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介護療養型医療施設の廃止で生まれた新施設「介護医療院」を徹底解説!これから介護はどう変わる?

2018年4月、介護保険制度の改正によって、「介護医療院」と呼ばれる施設が新しく作られることとなりました。
超高齢社会を迎え、介護施設の不足が叫ばれる昨今。介護保険が適用される公的施設のあり方は、これからどのように変化していくのでしょうか?

今回の記事では新設された「介護医療院」について、その概要や創設までの経緯、サービス内容などを詳しく紹介します。

介護医療院とは?

介護医療院は、2018年度の介護保険制度改正によって新設された介護保険施設。
長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とする、医療機能と生活施設としての機能を兼ね備えた施設のことをいいます。

「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナルケア」といった医療サービスと、「自立した日常生活を営むための支援・介助」などの介護サービスをどちらも提供できるのが大きな特徴です。

2017年度末での廃止が決定しており、2023年までに全面廃止となる予定の「介護療養型医療施設」に代わる形で創設されました

カイゴン
介護療養型医療施設が介護医療院に転換する場合には、転換前の名称を引き続き使用できるゴン。

2018年度の介護保険制度改正については、以下の記事をご参考ください。

【平成30年度・2018年度】介護職が知っておきたい介護保険制度改正の5つのポイント平成29(2017)年に、介護保険法が改正されました。 この改正により、どのような変化が起きるのか気になっている方も多いのではないでし...

これまであった3つの介護保険施設について

介護保険サービスで利用できる介護保険施設には、これまで「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設(老人保健施設)」「介護療養型医療施設(介護療養病床)」の3種類がありました。

各介護保険施設の概要
介護老人福祉施設 要介護者を受け入れ、介護サービスを提供する施設
介護老人保健施設 リハビリテーションや生活訓練などを提供し、機能の維持や改善を目指す施設
介護療養型医療施設 長期療養を必要とする要介護者に対し、必要な医療と介護を提供する施設

しかし、介護療養型医療施設は、2006年の医療保険制度改革と診療報酬・介護報酬の同時改定により、2011年度末で廃止が決定(のちに延長)。
医療保険の管轄である「医療療養病床」と比較した際、入院患者の状況に大きな差が見られず、医療保険と介護保険の役割分担が課題であると判断されたためです。

そうして、介護療養型医療施設が担っていた役割は、介護療養型の老人保健施設などに転換していくことになりました。

カイゴン
でも、利用者さんの移転先が見つからなかったこともあって、なかなか転換が進まなかったんだゴン。
だから2011年の介護保険法改正で、転換期限が2017年度末まで延長されたんだゴン。
明美
2017年にはさらに期限が延長されて、介護療養型医療施設の全面廃止は2023年まで猶予を持つことになったんだよ。

介護医療院と老健との違いは?

介護保険施設の中でも、介護老人保健施設(老健)は医療・リハビリ・介護の提供を行っていたり、看取りを行ったりする施設もあります。そのため、介護医療院との違いが分かりにくいかもしれません。

この2つの施設で提供される介護サービスを簡単にまとめると、以下のようになります。

介護医療院 長期療養・施設で生活する・高度な医療ケア
介護老人保健施設 短期(原則3~6ヶ月)・自宅復帰が目的・軽度の医療ケア

つまり、介護老人保健施設が「短期で自宅復帰を目指す」施設であり、介護医療院は「充実した医療ケアを提供し長期にわたって生活する」施設という違いがあるのです。

介護医療院の創設が決まった経緯

年々増加している医療ニーズの高い高齢者を、この先、介護サービスの中でどのように受け止めていくか。
この課題を整理・検討するために開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」で、介護療養型医療施設には以下のような利用者が多いことがわかりました。

介護療養型医療施設の利用者像
  • 平均在院日数が長い(約1年半)
  • 死亡退院が多い(約4割)
  • 特養や老健に比べ、医療必要度・要介護度・年齢が高い

 

つまり、これからの介護保険施設には、長期の療養生活を送るのにふさわしい「住まい」としての機能を確保した上で、日常生活で必要な医療処置や充実した看取りを実施できる体制が必要だということがわかったのです。

そうして、医療も介護も内包した新しい施設として、介護医療院が新設されることになりました。

介護医療院の主なサービスは「医療」「介護」そして「日常生活」

介護医療院は医療と介護の複合的なニーズを満たし、「住まい」としての環境を提供するための施設。
具体的にどのようなサービスが行われているのか見てみましょう。

介護医療院のサービス
医療ケア 喀痰吸引や経管栄養のほか、必要に応じて投薬や処置、検査なども行います。
また、人生の終末期には看取り介護・ターミナルケアも手厚く行われます。
介護サービス 食事・排泄・入浴などの身体介助のほか、洗濯や掃除といった日常生活上のお世話も行われます。
また、通所リハ・訪問リハ・短期入所など施設介護と連携しつつ、機能訓練としてのリハビリテーションも行われます。
日常生活のサービス 入居者が安心して暮らせるよう、パーテーションなどを使用してプライバシー保護に努めています。
そのほか、地域社会とのつながりを持つために社会活動へ参加したり、地域住民との交流を図ったりもします。

介護医療院の設置基準・配置基準はどうなってるの?

介護医療院には定められた設備基準に基づいて、以下のような設備が必ず設置されています。

  • 診察に適した診察室
  • 1人あたり床面積8.0㎡以上の療養室(定員4名以下)
  • 40㎡以上の機能訓練室
  • 談話室
  • 食堂
  • 浴室
  • レクリエーションルーム

など

人員配置については、介護医療院が提供している「Ⅰ型」と「Ⅱ型」、2つのサービスによって異なります。
それぞれどのような基準で設置されているのか見ていきましょう。

Ⅰ型

介護療養型医療施設(療養機能強化型)相当のサービスを提供するⅠ型。
重篤な身体疾患がある高齢者や、身体合併症を患っている認知症患者などを主な利用者として想定しています。
そのため、施設の最低基準は以下の通り、現行の介護療養型医療施設の基準に相当するものとなります。

施設基準
医師 入居者48人に対し1人
薬剤師 入居者150人に対し1人
看護職員 入居者6人に対し1人
介護職員 入居者5人に対し1人
介護支援専門員 入居者100人に対し1人、ただし施設で1人以上
リハビリ専門職 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を適当数
栄養士 定員100人以上の施設で1人以上
医師の宿直 あり

Ⅰ型介護医療院では、入居者5人に対して1人の割合で介護職員が配置されます。
入居者6人に対して1人の割合で配置されていたかつての介護療養型医療施設に比べると、介護職の配置がより手厚くなっていることがわかります。

カイゴン
生活施設としての機能を強めるために、介護職員を多く配置しているんだゴン。

Ⅱ型

老人保健施設相当以上のサービスを提供するⅡ型。Ⅰ型よりも容体が安定している高齢者を主な利用者として想定しています。
そのため、施設の最低基準は以下の通り、現行の老健施設の基準に相当するものとなります。

施設基準
医師 入居者100人に対し1人
薬剤師 入居者300人に対し1人
看護職員 入居者6人に対し1人
介護職員 入居者6人に対し1人
介護支援専門員 入居者100人に対し1人、ただし施設で1人以上
リハビリ専門職 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を適当数
栄養士 定員100人以上の施設で1人以上
医師の宿直 基準なし

Ⅱ型介護医療院では、かつての介護療養型医療施設と同じく、入居者6人に対して1人の割合で介護職員が配置されます。
しかし、医師や薬剤師の人員基準が緩和されているため、転換後には人件費を軽減できるメリットが見込まれています。

基準が緩和される特殊な例は?

介護療養型医療施設として運営されていた施設が介護医療院に転換する場合は、療養室の床面積や廊下の幅などの基準が緩和されます。

また、居住スペースと医療機関が併設している「医療外付け(医療機関併設)型」の介護医療院の場合も、以下のように独自の基準が設けられています。

医療外付け型の設置基準
医師 基準なし
看護職員・介護職員 入居者3人に対し1人
療養室の床面積 個室で13.0 ㎡/室以上
ただし既存の建築物を転用する場合、個室であれば面積基準なし

医療外付け型の場合、想定する利用者層はⅡ型と同じく容体の安定した高齢者となります。
しかし、床面積については現行の有料老人ホームの基準を参考にしているようです。

介護医療院を利用するには?

介護医療院の入居対象となるのは、要介護1~5のいずれかに該当する高齢者。
長期の療養生活が必要な方が利用する施設のため、中でも要介護4か5の重篤な状態の入居者が多いようです。

ここでは、高齢者が介護医療院を利用する流れについてご紹介します。

①「地域連携室」に問い合わせる

介護医療院に入所するためには、まず、希望する介護医療院にある「地域連携室」に問い合わせる必要があります。

地域連携室とは

病院内に設置されている、自院と他院・他施設の中継役を担う部署。
病院によっては「地域医療連携室」「医療連携科」「患者支援室」「連携センター」など、さまざまな名称で呼ばれている。

ご本人やご家族が直接申し込む場合でも、担当ケアマネジャーが手続きを代行する場合でも、また医療施設や介護施設から入所相談を行う場合でも同じです。
まずは電話で問い合わせ、各介護医療院の案内に従いましょう。

②必要書類を送付する

介護医療院が入所判定を行うのに必要な書類をFAXもしくは郵便にて送付します。
求められるのは主に以下のような書類です。

  • かかりつけ医や現在入院中の病院の医師からの「診療情報提供書」
  • 検査データ
  • ADL表など利用者さんの身体状況がわかる書類
  • 担当ケアマネジャーからの「情報提供書」

など

これをもとに受け入れ可能かどうかの判断がなされます。

カイゴン
介護医療院を必要とする高齢者はどんどん増えているゴン。だから、要介護認定を受けていても、申し込んだ全員が必ず入居できるとは限らないんだゴン。
明美
やっぱり要介護度が高い人の方が優先されるよね。
あとは認知症を患っている、低栄養リスクが高い、排泄支援を必要としている……といった人も、「加算」の対象になるから受け入れられやすい傾向にあるよ。

③入所前面談を行う

無事に受け入れが決まったら、入所する前に一度面談を行います。
入所した後に主治医となる医師や、看護師、相談員などから、治療方針や療養生活についての説明をするためです。

予約した日時に、介護保険証・健康保険証を持って来院しましょう。

④入所

ベッドの空きができ次第、介護医療院から連絡が入ります。
これで介護医療院への入所は完了です!

働く側から見る介護医療院の魅力は「医療にも介護にも通じた人材になれる」こと

介護職として介護医療院で働くメリットには、「さまざまな経験を積むことができる」点が挙げられます。

介護医療院の入居者の多くは、医療依存度の高い要介護4~5の高齢者です。
そのため他の施設に比べると、身体介護を行う場面も、医療ケアを間近に見る機会も多くなります。
時には利用者さんの看取り介護に携わることもあるでしょう。

つまり、介護医療院でさまざまな経験を積むことで、医療にも介護にも精通した人材として成長することが可能なのです。

また、介護医療院では医師・看護師の医療職をはじめ、リハビリ職や栄養士など多・他職種の連携により利用者を支えているため、他の介護施設と比べて多・他職種連携がより重要になります。

スキルアップの例
  • 介護技術を身につけられる
  • 医療やリハビリの知識を得られる
  • 医師や看護師など多・他職種との連携が学べる
  • 医師・看護師の配置が手厚く、急変時や夜勤帯でも安心して対応できる

介護と医療を両立させたサービスの需要が高まっている昨今、どちらの知識も兼ね備えている介護職員は貴重な存在として重宝されるはず。
介護職として働きつつも医療の知識を身につけたい人や、介護職として働きながら看護学校への進学を目指したい人には特におすすめです。

編集者より

厚生省の発表によると2019年3月末の時点で、介護医療院の施設数は全国で150施設。
転換を支援する加算や補助金などの援助があるとはいえ、基準を満たすために施設を改善したり人員を整備したりするのには多大な時間とコストがかかります。
施設数・床数は増えていても、まだまだ介護療養型医療施設からの転換が進んでいないのが現状です。

しかし、介護医療院の需要はこれからますます高くなっていくことが予測されます。
今後も目が離せない介護医療院について、しっかりチェックしておきましょう。

参考文献・サイト

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