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介護職の「うつ」、背景と対策まとめ

「介護職うつ 5年で倍 労災申請、人手不足背景に」
2016年5月8日の東京新聞にこんな見出しが載っていました。これは申請数で、労災と認定された数は3倍にも登るといいます。すべての人が労災を申し込むわけではないので、実際には4倍くらい増えているのでは……と思ってしまいます。
介護家族でさえ4人に1人が「介護うつ」だと言われる昨今。大勢の人に対応する介護職が精神的な不安や悩みを抱えるケースは、他業界と比べても多いようです。
今回は「介護職のうつ」について説明していきます。

うつになりやすい人の特徴

自分一人の力で完ぺきにこなそうとして、オーバーワークになったり思い詰めてしまったり、疲れを溜めてしまう人がなりやすいようです。
また劣等感から人との交流を避けるなど、自信のなさが態度や言葉に表れると、攻撃性のある他人に目をつけられて「パワハラ」「イジメ」の被害者になりやすくなってしまいます。

うつの症状はどんなもの?

朝、絶望感でいっぱいになる
朝起きた時に「ようし、やってやるぞ」といった積極的な考えができなくなります。「仕事に行きたくない」と考えるようになり、職場で壁にぶち当たったり、職場の人間関係によってはイジメが始まることも。
無気力感
「やる気が出ない」。何もやりたくない。心に何か引っかかるものがあって、自分のエンジンがかからない。やる気を出すキッカケや方法がわからなくなってしまうのです。
楽しいことを想像しようにも、過去や未来の失敗を心配してしまいます。他人がそれほど思っていないことも必要以上に気にしてしまい、動けなくなります。
食欲不振
うつになると食に対する関心が低くなり、食欲がわかなくなります。外に出たり運動する機会が減って、少量の食事でも足りるからです。味もわからなくなっていき、「美味しいものを食べたい」という気持ちがなくなってくるのです。
食べても味がわからなくなったり、自分の好きなものばかり食べる偏食を引き起こすことも。
不安な未来ばかりを想像する
そのうち「自分は本当に治るんだろうか」「このまま退社してしまうのでは」と不安ばかり抱いてしまうようになります。現実を見るのが嫌になり、布団から出ない、家から出ないなどの行動を取るようになります。
布団に入っている時間が長くなると眠りが浅くなり、寝ても疲れが取れないような状態になってしまうのです。そしてますます、ネガティヴな想像にとらわれてしまいます。

介護職がうつになる背景

次に記述することは、介護職の特徴に絡む、うつの原因となる背景です。

ギリギリの介護職員人数

特にデイサービスなどが挙げられますが、介護業界では経営利益のためギリギリの人数で回している事業所が多いです。
すると、介護職員1人1人の責任が重要になってきます。仕事に対して重圧をかけられ、それがプレッシャーとなってうつの引き金になります。

低賃金

介護職員の給料が年収400万程度なら、まだうつになる確率は低くなると思います。そのお金を気分転換に使えるからです。
しかし年収2~300万円となると、特に都市部の介護職員は生活自体が苦しくなってきます。既婚男性の場合、今の介護職の給与では家族を養えません。
低賃金によって有能な人材が入ってこないので、人手不足がますます進んでいきます。

仕事の幅が多い人が、より重労働になる

介護の現場で大切なことの1つに役割分担があります。しかし実際問題、この役割分担を果たせていない介護施設が数多くあります。
そうすると特定の介護職員の仕事量が増えて不公平感が生まれ、うつを発症させやすい状況が生まれます。

密接に絡む、多数の人間関係

介護職にはさまざまな職種があります。ご利用者様やその家族も含めて、チームで行う仕事上、多数の人と人間関係を持つことになります。一度に関わる人間の数が多いと、当然トラブルも多くなりますよね。
そのため、よりうつになりやすくなるのです。

気が抜けない仕事場

介護職は休憩時間以外の自分の仕事の取り組みが、常にご利用者様や他の職員の目に触れる環境にあります。
気が抜けないので、精神面も疲れてしまいます。ひどい時にはご利用者様を見守りながら食事することも……。ゆっくり味わうことが出来ず、食事が楽しくなくなってしまいます。

予防と対処

では、うつにならないためにはどのようにすればいいのでしょう?もしなってしまった時は、どうやって自分を癒せばよいのでしょうか?

薬での治療を行う前に、出来ることがあるはずです。
私も介護職員を始めた時、ある施設のお局さんの存在が嫌で仕方なかった時期がありました。そこの施設では、その人が原因で職員が数人やめているそうでした。
私は何とか彼女を克服したのですが、その時やった対処方法を記してみたいと思います。

家の中を片付ける

うつになっていくと、ゴミ捨てが面倒になって袋をためてしまう……という方が多く見られます。
ゴミは悪い空気を出すので、ゴミと一緒にいると幸運が寄ってこないそう。必要以上溜めるのはやめましょう。
部屋がすっきり清潔に片付くと、それだけで気分も晴れやかになります。

うつに対して「自分には今これが必要なんだ」と向き合う

うつになったからと言って、「罪悪感」に焦点を当ててはいけません。
会社に行かなかったとしても、人に迷惑をかけたとしても、そこに焦点を当てるのでは今すべきことではありませんよね。反省は完治してからすればいいのです。
「今、自分にはこれが必要」と覚悟を決め、うつが治った・うつになる前のイキイキした自分をイメージしましょう。

運動する

軽く外を歩くだけでもいいです。手ぶらで外を散歩することをおすすめします。
持って行くにしても携帯やカメラぐらいにして、外の空気を感じながら、綺麗だと思った物を撮影するなどして外に意識を向けます。

自分が元気になる単語を脳に染みこませる

朝一番、自分が好きな単語を脳に刻み込みましょう。大声を出してもいい場所(私は風呂場でした)で、「元気」「元気」……と10回ぐらい繰り返してから職場に行きます。
ポイントは「単語」であること。これを「私は元気になる」と文章でやると、元気になっていない自分がいた場合、頭の中で「元気になるって、私元気じゃないよな」と反論し始めます。しかし単語だと、反論のしようがないのです。
自信がついてきたら違う単語でもやってみましょう。このワークは、朝にやると効果的です。

ノートを使う

悔しかったり悲しかったり、嫌なことがあった場合はノートに思い切り書いて下さい。考えながらではなく、感じたまま気が済むまで書きます。
そうしたら、次は自分が努力したことに焦点を当てて書いていきます。「自分がやった(相手のためにやってあげた)」と感じることが大切です。人からどう思われているか、という視点は入れてはいけません。悪いことでも良かったと言い切って、良かった点に焦点を当ててみてください。
最後に、自分がしたことに対して「頑張ったね、優しいね、ありがとう」と労う言葉をどんどん記入していきます。なるべく第三者から言葉をもらっている感覚で書くとよいでしょう。
自分の行動を自分自身が評価をしてあげることで、自己重要感を満たしていく作業です。小さいこと、些細な自分の努力に「私、がんばってるな」と感じることができれば最高です。

きちんと先祖の墓参りに行く

なんじゃこりゃ、と思った方もいるかもしれませんが、経営者でも出来るビジネスマンでも、売れている水商売の女性でも、墓参りにきちんと行く人は何故か助けられることが多いのです。
自分が現在あるのは先祖のおかげ。いつも見守ってくれている人がいる。この気持ちだけで、物事がいい方向にいきます。

まとめ

歴史上でも、うつやそれに似た症状(古くはメランコリーと言いました)を持っていながら偉業を成し遂げている方はたくさんいます。チャーチル、ダーウィン、夏目漱石、芥川龍之介etc……。
とすれば、本当に問題なのはうつではなく、うつに対する我々の態度なのではないでしょうか?
うつをキッカケに、幸せを発見する能力を高めることが出来たら?うつを上手に生かすたことで、それを克服出来るのではないでしょうか。

<参考図書>
佐藤康行 神さまの鏡―いつのまにか幸せになる愛のレッスン
田坂広志 人生で起こること すべて良きこと

※この記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。本サービス上の情報や利用に関して発生した損害等に関して、弊社は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

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