
ケアマネジメントの実践における倫理(2時間)
ケアマネジメントを行う上でのケアマネとしての倫理規則について講義を受けます。
具体的な倫理的課題に対しての心構えや対応方法を学べるほか、成年後見制度や高齢者虐待防止法などの、高齢者の尊厳や権利擁護に関する知識を習得出来ます。
ケアマネジメントに必要な医療との連携および多職種協働の実践(4時間)
ケアマネジメントを実践する上で必要な医療との連携、多職種協働の必要性を再確認するための講義を受けます。
これまでの実践を省みて課題を見つけましょう。
個人での学習および介護支援専門員相互間の学習(2時間)
指導や支援、コーチングの基本的な考え方や内容・方法を理解するとともに、受ける側・行う側それぞれに求められる姿勢を講義で学びます。
2.講義・演習
ケアマネジメントにおける実践の振り返りおよび課題の設定(12時間)
ケアマネジメントプロセスの各項目が持つ意味と重要性を再認識するための講義を受けます。
担当した事例を元にケアマネジメントの視点やニーズに対するサービスの選定理由を発表し、他の受講者との意見交換を通じて自分の課題を認識しましょう。
ケアマネジメントの演習(28時間)
- リハビリテーションおよび福祉用具の活用に関する事例(4時間)
- 看取り等における看護サービスの活用に関する事例(4時間)
- 認知症に関する事例(4時間)
- 入退院時等における医療との連携に関する事例(4時間)
- 家族への支援の視点が必要な事例(4時間)
- 社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事例(4時間)
- 状態に応じた多様なサービス(地域密着型サービス、施設サービス)の活用に関する事例(4時間)
それぞれ基礎知識の向上、他職種との連携を図ることを目的とした講義を受けます。
各分野において、ケアマネジメントに必要な知識・技術を習得することが可能です。
研修全体を振り返っての意見交換、講評およびネットワーク作り(2時間)
グループや全体での意見交換を通じて、今後の学習における課題への講評を行います。
研修者同士でネットワークを構築して、現場で起こりうる問題の対応などをともに考えましょう。
専門研修課程2(32時間)
実務経験が3年以上のケアマネを対象に、32時間の研修が行われます。
カリキュラムは以下の通りです。
1.講義
介護保険制度および地域包括ケアシステムの今後の展開(4時間)
介護保険制度の最新情報や、地域包括ケアシステムの構築に向けた課題の講義を受けます。
ケアマネの果たすべき役割を確認しましょう。
2.講義・演習
ケアマネジメントにおける実践事例の研究および発表(28時間)
- リハビリテーションおよび福祉用具の活用に関する事例(4時間)
- 看取り等における看護サービスの活用に関する事例(4時間)
- 認知症に関する事例(4時間)
- 入退院時などにおける医療との連携に関する事例(4時間)
- 家族への支援の視点が必要な事例(4時間)
- 社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事例(4時間)
- 状態に応じた多様なサービス(地域密着型サービス、施設サービス)の活用に関する事例(4時間)
各分野に応じて、重要となる知識や他職種との連携方法を学びます。
そのほかサービス計画を持ち寄ってアセスメントの留意点を再確認したり、社会資源を活用したケアマネジメントの展開方法について講義を受けます。
ケアマネのキャリアアップに関する研修
保健・医療・福祉の知識や具体的なサービス連携を学ぶ専門研修課程1と、演習を中心に行い専門的な知識や技術を深める専門研修課程2を経ると、ケアマネにはキャリアアップのための研修が用意されています。
主任介護支援専門員こと主任ケアマネもその一つです。
主任ケアマネの詳しい仕事内容などについては、こちらの記事をご参考ください。
主任介護支援専門員研修(70時間)
5年以上働いたケアマネや日本ケアマネジメント学会が認定した認定ケアマネで3年以上の実務経験を得た人など、条件を満たしたケアマネが対象です。
70時間の研修時間が設けられています。カリキュラムは以下の通りです。
1.講義
主任介護支援専門員の役割と視点(5時間)
地域包括ケアシステムの構築や地域包括ケアを実現するケアマネジメントを展開するに当たって、主任ケアマネが果たすべき役割を認識するための講義を受けます。
主任ケアマネとしての役割を担う上で必要な視点、知識および技術を修得します。
ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援(2時間)
ケアマネが直面する倫理的課題に対し、どのように対応するべきかを指導・支援する技術を習得します。
ターミナルケア(3時間)
ターミナルケアの基礎的な知識を習得するとともに、ターミナルケアに携わるケアマネの支援方法などについて講義を受けます。
人材育成および業務管理(3時間)
地域や事業所内におけるケアマネの人材育成に関する取り組みや方法について講義を受けます。
ケアマネに対する業務管理の意義や方法、対応策を学ぶことが出来ます。
運営管理におけるリスクマネジメント(3時間)
ヒヤリハットなど、ケアマネジメントを実践する上で発生するリスクに対して、予測とその評価の手法について講義を受けます。
地域や事業所におけるリスク軽減に向けた仕組みや体制の構築の手法について学びます。
2.講義・演習
地域援助技術(6時間)
地域づくりの意義と手法、地域課題を把握するための情報収集法を学びます。
主任ケアマネの役割を理解しましょう。
ケアマネジメントに必要な医療との連携および多職種協働の実現(6時間)
医療職をはじめとした多職種との協働における工夫と留意点などを、成功例と失敗例を参考にして学びます。
会議を効果的に開催するための運営方法に関する講義を受けます。
対人援助者監督指導(18時間)
対人援助者監督指導(スーパービジョン)の内容と方法に関する講義を受けます。
対人援助者監督指導(スーパービジョン)の効果や行う際の留意点を理解し、心構えと支店を習得しましょう。
個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開(24時間)
個々の事例に対するケアマネのケアマネジメントについて、主任ケアマネとして指導・支援を行うための方法(コーチング、ティーチング等)を修得します。
指導・支援を行う際の関わり方を理解しましょう。
主任介護支援専門員更新研修(46時間)
平成28年度から新設された研修です。
主任ケアマネとして働き続けるためには、5年間の有効期間内に「主任介護声援専門員更新研修」を受ける必要があります。
主任ケアマネの役割を果たすために必要な能力の保持・向上を図ることが目的です。 カリキュラムは以下の通りです。
1.講義
介護保険制度および地域包括ケアシステムの動向(4時間)
介護保険制度や地域包括ケアシステムの構築に向けた課題の講義を受けます。
ケアマネ・主任ケアマネの果たすべき役割を確認しましょう。
2.講義・演習
主任介護支援専門員としての実践の振り返りと指導および支援の実践(42時間)
- リハビリテーションおよび福祉用具の活用に関する事例(6時間)
- 看取り等における看護サービスの活用に関する事例(6時間)
- 認知症に関する事例(6時間)
- 入退院時等における医療との連携に関する事例(6時間)
- 家族への支援の視点が必要な事例(6時間)
- 社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事例(6時間)
- 状態に応じた多様なサービス(地域密着型サービス、施設サービス)の活用に関する事例(6時間)
各分野での主任ケアマネとしての実践事例を振り返り、他の受講者との意見交換を通じて、課題や不足している視点を分析します。
対策を講じ、ケアマネへの指導・支援に活かせる知識や技術を習得しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
ケアマネや主任ケアマネになることは、一つのゴールではなくスタートです。
生涯におよぶ研修をクリアして、質の高いケアプランやマネジメントを展開していけるよう、ぜひぜひ頑張ってくださいね!
参考:厚生労働省発行「最新介護保険情報vol.383」(東京都福祉保健局)