介護の知識

介護記録の書き方~基本的なポイントと効率化のコツ~

「介護記録の書き方が分からない」「時間がかかる」と、多忙な介護職員の悩みの種になっている介護記録
介護職員の方の中には、高齢者と関わるのは好きでも、文章を書くことに苦手意識を持っている方も少なくありません。
今回は、介護記録の書き方の基本と効率化のコツを紹介します!

介護記録に苦労する介護職員の声

手が回らない介護記録
経験が少なめの方や、利用者数が多い施設にお勤めの方にとっては特に、介護記録の作成は時間がかかりやすい業務です。
皆さんの声を少し聞いてみましょう。

介護記録とかはサービス残業当たり前です。(中略)新人の頃は確かに同じことやっても時間かかったから仕方ないと思いましたが、仕事慣れても担当増えて時間内に終わりません。
出典:GREE

いつも介護記録に追われて勤務時間が過ぎてしまいます。(中略)あの時○○さんはどこで何をしてたかなぁ~と思い出しながら書くのですが、効率よく介護記録を書く工夫があれば教えてください。記録に専念できれば良いのですが、実際には忙しくて後から思い出して書くような記録になっています。
出典:Yahoo!知恵袋

介護記録の目的 もう1度見直そう!

介護記録の目的
介護記録を書く目的を理解することが、記録を簡潔にまとめることの近道かもしれません。
いま一度、介護記録を書く目的をおさらいしてみましょう。

  1. 職員間で情報を共有し、継続的なケアを提供するため
  2. 利用者の最新の状態や希望を、ケアプランに反映させるため
  3. 利用者・家族側と、事業所・職員側の信頼関係を築くため
  4. 職員の専門職としての研さん、意識向上のため
  5. 事故や訴訟など、万一の事態に証拠として備えるため
  6. このように、重要な意味が複数ある介護記録。誰が何のために読む記録なのか、意識して記入することが大切ですね。

    介護記録の書き方 基本的なポイントを確認!

    では、そんな介護記録の書き方としては、どのような点に気を付ければ良いでしょうか?
    以下に基本的なポイントをご紹介致します。

    介護記録の書き方 基本ポイント
    □1. 「5W1H」を意識する
    □2. 客観的事実と主観を分けて書く
    □3. 略語・専門用語はなるべく控える
    □4. どんなケア・対処を取ったかを明記
    □5. ケア・対処を行った根拠も明記

    1.「5W1H」を意識する

    介護記録の基本「5W1H」
    分かりやすい文章のコツとして必須の「5W1H」。介護記録の書き方でも重要になってきます。WHEN(いつ)、WHERE(どこで)、WHO(誰が)、WHAT(何を)、WHY(なぜ)、HOW(どうした)の五本柱を文章の中に具体的に記載します。冗長になるので、1文の中に全て盛り込む必要はありません。
    特に、二人以上の人物が登場する場合、言動の主体が分かりにくくなるため、【WHO(誰が)=主語】を明確に書き分けましょう。また、WHENについては、「朝」「夕方」等のあいまいな表記でなく、「6:50」「17:30」等の具体的な表記で。

    2. 客観的事実と主観を分けて書く

    介護記録の客観と主観
    客観的事実を正確に書き記すことが、介護記録の原則。ですが、客観的な記録だけでは、後から読む人に分かりにくくなる場合があります。観察の結果、介護職として気づいたこと、今後どう対処すべきと思うかは、客観的な事実に付け加えて書く必要も出てくるでしょう。ただし、その場合は、5W1Hを用いた客観的な事実を書いた文章に混在させず、別の一文として記述するようにします。

    3. 略語・専門用語はなるべく控える

    介護記録の専門用語
    利用者や家族から介護記録の閲覧を希望される場合に備えて、略語・専門用語は必要最低限にとどめ、文章で記載することがベターです。効率化などの意図で略語・専門用語の活用が方針になっている職場もあると思います。その場合は、利用者や家族から意味を尋ねられた場合に備えて、念のため略語や専門用語の意味を、分かりやすく説明できるように用語集等で確認しておきましょう。

    4. どんなケア・対処を取ったかを明記する

    介護記録に記載する内容1
    • 1. 利用者の訴えや、利用者の状態に生じた変化に対して
    • 2. 介護職員が具体的にどのように働きかけ、
    • 3. それに対する利用者の反応はどうだったか(可能なら発言も正確に)

    を、一連の流れとして介護記録に記載します。1の「変化」のみに着目して記載して、2の介護職員の対処が記載されていないと、後々、未対応と判断されてしまう場合も。

    5. ケア・対処を行った根拠も明記する

    介護記録に記載する内容2
    ケア・対処の内容を具体的に書いたら、判断に至った根拠や理由も記載します。

    • (例)
      食の進みが悪い利用者に理由を尋ねると、食べこぼしを気にしていたことが分かった。食べ物がこぼれにくいよう、すくう部分が浅いスプーンと、ふちが広くない食器に変更した。

    単純にスプーンと食器を替えた事実を残すだけでなく、「食欲不振→食べこぼしによる不快感の訴え(根拠・理由)→食器・スプーン変更(ケア・対処)→口腔機能に問題がある可能性(観察の結果気づいたこと)」と書くことで、利用者の状態をより詳しく把握することにつながります。

    介護記録 良い書き方と悪い書き方の例

    悪い例の書き方

    • 1/10 15:45
    • おやつの後、他の利用者が各々レクリエーションを再開すると、談話室で楽しそうに折り紙をする田中さんを見ていたが、「一緒にやりませんか」と誘われると断っていた。30分ほど見ていたが、気づくと眠っていた。杖をつきながら立っていたので疲れたようだ。

    (1)全体的に5W1Hが不足しています。「楽しそうに」しているのが本人なのか、田中さんなのかが分かりません。
    (2)「一緒にやりませんか」と声をかけたのが誰なのかも記録が漏れています。
    (3)始めの一文が長いので、二文に分けた方が読みやすくなります。
    (4)「眠っていた」のが何時頃なのか、何処でなのか、記載がありません。

    良い例の書き方(上記を加筆修正)

    • 1/10 15:45
    • おやつの後、他の利用者が各々レクリエーションを再開すると、談話室で折り紙をする田中さんを、楽しそうに見ていた。
      介護職員○○が「一緒にやりませんか」と声をかけるも、「私は結構よ」と笑って手を振りながら答えていた。30分ほど田中さんを見ていた後、16:15頃、いつもの窓際のソファーに腰をかけると、眠り始めた。杖をつきながら立っていたので疲れたようだ。

    (1)一文が短くなり、読みやすさが改善しています。
    (2)介護職員の誘いに対する利用者の反応が追記され、当時の情景がより具体的にイメージしやすくなりました。
    (3)時間の表記を残すことは、記録として重要です。
    (4)眠り始めた場所として「いつもの窓際のソファー」の記録が加わり、本人が日々安心して生活を送っている様子がうかがえます。

    介護記録の書き方 効率化のコツ

    介護記録の効率化
    介護記録で時間がかかるのは、その時々の利用者さんの様子を時間が経ってから思い起こし、毎度1から文章化するためではないでしょうか。そんな介護記録を効率化するには、事前に情報をストックしておくことが第一歩です。

    1.メモ帳を携帯する

    介護記録にはメモを活用
    記録を書く際の時間短縮のために、メモ帳を携帯し、その都度起きた内容・時刻を書き留めておきましょう。一定時間が経過した後に介護記録をまとめざるを得ない実情では、業務に忙殺される内に忘れてしまいがち。メモは箇条書きやキーワード、イラスト等、簡単なものでOK。記録をつける時に記憶を補ってくれます。

    2.テンプレート(ひな形)を作っておく

    介護記録用に文章ストック
    疲れている時には文章が思うように浮かんでこないもの。メモでストックした情報を素早く文章に落とし込むのに役立つのが、文章のテンプレートです。ひな形に当てはめれば文章が出来上がるので、言い回しに困る場合には活用してみましょう。

    • テンプレート例1
    • 「朝食時、○○○を全量残した。介助して口に運ぼうとすると、顔をしかめ首を左右に振った。『(介護職員の具体的な声掛け内容)?』と聞いた所、『(利用者の回答)』と返事があった。」
    • テンプレート例2
    • 「AさんとBさんの口論が絶えない。Bさんは○○○をAさんに盗まれたと言っている。Bさんに『(介護職員の具体的な声掛け内容)』と言い、共にベッド周りを探した。」
    • テンプレート例3
    • 「壁に手をつき、廊下で困った表情で周囲を見回していた。『トイレをお探しですか?』と声掛けした所、『(利用者の回答)』と返事。手を引いてトイレへ誘導。」

    最初はパターンを複数溜めるのが大変だと思いますが、「食事介助」「トラブル」「トイレ誘導」など、よく使う場面ごとにノートに書き溜めて定型文化しておくと、後々重宝します。先輩介護職員の過去の記録をチェックし、使えそうな文面を控えておくのも良いですね。

    まとめ

    介護の仕事で避けては通れないのが、介護記録。多忙な業務の合間をぬって記録を作成することは、本当に骨が折れますよね。PCで記入する職場も増えてきていますが、記録の改ざん等を懸念して、手書きの職場もまだまだ多いようです。腱鞘炎などにならないよう、どうぞご自愛くださいね。今回の記事が少しでもご参考になれば幸いです。

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