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高齢社会のための重要政策!地域包括ケアシステムって?基本から介護職が知りたいポイントまで

今、国が積極的に推進している「地域包括ケアシステム」。
介護業界にいると、一度は耳にしたことがある人も多いでしょう。

地域包括ケアシステムとは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような市町村単位の包括的な支援・サービス提供体制のことです。

今後、介護業界は地域包括ケアシステム実現に向けて、大きく動いていくでしょう。

そこで、介護業界で働く人なら知っておきたい、地域包括ケアシステムの考え方やポイント、メリット、課題などを解説します。

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムは、高齢社会に対応するために国が推進している政策のひとつです。

高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けることができるような包括的な支援・サービス提供体制のことをいいます。

高齢者の生活には、医療・介護・予防・住まい・生活支援など、多岐にわたる支援が必要となるため、多職種が協同して、地域包括ケアシステムを構築していく必要があります。

地域包括ケアシステムでいう「地域」とは、おおむね30分以内にかけつけられる日常生活の範囲を想定されています。

それぞれの地域にあった地域包括ケアシステムの構築が必要

現在、日本人の約4人に1人が65歳以上。今後、日本の高齢化はますます進み、75歳以上の割合は増加し続けることが予想されています。

そのような超高齢社会の日本において、介護が必要になったとしても、住み慣れた地域で可能な限り生活し続けられる「地域包括ケアシステム」の構築が求められています。
そのため、約800万人いる団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、厚生労働省が構築の推進をしています。

2025年の人口は下記のように推移していくことが見込まれています。

【2025年までの人口の見通し】

総人口 75歳以上の人口
大都市部 横ばい 急増
町村部 減少 穏やかに増加

参考:厚生労働省『 今後の高齢者人口の見通し』

人が集まる都市部やもともと高齢者の多い町村部など、地域によって高齢化の進み方に大きな差が出ると予測されているため、地域の特性に応じて、地域包括ケアシステムをつくり上げていくことが必要です。

地域包括ケアシステムができた背景

地域包括ケアシステムが生まれた背景としては、日本の急速な高齢化があげられます。

2009年の「介護給付費実態調査」をもとに作られた厚生労働省の資料によると、75歳から79歳までの要介護認定率は、13.7%。これが80歳から84歳になると、26.9%と3割近くにまで高まります。さらに、85歳から89歳では45.9%、90歳以上になると68.0%になり、年齢が高くなるのとともに要介護認定率が非常に高くなります。

高齢者の人口が増え、要介護認定を受ける人の数が増えると、圧迫されていくのが介護保険や医療保険の財政です。
介護保険や医療保険を利用した人が負担する額は、1割~3割。残りの9割~7割はおもに保険料と税金からまかなわれています。
そのため、利用者が増えれば増えるほど、税金が必要となるのです。

団塊の世代が75歳以上となる2025年以降には介護・医療のニーズがさらに増加し、ますます財政が圧迫されることが予想されます。

そこで生まれたのが、保険内サービスだけでなく、ボランティアや地域の人の支援など、多くの人の関わりによって高齢者を支える「地域包括ケアシステム」です。

2011年の介護保険法改正で「地域包括ケアシステムの構築」の実現を図ることが明記され、2015年の介護保険法改正では「在宅医療・介護連携の推進」や「認知症施策の推進」、「生活支援・介護予防サービスの充実」など地域包括ケアシステム構築に向けた内容が盛り込まれ、さらなる推進が行われています。

地域包括ケアシステムの基本的な考え方

地域包括ケアシステムを構成する要素は、次の5つの支援・サービスです。

①医療・看護

医師や看護師などによる医療サービス全般。
個々人の抱える課題にあわせて専門職によって提供される。ケアマネジメントに基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供。

②介護・リハビリテーション

介護職やリハビリ職などによる介護・リハビリサービス全般。
個々人の抱える課題にあわせて専門職によって提供される。ケアマネジメントに基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供。

③予防・保健

自治体などによる健康寿命を延ばすための介護予防や健康づくり、保健衛生面などのサービス。

④生活支援・福祉サービス

心身の能力の低下や経済的理由、家族関係の変化などの問題が起こっても尊厳ある生活を継続するための生活支援や福祉サービス。
生活支援は、食事の準備などのサービス化できる支援から、近隣住民の声かけ・見守りなどのインフォーマルケア(非公式な支援)まで幅広く、担い手も多様である。
生活困窮者などには、福祉サービスとして提供。

⑤住まいと住まい方

高齢者の住まいの整備、高齢者本人の希望と経済力にかなった住まい方の確保など。
生活の基盤である住まいの整備と、本人の希望と経済力にあった住まい方の確保は地域包括ケアシステムの前提である。高齢者のプライバシーと尊厳が十分に守られた住環境を確保する必要がある。

 

まずは、自宅やサービス付き高齢者向け住宅などの生活の基盤となる「住まい」を整備します。その「住まい」で、身体能力や経済状況の変化などに左右されない安定した日常生活を送るための「生活支援・福祉サービス」を提供します。
このふたつの支援が確立しているという前提のうえで、専門職による「介護」「医療」「予防」を提供することによって、より効果的な機能を発揮させる考えです。

このように、地域包括ケアシステムでは「介護」「医療」「予防」の専門的なサービスと、その前提である「住まい」「生活支援・福祉サービス」が相互に関係し、連携していくという考え方によって構成され、5つの要素を包括的に提供する体制を目指します。

また、5つの要素には含まれていませんが、「本人・家族の選択と心構え」も大切な要素のひとつとしてあげられます。

ひとり暮らしや高齢者のみで暮らす世帯が主流になりつつあるなかで「在宅生活を選択する」ことがどういうことなのか。その意味を、本人と家族が理解し、心構えを持つことが重要です。

ポイントは4つの助(自助・互助・共助・公助)

社会福祉において、「自助・互助・共助・公助」の4つの考え方が用いられてきました。

地域包括ケアシステムにおいても、この4つの助の考え方がポイントとなります。
では、4つの助(自助・互助・共助・公助)の内容を見ていきましょう。

【自助】:自分で自分を助けること

(例)

  • 介護保険や医療保険の自己負担部分
  • 「配食サービス」など、必要な市場サービスを購入して利用すること
  • 本人や家族ができる範囲で対応すること
  • 自分で健康や介護予防に取り組むこと
【互助】:住民同士で自発的に支え合うこと

公的な制度とは異なり、費用負担が制度的に保障されていない助け合いのしくみです。
(例)

  • ボランティアなどによる支援
  • 地域住民による見守りや声掛けなどの取組み
【共助】:制度化された相互の負担のこと

介護保険や年金など社会全体で助け合うしくみです。
(例)

  • 介護保険や医療保険制度による給付
  • 年金
【公助】:国による社会福祉制度のこと

最終的に必要な生活保障を行うため、税金によって成り立つしくみです。
(例)

  • 介護保険や医療保険の公費(税金)部分
  • 自治体が提供する生活保護などのサービス

4つの助は、まず自助を基礎に、自助でできない部分を互助や共助、それでも難しい部分を公助で支える考え方をします。

地域包括ケアシステムにおいては、「共助」「公助」を求めたとしても、現在の日本の少子高齢化や財政状況から、大幅な拡充は難しいと考えられています。
そのため、今後はさらに「自助」「互助」の果たす役割は大きくなっていき、意識して取り組んでいく必要があります。

とくに人とのつながりが希薄になりがちな都市部では、意識的に「互助」である住民同士の支え合いの強化を行う必要があると考えられています。

地域包括支援センターの役割

地域包括ケアシステムの中核的な役割を担うのが、地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは、市町村によって各地域に設置されている高齢者に関する相談・支援窓口です。
権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行っています。

地域包括ケアシステム構築の実現に向けて、主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師が主体となって、地域住民のニーズの把握や医療・介護などの関連事業と調整する地域包括支援センター。その役割は大きく、地域の中核機関として期待されています。

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地域包括ケアシステム構築のための3つのプロセス

地域包括ケアシステムは、市区町村が3年ごとに策定する「介護保険事業計画」に基づいて計画的に進められます。
そのため、全国一律ではなく、その地域が目指す独自の地域包括ケアシステムを各自治体が計画していきます。

ただし、計画の方法として、次の3つのプロセスを経て進めるように国から示されています。

①地域の課題の把握と社会資源の発掘

まずは、「地域の課題の把握と社会資源の発掘」を行います。

「地域の課題の把握」とは、高齢者や住民のニーズを調査する「日常生活圏域ニーズ調査」や、地域包括支援センターなどが開催する個別事例を通して地域課題を把握するための「地域ケア会議」を行うことによって、地域のニーズや実態を把握します。

「社会資源の発掘」とは、ほかの市町村の介護・医療情報と比較検討する「医療・介護情報の『見える化』」を随時実施し、介護・医療サービスを担うNPOやボランティア団体、町会などの社会資源を発掘・育成します。

このように地域の高齢者や家族が抱える課題を調査し、地域の社会資源を把握することによって、地域の課題を解決できるような事業や施策を考えていきます

②地域関係者による対応策の検討

つぎに、「地域関係者による対応策の検討」をします。
①では個別事例を通して検討する「地域ケア会議」を実施しましたが、②のプロセスでは地域課題を関係者全体へ共有し検討するために市区町村単位での「地域ケア会議」が開催されます。

具体的には、下記のような内容の対応策を検討します。

③対応策の決定・実行

最後のプロセスでは、「対応策の決定と実行」をします。
上記ふたつのプロセスを経て検討された地域の課題に関する対応策を決定し、実行します。

たとえば、ニーズに応じて在宅・施設の介護サービスの基盤を整備したり、社会参加の促進による介護予防をしたりするなど、さまざまな対応策が決定・実行されます。

このみっつのプロセスを経て、地域の実情にあった地域包括ケアシステムが実現されていきます。

地域ケア会議とは

地域包括ケアシステム構築の3つのプロセスを進めるうえで重要になるのが「地域ケア会議」です。
それは、地域ケア会議が地域の課題を把握するために必要不可欠なものだからです。

地域ケア会議とは、地域包括ケアシステムを実現するための手法として、2015年度より介護保険法に規定されました。

高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備を同時に進めていくことを目的に、地域包括支援センターなどが開催します。多職種が集まって事例検討を行い、地域のネットワーク構築や高齢者のケアマネジメント支援、地域課題の把握などを推進します。

地域ケア会議の構成メンバー

主な構成員は、介護・医療の専門職種地域の支援者などです。
具体的には、下記のメンバーで構成されています。

自治体職員、地域包括支援センター職員、ケアマネジャー、介護事業者、民生委員、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士など
※直接サービス提供に当たらない専門職種も参加します

多職種協同で個別ケースの課題を解決していくことで、地域課題を解決するための社会基盤の整備を行います。

地域包括ケアシステムのメリット

地域包括ケアシステムには、大きくふたつのメリットがあります。

高齢者が住み慣れた地域で生活し続けられる

地域包括ケアシステムでは、「高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けること」を目的にしています。
そのため、医療ケアが必要になっても在宅で対応できるように「介護と医療の連携」を進めたり、認知症になっても在宅生活が続けられるように「地域ネットワーク」を進めたりしています。
また、健康寿命を延ばすための「介護予防」や高齢者の社会参加のための取組みも積極的に行うため、高齢者が安心して地域で生活し続けられる体制が期待できます。

地域にあったケアシステムを提供できる

各地域によってつくられる地域包括ケアシステムでは、地域にあったサービスを提供できるようになります。
人口が集中している都市部と毎年人口が減少する地方の町村部などでは、地域事情が大きく異なります。
統一的なサービス体制を目指すと、地域によっては無理が生じるでしょう。
そのため、どの地域でも安定したサービス体制を整えるために、各地域にあわせた体制を構築する必要があります。
地域の実情にあわせることによって、無理なくかつ主体的な建設が進み、質の高い地域包括ケアシステムの実現が期待できます。

介護職も関わるシステムの課題

地域包括ケアシステムが抱える課題は、大きくわけてふたつあります。

課題①:介護と医療の連携

ひとつは「介護と医療の連携」です。
「介護と医療の連携」は地域包括ケアシステムの柱のひとつですが、まだ十分な体制は整っていません。
夜間や早朝、緊急時の対応などに不十分な点が見受けられるため、迅速に医師・看護師と介護職が連携できる体制を整える必要があります。

しかし、そのためには市町村への支援が必要になるでしょう。

なぜなら、地域包括支援センターや介護事業者などの介護は市町村単位で管理されていますが、医療は都道府県単位です。
市町村は管理外の医療分野との連携を行う必要があるため、なかなかスムーズにはいかない現状があるのです。

厚生労働省『在宅医療・介護連携推進事業の現状と課題について』によると、多くの市町村は、医療機関との連携や、介護と医療の連携した事業を実施するためのノウハウが不足していると感じており、都道府県に対して医療関係団体との調整の支援や医療データの提供を希望しています。

つまり、多くの市町村が医療機関との連携に課題を感じ支援を求めているため、対策を立てる必要があるでしょう。

課題②:地域格差

もうひとつは「地域格差」です。
高齢者の割合は地域によって差があります。財源や社会資源、高齢者人口のピーク時期も地域ごとに異なるため、地域包括ケアシステムを整えた後の介護体制に、地域間での格差が生じやすくなるという課題があります。

格差を減らすために、ほかの市町村の体制に対して考慮しつつも、それぞれの地域の特性や実情にあった地域包括ケアシステムの計画を立てる必要があるでしょう。

地域包括ケアシステムでは欠かせないケアマネ・介護職の重要な役割

地域で高齢者を支える地域包括ケアシステムにおいて、介護職やケアマネジャーの役割は大きいでしょう。なかでも、在宅ケアを担う人たちは重要なポジションにいます。

中心的な役割を担うケアマネジャー

在宅で生活する要支援・要介護認定を受けた高齢者(以下、利用者)にとって、一番のキーマンとなるのがケアマネジャーです。
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは、在宅の利用者のケアプランを作成し、介護保険サービスの手配や今後の生活の計画を立てます。
介護保険サービスを利用するには、そのサービスがケアプランに明記してある必要があるため、地域での生活を続けられるかどうかはケアマネジャーの采配によるところも大きいでしょう。

在宅の要支援者に関しては、地域包括支援センターも担当します。
地域包括支援センターで働く主任ケアマネジャーは、要支援者のケアプラン作成だけでなく、住民に対する介護全般の支援やサービス事業者間との連携などを行うため、地域包括ケアシステムの実現に向けた大きな役割を担っています。

訪問介護や地域密着型サービスも必要不可欠

さらに、在宅の利用者を支えるために欠かせない職種といえば、訪問介護やデイサービスなどの訪問・通所系サービスの介護職です。
訪問・通所系サービスの介護職は、利用者の在宅生活を支える直接的な支援を担うため、地域包括ケアシステムにおいて、必要不可欠な存在です。

また、地域包括ケアシステムの実現に向けて創設された介護サービスがあります。
それは、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護などの「地域密着型サービス」です。
地域密着型サービスでは、地域の特性や事情にあったサービスを提供するため、柔軟なサービス設計を行い、利用者のニーズに細かく対応できるようにしています。
そのような地域密着型サービスで働く介護職の貢献は大きく、地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担います。

介護施設で働く介護職も地域の一員として関わる

そのほか、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設も大きな役割を担っているといえます。
施設に入所しても、利用者はその地域の一員です。地域の一員として生活してもらえるように、地域と積極的に交流するための取組みやイベントを行う施設も増えています。

つまり、サービス形態関係なく、介護職やケアマネジャーは地域福祉の担い手であるため、地域包括ケアシステム実現に向けて欠かせない存在であるといえます。

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