介護の資格

接遇が重要な施設で役立つ!?注目資格「サービス介助士」のすべて

近年、サービス業を中心に注目を集めている資格があります。
それが、高齢者や障がい者の適切な対応について学べる「サービス介助士」です。
一見すると介護の専門資格のようですが、これはその中でも、より接遇に特化した内容のもの。
一体どのような資格なのか、この記事で詳しくご紹介します。

サービス介助士とは?

サービス介助士は、公益財団法人 日本ケアフィット共育機構が認定している民間資格。
「おもてなしの心」と「安全な介助技術」を学び、高齢者や障がい者が安心して社会参加できるよう環境を整えるための資格です。

運輸業・小売業・観光業・レジャー産業など、さまざまなサービス業を中心に、多くの企業でサービス介助士が育成されています。

主な活躍の場
  • 空港
  • 駅構内
  • 銀行
  • デパート
  • 飲食店
  • 宿泊施設

など

 

また、大学・専門学校の講座にも取り入れられており、個人受講も含めると2018年12月時点での資格取得者は全国で約16万人にも上ります。

JR東日本に見る「サービス介助士」ニーズの高まり

資格取得者数を見れば明らかなように、サービス介助士は社会的ニーズの高い資格であるといえます。

超高齢社会となっている現代日本において、街中で高齢者の方を見かけることは珍しくありません。また、スロープや点字ブロックの設置により、障がいがある人も昔より外出しやすくなっています。
サービス業従事者が配慮の必要なお客さまに対応する機会は、これからどんどん増えていくことでしょう。
そのときに正しい介助ができるよう、サービス介助士の資格を取っておく必要があるのです。

実際にJR東日本では、「お客さまに優しい鉄道サービスの追求」のため、全職員がサービス介助士の資格を取得することを推進しています
2005年に始まった資格取得ですが、10年間で取得者は1万人にまで増加したようです。

参考:東日本旅客鉄道株式会社「サービス介助士資格取得者が 10,000 名を超えました!」 (2015/05/15)

「サービス介助士」の資格を活かせる場面は街中に溢れている

サービス介助士の資格だけでできる仕事はありませんが、この資格を取得していることで、日々の接客の中で配慮の必要な高齢者・障がい者に対応した際にも、慌てず丁寧に対応することができます

「サービス介助士」の資格が役に立つ場面
  • 車いすの方が電車に乗降する際、適切な介助を行える
  • 身体の不自由な方が洋服を試着する際、お手伝いができる
  • 視覚障がいのある方を案内できる
  • 聴覚障がいのある方にも接客ができる

など

これらのサポート例を見て、
「つまりサービス介助士は、店員さんが最低限の介護知識を身につける資格なんだな」
と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、サービス介助士の資格が魅力的なのは、ただ介助技術だけを学ぶわけではない、という点にあります。

たとえば車いすの方のお手伝いをする際、立ったままお声をかけると上から見下ろす姿勢になってしまいますよね。
介助方法が正しくとも、接客という観点では十分とはいえません。声かけの際にはきちんと膝を折り、車いすの方の目線に合わせてお話をするのが望ましい形です。

このように、サービス介助士の養成講座では介助技術だけでなく「おもてなしの心構え」を一緒に学べます。
これにより、さらに丁寧で適切なコミュニケーションを図ることができるのです。

介護職が「サービス介助士」の資格を取るメリットは?

サービス介助士は、接客業に必要なおもてなしと介助技術を学ぶための資格。
介護について一切の経験がないスタッフが、業務上発生しうる「高齢者や障がい者など、配慮の必要な相手」への対応を難なくこなせるようにするためのものです。
より専門的に介護の知識・技術を経験と共に身につけている介護職にとっては、取得する必要のないものに思えますよね。

しかし、とりわけ接遇が大切な有料老人ホームなどの職員であれば、その限りではありません。

数ある介護施設の中でも、有料老人ホームは入居費用が少し高めに設定されていることから、一般的に高所得の利用者さんが多いと言えます。
そのため、他の施設に比べると、きちんとした言葉遣いや態度、接遇マナーを介護職員に求める傾向が強いのです。

つまり、介助技術だけでなくおもてなしの精神も学べるサービス介助士は、利用者さんとより上質なコミュニケーションを図る上で役に立つ資格であると言えるでしょう。

サービス介助士になるには講座の受講が必須

サービス介助士の資格を取得するためには、サービス介助士資格取得講座を受講し、課題提出・実技教習の後に検定試験を受ける必要があります。

サービス介助士の資格を認定しているのは公益財団法人 日本ケアフィット共育機構のみ。資格の取得方法はこの講座を受講すること以外にありません。
他のスクールでは取得できないので、名称の似ている他の資格と間違えないように注意しましょう。

受講対象者

サービス介助士資格取得講座を受けられるのは、社会人・大学生・専門学生など。
社会人としてすでに働いている、もしくは近い将来に働く予定がある人を対象としているようです。
サービス介助士を取得しよう、と考える方であればおおよそ満たせる条件であるため、受講の資格要件はないものとして考えてよさそうですね。

講座のカリキュラム

講座では、日本ケアフィット共育機構が発行しているテキストを使用します。
前半でおもてなしについて、後半で高齢者・障がい者について学びます。詳しい内容は以下の通りです。

  1. サービス介助士の基本理念
  2. ホスピタリティ・マインド
  3. ノーマライゼーション
  4. 高齢社会の理解
  5. 高齢者への理解と介助
  6. 障がい者への理解と介助
  7. 障がい者の自立支援
  8. サービス介助士の接遇
  9. 関連法規および制度

テキストの内容がすべて終わったら、次は課題を提出します。
これは講座の内容をきちんと理解できているかどうかを確かめるもの。3択の選択問題が100問収録されている、マークシート方式のテストとなります。
1問につき1点で、合格点は60点以上。不合格の場合は再提出の必要があります。

カイゴン
カイゴン
ちなみに、講座の受講費は41,040円。
でも課題の再提出は無料でできるから、不合格になっても諦めないでがんばるゴン!

実技教習

最後に、2日間連続で実施される実技教習を受けます。
開催される場所は東京や名古屋、大阪をはじめとする都市部が多いようです。詳しくは公式ホームページでチェックしてみてくださいね。

実技教習のプログラムは以下の通りです。

  1. オリエンテーション
  2. ディスカッション(高齢者ってどんな人?)
  3. 高齢者疑似体験
  4. ディスカッション(体験の感想など)
  5. ジェロントロジー(創齢学)とは
  6. ホスピタリティー・マインド・接遇訓練
  7. 車いす操作方法・演習・移乗訓練
  8. 聴覚障がいの方への介助
  9. 歩行が不自由な方への介助
  10. 視覚障がいの方への介助・演習
  11. 盲導犬・聴導犬・介助犬
  12. ユニバーサルデザイン・共用品
  13. 車いす操作と手引きの実技チェック
  14. 総合ロールプレイ
  15. まとめ

実習2日目の最後に、全50問からなる3択問題の検定筆記試験が行われます
マークシート方式のテストで、試験時間は50分。70点以上で合格となります。

カイゴン
カイゴン
合格率は8割くらいだけど、油断は禁物ゴン。不合格だった場合は試験料3,240円を払うことで再試験受けられるゴン。
明美
明美
公式ホームページには試験対策として、インターネット模擬試験も用意されているよ。有料での取り扱いになるけど、不安な人は利用してみてもいいかもね。

資格更新

サービス介助士資格の有効期限は3年間となっています。
更新のためには、期限までに更新手続きを済ませ、更新料 2,160円を支払う必要があります。
忘れないように注意しましょう!

「准サービス介助士」とは何が違うの?

公益財団法人 日本ケアフィット共育機構では、サービス介助士の他にも「准サービス介助士」という資格の認定を行っています。

名前が近しいために混同されがちな「サービス介助士」と「准サービス介助士」。ですが、その内容はまったく異なります。
どのような点が違うのか、准サービス介助士の概要と比べてしっかり確認しておきましょう。

准サービス介助士とは?

高齢者や障がい者に対する「おもてなしの心」と「介助知識」を在宅で学ぶ講座。
介助技術のポイントを収録したDVD教材がついており、自宅で手軽にチャレンジすることができます。

准サービス介助士の概要
受講料 21,600円
受講形態 自宅学習
教材 テキスト、提出課題、DVD
※テキストはサービス介助士資格取得講座で使用するものと同じ
課題提出 あり
検定試験 あり(在宅試験)
実技教習 なし
資格更新 なし

位置づけとしてはサービス介助士の下位資格であり、准サービス介助士資格を取得することで、サービス介助士へステップアップする申し込みを行うことができます。
具体的には「サービス介助士資格取得講座の提出課題が免除になる」「受講料が27,000円に減額される」といった対応がなされるようです。

カイゴン
カイゴン
准サービス介助士については、日本ケアフィット共育機構以外の通信講座でも取得することができるゴン。
これもサービス介助士とは大きく違うから、要注意だゴン!

編集者より

高齢者が年々増加している我が国では、これからますます、サービス業に従事する人に介助スキルを求める機運が高まることでしょう。
サービス介助士の資格を取得することは、そのような状況において確固たるアピールポイントになり得ます。

また、高齢者の増加に伴い、有料老人ホームへの入居者も増えていくことが見込まれます。
おもてなしの心を忘れない丁寧な介護職員として、コミュニケーション能力に磨きをかけるためにも、サービス介助士の資格を取得するのもいいかもしれません。
介護職の場合には資格取得が直接的に転職に有利になるわけではありませんが、得た学びはきっとあなたのスキルに反映されるはずですよ!

参考文献・サイト

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