介護の現場では、介護する側もある意味、少なからず虐待を受けているのかもしれないと思うことがふとあります。
例えばおむつ交換の際に拒否されて、利用者さまに引っ掻かれてしまうとか。
利用者さまの尊厳を守り、あるがままを受け入れる……そうしたいいケアをどれだけしていても、そんな日もあるのです。
けれど、それで「利用者さまから暴力を受けた」とかは思わずに働いているのが普通ですよね。
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私たちが相手にするのは人間です、だけど私たちだって人間です
私たち介護する側は利用者さまの行為から本質を捉えることや、できることを奪わないように動作を引き出すケアを、毎日試行錯誤しています。
介護者がいわゆる“いいケア”をすることで、本人も気づかないうちにストレスが溜まっているのではないでしょうか?
その小さな気づかないストレスの積み重ねが、利用者さまのたいしたことのない行為や発言を、突然イラッとするものに変えてしまうのです。
それで利用者さまに手をあげてしまったり、暴言を吐いたりしてしまえば、虐待になってしまいます。その瞬間は誰にでも、突然やってくるものではないでしょうか。
そこを回避するには、介護する側の日頃のストレスをうまく発散させること・自分の出来ることと出来ないことを明確にし、決して一人で抱え込まないことが大切です。
プロの介護職ですらイラッとすることがあるのだから、ご家族はもっと複雑な感情を抱えて介護をしているはず。
介護するひとと介護されるひとは、合わせ鏡のような関係です。自分のこころが相手に反映されています。
イライラして接すると、イライラした態度が返ってくる。不安な気持ちで接すると、不安な気持ちが返ってくる。
介護する人と介護される人は一心同体なのです。
利用者さまに会う前に、まずは深呼吸して
ケアをする前にいつも、「自分」を見つめて欲しい。
疲れていないか?イライラしていないか?笑えているか?
自分ひとりで頑張るのではなく、辛くなる前に、必ず逃げ道を用意しておいて欲しい。
日頃のストレスを溜めない努力。自分以外に介護を変わってくれるひとやサービスを探してください。
常に自分の心をニュートラルな状態にキープすることを心がけてください。
そして辛くなる前に、レスパイト(小休止)して欲しい。
在宅でケアをしているご家族の精神的疲労を軽減するためや、共倒れを予防するためにも。
一時的にケアの代替をおこなう、ショートステイやデイサービスなどのレスパイトケア(介護保険)。
胃瘻や気管切開、人工呼吸器など医療度の高い方であれば、レスパイト入院(医療保険)。
これらを大いに利用し、介護する側も健康を維持して、生活の質を落とさないよう心がけましょう。
見つけてほしい、あなたのレスパイト
プロである私たち介護職こそ、レスパイトが必要なのではないでしょうか。
介護職は「感情労働」と言われています。共感疲労という言葉があるくらい、ストレスフルな仕事です。
どんなことでも構いません。次の日にストレスを持ち込まない工夫が必要です。
プロとして常に、心の状態をニュートラルに保つべきでしょう。
私は千べろ(千円あればべろべろに酔える)の街・赤羽に生まれ育ちました。
それでいて小学生の頃から、父親に毎晩晩酌に付き合わされていた呑兵衛の娘。
何かあってもなくても独りでふらりと入れる店があり、飲みに付き合ってくれる友達もいます。酒を飲むことが、私のレスパイトだったりしています。
- 映画を観るのもよし。カラオケでもよし。
- 愚痴を言い合うもよし。子どもの自慢話もよし……
- 自分自身のレスパイトを、ぜひ探してみてください。
また、職場でのケアを一人で抱え込まないためにも、「自分が自信を持って提供できるケア」と「一人では不安なケア」を明確にしておきましょう。
自分の不安な感情は、ご利用者さまのことも不安にさせるからです。
自信を持って接することができるように、研修や勉強会を活用し技術をつけましょう。
どんなささやかなことでもいいんです。
酒を飲んでべろべろに酔っぱらって眠っちゃって、そして朝になっていたって。
知人を巻き込んで、カラオケルームでワンマンライブやっちゃったって。
仲のいい友達と、学生時代のように長電話してみたっていい。
それでまたお仕事に向かえるなら、それは立派なレスパイトなのだから。