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EPA介護福祉士候補者とは? 受入れ・受験ルートや候補者の試験合格率、就労期間などを徹底解説

「うちの施設でも、EPA介護福祉士候補者を受入れたい」
外国人労働者が増えるなか、そのように考えている施設長や人事担当者も多いのではないでしょうか。

しかし、候補者を受入れたいと思っても、どうすればいいのかよくわらかない人も多いでしょう。

この記事では、施設長や人事担当者が知りたいEPA介護福祉士候補者の受入れの流れや就労期間、人員配置の基準の算定についてなどを詳しく解説します。

また、受験のルートや試験のポイント、候補者の試験合格率など、候補者が知っておきたい情報も紹介します!

EPA介護福祉士候補者とは

EPA介護福祉士候補者とは、経済連携協定(EPA)に基づき、日本の介護施設で就労・研修を行いながら、日本の介護福祉士国家資格の取得を目指す人のことです。

EPA介護福祉士は、2国間の経済上の連携を強化することを目的としていることから、労働力不足への対応として行う取り組みではありません

現在、EPA介護福祉士候補者受入れ国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。
2008年度より受入れを開始し、2017年度までに累計3,492人がEPA介護福祉士候補者として受入れられています。

EPA(経済連携協定)とは

EPA(Economic Partnership Agreement)とは、日本語で「経済連携協定」といい、世界貿易機関(WTO)を中心とした多国間の貿易自由化を補完するための協定です。
限定された国や地域のなかで、関税等の貿易障壁を撤廃し、モノ・ヒト・カネ・サービスの移動の促進を行うことで、幅広い経済関係の強化を目的としています。

EPA介護福祉士候補者の受入れ・受験ルート

現在、EPA介護福祉士候補者の対象国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。
EPAは基本的に2国間協定となるため、国によって締結した内容が異なります
受入れから採用までの過程は、3か国中インドネシアとフィリピンが似ており、ベトナムのルートはほかの2か国と比べると多少の違いがあります。

このことから、共通する部分が多いインドネシア・フィリピンと、ベトナムの2つに分けて、受入れルートを解説します。

インドネシア・フィリピンの受入れ・受験ルート

インドネシアでは2008年度に、フィリピンでは2009年度にEPAが締結されました。

インドネシア・フィリピンの人がEPA介護福祉士候補者として受入れられるには、まず自国での候補者条件をクリアします。

候補者条件は、インドネシアの場合は「高等教育機関(3年以上)卒業+インドネシア政府による介護士認定」または「インドネシアの看護学校(3年以上)卒業」
フィリピンの場合は「4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士認定」または「フィリピンの4年制の看護学校(学士)卒業」です。

条件クリア後は、施設と候補者の両者の希望をもとに「公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)」のプログラムによってマッチングが行われます。

マッチング成立後、雇用契約を締結します。
その後、6ヵ月間の訪日前日本語研修を受講し、日本語能力試験N5程度以上の日本語能力を有する者のみ(※)が日本への入国を許可されます。
さらに6ヵ月間の訪日後日本語研修と介護導入研修を受講。その後、雇用契約に明示された受入れ施設で介護福祉士候補者として、日本の介護福祉士の国家資格を取得するための就労・研修を3年以上行います

国家試験を受験し、合格して資格を取得した人は、引き続き日本国内でEPA介護福祉士として就労することが認められます
試験に不合格となり帰国した場合は、短期滞在で再度入国して受験することができます。

※フィリピンにおいては、「日本語能力試験 N5 程度以上の日本語能力を有する者のみ」という条件は政府間で現在調整中となっているため、2019年3月時点では日本語能力試験の受験義務はありません。

ベトナムの受入・受験ルート

ベトナムでは2014年度にEPAが締結されました。

ベトナムの人がEPA介護福祉士候補者として受入れられるには、インドネシア・フィリピンの人と同様に、まず自国での候補者条件をクリアします。
候補者条件は「3年制または4年制の看護課程修了」

条件クリア後は、マッチングの前にインドネシア・フィリピンの倍の期間である12ヵ月間の訪日前日本語研修を受講し、日本語能力試験N3以上に合格する必要があります。

マッチングが成立したあとは、雇用契約を締結します。
来日し、2.5 ヵ月間の訪日後日本語研修と介護導入研修を受講。その後、雇用契約に明示された受入れ施設で介護福祉士候補者として、日本の介護福祉士の国家資格を取得するための就労・研修を3年以上行います

国家試験を受験し、合格して資格を取得した人は、引き続き日本国内で EPA 介護福祉士として就労することが認められます
試験に不合格となり帰国した場合は、短期滞在で再度入国して受験することができます。

EPA介護福祉士候補者の介護福祉士試験のポイント

介護福祉士資格取得を目指す候補者にとって、試験は引き続き就労できるかのターニングポイントです。
ここでは、候補者が介護福祉士国家試験を受験するさいのポイントをふたつ紹介します。

候補者の受験には特例がある

ひとつは特例があること。
候補者が受験する場合、試験時間が1.5倍に延長され、すべての漢字にふりがなが付記された問題用紙と、一般の受験者と同様の一部の漢字にふりがなが付記された問題用紙が配付されます。

ちなみに、EPA以外の外国籍の人が受験する場合も、申請することによってふりがなが付記された問題用紙を受け取ることができますが、試験時間は延長されません。

候補者の実技試験対策も忘れずに!

もうひとつのポイントは、EPA介護福祉士候補者は実技試験の対策をしっかりと行う必要があることです。
日本人と同じように、EPA介護福祉士候補者も「実務者研修」「介護技術講習会」を受講することによって実技試験を免除できます。

しかし、日本という外国の地で働きながら、時間やお金を要する「実務者研修」や「介護技術講習会」を受講するのは、EPA介護福祉士候補者にとってなかなか難しいことです。

もちろん、この研修を受けなければ候補者は実技試験を受験しなければなりません

日本では、介護福祉士試験を受けるために実務者研修の修了が義務化されたため、実技試験を意識しない人が多いかもしれません。
しかし、EPA介護福祉士候補者の場合は実技試験対策が必要になることが多いので注意が必要です。

EPA介護福祉士候補者の試験合格率

次にEPA介護福祉士候補者の試験の合格率について、厚生労働省の資料を参考にみていきましょう。

出典:厚生労働省『経済連携協定(EPA)』

候補者がはじめて受験した平成23年度試験から3回の合格率は30%台を推移しています。

上記の資料には記載されていませんが、厚生労働省の発表から、直近の平成29年度試験の合格率は50.7%(全体の合格率は70.8%)とわかりました。つまり、平成27年度試験から3回の合格率は50%前後を推移しています。

候補者の合格率は上昇しているものの、直近2回の試験結果をみると、日本人を含めた全体の合格率からは20%ほど低くなっています

EPA介護福祉士候補者の就労期間

EPA介護福祉士候補者の就労期間は、基本的に4年間(1年間の就労期間を3回延長更新できる)です。
介護福祉士の受験資格を得るためには、実務経験3年(従業期間3年以上、従事日数540日以上)が必要なため、最長4年の就労期間中に受験できる機会は1回となります。
試験に合格できなかった場合は母国に帰国しなければなりません(一定の条件を満たしている人の場合は、もう一年在留することができる)。
なお、帰国後は短期滞在で再度入国して受験することができます

国家試験に合格し介護福祉士を取得した人は、3年の滞在期間を得られますが、滞在期間は無制限に更新できます
つまり、EPA介護福祉士が希望し、受入れ施設から同意を得られれば、定年まで働き続けることができます。

EPA介護福祉士候補者の受入れの流れ

EPA介護福祉士候補者を受入れたいと思っても、どうやって受入れればいいかわからない人も多いのではないでしょうか。
下記では、EPA介護福祉士候補者の受入れの流れを解説します。

EPA介護福祉士候補者の受入れの流れ
  1. 求人登録申請
  2. 国際厚生事業団(JICWELS)による受入れ希望機関の要件確認
  3. 送り出し調整機関による就労希望者の募集・審査・選考
  4. 現地面接・合同説明会
  5. マッチング
  6. 採用内定

1.求人登録申請

EPA介護福祉士候補者の受入れを希望する施設は、国際厚生事業団(JICWELS)が行う募集に対し、求人登録申請を行う必要があります。

2020年度に来日するEPA介護福祉士候補者の求人登録申請の受付期間は「2019年3月26日(火)~ 4月25日(木)」です。
申請に関する詳細は、国際厚生事業団(JICWELS)のホームページをご確認ください

2.国際厚生事業団(JICWELS)による受入れ希望機関の要件確認

受入れ希望施設は国際厚生事業団(JICWELS)求人申請書類を提出します。
国際厚生事業団(JICWELS)は、提出された書類をもとに受入れ施設の要件や研修の要件、雇用契約の要件を満たしているか、並びに求人条件が労働関係法令を遵守しているかなどを確認します。確認のとれた施設が受入れ希望機関として登録されます。

EPA介護福祉士候補者受入れ機関・施設の要件

EPA介護福祉士候補者の受入れには、以下の(1)~(7)の要件を満たす必要があります。

(1)受入れ機関・施設の要件
介護福祉士候補者の受入れ施設は、下記「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」に掲げる介護施設であり、次の①から⑥の要件を満たしていなければなりません。また、この際、「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」の 1~5 の施設については定員が 30 名以上(指定介護療養型医療施設は介護保険の指定を受けた病床数が 30 床以上)、6~9の施設については、当該介護施設の本体施設の定員が 30 名以上、10~15 の施設については、1~9 の介護施設と同一の敷地内において一体的に運営されているものであることが必要です。
①受入れ施設において介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されていること。
②受入れ施設において介護職員の員数が、法令に基づく職員等の配置の基準(以下「配置基準」という。)を満たすこと。
③受入れ施設において常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有する職員であること。
④受入れ機関において、過去3年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又はEPA 介護福祉士の受入れについて、虚偽の求人申請、二重契約その他の不正の行為をしたことがないこと。また、過去3年間に、外国人の就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
⑤受入れ機関において、過去3年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又はEPA 介護福祉士の受入れについて、受入れ機関に義務付けられた(5)の報告を拒否し、又は不当に遅延したことがないこと。
⑥受入れ機関において、過去3年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又はEPA 介護福祉士の受入れについて、(6)の巡回訪問の際に求められた必要な協力を拒んだことがないこと。

(2)研修の要件
介護施設における研修は、以下の①~④の条件を満たしていなければなりません。
①研修内容は、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための介護研修計画が作成されていること。
②介護研修計画の立案、研修の統括、さらには外部機関との連絡・調整等、研修を統括する研修責任者、並びに専門的な知識及び技能に関する学習の支援、日本語学習の支援、生活支援等を行う研修支援者が配置され、介護研修計画を実施するために必要な体制が整備されていること。
③研修責任者は、原則として、5年以上介護業務に従事した経験があって介護福祉士の資格を有する者とすること。
なお、研修責任者には、5年以上介護業務に従事した経験がなくとも、介護福祉士実習指導者講習会を修了し、かつ、介護福祉士の資格を有する者を配置することもできる。
④日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設けること。

(3)雇用契約の要件(1)の介護施設を設立している受入れ機関と介護福祉士候補者との雇用契約は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることを内容としなければなりません。

(4)宿泊施設の確保等
介護福祉士候補者用の宿泊施設を確保し、かつ、介護福祉士候補者の帰国費用の確保等帰国担保措置を講じていなければなりません。

(5)報告
JICWELS を通じて、地方入国管理局や厚生労働省に対して、所要の定期報告と随時報告を行うこと。

(6)巡回訪問への協力
JICWELS による巡回訪問について必要な協力を行うこと。

(7)JICWELS からの助言を踏まえた改善措置の実施
(5)の報告の内容や(6)の巡回訪問の結果を踏まえた、JICWELS による助言に従って必要な改善を行うこと.

出典:『EPA介護福祉士候補者受入れ機関・施設の要件』

3.送り出し調整機関による就労希望者の募集・審査・選考

各国の送り出し調整機関が日本での就労希望者を募集し、審査・選考を行い、候補者リストを作成します。

4.現地面接・合同説明会

国際厚生事業団(JICWELS)は受入れ希望施設に代わって現地まで赴き、送り出し調整機関の審査・選考を通過した就労希望者に対して「現地面接」を実施します。

5.マッチング

国際厚生事業団(JICWELS)は、受入れ希望施設と就労希望者の双方の意向情報をマッチングプログラムに入力し、マッチングの組合せを導き出します。

6.採用内定

マッチングが成立した受入れ希望施設と就労希望者は、両者のマッチング結果への同意を
もって採用内定となり、雇用契約を締結します。

この流れを経て、EPA介護福祉士候補者を受入れることができます。

参考:公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)『2019年度版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者受入れパンフレット』

対象に含まれる?EPA介護福祉士候補者の人員配置の基準について

EPA介護福祉士候補者が人員配置の基準の算定対象に含まれるかどうか、気になっている人もいるでしょう。

受入れ施設で就労を開始した日から 6ヵ月を経過したEPA介護福祉者候補者、または日本語能力試験でN1もしくはN2に合格したEPA介護福祉士候補者は、配置基準上、職員等として算定する取扱いとしています。

また、上記のEPA介護福祉士候補者は、夜勤の最低基準においても職員等として算定する取扱いが認められます
ただし、受入れ施設で候補者を夜勤に配置するには、下記の条件を満たす必要があります。

編集者より

EPA介護福祉士候補者について解説しました。

冒頭で説明したように、EPA介護福祉士候補者は、労働力不足への対応として受入れるものではなく、あくまでも2国間の経済上の連携を強化が目的。
そのため、受入れ施設として認められるには多くの要件を満たす必要があります。

容易ではありませんが、要件を満たすことはすなわち、候補者にとって働きやすい施設であることの証となります。
ハードルが高いからこそ、候補者だけでなく日本人にとっても働きやすい環境になるのかもしれません。

興味のある方は、EPA介護福祉士候補者の受入れを希望してみてはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

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