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震災直後の混乱期……日々の「情報発信」が介護施設を救う【被災地からのリアルレポート】

こんにちは。熊本県熊本市にて介護系の資格取得講座などの事業をしております、合同会社縁 ~ENISHI~ 代表社員の川口明と申します。
前回はレクリエーションに関しての記事を寄稿させていただきました。

今回は現在進行形で対応を迫られている平成28年熊本地震について、私自身が被災して体験したこと、見聞きしたこと、感じたことなどをご報告させていただきます。

混乱のさなかで動く介護事業所

最近では平成28年熊本地震に関する報道量がめっきり減少しましたが、被災地では今なお多くの方々が避難生活を送っており、いつ終わるとも知れない余震におびえる毎日を過ごしております。

4月14日の前震、そして16日の本震と、立て続けに非常に強い揺れに見舞われた熊本。本格的な混乱は16日に始まりました。
寸断されたライフライン。不足し混乱した情報。連携の取れない官と民。さまざまな要素が入り混じる中、介護事業所はどうだったのでしょうか。

自分のことよりご利用されている方々が心配だということで、前震直後に施設へ駆け付けて利用者の方の対応に取り組んだ職員の方の話はあちこちで耳にしました。きっと多くの施設が、そうであったと思います。
中には管理者の方の自宅が倒壊し、住む場所がなくなったにも関わらず、本震の二日後にはデイサービスを再開したという事業所もありました。

本震直後は、この地震がどれほど続くのか?どのような影響が出るのか?施設や職員のダメージがどの程度あるのか?
……当然ながら、誰もその答えを持ち合わせていませんでした。
そんな中、事業所やその職員さんの多くは、利用者対応や避難者の受け入れで東奔西走していたのです。

私自身は個人で会社を立ち上げ、介護系の事業所とタイアップして講座を行うというスタイルで事業を展開しているため、震災後は業務が全てストップしてしまいました。
そこで自分に何ができるだろうと考え、民間の物資集積所と連携して、介護関係の施設を中心に支援物資の配送を行うことを決心。
17日からさっそく動き出そうとしました。
しかしすぐに、「どの施設に何を持って行けばいいのか」がわからないということに気付いたのです。

震災直後より、SNSでは多くの情報が上がっていました。
避難所の情報は避難している方や運営をしているスタッフ、ボランティアの方々がアップしたものがシェア拡散されていたので、なんとか集めることが出来ました。
しかし、どう考えても絶対に物資や人員が不足しているはずの医療・介護関係からは、ほとんど情報が上がってこないのです。

情報が上がってこなかった2種類の理由

後々わかってきたことではありますが、情報が上がってこない理由は大きく分けると二種類ありました。
一つ目のパターンは、SNSなどで情報を発信することができなかった。もしくは発信するという意識がなかったという理由です。
これだけの規模の震災となりますと、当然従業員もみな被災者です。
職場に来られない職員もいることから、現場は完全な人手不足になりました。
その結果、利用者の方のみならず地域の被災者の受け入れや炊き出しを実施する中で、情報発信が後回しにされていくことになったのです。
大多数の事業所がそうでした。

一方で、違ったパターンの事業所も少数ながら存在しました。
それは、SNSなどで情報発信をする必要がなかったというパターンです。

このような書き方をすると、その事業所は前震と本震の間に大量に物資を買い込んでいたのか?たまたま備蓄していたのか?と思われるかもしれません。しかし、いずれも違います。
そして、当然ながら影響がなかったわけではありません。
今回の震災では、広範囲にわたってライフラインがストップしました。中でも水道とガスは長期にわたって止まっていたので、影響はいずれの事業所においても計り知れないものがありました。

それでも、SNSなどで情報発信をする必要がなかったのはどうしてでしょうか?

情報発信する必要がない事業所は、何が違ったのか?

その事業所は常日頃から何らかの形で情報発信をしており、関わりを広く持っていたことから、逆に情報を取りに来る人がいたというパターンだったのです。
もちろんこの情報発信というのは、ブログやSNSというデジタルな部分だけを指すのではありません。さまざまな集まりに顔を出してしっかりした関係性を築く、アナログでの繋がりも重要な意味を持っていました。

結果その事業所は、日ごろ事業所からの情報を受け取っていた方から、逆に情報を受信する側になりました。
「物資が足りていません」とSOSを発信しなくても、「何か足りないものはありませんか?」と問合せを受けることになったのです。
そうして情報発信をすることなく、自然と物資が集まってきたのでした。

震災直後、公的な支援はほぼ期待できませんでした。しかし私がその事業所に問い合わせをすると、「今のところ間に合っているので他の事業所に回してあげてください」という回答が来たのです。
その事業所には公的な支援が来る前に、すでに県内外から支援物資が継続的に届いていました。
大規模な施設であれば認知度も高く問合せなども集まりますし、フランチャイズなどであればグループ企業からの支援もあります。
しかしそうでない事業所において、この立ち位置の違いは本当に大きかったと感じています。

デジタル・アナログを問わず、普段からいかに情報発信を行っていたかが、震災初期においける支援の量と速度の明暗を分けることになりました。
逆説的に言えば多くの事業所は、日ごろから情報発信に慣れていなかったからこそ、災害時においてSOSを発信するまでに時間を要してしまったと言えるのではないでしょうか?

日々の交流が、いざというとき頼りになる!

今回の平成28年熊本地震において、最大震度7を超える強い揺れは2回、震度1以上の余震は1500回を超えていました。
そのなかで一番の頼りになったのは、何らかの形で繋がっていた人と人とのご縁だったと思います。

ぜひこの機会に、皆さんも日ごろの繋がりを見つめ直す機会にしていただければ幸いです。

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