当施設の看護師が、身体拘束廃止のための外部研修を受けてきまして、こんな報告を私にしてくれました。
「研修に参加していた周りの施設の身体拘束が、まるで数年前の当施設のような残念なことばかり。またはそれよりスゴくて驚いた!」と。
何がスゴいのかというと、例えば、
・ベッドからの転落対策に、ベッドの四方を柵で囲っていたり。センサー類にばかり依存していたり
・一見、フワフワなソファーに座らせて安楽に見えるが、実は立ち上がるのを困難にするためのものであったり
・点滴が外せないようにシーネといっしょに固定してしまったり、両腕をベッド柵にヒモでガッチリ固定したり
・・・など。
私の知らなかったテクニックもあって感心さえしてしまいました。(冗談です)
その看護師は、新しいことを勉強する気で研修に参加したのに、他施設への意見を求められる立場になってしまい、新しく学べたことはそう多くはなかったようです。逆に、この地域周辺にはまだこういった介護施設が存在するのが現状なのだと、知るきっかけにはなったようでした。
加えて、こう言ってくれました。
「当施設も様々な不満はあるが、他施設の現状を知ると当施設の取り組みに自信が持てたし、いろいろ不満をこぼしながらも頑張っている職員全員を褒めたい気持ちになれた。そして、身体拘束ゼロは不可能ではないと思えた」。
その看護師の想いを全職員に伝えるべく、職員用掲示板に研修の感想を書面にして掲示するよう、すぐさま指示を致しました。
最近は、当施設へ個浴ケアの見学に来られる関係者の方もおられ、皆さんが口を揃えて言われるのが「こちらの利用者さんと職員さんには笑顔と元気がありますね!」といったことです。
私は「ありがとうございます」とは甘んじてお答えするものの、内心は「目指すレベルはこんなものではない。褒めていただくのがお恥ずかしい。いや、お世辞ですよね?」と思っていました。でもその看護師の報告を聞いて、皆さんが褒めて下さる言葉は本心なのだなとようやく合点がいった次第です。
ひとつのケアの改善が、大きな効果となる
当施設の場合、今は特に身体拘束に注力して取り組んでいるわけではございません。
しかし、何か一つのケアを改善する取り組みに全職員が一つになることで、次第に利用者さん一人ひとりを見つめ直すきっかけとなり、それが他のケアの改善にも良い影響を及ぼします。それがさらなる職場改善していく風土、まとまりやすい組織作りへと繋がります。
結果的に当施設は個浴ケアに取り組むことで、知らず知らずのうちに身体拘束廃止へも職員の想いが波及したのかなと考えております。
ケアの質を少しでも良いものにしたいと考える介護施設は多いと思います。しかし、思いつく全てを変えようとすると、何から始めていいのか分からないし、その方法も見当がつかないかもしれません。そのような中では何一つ改善することは出来ないでしょう。まずは一つ、出来そうな業務改善からみんなで取り組んでみると、思ってもみなかった成果が別のところでみえてくるかもしれませんよ。